著者
平岡 昌和
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.283-284, 2008-08-08 (Released:2010-09-09)
参考文献数
8
著者
山本 雄大 牧山 武
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.273-282, 2019-12-23 (Released:2020-09-12)
参考文献数
21

カルモジュリンは普遍的に発現しているCa2+センサータンパクであり,3つの異なる遺伝子(CALM1-3)によりコードされている.近年,これらCALM遺伝子の変異によって先天性QT延長症候群(congenital long-QT syndrome:LQTS)やカテコラミン誘発性多形性心室頻拍(catecholaminergic polymorphic ventricular tachycardia:CPVT)などの致死性不整脈疾患が引き起こされることが報告され,注目されている.このようなCalmodulinopathyは,CALM遺伝子のヘテロミスセンス変異によって引き起こされることが報告されているが,その疾患発症機序の詳細は不明である.われわれは,カルモジュリン遺伝子関連LQTS患者より樹立したiPS細胞を用いて疾患モデルを確立し,ヒト心筋における疾患発症機序の解明とゲノム編集技術を用いた新規治療法の開発を目的とした研究を行っており,カルモジュリン遺伝子異常と不整脈疾患に関する最新の知見と併せて紹介する.
著者
志賀 剛 笠貫 宏
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.77-83, 2002-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
13

アミオダロンは強力な抗不整脈作用を有しているが, その薬物動態は複雑である, 脂溶性が高く脂肪組織などに広く分布し, その除去半減期は14~107日と長いという特徴がある.このため, 早期の効果発現を期待して初期負荷を行うという考えがある.日本では400mg/日2週間の初期負荷と200mg/日の維持量が勧められている.初期負荷量として800~1200mg/日の高用量を用いると血中濃度が高く推移し, より早い効果発現が期待できる一方, 催不整脈作用等の発現が懸念される.一般的には400mg/日による初期負荷が安全で効果的と思われる.日本における適応は, 生命の危険がある心室頻拍・心室細動あるいは肥大型心筋症に伴う心房細動の再発性不整脈である.欧米に比し, 低用量であり, 低い血中濃度でありながら, その効果は劣っていない, 一方, 心外副作用として肺毒性や甲状腺障害が多く, 眼毒性, 皮膚毒性, 神経毒性は少ない特徴がある.常に有効性と安全性を考慮した投与設計が必要である.
著者
松田 直樹
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.24, no.Suppl2, pp.19-32, 2004-03-25 (Released:2010-12-10)
参考文献数
21

非持続性心室頻拍 (VT) 例に対する電気生理検査 (EPS) は, 心臓突然死の危険度を評価する方法として重要である.非持続性VTのなかでも, 基礎心疾患を有する, 心機能低下がある, Adams-Stokes発作が疑われる, VTの連発数が多い, 頻拍レートが速い, 加算平均心電図で遅延電位が陽性などの条件を複数満たす症例が, EPSの積極的な適応となる.プログラム刺激と呼ばれる誘発試験により, 容易に持続性VTや心室細動 (VF) が誘発されれば, 将来, 同様の致死性不整脈が発生する可能性があると判断するが, その突然死予測としての意義は, 誘発条件, 誘発された不整脈の種類, 基礎心疾患, 左室機能, 失神の既往の有無などにより大きく異なる.一般に, 単発~3連発早期刺激で誘発される持続性単形性VT, 単発または2連発早期刺激で誘発される持続性多形性VT/VFが有意な所見である, 当施設での基礎心疾患を有する非持続性VT症例155例における平均5.7年の追跡では, これらの不整脈が誘発された例の突然死, 不整脈事故発生率は, 非誘発例に比し有意に高く, これに左室駆出率の低下あるいは失神発作の既往が加わると, その発生率はさらに増加した.欧米での多くのエビデンスにより, 心筋梗塞慢性期におけるEPSの意義は確立している.欧米では, 拡張型心筋症におけるEPSの有用性は否定的な意見が多いが, 我々のデータは, 突然死の長期予測にEPSが有用であることを示している.一方, 無症候性肥大型心筋症におけるEPSの位置づけは明らかではない.
著者
後藤 昌義 池田 佳津子
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.129-139, 1984

