著者
北風 政史 真田 昌爾 浅沼 博司 野出 孝一 南野 哲男 高島 成二 中篠 光章 篠崎 芳郎 盛 英三 葛谷 恒彦 堀 正二
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.103-111, 2000-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
24

先行する短時間心筋虚血 (ischemic preconditioning) は, 長時間虚血により生じる心筋壊死サイズを縮小する.本研究では, 麻酔開胸イヌを用いそのメカニズムを検討した.その結果, 1) ischemic preconditioningによる心筋梗塞サイズ縮小効果には, アデノシン産生酵素活性化が関与する, 2) protein kinase C活性化に加えてATP感受性K+チャネル開口がアデノシン産生酵素活性化に関与する, 3) 細胞膜・ミトコンドリアに存在するATP感受性K+チヤネルが独立して相加的にischemic preconditioningに関与する, ことが明らかになった.以上の結果より, ischemic preconditioningによる心筋保護作用にはアデノシンーアデノシン産生酵素・protein kinase C・ATP感受性K+チャネル開口が連関している可能性が示された.
著者
河村 剛史 柴田 仁太郎 和田 寿郎
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.675-682, 1984-11-01 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

Rosenbaumらの左脚後枝ブロックの心電図診断基準が, 左脚後枝ブロック単独のものか, あるいは右脚本幹ブロックを合併したものかを明確にするために, カニクイザル8頭を用いて, 実験的に左脚後枝群障害, 次いで右脚本幹障害を作成し, 心表面マッピング, ベクトル心電図を用いて検討を加えた。早期興奮部位であった左室後面が左脚後枝障害にて最終興奮部位に変わり, この部位に一致して最大QRSベクトルは左後下方に偏位した。右脚本幹障害が加わると, 最終興奮部位は右室房室間溝側に変わり, 最大QRSベクトルは著明な右軸偏位を示した。従って, Rosenbaumらの左脚後枝ブロックの診断基準は, 右脚本幹ブロックを合併した場合の基準であり, 左脚後枝ブロック単独では右軸偏位は示さず, むしろ後方偏位を示した。
著者
遠藤 裕久 戸叶 隆司 清水 孝史 和田 英樹 土井 信一郎 塩澤 知之 小西 宏和 比企 優 華藤 芳輝 久保田 直純 田村 浩 尾藤 史康 木津 京子 諏訪 哲 住吉 正孝 中里 祐二 代田 浩之
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.436-441, 2013 (Released:2015-07-16)
参考文献数
7

症例は,84歳女性.高血圧症に対して,2011年4月からアゼルニジピン16mg/日の内服が開始された.同年5月14日,めまい・眼前暗黒感が出現し当院受診,心電図上洞停止,心拍数40/分前後の房室接合部調律がみられ,入院となった.ただちにアゼルニジピンを中止,翌日には心拍数75/分の洞調律に回復した.後日施行した電気生理学的検査では,200/分のオーバードライブ洞抑制試験において洞結節回復時間が3,065msecと延長を認めた.また来院時のアゼルニジピン血中濃度は,7.89ng/mlと通常の治療域であった.ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬による症候性徐脈の症例報告は少ない.今回われわれは,潜在性の洞結節機能不全がアゼルニジピンにより顕在化し,著明な症候性徐脈を呈した1例を経験したため,報告する.
著者
中山 仁
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.99-105, 1995-03-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

電位依存性イオンチャネルのいくつかが相次いでクローニングされたことが引き金となって, 精力的な研究が展開された.その結果, チャネル分子の機能をその構造から論じることが可能になりつつある.「膜電位に依存したチャネルの開閉によって, 特定のイオンが選択的に膜を透過する」と特徴づけられる電位依存性イオンチャネルの基本機能は, 電位センサー部, 活性化ゲート部, 不活性化ゲート部, およびイオン選択性フィルター部によって担われると考えられるが, これらの構造部がどんなものか, 次第に明らかになってきた.またこれらの構造部の一部は, Ca拮抗薬や神経毒の結合部位と密接なつながりをもつこともわかってきた.この分野の進歩のようすを概説する.
著者
丸山 徹 深田 光敬
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.40-43, 2015 (Released:2015-08-03)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1
著者
清水 昭彦 山縣 俊彦 上山 剛 早野 智子 立野 博也 江里 正弘 大村 昌人 田村 健司 松崎 益徳
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.195-202, 1998
被引用文献数
1

