著者
柏野 牧夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.558-560, 2015-05-15

閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)は,相互的な対人関係の障害,意思伝達の障害,狭く偏った興味や反復的な行動を中核症状とする発達障害の一種である.ASD当事者の困りごとには,選択的聴取困難や感覚過敏など,基本的な感覚特性の特殊性に由来するものも多い.現在,ASDにおける感覚特性の詳細な分析から,その生物学的メカニズムの解明が進められている.一例として,ASD当事者がしばしば訴える選択的聴取困難の原因を調べた研究を紹介する.今後,ASDの診断,治療,支援において,臨床と基礎研究,さらに情報系技術が密接に連携していく必要がある.
著者
袖 美樹子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.186-190, 2021-03-15

2019年10月米Googleが科学誌Natureに量子コンピュータが,スーパーコンピュータでは処理に1万年を要する演算をたった200秒で行い,史上はじめて量子超越性を実証した,と発表した.量子コンピュータの新たな時代の幕開けである.量子コンピュータが脚光をあびる背景には,現在これ以上の半導体微細化が困難で,ムーアの法則が限界を迎える一方で,より高性能なコンピュータのニーズがAI,創薬,暗号化等の分野において高まっているためと考えられる.実際に量子コンピュータは金融,製造,交通,化学,情報の分野で実用化にむけた試行が進んでいる.そこで本特集では量子技術の現状を紹介いただく.
著者
Christian Bizer Tom Heath TimBerners-Lee 翻訳:萩野達也
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.284-292, 2011-03-15

人間の知的創造物であるコンテンツを,記録し配信するメディアの手段として,今日,IT技術,とりわけインターネットの果たす役割は大きい.その中で,LODが今後メディア業界で担っていくであろう役割を考える.具体的事例として,BBCとThe New York Times が取り組んでいる施策を紹介し,考察する.また,広くメディアの歴史を概観する中で,LODの立ち位置を考える.その過程では,データとしてのコンテンツよりも,それらを「つなぐ」ことに価値があるという世界が明らかになるだろう.筆者らは,データのみならず,アプリケーション,さらに,サービスを「つなぐ」,LOAおよびLOSを提唱したい.
著者
野中 郁次郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.547-552, 2006-05-15

伝統的な認識論においては,知識とは「正当化された真なる信念(justified true belief)」と定義される.知識創造理論では,「個人の信念を真実に向かって正当化するダイナミックで人間的/社会的なプロセス(a dynamic human/ social process of justifying personal belief towards the truth)」と知識を定義する2).つまり,信念(思い)を真実に向かって正当化していく人間的でダイナミックなプロセスそのものが知識であると定義するのである.個人の抱いた思い(主観)は,他者や環境との間で行われる社会的ダイナミクスの中で正当化(客観化)され,「真」とされていく.知識とは他者との相互作用を通じて,未来に向かって何が真・善・美であるかを問い続けるプロセスであり,そうした信念(主観)と正当化(客観)の相互作用にこそ知識の本質がある.そして,知識創造企業の戦略は,その存在をかけた「未来創造」なのである.本稿の目的は,既存の戦略論との対比を通じて,知識経営(Knowledge-based Management)の戦略論を展開することである.
著者
三輪 修
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.850, 2013-07-15
著者
吉濱 佐知子
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.142-143, 2020-01-15

サトシ・ナカモトを名乗る人物がビットコインの論文を発表して10年が経過した.現在世の中に流通している仮想通貨(暗号資産)は数百種類以上もあり,新技術の発表や取引所への攻撃など,さまざまな観点で連日ニュースを賑わせている一方,企業間コンソーシアムなどのクローズドな環境でブロックチェーンを使う試みも多く,実証実験を超えた本格運用への移行もはじまっている.本特集は,変化の早いブロックチェーン関連技術の最新動向について解説を行い,今後の技術開発を促進するための基礎となるような情報を提供することを目的として企画した.
著者
寺田 雅之
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.591-599, 2020-05-15

差分プライバシは,任意の攻撃に対する汎用的な(“ad-omnia”な)安全性を実現するためのプライバシ保護の枠組みであり,さまざまなプライバシ保護手段に対して“ϵ”で表される統一的な安全性指標を与える.本稿では,米国国勢調査局(US Bureau of Census)による2020年の国勢調査での差分プライバシ導入の背景を紹介し,差分プライバシの定義とその意味するところを説明する.また,合成定理(composition theorem)などの差分プライバシの特徴とそれによる利点,および差分プライバシを普及させていく上での現状の課題と今後の展望について議論する.
著者
楠 正憲
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.324-326, 2018-03-15

2018年1月26日深夜,みなし仮想通貨交換業者のコインチェック社が記者会見を行い,ブロックチェーンNEM上で流通する仮想通貨XEMの約580億円分が不正アクセスによって漏洩したと発表した.本稿では流出した仮想通貨が取り戻せる可能性, NEM財団によるコインの追跡と犯人側の対抗策について解説するとともに, 仮想通貨業者の安全性を高め, 社会からの信頼回復のために必要となる安全対策基準, これまでの公開鍵基盤とは異なる仮想通貨の鍵管理や, 仮想通貨や仮想通貨交換業者についての体系的な脅威分析の必要性について解説する.
著者
楠 正憲
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.1066-1068, 2018-11-15

1月末のコインチェックに続いて,9月14日夕刻にテックビューロ社の運営する仮想通貨交換所Zaifから約70億円分の仮想通貨が流出した.Zaifは先に事件を起こしたコインチェックとは異なり,改正資金決済法に基づいて登録された「登録仮想通貨交換業者」であった.Zaifにおける仮想通貨の管理が適切であったかというと,ホットウォレットに多額の仮想通貨を入れていたこと,それらが流出して4日間も気付かなかったといった点は問題だ.事業者を信用できない,被害の迅速な報告が見込めないとなると,規制当局が直接モニタリングすることの必要性が増すことも考えられる.
著者
柏崎 礼生
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.1168-1172, 2019-11-15

2019年8月25日にAWSは,8月23日に東京リージョンの1つのAZで冷却システムのトラブルによるオーバーヒートにより一部のAmazonEC2を提供するサーバが停止したと発表した.後日,この障害時にマネージドサービスであるAmazonRDS,ALBの一部にも影響が発生していたことが追加発表された.本稿ではクラウドの利用が十分に普及した現在において,システムを安定運用させることの困難さ,取り組むべき課題,およびその意義と意味について,過去の異分野の事例に触れながら議論を行う.
著者
木沢 誠
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.2, no.5, 1961-09-15
著者
渡辺 勇士 井上 愉可里 原田 康徳
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.468-473, 2017-05-15

ビスケットはコンピュータの専門家ではない人でもプログラミングを楽しく理解できるツールである.2016年にアプリ版がリリースされ,タブレットで使えることによって,指で操作できるため,ペンを使うことに慣れていない児童でも,ストレスを感じずにプログラムをつくることができる.ビスケットは開発されてから,言語の進化と同時にビスケットの教え方も進化してきた.根底にある原理は「子供たちの驚きと喜びを最大化する」ように情報を提示することである.本稿では,実際の子供たちへの教え方になぞって,我々がどのように子供たちに教えているのか解説する.

2 0 0 0 OA 目次・表紙

雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, 2013-12-15
著者
和田 弘
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, 1960-07-30
著者
辰己 丈夫
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.e1-e4, 2020-12-15

大学入試に,高校の「情報」が入ることが検討されている.これまで,多くの研究者が,この分野を研究してきた.また,本会も,多くの提言を行ってきた.その内容は,大学入試における情報教育の適正な実施に向けた活動である.