著者
浅野 秀剛 恋田 知子 相田 満 太田 尚宏 青木 睦 田中 大士 入口 敦志 大友 一雄
出版者
人間文化研究機構国文学研究資料館
雑誌
国文研ニューズ = NIJL News (ISSN:18831931)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-16, 2015-07-31

●メッセージ画像データベースへの期待●研究ノート室町の信仰と物語草子―骸骨の物語絵をめぐって―生き物供養と橋供養―随心院蔵『慶長五年多摩六郷橋供養願文』と関連して―多摩地域の資料保存利用機関との連携に向けて●トピックス度重なる災害を乗り越えて―被災地釜石市の市庁舎燃焼文書のレスキュー―連続講座「くずし字で読む『百人一首』」特別展示「韓国古版画博物館名品展」平成27年度国文学研究資料館「古典の日」講演会第39回国際日本文学研究集会『幕藩政アーカイブズの総合的研究』の刊行総合研究大学院大学日本文学研究専攻の近況
著者
相田 満
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 文学研究篇 = The Bulletin of The National Institure of Japanese Literature (ISSN:24363316)
巻号頁・発行日
no.49, pp.177-198, 2023-03-24

橋供養とは辞書の説明に「橋をかけ終わった時、橋の上で供養をすること。また、その供養。橋の供養」(日本国語大辞典)や、「架橋工事が終わった後、其の橋上で行う法会」(大漢和辞典)などとある。『古事類苑』地部の橋の項には橋供養とその下位に橋祈祷・橋祭が配されるなど、その祭儀がよく知られていたことを物語っている。 橋供養の最古の例は大化二年(六四六)紀年を持つ宇治橋断碑にまで遡り得る。特に関東に膨大な数の碑塔が残されていることも特徴的で、現存の供養碑も埼玉県を最多として二千基を超える橋供養碑が現存する。 橋供養碑の多くは「橋供養」あるいは「橋供養塔」を碑面に明記するが、近代以降には「記念碑(紀念碑)」等の記載も見られる。今では宗教色を薄めた記載となっているが、かつて行われた法会等の営みが記念祭に置き換わったものといえ、建碑意識に変わりはない。そして、神儒仏の三教合一で説かれる善書による広宣もあった。これらは、文献上は、日・中・台で確認され、残存する供養碑の存在や、善書に見える絵画や文章からは、放生に関わって堕地獄からの救済を求める営みを奨励する文言がうかがえるのである。 本稿は、橋供養を象徴的なものとして採りあげ、生き物供養と何でも供養が決して無関係ではなく、モノの供養が基本的に生き物(特に牛馬)への供養と不即不離の関係で連綿と続いていることを説くものである。 The definition of Hashi Kuyo in the dictionary is “When a bridge is finished, a memorial service is held on top of the bridge. A memorial service held on that bridge'(Daikanji Dictionary). 'Kojiruien shows that the ceremony was well known, such as the bridge memorial service and the bridge prayer and bridge festival under it in the section on the bridge in the ground. The oldest example of bridge memorial services can be traced back to the Uji Bridge Monument dated 646 (Taika 2). Especially in the Kanto region, a huge number of stone monuments remain, and Saitama Prefecture has the largest number of existing bridge memorial monuments, with more than 2,000 bridges memorial monuments. Many of the bridge monuments are clearly marked as 'Bridge memorial service'Or 'bridge memorial tower' on the surface of the monument, but in modern times. Youcan also see things that are just "memorial". Although the description is now lessreligious, it can be said that the pujas and other activities that were once held have beenreplaced with memorial ceremonies, and the awareness of erecting the monument hasnot changed. In addition, there was also publicity by good books preached in the unity of the three teachings of Shinto Confucianism and Buddhism. These are confirmed in Japan, China, and Taiwan in literature, and the existence of surviving memorial monuments and paintings and writings that appear to be good books encourage people to seek salvation from hell by being involved in hojo. rice field. This paper takes up the bridge memorial service as a symbolic one, and the memorial service for living creatures and the memorial service for everything are by no means unrelated, and the memorial service for things basically continues in an inseparable relationship with the memorial service for living things (especially cattle and horses).