心房細動の発生機序を検討するために, 右房に期外刺激法と洞調律時の心房内マッピング, P波同期加算平均心電図を行い, 発作性心房細動例 (paf) の心房筋の電気生理学的特性を検討した.高位右房期外刺激で反復性心房応答 (RAF) と最大伝導遅延を求めると, RAF誘発例の83%の有効不応期 (ERP) は250ms以下でかつ最大伝導遅延は40ms以上であった.ジソピラマイドは有意にERPを延長させ, 逆に, イソプロテレノールは有意にERPを短縮させた.両薬剤ともに最大伝導遅延を短縮させて, RAFの誘発は抑制された.心房内マッピングとP波同期加算平均心電図を行った症例では, paf群は対照と比較して有意に異常心房電位数が多く, フィルター化P波持続時間は延長し, P波初期および終末期ベクトルマグニチュードは低値であった.<BR>心房細動の発生には, 心房細動の基質, 心房筋ERPの短縮と伝導遅延が重要である.<BR>心房細動の発生機序に関しては, 今世紀の前半よリリエントリーと自動能亢進の問で長く論争が行なわれている.最近でも, fooal atrial fibrillationの報告が行なわれているし, 心房細動の一部の機序に撃発活動も考えられている.リエントリーとしては, Moeらの唱えたmultiple wavelet説が有力であり, 解剖学的欠損を持たずにリエントリーの中心に向かう興奮波によって作られた機能的ブロックの形成によって興奮波が回旋する"leading circle" (図1) 説や興奮が螺旋状に回旋してその中心の核が移動するSplral wave説がある.以上, 心房細動の発生機序は種々考えられているが, 現在の臨床レベルでこれらの電気生理学的現象を直接証明することは不可能であり, 通常は心房細動例と対照例の心房内マツピングやP波同期加算平均心電図あるいは心房期外刺激による心房筋の反応を検討することで, 心房細動の心房筋の電気生理学的特性が検討され, 間接的に心房細動が起こる基質の存在が調べられている.
著者
本間 覚 山口 巖
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.31-37, 2002-01-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
6
著者
神谷 香一郎
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.9-14, 2004-01-23 (Released:2010-09-09)
参考文献数
29

β遮断薬が心不全患者の予後を改善することは, 大規模臨床試験で明らかにされている.β遮断薬の作用は多岐にわたっており, 心肥大, 線維化, アポトーシス, 酸化ストレス, レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系などを介して心臓リモデリングを抑制するほかに, 抗不整脈作用も関与すると考えられるがその詳細は明らかでない, β遮断薬の抗不整脈作用は, 当然のことながらその発生機序にβ受容体刺激が関与する不整脈に対して発揮される, β1受容体刺激は, アデニルシクラーゼ・サイクリックAMP系そしてプロテインキナーゼAを活性化する.その結果, Ca2+チヤネルのみならず, IKsチヤネルそしてIfチャネルなど多くのイオンチャネルをリン酸化してこれらのチャネルを介する電流を増加させる.Ca2+電流の増大は房室結節やプルキンエ線維の自動能を亢進し, 心房や心室で遅延および早期後脱分極をもたらす.自動能の亢進にはIf電流の増大も関与するとされている.β遮断薬はこれらの自動能亢進の責任イオン電流を正常化することにより抗不整脈作用を示す.リエントリー性不整脈に対しても, 房室結節と副伝導路を含む大きなリエントリー回路などの場合には抗不整脈作用を示す.またQT延長も認められることからIII群抗不整脈薬作用も期待される.特にカルベジロールは, β遮断薬としての上記クラス作用のほかに直接的にイオンチヤネルを抑制する可能性がある.本稿では, 心不全や不整脈に対するβ遮断薬の薬効について, β遮断薬に共通するクラス作用, そしてカルベジロール固有のイオンチャネルへの急性・慢性作用, に分けて述べる.
著者
嶋根 章 岡嶋 克則 木内 邦彦 横井 公宣 寺西 仁 青木 恒介 千村 美里 津端 英雄 斎田 天 宮田 大嗣 高橋 八大 鳥羽 敬義 大石 醒悟 三好 直貴 月城 泰栄 高谷 具史 小林 征一 山田 愼一郎 谷口 泰代 矢坂 義則 林 孝俊 横山 光宏
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.421-428, 2014 (Released:2015-07-27)
参考文献数
15

