著者
古賀 義則
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.132-140, 2001-03-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16
被引用文献数
2

巨大陰性T波 (GNT) は心尖部肥大型心筋症が認識される端緒となった心電図所見で, 心尖部壁厚とGNTの深さが良く相関することから心尖部の限局性肥厚を反映した所見と考えられている.心電学的には心尖部での再分極過程が遅延するために心尖部から心基部 (右上方) へ向かうTベクトルが増大しGNTを形成すると考えられる.この再分極過程の遅延の機序として心尖部への興奮伝播が遅れることが体表面電位図による検討で示されているが, 活動電位持続時間についての電気生理学的検討はない.しかし肥大した心筋細胞や心不全や心筋症による病的心筋細胞では活動電位持続時間が延長すると報告されている.一方BMIPP心筋シンチ像では心尖部は欠損像を示し, 長期観察例ではGNTはR波の減高と共に消失し, 心筋の変性脱落が進行すると考えられる.したがって本症の心尖部心筋細胞は肥大した病的細胞と考えられ活動電位持続時間が延長していることが推測される.この結果心尖部の再分極過程が遅延しGNTが形成されると考えられるが, 今後は細胞レベルの電気生理学的検討やイオンチヤネルの研究を期待したい.
著者
蒔田 直昌
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.190-192, 2012 (Released:2015-07-01)
参考文献数
13

先天性QT延長症候群(LQTS)は,心電図上にQT時間の延長とtorsade de pointes(TdP)と呼ばれる重症心室性不整脈を生じて,失神や突然死をきたしうる疾患で,現在までに13の遺伝子型(LQT1~13)が報告されている.このうちLQT1,LQT2,LQT3の3つの遺伝子型の頻度が全体の75%を占めており,それぞれ原因遺伝子であるKCNQ1,KCNH2,SCN5Aの異常が報告されている.先天性LQTSでは,あらかじめ遺伝子型を知ることが,TdPの予防および治療において重要であり,鑑別にはエピネフリン負荷試験が有用である.遺伝子型特異的治療として,LQT1ならびにLQT2では,β遮断薬が第一選択であり,LQT3ではIb群のNa+チャネル遮断薬(メキシレチン)の投与やペースメーカ治療が有用とされている。

4 0 0 0 OA P波の多型

著者
有田 卓人 山下 武志
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.170-173, 2022-09-30 (Released:2022-10-09)
参考文献数
1
著者
淀川 顕司
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.103-108, 2022-06-14 (Released:2022-06-24)
参考文献数
6

心電図でのT波は,心室の興奮消退(再分極)を反映しており,活動電位持続時間に較差が生じる状態や心室興奮伝播の変動の影響を受け,陰性・2相性・平坦化等,様々に変化する.心電図T波の変化は,一次性変化と二次性変化に分類される.一次性変化は,心筋虚血や心筋梗塞,心肥大などの病態に伴って心室の各部で活動電位持続時間に較差が生じる状態で認められるT波変化である.一方,二次性変化は,心室期外収縮や脚ブロック,WPW症候群などでみられる心室興奮伝播の変化に基づくST-T波形変化である.臨床的に重要なのは,高カリウムや心筋梗塞急性期におけるT波増高,肺塞栓における陰性T波,虚血性心疾患における2相性・陰性T波,肥大型心筋症・脳血管障害やたこつぼ型心筋症に伴う巨大陰性T波である.疾患・病態ごとのT波の特徴をおさえておくことが重要である.
著者
小谷 英太郎 新 博次 井上 博 奥村 謙 山下 武志
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.195-208, 2013 (Released:2015-07-27)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