3 0 0 0 OA 研究の沿革

著者
相田 満 相田 満
巻号頁・発行日
2004

国文学研究資料館
著者
相田 満
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014-CH-101, no.10, pp.1-3, 2014-01-18

マンガを文学として扱う際の問題は,すでに文学研究に現れていたといえるだろう.逆に,マンガを研究の素材として扱うことからは,文学研究として様々な示唆を受けることも多い.両者のパラダイムは,将来的にも,相互に刺激し合うことになるだろう.ここでは,パネル討論への参加に際して,「あえて」 文学研究の側から考えるという枠組みに従って所与のテーマに応える意味での見通しを述べてみたい.
著者
今西 裕一郎 伊藤 鉄也 野本 忠司 江戸 英雄 相田 満 海野 圭介 加藤 洋介 斎藤 達哉 田坂 憲二 田村 隆 中村 一夫 村上 征勝 横井 孝 上野 英子 吉野 諒三 後藤 康文 坂本 信道
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究課題は、『源氏物語』における写本の単語表記という問題から、さらに大きな日本語日本文化の表記の問題を浮かび上がらせることとなった。当初の平仮名や漢字表記の違いというミクロの視点が、テキストにおける漢字表記の増加現象、またその逆の、漢字主体テキストの平仮名テキスト化という現象へと展開する過程で、テキストにおける漢字使用の変貌も「表記情報学」のテーマとなることが明らかになった。「文字の表記」は「文化の表記」「思想の表記」へとつながっている。「何が書かれているか」という始発点から「如何に書かれているか」に至る「表記情報学」は、今後も持続させるべき「如何に」の研究なのである。
著者
山田 奨治 早川 聞多 相田 満
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.112, pp.39-46, 2006-10-27
被引用文献数
2

『古事類苑』は,明治政府の一大プロジェクトとして明治12年(1879)に編纂がはじまり,明治29年(1896)から大正3年(1914)にかけて出版された,本文1 000巻,和装本で350冊,洋装本で51冊の大百科事典である.そこには,前近代の文化概念について,明治以前のあらゆる文献からの引用が掲載されており,人文科学研究を行ううえでたいへん有用な事典として,いまでも利用されている.この『古事類苑』を電子情報資源化して活用すべく,著者らはその全頁の画像入力を行い,さらに全文テキスト入力作業を進めている.この論文では,現在までの作業の方法・進捗・課題点,インデックスからのシソーラス辞書作成,そしてHTML版の一部試験公開とWiki版の試作状況について報告する.Kojiruien (The Dictionary of Historical Terms) is a kind of large-volume Japanese encyclopedia with 1,000 volumes in original form, 350 volumes in Japanese-style binding, and 51 volumes in Western-style binding, which started editing in 1879 as a big project conducted by Government of Japan, and published during 1896 to 1914. It contains numerous words and cultural concepts of pre-modern Japan, citing plenty of books and documents before Meiji restoration (1867), and is frequently used even today among scholars of the Humanities. We are conducting a digital \it Kojiruien \rm project, with scanning every page images and making full-text data to utilize it as an electric information resource. In this report, we discuss on the project status, method, difficulty, thesaurus extraction from the index, making and public opening of the HTML version, and trial of the Wiki-based system.
著者
相田 満
雑誌
じんもんこん2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.27-32, 2018-11-24

生き物供養・何でも供養とでもいうべき,人間以外の生物や物品を祀り,供養する,多様な信仰遺物 が,日本国内の随所に遍在する.その総数は不明だが,現在の所,2,600 件を超える遺物を調査した段階 にある.そうした中で,日本の統治下にあった台湾は,遺跡の悉皆調査に恵まれており,日本の供養の在 り方と比較をするのに格好の調査対象となっている.そこで,本論では,その特性に着目した分析を試 みることによって,見えてきたことを中心に分析と考察を試みる.
著者
相田 満
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.208-213, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
6

