著者
井澤 敏彦 朱宮 昭男 工藤 悟
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.33, pp.33-40, 2001-12
被引用文献数
2

あいちのかおりSBLは、愛知県農業総合試験場において2000年に育成した水稲新品種である。その来歴及び品種特性の概要は以下のとおりである。 1.1987年に「愛知78号(葵の風)」を母本、「あいちのかおり」を父本として最初の交配を行った。その後2回戻し交配した「あいちのかおり*2//愛知78号/あいちのかおり」のF2世代で縞葉枯病抵抗性の検定を行い、抵抗性のF3を父本として更に「あいちのかおり」に1回戻し交配した。1991年に交配を完了し、その後代から選抜育成した固定種である。1996年から「愛知100号」の地方系統名を付して試験を行い、2000年に品種登録出願を行った。 2.早植栽培及び普通期栽培での出穂期、成熟期は「あいちのかおり」とほぼ同じで、愛知県の熟期区分では「中生種」に属する。稈長は「あいちのかおり」とほぼ同じで、穂長は早植栽培では4mm長く、普通期栽培では2mm短い。穂数は「あいちのかおり」とほぼ同じである。草姿、草型は「あいちのかおり」に類似し、草型は中間型から偏穂重型に属する。稈の太さは中茎、耐倒伏性は「やや強」、穂発芽性は「中」で、ともに「あいちのかおり」と同じである。 3.縞葉枯病には抵抗性遺伝子Stvb-iを持ち抵抗性「強」を示す。葉いもち圃場抵抗性は「中~やや弱」で「あいちのかおり」よりわずかに強い。穂いもち圃場抵抗性は「Modan」由来のPblを持ち「強」を示す。白葉枯病には「あいちのかおり」と同程度で「やや強」である。 4.玄米千粒重は「あいちのかおり」と同程度で「やや大」である。腹白米、乳白米の発生は少なく、「あいちのかおり」と同様、玄米の外観品質は「上の下」にランクされる。収量は「あいちのかおり」と同程度かやや多収である。食味は「あいちのかおり」に類似し、極良食味である。 5.本種は、温暖地平たん部の早植え~普通期栽培地帯に適する。本種は「あいちのかおり」に縞葉枯病・穂いもち抵抗性を導入した準同質遺伝子系統である。
著者
山本 るみ子 齋藤 勉 宮川 博充
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.33, pp.331-334, 2001-12

台湾産白ブンチョウの羽色の表現型を調査し、国内における白ブンチョウの生産性向上のために利用できるか検討した。 1.台湾産白ブンチョウは桜(有色)に対し劣性である白の遺伝子をホモ型で保有していると推定された。 2.台湾産白ブンチョウ羽色の特徴としては、弥富産白文鳥雛にある黒い刺し毛が全くなく、純白であった。 3.台湾産白ブンチョウと弥富産桜ブンチョウの交配から発生した子はすべて桜ブンチョウの羽色で多量の白い刺し毛が存在していた。したがって、台湾産白ブンチョウは弥富産白ブンチョウが持つ桜(有色)に対し優性で、致死作用のある遺伝子(Wh)を保有していないと推定された。 そのため、台湾産白文鳥同士を交配することにより、白ブンチョウの生産性と品質を向上させることが期待された。
著者
中村 明弘 野田 賢治 木野 勝敏 加藤 泰之
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.36, pp.87-91, 2004-12
被引用文献数
1

本試験は、名古屋種の卵殻色の特長を色差計から得られるL(明度)、a(赤色度)、b(黄色度)値によって明らかにするとともに、名古屋種特有の「さくら色」の卵殻色を効率的に改良するための指標を検討した。得られた名古屋種卵の特徴は、以下に示したとおりである。1.鈍端部は、鋭端部と比べて、L値が低く、卵殻色が濃かった。2.L値とa値との間には高い負の相関が見られ、卵殻色が濃くなると、赤みが増していく傾向がある。3.日齢が進むにつれて、L値とa値が高くなり、卵殻色は薄く、黄色みが増した。4.目視で赤みが強い卵と黄色みが強い卵との間には、色相(b/a)に顕著な違いがみられた。5.名古屋種卵の特徴である卵殻表面にみられる白い沈着物は、b値を大きく下げ、a値を上げるため、卵殻色の赤みを強調させる役割をもつことが確認された。以上のことから、名古屋種の卵殻色を改良するためには、明度(L値)と色相(b/a)が有効な選抜指標になることが示唆された。
著者
竹内 良彦 福田 至朗 大矢 俊夫
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.38, pp.57-63, 2006-12

メロン黄化えそウイルス(MYSV)を、罹病葉から簡易に検出できる方法を開発した。この方法は新しいDNA増幅技術であるLAMP法を利用したものである。サンプルの葉を緩衝液(ris-HC1)とともにすり潰し、この懸濁液を、今回開発したLAMPプライマーを含むR-LAMP反応液に混合して、63℃で1時間保温するだけの簡単な操作により検出が可能である。また、つまようじで葉をつつき、反応液に浸すだけでも検出が可能であった。LAMPプライマーの設計に際しては、愛知県で発生したMYSVの遺伝子を解析し、塩基配列の一部を決定した。この塩基配列を他と比較したところ、最初の確認地である静岡県で採取された系統とは明確な違いがあったが、高知県で採取された系統及びタイで採取されたうちの1系統とはほぼ一致していた。
著者
吉村 幸江 伊藤 茂
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.35, pp.103-108, 2003-12
被引用文献数
2