心房細動症例の抗凝固療法において,ブコロームがワルファリンの減量目的にしばしば併用される.しかし,我が国のワルファリン治療におけるブコローム併用の現状と実際のワルファリン投与量に与える影響に関する全国規模での検討はなされていない.そこで,J-RHYTHM Registry登録時にワルファリン投与中であった6,932例のブコローム併用の有無を調査し,その施設別および地区別のブコローム併用率とワルファリン投与量との関連を検討した.ブコロームは158施設中64施設(40.5%),計297例(4.3%)に併用され,ブコローム併用例のワルファリン投与量は非併用例の約半量であり,有意な減量効果を認めた(1.4±0.7mg/日vs. 2.9±0.4mg/日,p<0.001).各施設のブコローム併用率は施設間で大きな差があり(0~88.9%),施設別平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.59,p<0.001).地区別の併用率は,北越地区が27.3%と最も高く,九州地区と中国地区は1%未満と低率であった.全国10地区間に有意な差を認め(p<0.001),地区平均ワルファリン投与量と負の相関を認めた(r=-0.71,p=0.021).ブコローム併用療法は,有意なワルファリン減量効果を認め,その併用率には大きな施設間差,地区差が存在した.
著者
伊藤 敦彦 羽田 勝征 高橋 尚彦 犀川 哲典 山下 武志 安喰 恒輔 速水 紀幸 稲葉 秀子 浅田 健一 村川 裕二
出版者
Japanese Heart Rhythm Society
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.640-644, 2002-11-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7

心房細動を有する患者ではしばしば心房粗動 (AFL) を合併する, 発作性心房細動 (PAF) の薬物治療において, Ic群薬は他のI群薬に比べAFLの出現率が高いか否かを検討した.重篤な器質的心疾患や心機能低下を欠く患者179人 (平均年齢58±11歳) の薬物治療中19人にAFLが認められた, 性別, 年齢, 左房径, あるいはβ遮断薬やカルシウム拮抗薬の併用はAFLが記録される割合と関連はなかった.Ia, b群薬とIc群薬では統計的には有意ではないが, 後者の投与中に多くのAFLが記録された (8%対15%) , 投薬前にすでにAFLが記録されている症例で治療中にAFLを認める頻度は52% (12/23) と高く, AFLの既往がない患者での4% (7/156) を大きく上回っていた (p<0.0001) .また, AFL既往例に限れば, Ic群薬投与中はIa, b群薬投与中よりAFLを認める症例が多かった (36%対78%) .以上より, PAF治療中のAFLの出現には治療前のAFLの既往が大きな要因であるが, Ic群薬投与中により多くの症例でAFLが出現する傾向があった.
著者
泉 千尋 藤森 一真 金森 貴洋 桑原 洋平 西谷 彰紘 鈴木 学 菅原 誠一 太田 真之 佐藤 宏行 林 健太郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.173-182, 2021-12-23 (Released:2021-12-24)
参考文献数
11

心房性頻脈性不整脈(AT/AF)のburdenを減少させる機能として,第2世代心房抗頻拍ペーシング(A-ATP)の有用性が報告されているが,導入後に治療が有効となる症例の特徴は明らかでない.そこでわれわれは,A-ATP(Reactive ATP, メドトロニック社製)作動症例22名の患者背景,心内心電図,12誘導心電図,エコー所見,BNPから治療が有効となる因子を検討した.AT/AF burdenの50%以上減少をA-ATP有効と定義し, AT/AF burden<5%の症例とAT/AFのエピソードが1件のみの症例は治療有効性の判断が困難なため,10名を除外した.有効群(5名)は無効群(7名)と比較して,心内AT/AF average tachycardia cycle length(AvCL)>300ms(28.6% vs 5.2%,p<0.05)および規則的なAT/AF(71.9% vs 48.5%,p<0.05)が多く,AT/AFに対するカテーテルアブレーション(CA)またはMaze手術既往が多かった(80% vs 14%,p<0.02).また,12誘導心電図において有効群はf波のCLが無効群より延長していた(220.5ms vs 141.4ms,p<0.05).A-ATPは延長したAT/AF AvCL,または規則的なAT/AF症例で有効であり,CAやMaze手術の既往,12誘導心電図のf波CL延長が植込み前に観察可能な有効性の予測因子として有用な可能性がある.
著者
江花 有亮
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.95-99, 2021-06-28 (Released:2021-07-02)
参考文献数
2