1879年の建議から36年の歳月を費やし編纂まれた『古事類苑』は今なお日本最大の百科全書の地位を占める.発表者は協力者と共に,当該書の全文データベース化を進めてきたが,同時に『古事類苑』自体を意義ある研究対象とするための分析と工夫も重ねてきた.具体的には,入力・校正方法の効率化,分類体系の利用,引用の原本の同定,データの共有化のために,支援ツールの豊富な青空文庫形式を採用したことなどである.
著者
相田 満
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. 文学研究篇 = The bulletin of the National Institute of Japanese Literature. Japanese literature (ISSN:18802230)
巻号頁・発行日
no.36, pp.65-96, 2010-03

編年体である六国史の記載を中国の類書にならい分類再編集した『類聚国史』は、菅原道真の編纂により、寛平四年(八九二)に完成・成立した。中国有数の「類書」と対置されるほどに高い評価を受け、元来本文二○○巻目録二巻系図三巻の計二○五巻であったが、散逸して現存するのは六一巻のみで、亡佚巻の部立については、これまで坂本太郎氏をはじめとして、『類聚国史』内に記載される逸亡項目や、稀々に発見される逸文を基礎に推定されることが専らであった。ところが、無窮会図書館神習文庫蔵『勢多本類聚国史目録」に記載される内容を検討した結果、新たに二○巻分の部立が未報告のものであることが判明した。これにより、既存の研究成果とあわせれば総計一六○巻分の部立が明らかとなる。本稿では、当該資料を紹介するとともに、その妥当性を検討することにより、そこからさらに『類聚国史』の部立てがどの・ような配列原理で設定されたかということについても考察を進める。すなわち、『類聚国史』の配列原理が、それを使用する際の便宜を図るためになされたのではないかという視点に立ち、二官八省の組織を円滑に機能せしめるべく工夫されたと考える。Michizane Sugawara edited "RUIJU-KOKUSHI (A collected Japanese history book)" and it was completed in 892. It was classified by six kinds of Japanese history books and was edited again. It receives a high evaluation as to rank with "a classic encyclopedia" eminent Chinese. Originally it had included 200 volumes text, 2 volumes of indexes, three volumes of genealogies, however, many part of the books had lost now. As a result, it remains only 61 volumes. By the way, there are new contents of 20 volumes, on the "Index of RUIJU-KOKIJSHI, Seta Version" (put in the library of the KANNARAI in the MUKYUUKAI-LIBRARY), that had not reported yet.
著者
古瀬 蔵 相田 満 青田 寿美 鈴木 淳 大内 英範 山田 太造 五島 敏芳 後藤 真
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日本文学分野およびその隣接領域のデータベースについて、情報連携の仕組みを導入することと、オープンデータ化の環境を整備することである。データベース単位だけでなく、データベースの中の個々のレコード単位で情報を連携させ、異分野を含む様々なデータベースとの相互運用を実現し、日本文学研究者に限らず多くのインターネット利用者に、日本文学の情報を知らせ利用してもらう環境作りを行うために、案内型検索を中心に日本文学関連のデータベースの情報アクセスの研究を行った。今年度は、情報収集型検索での情報アクセス支援の検討を重点的に行っていくために、まず当初の目的の情報に到達することを目指すことに加えて、検索結果が利用者にとって予期しない探しているものとは別の価値ある情報を提供し、気付きや発見へ遭遇する機会となるセレンディピティの発現を重視し、研究活動に於いて、その関連する情報を提示する情報連携により、様々なデータベースでの情報空間で連続的に探索を行え、セレンディピティをもたらし知識を広げていくことの活動の様相を重点的に記録してもらった。また、人間文化研究機構の100以上の人文学データベースを検索対象とする統合検索システムnihuINTでも、歴史学や日本文学の一部のデータベースなどを題材に、データベースの情報をRDF(Resource Description Framework)という知識表現形式で表わして、データベース横断での情報連携を実現する試みが始められ、本研究でも、データベースの情報をRDF化して情報連携の仕組みを構築するための開発をおこなった。
著者
相田 満
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.26, pp.161-222, 2000-03-29