周知のように心臓拍動の本体は古くHippocrates (B.C.460-370) 以来の疑問であり, プネウマ説ほか諸説があったが, いずれも前近代的な学説であり, 実験科学的な追究はやはりHarvey (1628) の血液循環の発見以後に始まったといえよう。この17世紀以後の研究は心臓拍動の神経原説neurogenic theoryと筋原説myogenic theoryの論争をめぐって展開された。神経原説はWillis (1664) に始まるといわれ, 彼は心臓に至る神経を発見, 骨格筋におけると同様に心臓の収縮もこれを支配する神経の働きによると考えた。しかし一方, 骨格筋の収縮が筋の直接刺激でも出現することを見出したHaller (1754) は心臓へ還流する血液の伸展効果が心房拍動の原因であり, 心房収縮による心室の血液充満が心室収縮の原因と考え, いわゆる筋原説を提出した。<BR>Stannius (1852) がカエルの洞, 房, 室各部の結紮実験を行った頃は神経原説の最盛期であって, Claude Bernardが頸部交感神経の切断でウサギ耳血管の拡張を見出し, 血管収縮神経を発見した歴史的な年でもあり, Stanniusの実験結果も当時は静脈洞のRemakの神経細胞が自動能を支配し, 下位の神経節では自動能が弱いと, 現在の筋原説とは異なった神経原説で説明されていたようである。<BR>今世紀初めの田原 (1906) の房室結節, 刺激伝導系の発見, KeithとFlack (1907) の洞房結節の発見にひきつづき, 数多くの筋原説支持の研究があったが, CoraboeufとWeidmann (1949) の心筋へのマイクロ電極法の導入により, はじめて細胞レベルでの心筋自動能の筋原説が確証されたといえよう。以来, 細胞膜電位, 膜電位固定下の膜電流, 単一分離心筋における膜電位と膜電流, 単一イオンチャネルsingle channelの追究へと研究は飛躍的に発展し, 自動能の本態についても詳細な所見が明らかにされてきた。本総説では正所性または異所性自動能についての最近の進歩を紹介するとともに, その回顧と展望を試みたい。
著者
中居 賢司 平野 三千代 伊藤 忠一 宮川 朋久 加藤 政孝
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.173-179, 1988-04-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

ホルター心電図でST-Tを評価するために, (1) 限られた誘導数と胸部双極誘導に伴う問題, (2) 虚血性と非虚血性―特に体位性ST-T偏位の鑑別, (3) 24時間記録における意義と問題について検討した.ホルター心電図によるST-Tの評価として; (1) ST偏位は用いた誘導により異なり (CM5>CC5, m-II>m-aVF) , CM5誘導は不関電極の影響を受け新たなST偏位を生ずる可能性がある. (2) 体位性ST-T偏位の多くは瞬時に変化し, STトレンドグラムはBox型を呈する. (3) 虚血型ST偏位は60秒以上の経過を有し, STトレンドグラムはcrescendo-decrescendo型を呈する.ST偏位は用いた誘導および体位により異なる可能性があり, その規準化は難しい. (4) 虚血型ST偏位の判定および発生機序の評価には虚血時の心拍数の応答にも留意すべきである.今後, 記録方式を含め機器の改良, 誘導法の標準化が必要と考えられる.
著者
平尾 見三
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.199-201, 2011 (Released:2011-08-02)
参考文献数
13

心不全では,心筋の線維化とギャップ結合機能低下によって興奮波伝播速度の低下と不均一化が存在する.そのためNaチャネル遮断作用を有するI群抗不整脈薬はその陰性変力作用によりかえって心不全を悪化させる危険性があり,使用すべきでない.陰性変力作用が少なくK+チャネル遮断作用を有するベプリジル,アミオダロンなどの使用が推奨されるものの,基本的には,心不全例ごとに左室収縮能や合併する疾患を考慮し,最適な薬剤を選択することが重要である.この際,遅延造影MRIによる左房線維化の量的評価を含めた病態の把握が薬剤選択の決定に有用な可能性がある.
著者
白井 徹郎 笠尾 昌史 井上 清
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.284-290, 1997-05-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