2021年3月末に「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(医学系指針)」と「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(ゲノム指針)」を統合した「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」が公布され,6月30日から施行される.新指針では医学系指針にゲノム指針の記載を追記するにとどまらず,新しい用語の定義や研究実施の建て付けなどが変わった.本稿では,主な改正点について述べる.
著者
中川 幹子 江崎 かおり 江畑 有希 宮崎 寛子 手嶋 泰之 篠原 徹二 油布 邦夫 高橋 尚彦 犀川 哲典
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.360-367, 2015 (Released:2015-07-27)
参考文献数
21
被引用文献数
1

乳頭筋や偽腱索などの心室内構造物は,不整脈の発生と密接な関係があり,これらが心室不整脈に対する高周波カテーテルアブレーションの際に,治療の標的部位となることが報告されている.われわれは,心エコー図検査で左室内に偽腱索や乳頭筋肥大を認めた症例における心電図所見の特徴,特にJ波との関係を検討した.偽腱索を有する群は有さない群に比し,J波の出現頻度が有意に高く,QRS間隔が有意に長かった.偽腱索をその付着部位により4型に分類した結果,特に心室中隔と乳頭筋の間に付着する2つの型では,J波の出現頻度が高率であった.また,健常若年男性を対象にした前向き検討でも同様の結果が得られ,加算平均心電図記録で測定したfiltered-QRS durationも有意に長かった.一方,乳頭筋肥大を有する症例は有さない群に比し,J波の合併率が有意に大きく,QRS間隔,QTcおよびJTc時間が有意に長かった.偽腱索や乳頭筋などの心室内構造物が,J波の出現や不整脈の発生と関連がある可能性が示唆された.
著者
泉田 直己 浅野 優 保崎 純郎 川野 誠子 沢登 徹 平岡 昌和
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.679-686, 1997-11-25 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

QT時間延長児の重症不整脈の危険度を明らかにするために, その再分極の不均一性の指標としてactivation reoovery interval (ARI) のdispersionを失神の既往のあるJervell and Lange-Nielsen症候群例と失神のない低力ルシウム血症によるQT延長児で調べ, 同年代の正常例と比較した.ARlは, 体表面87点から記録した心電図波形の一次微分のQRS区間での最小点とSTT区間でのdV/dtの最大点間の時間とし, 全体での最長値と最短値の差をARIのdispersionとした.ARI値の分布パターンは正常例とQT延長例のいずれもほぼ同様のパターンを示したがARI disperlionは失神発作のあるQT延長例で明らかに高値を示した.この結果は, 心室性不整脈による失神発作があるQT延長例での再分極の不均一性の増大と一致するものと考えられた.ARI dispersionは小児QT延長例における失神の危険度の判定因子として利用できる可能性が示された.
著者
小野 克重
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-19, 2010 (Released:2010-07-14)
参考文献数
36
被引用文献数
1