「やまともろこし、儒仏のもろもろの書どもを、ひろく考へいだして、何事もをさをさのこれるくまなく、解あきらめられたり」(本居宣長『源氏物語玉の小櫛』)とまで評された『河海抄』(四辻善成・撰)は、その博引傍証的性格から、中世以前の学問体系をうかがう資料としても貴重だが、そこに遍在する『職原抄』引用部の分析・調査を行ったところ、『職原抄』の一部分がほぼ重複もなく再構成されるという結果を得た。このことは、『河海抄』の編纂者が、『職原抄』を熟知した上で、『河海抄』編集にその知識を反映させていたことを物語る。また、その引用箇所が「職原抄」の一部分に集中していることから、『河海抄』に取込んだ記事の選別・非選別の基準や意図を、そこから読みとることも可能といえよう。そして、同様の分析手法を重ねるならば、『河海抄』の知識源泉の解明に道を開くのみならず、他の注釈書や類聚編募物についても、その応用が可能であると予想する。 “Kakai-sho”(河海抄) selected by Yotsutsuji Yoshinari which was evaluated as「やまともろこし、儒仏のもろもろの書どもを、ひろく考へいだして、何事もをさをさのこれるくまなく、解あきらめられたり」(In ”Genji-monogatari Tama-no-ogushi” by Motoori Norinaga) is valuable as a document can be seen academic frameworks before the Middle Ages from its character that explains every examples in many documents. To survey and analyze quoted part of “Shokugen-sho”(職原抄), this results showed that it was almost reconstituted without overlapping. This indicates a compiler of Kakai-sho who knows well about “Shokugen-sho” reflected to edit it. It may be said that it is possible to read a standard and an intention of sorting, non-sorting of the article which was taken in “Kakai-sho”, because quotation points were concentrated in the part of ”Shokugen-sho”. It is expected that if the similar method of analysis was done repeatedly, not only opening the way for elucidation of the knowledge source, but also the application will be possible about other commentaries and collection of similar objects.
著者
相田 満
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.10, pp.1-3, 2014-01-18

マンガを文学として扱う際の問題は,すでに文学研究に現れていたといえるだろう.逆に,マンガを研究の素材として扱うことからは,文学研究として様々な示唆を受けることも多い.両者のパラダイムは,将来的にも,相互に刺激し合うことになるだろう.ここでは,パネル討論への参加に際して,「あえて」 文学研究の側から考えるという枠組みに従って所与のテーマに応える意味での見通しを述べてみたい.It can be said of the problem when dealing literature as a comic, and had already appeared in the literature research. Conversely, since it is treated as a material for studies comics, be subjected to various suggestions in the literature many studies. Paradigm both going to be in the future, and mutually stimulate each other. Here, I would like to describe the outlook in the sense that meet the theme of the framework given in accordance with the time of participation in the panel discussion, "dare" and think from the side of the research literature.
著者
相田 満 石井 行雄
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.2, pp.1-8, 2012-10-05

日本に最初に渡来したといわれる漢籍の一つ, 『千字文』 は,それ自体が概念知識体系としても受容されてもきた.本発表では,文字セットとしての 『千字文』 を例に,その電子テキストを利用して日本古典籍への受容・影響を調査するための基礎調査と検証を試みる.A "Thousand Character Classic" is one of the Chinese books first introduced into Japan. As for this text, itself is received also as a ontology.In this presentation, by making and using the machine-readable text of "Thousand Character Classic" ,and I would like to verify how the character set was accepted in the classic of Japan..
著者
古瀬 蔵 相田 満 山田 太造
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.10, pp.1-8, 2012-10-05