心室性不整脈発生と自律神経機能, 特に交感神経活性との関連については以前から注目されているが, 自然発作時における交感神経活性の意義については未だ充分に明らかにされていない.そこで非持続性心室頻拍 (NSVT) およびtorsade de pointes (TDP) 出現前のRR時間および心拍変動を分析し, これら不整脈発生に及ぼす交感神経活1生の影響と予後との関連につき検討した.検討は1) NSVT84例においてNSVT1日出現回数, 最大連発数, 先行洞調律RR時間, 先先行洞調律QT時間, 連結時間等のNSVTに関連したあるいはNSVT出現に関連したHolter心電図所見と長期予後との関係, 2) NSVT21例のNSVT出現前における心拍変動スペクトラル解析からみた交感神経活性と予後との関連, 3) Holter心電図にて単形性NSVTとTDPを頻回に記録し得た二次性QT延長例での心拍変動とTDP発生との関連の3点につき行った.その結果NSVT84例中5例で心臓性急死 (SCD) を認め, これらの先行RR時間は特発性の予後良好例に比し有意に短く, 交感神経活1生優位の状態でNSVTが出現していたと推定された.NSVT出現前10分間でLow frequency power/High frequency power (LF/HF) 比が有意に上昇した交感神経関与群9例では, 非関与群12例に比しVTrateは有意に高く, SCDあるいは心室細動発生率が高い傾向にあった.いずれの検討においても予後不良例は陳1日性心筋梗塞あるいは拡張型心筋症の重症基礎心疾患を有していた.二次性QT延長例においてはVT出現前6心拍においてshort-long-shortサイクルを繰り返しつつその程度が強まるcascade現象を示し, 且つVT開始時のVTrateが高いとTDPになりやすい傾向を認めた.このVT開始時のVT rateの亢進は交感神経活性優位の状態を間接的に示していると考えられた.基礎に重症心疾患があり, NSVT発生に交感神経活性が関与している例でのVT rateは高く, 予後不良となる可能性が示唆された.二次性QT延長例ではcasoade現象を認め, VT開始時に交感神経活性優位の状態にあるとTDPが出現しやすいと考えられた.
著者
三田村 秀雄
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.205-212, 2015 (Released:2016-03-11)
参考文献数
28
被引用文献数
1

年間7万人を超える心臓突然死のほとんどは心室細動によって起こるが,その予防が困難である現在,頼れる救命法は除細動器の活用である.ハイリスクであることが固定していれば植込み型除細動器(ICD),その評価が未定な時期には着用型自動除細動器(WCD)が利用できるが,正確なリスク評価は決して容易でない.さらに,突然死最大の原因である急性冠症候群の例をはじめ,多くの症例は直前まで受診していないか,リスクを予知されていないため,現場で迅速な除細動を施すしか救命を保証する術はない.今や,目撃された心原性心停止に対して現場の市民が自動体外式除細動器(AED)を使えば,50%が救命可能な時代に入ったが,今後も不特定多数へのAED対応体制を充実させつつ,特定グループ,さらには個人への集中救命対応の推進が求められ,その成果が期待される.
著者
酒井 徳昭 松村 雅史
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.377-381, 2015 (Released:2015-07-27)
参考文献数
2

今回,われわれは心室期外収縮(premature ventricular contraction:PVC)後の心房ペーシングが自己のR波と重なることで生じる,心室の機能的アンダーセンシングに伴うT波上の心室ペーシング(Spike on T)を経験した.心室イベント後心房不応期(post ventricular atrial refractory period:PVARP)の延長は,逆行性室房伝導によるペースメーカ介在頻拍を防止することができる反面,最大追跡レートを制限してしまう.このため,PVCセンシング後のPVARPを1回のみ延長させる機能がある.このPVC後のPVARP自動延長アルゴリズムは,各メーカーによる機能に大差はない.しかし,延長されたPVARP内でP波をセンシングした後のペースメーカの反応はメーカーによって大きく異なり,その違いが今回のわれわれの経験したSpike on Tの要因の一つであることがわかった.PVC後の心房ペーシングが自己のR波と重なることで生ずるSpike on Tを回避するには,使用するデバイスのPVC反応の違いについて十分理解した上で,プログラムを行う必要性があると考えられた.
著者
秋山 俊雄
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.493-511, 2011 (Released:2015-06-10)
参考文献数
42
被引用文献数
5 1
著者
清水 渉 小山 卓 山田 優子 岡村 英夫 野田 崇 里見 和浩 須山 和弘 相原 直彦 鎌倉 史郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.392-396, 2009