Vaughan-Williams分類第4群に属するCa拮抗薬は,主に電位依存性L型Ca2+チャネルに結合してCa2+電流を抑制する.このため,Ca2+電流依存性興奮組織の洞房結節や房室結節における自動能の亢進もしくはこの部位を回路の一部とするリエントリー性不整脈に対しCa拮抗薬は有効である.撃発活動(triggered activity)とは活動電位の再分極相,あるいはその直後に生じる小さな膜電位振動から発生する単発,あるいは反復性の興奮で,活動電位持続時間が延長している時や細胞内Ca2+過負荷が生じている病的条件で起こる.Ca拮抗薬は撃発活動に対して顕著にこれを抑制する.抗不整脈作用を有するCa拮抗薬は,ベラパミル(フェニルアルキラミン系)とジルチアゼム(ベンゾチアゼピン系)に限られ,通常降圧剤として用いられるジヒドロピリジン系Ca拮抗薬は血管選択性が強いために心臓作用は期待できない.一方,Vaughan-Williams分類では抗不整脈薬に分類されていないが,アデノシンやATP(アデノシン三リン酸)は受容体を介した心筋細胞外からの作用によって洞房結節の自動能を抑制する(陰性変時作用;negative chronotropic effect)とともに,房室伝導を抑える(陰性変伝導作用;negative dronotropic effect).また,心室筋に対しては間接作用(抗β受容体作用)によって電位依存性L型Ca2+チャネルを抑制する.血管内に投与されたATPは直ちに代謝を受けてアデノシンに変換されるが,それまでの間はATPとしての作用と変換後のアデノシンとしての両作用で心筋や血管機能を調節し,不整脈の診断や治療に欠かせない.本章では,Ca2+チャネルとCa拮抗薬の薬理作用,さらにATPとアデノシンの作用機序を概説する.
著者
清水 渉 大江 透 金子 敬子 高木 洋 相原 直彦 鎌倉 史郎 松久 茂久雄 佐藤 磐男 下村 克朗
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.773-778, 1988-11-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

同一心電図上でデルタ波の出現と消失を認める間歇性WPW症候群35例の臨床電気生理学的特徴を検討した.心房早期刺激法による房室伝導曲線パターンは一様でなく, 顕在性WPW症候群に類似するもの (I群) , 基本周期でデルタ波を認め, 早期刺激で一旦デルタ波が消失するが, さらに短くすると再び出現し, 最後に再び消失するもの (II群) , 潜在性WPW症候群に類似するもの (III群) , 基本周期でデルタ波を認めないが, 早期刺激でデルタ波が出現し, 最後に再び消失するもの (IV群) の4群に分類された.顕在性WPW症候群類似のI群や, いわゆるsupernormal conductionを認めたII, IV群の副伝導路順行性の有効不応期は長かった.III群は電気生理学的検査後にデルタ波の出現と消失を認めた症例もあり, 潜在性WPW症候群との関連については今後の検討が必要と思われた.以上の電気生理学的特徴がどのように臨床上のデルタ波の出現と消失に関与するかは今後さらに検討を要する問題である.
著者
志賀 剛
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.354-358, 2010 (Released:2011-03-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

アミオダロン静注薬は,生物学的利用率(吸収率)が低い経口薬と異なり,確実な薬物投与を可能にした.しかし,静注薬による急性期治療から経口薬による維持療法へ移行する際に,双方の薬物動態の差異がアミオダロンの抗不整脈効果に影響を及ぼす可能性がある.経口薬によるアミオダロン治療を導入する場合,早期の効果を得るために400mg/日の初期負荷投与を14日間行うことが多い.この背景には,アミオダロンのみならず薬効の一部をなす活性代謝物であるデスエチルアミオダロンも重要な役割を担っている.2日間(48時間)の持続静注から経口薬維持量200mg/日に移行すると,アミオダロン血中濃度は大きく低下し,デスエチルアミオダロンも検出されなかった.一方,4日間(96時間)の持続静注を行うと3日目以降にデスエチルアミオダロンが検出され,その後経口薬維持量200mg/日に移行してもその濃度は維持される.抗不整脈効果が維持され,4日間(96時間)以上の持続静注を行った場合は,そのまま経口薬200mg/日による維持療法への移行が可能と思われる.しかし,静注期間が短い場合には,経口薬400mg/日による負荷投与を一定期間行ったうえで,維持療法へ移行することが必要と考える.
著者
井川 修
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.151-157, 2010 (Released:2010-12-28)
参考文献数
5
著者
園田 桂子 大野 聖子 堀江 稔
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.5-15, 2020-03-05 (Released:2020-09-12)
参考文献数
17