植込み型除細動器(ICD)の心臓突然死予防効果は,多くの大規模臨床試験で実証されてきた.しかしながら,ICDのショック作動は不適切作動でさえも,予後の悪化と関連すると報告されている.ICDのショック作動の予後に対する影響を明らかにするため,器質的心疾患を有するICD症例253例〔男性79%,平均年齢63±11歳,1次予防36%,平均左室駆出率(LVEF)38±14%〕につき検討した.追跡期間(中央値1,428日)中,適切,不適切ショック作動ともに62例(24.5%)の症例で認め,55例が死亡した(心臓死31例).多変量解析で年齢(ハザード比1.044,p=0.007),LVEF(ハザード比0.969,p=0.011),血清クレアチニン値(ハザード比1.867,p<0.001),心房細動あるいは心房頻拍の既往(ハザード比2.093,p=0.012),適切ショック作動(ハザード比2.777,p=0.001)が全死亡の独立した予測因子であった.一方で,不適切ショック作動は全死亡と関連しなかった.ICDのショック作動が直接生命予後に与える影響は,少ないと考えられる.適切ショック作動は,心室不整脈の再発や新規発症を示す,生命予後不良のマーカーと考えられる.
著者
小田切 史徳 中里 祐二 秋山 泰利 島野 寛也 高野 梨絵 木村 友紀 塩澤 知之 田渕 晴名 林 英守 関田 学 戸叶 隆司 住吉 正孝 代田 浩之
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.165-175, 2018-11-02 (Released:2018-12-28)
参考文献数
28

皮下植込み型除細動器(subcutaneous implantable cardioverter defibrillator : S-ICD)の有効性と安全性は,すでに海外の臨床試験データから示されているが,これらのデータに本邦での使用経験は含まれていない.今回,当施設におけるS-ICDの初期使用経験について報告する.対象は2016年3月から9月までに当施設でS-ICD植込みを行った7例と,対照として経静脈的植込み型除細動器(transvenous implantable cardioverter defibrillator : TV-ICD)植込みを行った10例である.患者背景,原疾患,検査所見,既往歴,内服薬,手術方法,作動状況などについて,両群で比較検討した.植込み術を施行された17例(S-ICD 7例およびTV-ICD 10例)を213±86(127〜312)日後まで観察した.S-ICD植込みを行った7例は全例男性で,平均年齢は46.3±14.1(34〜68)歳,BMI(body mass index)は23.3±2.6(20.7〜27.9)kg/m2であった.一次予防目的が4例,二次予防目的が3例であった.また,原疾患に関しては,虚血性心筋症2例,非虚血性心筋症2例,Brugada症候群などを含むその他が3例であった.S-ICD植込み群は,7例全例で術中に除細動テストを施行し,そのうちの1例はシステム位置の再調整を要した.観察期間内で,S-ICD植込み群およびTV-ICD植込み群ともに適切作動は見られなかったが,S-ICD植込み群において,2例の不適切作動が見られた.有害事象については,TV-ICD植込み群と有意差は認められなかった.S-ICDは,植込み時に本体・リードの位置に注意を要するものの,短時間で安全に植込み可能であった.当施設で経験した2例の不適切作動は,心房粗動波とノイズのいずれもオーバーセンシングが原因と考えられ,適切なスクリーニング方法,治療ゾーンの調整やセンシングベクトルの選択には今後の検討を要すると考えられた.(心電図,2018;38:165~175)
著者
小野 克重
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.118-125, 2017-07-06 (Released:2018-04-16)
参考文献数
17

心電図におけるJ点とは,QRS群の終末部分とST部分の始まりの接合部(Junction)を指す.このJ点は,ときにnotch,またはslurとして観察され,このnotch(slur)全体をJ波と呼ぶ.心電図のST部分は,心室筋の脱分極が終了し再分極が始まるまでの間に,すべての心室筋がほぼ等電位にある時間帯であり,活動電位の第1~2相に相当する.ST部分は基線上に水平に位置することが原則とされるが,実際の心電図では脱分極の終了時点と再分極の開始時点が重なり合っている場合が多く,ST部分が基線に一致しないことも多い.このSTの上昇が1mm未満であるときは有意な所見であると見なされないが,心筋梗塞や心筋症の診断が否定されているにもかかわらず,著明なST上昇が認められる場合がある.この現象は心筋の早期再分極によるものとされ,早期再分極症候群(Early Repolarization Syndrome)と呼ばれる.Wasserburgerはその判断基準として,(1)ST接合部での1~4mmのST上昇,(2)凹状ST,(3)QRS波下行脚のnotch,あるいはslur,(4)ST上昇の認められる誘導でのT波増高所見,をあげている1).この早期再分極症候群に認められるQRS波下行脚のnotchはJ点そのものであるが,低体温症などの際に出現するOsborn波2)と極めて類似しており,両者は同一機序によって説明されるものと考えられている.本稿では,心電図のJ波の成り立ちを心筋の活動電位と膜電流異常によって概説する.
著者
佐藤 伸之
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.126-138, 2017-07-06 (Released:2018-04-16)
参考文献数
35