愛知県の中山間地域で栽培されているエマゴの内容成分と抗酸化性を調査した。種子、葉中のビタミン、ミネラル、ポリフェノール含量は栄養表示基準より高い値を示した。さらに、1、1-diphenyl-2-picrylhydrazyl(DPPH)ラジカル捕捉活性が高かった。エマゴを加工利用するときの前処理として、種子の風味を向上させる焙煎方法と葉を保存するための塩蔵、乾燥方法を検討した。種子の焙煎は180℃、5分間の加熱で最も風味が良く、焙煎後に機能性成分含量とDPPHラジカル捕捉活性の変化はなかった。一方、葉は塩蔵、乾燥後に機能性成分含量とDPPHラジカル捕捉活性が減少した。
著者
大橋 秀一 瀧澤 秀明 松井 誠
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.32, pp.207-214, 2000-12
被引用文献数
5

和牛の肉質向上を図るため、ビタミンCを和牛に投与した場合、脂肪交雑を増加させる効果を検討した。 1 脂肪交雑は、肥育後期にビタミンCを給与した場合、有意に高くなった。 2 増体量は、ビタミンCを肥育前期に給与した場合、肥育後半の増体量が肥育前期無給与区に比較して有意に大きく、肥育前期の発育促進が認められた。 3 肉の締まり及びきめは、肥育後期にビタミンCを給与した試験区は肥育後期無給与区に比較して有意に優れていた。 4 肉質等級は、肥育後期にビタミンCを給与した試験区は肥育後期無給与区に比較して有意に優れていた。 以上のことから、ビタミンCの肥育前期の給与は発育促進を、肥育後期の給与は脂肪交雑基準(BMS)、締まり及びきめ等肉質を改善させる効果があると考えられた。
著者
堀田 真紀子 二村 幹雄 加藤 俊博
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.38, pp.95-101, 2006-12

スプレーカーネーションの新品種「カーネ愛知2号」は、愛知県農業総合試験場で育成したアースカラーの花色を有する「エアーズロック」を母本、鮮薄ピンク色の花色を有する「99sp367-11」を父本として2001年に交配し、2005年に育成を完了した。本品種の花形は中輪の八重で、花色は普及性の高い鮮紫ピンク(JHSカラーチャートNo.9703)の地色にピンク白(JHSカラーチャートNo.9701)の覆輪が入り、また茎の伸長性に優れ、スプレーフォーメーションもよく整う。開花の早晩は中晩生で、年間の収量はやや少ない。本県の暖地で栽培した場合、切り花は10月以前では花色が薄いために出荷に適さないので、11月以降に収穫する作型とする必要がある。本品種は、6月上旬に定植を行い、仕立て本数を3本に調整し、その2ないし3本を再度摘心することで増収につながる。また、90cm幅のベッドでは、6条植えより8条植えで収量が多く、切り花品質も確保される。
著者
水上 優子 稲波 進 神戸 三智雄
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.33, pp.93-100, 2001-12
被引用文献数
2

暖地・温暖地に適する、耐湿性、菌核病抵抗性、アブラムシ抵抗性、耐倒伏性に優れる複合抵抗性を育種目標とした新品種「ネオタチワカバ」(系統名:愛系41号)を育成し、2001年に農林7号として登録された。本品種は、アブラムシ抵抗性選抜系統、菌核病抵抗性選抜系統、多収性系統を主体とする20系統から集団選抜法を用いて育成された。主な特性は次のとおりである。 1.タチワカバより多収であり、特に利用1年目の収量が高い。 2.耐湿性が強く、水田転換畑でも安定して栽培できる。 3.菌核病、アブラムシに対して実用的なレベルの抵抗性を持つ。 4.耐倒伏性はタチワカバと同程度で早期繁茂性品種としては強い。
著者
大竹 敏也 吉村 幸江
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.42, pp.31-35, 2010-12

愛知県特産の食用金魚草の栽培における農薬「ジノテフラン」の作物残留試験を厚生労働省の通知試験法に従い高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で実施したところ、ジノテフランと夾雑物のクロマトグラムのピークが重なり定量することができなかった。そこで、HPLCの溶離液に用いる有機溶媒の種類と配合割合を検討し、ジノテフランと夾雑物のクロマトグラムのピークの分離を試みた。その結果、水/アセトニトリル(70:30)の溶離液でカラムコンディショニングを行った後、水/メタノール(92: 8)の溶離液で測定を行うとジノテフランと夾維物は分離し、安定的に定量することができた。また、その分析精度は農薬の登録適用拡大の作物残留試験の分析要件を満たすことができた。
著者
瀧 勝俊
出版者
愛知県農業総合試験場
雑誌
愛知県農業総合試験場研究報告 (ISSN:03887995)
巻号頁・発行日
no.32, pp.141-147, 2000-12
被引用文献数
5

ハウスイチジクのリアルタイム栄養診断手法を確立する目的で、園芸研究所内温室においてコンテナ及びポット栽培の桝井ドーフィンを用いて試験を行った。 1.施肥が作物栄養に及ぼす影響を、葉身および葉柄汁液中硝酸濃度、葉色の変化を経時的に測定して検討した結果、葉柄汁液中硝酸濃度が施肥と対応しており、リアルタイム窒素栄養診断に最も適していると判断した。 2.葉柄の採取条件はは、汁液中硝酸濃度の推移から判断して、最も安定した値が得られる結果枝中段位葉柄を晴天日の午後に採取することが望ましいと判断した。 3.施肥量を変えて栽培した結果、最も収量が多かった区の中段位葉柄中硝酸態窒素、カリウム濃度はどちらも4,000~6.000ppmであった。 以上の結果から、ハウスイチジクのリアルタイム栄養診断は結果枝中段位葉柄汁液中硝酸、カリウム濃度を測定することにより可能であり、近い将来生育ステージ別診断基準値を用いた施肥管理技術を確立できると考える。