SCN5Aは心臓ナトリウムチャネルをコードする遺伝子である.Brugada症候群(BrS)の遺伝子変異同定率は20%程度でしかないが,SCN5A変異はその大部分を占める.一方,様々な疾患とコピー数多型(CNV)との関連性が報告されているが,BrSでは2例の報告しかなく,アジア人では検討されていない.そこで,われわれは有症候性もしくは家族歴のある日本人BrS患者151人を対象とし,SCN5Aのサンガー法によるシークエンス解析とMLPA法によるCNVの検出を施行した.サンガー法により,20人の発端者にSCN5A変異を同定した.MLPA法は140人で結果を得ることができ,そのうち4人に各々異なるCNVを同定した(欠失3人,重複1人).4人中3人は致死性不整脈イベントを有しており,平均診断年齢は23±14歳と若年であった.安静時12誘導心電図では4人ともPQ時間は延長し,QRS幅は正常上限であった.これら4人の臨床像は,蛋白生成が減少するtruncating変異や,ナトリウム電流が著明に減少するミスセンス変異を有する患者群と類似していた.SCN5AのCNVは,有症候性もしくは家族歴のあるBrS発端者の2.9%に同定され,臨床像も重症であり,スクリーニングされるべき変異と考えられる.
著者
田村 美恵子 野田 誠 村上 輔 渡部 真吾 大山 明子 山本 康人 田代 宏徳 薄井 宙男 市川 健一郎 恵木 康壮 針谷 明房 高澤 賢次 磯部 光章
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.5-10, 2012 (Released:2015-06-18)
参考文献数
6
被引用文献数
1

症例は47歳,男性.生来健康で,胸痛などの自覚症状はない.意識障害にて当院救急外来を受診したところ,心電図上完全房室ブロックによる最大10秒までの心停止を繰り返した.徐脈による症状と推定し,緊急入院のうえ経静脈ペーシングを行い,待機的に電気生理学的検査ならびにペースメーカー植込み術を施行した.冠動脈に異常はなく,左室収縮機能も正常であった.His束心電図ではHVブロックを認めたが,逆行性房室伝導はみられなかった.洞結節回復時間を確認するため洞調律より20bpm速い頻度(110bpm)で刺激を加えたところ,刺激直後から1:1の関係を保って持続的に心房刺激が心室を捕捉する所見がみられた.刺激停止後に再びHVブロックによる房室伝導障害が顕在化した.本現象は器質的心疾患の指摘されない健常心筋に生じた徐脈依存性ブロックと考えられ,その機序に第4相ブロックの関与が示唆された.

3 0 0 0 OA 月の裏側

著者
髙月 誠司
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.129-130, 2022-09-30 (Released:2022-10-09)
参考文献数
2
著者
碓井 雅博 大川 真一郎 渡辺 千鶴子 上田 慶二 徳 文子 伊藤 雄二 杉浦 昌也
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.298-306, 1991-05-31 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

1954年RichmanおよびWolffは心電図上肢誘導で左脚ブロック型, 胸部誘導で右脚ブロック型を呈するものを“masquerading”bundle branch block (仮装脚ブロック) と呼んだ.我々は心電図上第I誘導で幅広いRと小さなSを, 第II, III誘導で深く幅広いSを有し, 胸部誘導にて完全右脚ブロックを示す当センターでの剖検例6例 (男4, 女2, 75~93歳) を対象として臨床病理学検討を行った.臨床所見では, 胸部X線上全例に心拡大を認め, 心電図上5例に1度房室ブロックを認めた.病理所見では, 心重量が350g以上の肥大心は5例であり, 陳旧性心筋梗塞を3例 (後壁2, 側壁1) に認めた.刺激伝導系所見では, 右脚と左脚前枝の二束障害を2例に, 右脚と左脚前枝, 同後枝の三束障害を2例に認め, 左脚前枝と同後枝の二束障害が1例であった.「仮装脚ブロック」の発生機序として, 1) 左脚の広範な障害, 2) 後側壁の心筋梗塞による修飾, 3) 著明な心肥大の影響が示唆された.