『古事類苑』 は日本の前近代の諸事象を記した類書形式の百科事典である.本稿では, 『古事類苑』 の全 30 部を検索対象とするために構築した,全文テキストと抜粋テキストを併用した全文・抜粋検索版データベースについて述べる.抜粋テキストは総目録,書名,解説,索引から成る.全文・抜粋検索版データベースは, 2012 年 8 月にインターネット上で公開され,現在, 『古事類苑』 の 26 部を検索対象としている.Kojiruien is an encyclopedia, which contains cultural, political, commercial, and other numerous matters of pre-modern Japan, citing plenty of books and documents. Aimed at searching all 30 parts of Kojiruien, we implemented a new database system by integrating extracted data into our previous full-text database. This paper describes our new database system, especially concerning extracted data, which consists of catalogue table of contents, book titles, abstracts, and index terms. Our new database has been available on the Internet since August 2012, and its search scope currently covers 26 parts of Kojiruien.
著者
相田 満
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.460-464, 2011-11-01

多くの古典籍を擁する国文学研究資料館において,分類・主題検索の実現は,長い間の課題となっている。特に,極めて早い時期にコンピュータを実現した当館において,汎用機時代から取り組まれてきたユニオンカタログとも称するべき『日本古典籍総合目録』データベースの存在は,分類に対する関心を,常に喚起する存在でもあった。その分類・主題検索を実現する道のりは遠いが,その実現のためのインフラと取り組みは少しずつ進んではいる。本稿では,どのような取り組みが行われているか,その一端を紹介する。
著者
蔵中 しのぶ 福田 俊昭 山口 謡司 相田 満 野口 恵子 谷 晃
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

学際研究の試みとして、日本文学を軸としつつも、中国文学・歴史学・建築学・情報学の諸分野から参加者をえた本研究は、従来、歴史学の一分野として、また、建築学の対象として発展してきた茶の湯研究・茶室建築に対して、日本文学研究の書誌学・本文解釈学、注釈研究・出典研究の方法論を導入することによって、茶道文献の読みそのものを格段に深めることができた。一方、日本文学の側からいえば、茶の湯や茶室建築の用語、茶室の寸法等、日本文学の対象の外にあった茶道文献に対して、新たなアプローチをおこない、日本文学研究における茶道文献の有効性を実証することができた。茶の湯を「場」として成立した「座の文芸」の特質は、日本文学のさまざまなジャンルとも複雑に絡み合っている。分析対象として選定した『茶譜』の本文校訂と注釈作業をおこなうなかで、日本文学研究における茶道文献の有効性を検証し、日本文学と茶道史研究の関係論を構築するための基礎データの集積を進めることができた。さらに、国際的な意義として、第二年度のヨーロッパ日本研究協会への参加、日EU交流年認定イベントに認定されたチェコ・カレル大学でのインターナショナル・ワークショップ「茶の湯と座の文芸」の主催、第三年度の中国・魯東大学における国際学会への参加は、茶の湯と日本文学というテーマに対する国際的な関心の高さを実感させてくれた。本プロジェクトが主催したチェコでのワークショップには、ヨーロッパから4名の研究発表者の参加をえた。大東文化大学語学教育研究所『語学教育フォーラム』第11号として刊行された研究報告書には、論文編として、蔵中しのぶ「茶の湯と座の文芸」、福田俊昭「五山文学にみえる茶」、山口謡司「『茶譜』の諸本について」、相田満「茶文化のオントロジ」、野口恵子「茶の湯と連歌-共営する場に関する一考-」、さらに、大東文化大学語学教育研究所客員研究員ションタル・マリ・ウエーバー「『茶譜』巻-における茶人のネットワーク-ネットワーク分析による寛永文化の時代区分論の試み-」、谷晃「『茶譜』論考(一)」の論文7本、「『茶譜』人名索引」、注釈扁として『茶譜』巻-注釈を掲載した。本研究の取り組みは、これを基盤として、他のさまざまな分野の研究への進展とコラボレーションの可能性を秘めている。第一に大東文化大学東洋研究所において「茶の湯と座の文芸」研究班をたちあげ、国会図書館本を底本とし、東洋研究所刊行物として継続して『茶譜』全18巻の注釈研究を完成させるとともに、第二に情報学の分野からは、『茶譜』データベースの作成に着手するとともに、相田満が手がけてきたシーソラスとのコラボレーション、第三に建築学の分野からは、矢ヶ崎善太郎を中心として、『茶譜』の寸法を忠実に復原した茶室建築の画像化を予定している。