QT短縮症候群(SQTS)は,器質的心疾患をもたないにもかかわらずQT時間が修正QT(QTc)時間で300~320msec未満と短く,心室細動(VF)から突然死を発症する症候群である.当院で有症候性のSQTS症例を4例経験した.全例男性で,3例でVFが確認され,1例では失神発作を認めた.12誘導心電図上,安静時QTc時間は平均327msecと短縮しており,全例で後壁および/または下壁誘導でスラー型またはノッチ型のJ波(早期再分極)を認めた.加算平均心電図では全例で遅延電位は認めず,電気生理学的検査を施行した2例では,いずれも右室の有効不応期は短縮していたが,VFは誘発されなかった.薬物負荷試験では,クラスIII群のニフェカラントとクラスIa群のジソピラミドの静注,およびキニジンの内服でQTc時間の延長を認めた.先天性QT延長症候群の原因遺伝子(LQT1,2,3,5,6,7)上に変異は認めなかった.全例で植込み型除細動器(ICD)が植込まれ,1例で3ヵ月後にVFの再発を認めた.
著者
香坂 俊
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.350-353, 2010 (Released:2011-03-04)
参考文献数
7

米国において,アミオダロン静注薬は1995年に食品医薬品局(FDA)の認可を受けている.その後,2000年にAdvanced Cardiac Life Support(ACLS)のプロトコールに採用されたのを契機として,米国各地の救急医療の場で普及するに至った.ACLSのプロトコールは,米国ではすべての研修医が修得を義務づけられているため,アミオダロン静注薬の効用は救急蘇生に携わる各科の医師・研修医の間にも広く知られている.プロトコール上は,心停止に伴い心室頻拍・細動(VT/VF)が遷延している場合にアミオダロン300mgの静注投与が推奨されているが,実際には急変時当初にVT/VFが認められずとも,心停止から次第にVT/VFへ移行するようなケースでも用いられる.このように米国の救急医療の現場でアミオダロンは不可欠な薬剤とみなされており,その使用頻度は極めて高いのが現状である.
著者
関口 守衛
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.250-254, 1999-05-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

不整脈, 伝導障害を主徴とする心筋症 (EOM) が存在するとの想定のもとに573症例について心内膜心筋生検を施行, その中で右心房心内膜心筋生検例を行った27症例中13例 (48%) に有意な心筋病変を認め, 右心室には病変が著明でなかったことから心房心筋症atrial cardiology (ACM) という概念を提唱するに至った自主研究内容を紹介した.ACMでは何故心房に病変の局在があるのか?遺伝子異常が関係あるのか?など今後の研究課題であることを強調した.
著者
矢永 尚士
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.59-66, 1992-01-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

最近, Holter心電図のR-R間隔時系列変化のスペクトル解析により, 自律神経活動評価を行う試みが盛んである.これは, 心臓が自律神経の影響を受け, R-R間隔変動は自律神経活動の表現と考えられることに基づいている.一般に心拍変動性の低下は副交感神経機能低下を表し, スペクトル解析における低周波成分 (LF) は副交感神経に修飾された交感神経活動を, 高周波成分 (HF) は副交感神経活動を, LF/HF比は両者のバランスを表すと考えられている.しかしスペクトル解析の成績は, サンプリング領域・速度, 不整脈やノイズの処理法, 窓関数などの工学的条件, 体位, 覚醒・眠, 食事などの生物学的条件により左右される.さらにR-R間隔は自律神経, 受容体, 血圧, 末梢血管抵抗, 心拍出量, 圧反射, 呼吸, 中枢を含む心臓血管調節回路の一要素であり, 洞結節自体の異常によっても変動する.したがってR-R間隔変動による自律神経活動評価は, 心臓血管調節回路の機能の評価でもある.