早期再分極症候群の発作誘発因子については,いまだ十分に明らかにされていない.低K+血症がBrugada症候群の発作誘発因子になりうることは知られていたが,電解質異常と早期再分極症候群,J波との関連性についての報告はほとんどなされていなかった.われわれは,低K+血症が心室細動(VF)発作の誘因と考えられた早期再分極の1症例を,続いてステロイド治療がVFの誘発因子と考えられた早期再分極症候群の3症例を報告した.それらのなかには,抗アルドステロン薬を長期投与したことにより,再発が抑制されたと推察される症例も存在した.また,われわれはJ波症候群において心電図上の再分極指標と血清K+, Ca2+, Mg+濃度との関連を検討した.その結果,VF発作を呈したJ波症候群では血清Mg+とQT dispersionの間に負の相関が認められ,Tpeak-Tend dispersion,activation recovery interval dispersionと血清Mg+の間にも負の相関傾向が認められた.以上から,早期再分極症候群のVF発作誘発因子として電解質異常が一部関与する可能性が示唆された.
著者
神谷 香一郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.337-343, 2010 (Released:2011-03-04)
参考文献数
19

不整脈薬物治療に関する注目すべき最近の話題は,我が国でもアミオダロン静注薬が承認され(2007年),経口投与と静脈内投与双方の使用が可能になったことである.日本循環器学会による「不整脈薬物治療ガイドライン(2009年改訂版)」においても,心室頻拍・細動などの重症心室不整脈に使用すべき薬剤として,アミオダロンが高い優先順位で記載されている.アミオダロンの心臓薬理作用の特徴は,多彩な分子標的を持つこと,および急性作用と長期作用が異なることである.静脈内投与では急性作用が中心で,電位依存性チャネルとしてはNa+チャネル,L型Ca2+チャネル,および遅延整流K+チャネル(特にIKr)の遮断が重要である.ウサギ灌流心を用いた光学マッピング実験では,心室に誘発した渦巻き型の旋回興奮(スパイラル・リエントリー)に対して,アミオダロンがリエントリーの機能的ブロックラインを延長させて旋回速度を遅くするとともに旋回中心のドリフトをもたらし,心室頻拍の早期停止を促すことが判明した.このようなスパイラルダイナミクスの変化は,アミオダロン急性作用のうちのNa+チャネル遮断とIKrチャネル遮断の複合効果によると考えられる.
著者
中川 幹子 江崎 かおり 宮崎 寛子 手嶋 泰士 油布 邦夫 高橋 尚彦 犀川 哲典
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.292-299, 2012 (Released:2015-07-16)
参考文献数
21
被引用文献数
3

早期再分極に見られる心電図所見の特徴は,J点の上昇およびJ波(QRS終末部に見られるノッチもしくはスラー)の存在である.J点上昇とJ波では出現頻度や出現誘導が異なっており,臨床的意義は同一ではないと考えられる.すなわち,健常若年男性に見られるJ点上昇はV2~V4誘導で高率に認められるのに対し,J波は主に下壁誘導とV4~V6誘導に出現する.われわれの検討では,J波は男性の12.0%,女性の9.3%に認められ,若年群と高齢群にピークを有する2峰性パターンを示した.ホルター心電図を用いた検討によると,健常人においてもJ波は夜間に増高する日内変動を示し,心拍数や自律神経活動に影響を受けることが示された.加算平均心電図を用いた検討では,J波はQRS内部に含まれていた.また,心エコー図上,左室内に心室中隔から乳頭筋に付着する偽腱索をもつ症例では,J波の合併率が有意に高く,これらの心室内構造物がJ波や不整脈の発生と関連がある可能性が示唆された.