著者
元濱 奈穂子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.207-219, 2022 (Released:2022-09-10)
参考文献数
26

本稿は、大学教育の質保証において「抵抗」とカテゴライズされてきた教員の行為が生じる要因を、医学部医学科のアセスメントテスト「臨床実習前OSCE」を事例として検討した。フィールドワークからは、臨床実習前OSCEが定義する能力の必然性を説明する論理として機能していた「段階的発達観」がこの制度の支持と「抵抗」をわける論点となっており、この発達観の非共有が多くの教員の「抵抗」につながっていることが示唆された。
著者
上田 誠二
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.13-27, 2007-03

本稿は、大衆文化の教育化という問題を、昭和戦前期における中山晋平作曲の流行歌=「晋平節」=晋平流の四七抜き五音短音階(ラ・シ・ド・ミ・ファ)の曲を素材に考察した。これまで日本教育史研究で音楽といえば唱歌であり、多くの蓄積がある。唱歌が創出する「日本」や「国家」という風景=学校的知識=学校文化を国民統合の装置として論じてきた従来の研究に対して本稿は、晋平節という大衆文化の教育化過程から、実はそうした学校文化が充分に機能していなかったことを示唆した。音楽の領域では、学校文化は大衆文化の人気に圧倒され、その担い手である音楽教師は機能不全の危機感に苛まれていたのである。そうした状況下に教育化した晋平節は、国策から学校文化の手の届かない部分の国民化を担わされたに過ぎなかった。本来晋平が構想していた、日常に疲れた大衆が晋平節を通し自然に明日への活力を得る、という教育の可能性は、戦前期社会教育の文脈では実現していない。
著者
松下 良平
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.202-215, 2015 (Released:2016-05-18)
被引用文献数
2

客観的根拠に基づいて教育の研究・実践・政策を一体的に進めようとするエビデンスに基づく教育は、一まとまりの意味システムとして特有の政治的機能を果たす。そのためその教育への批判は、その理論的前提への内在的批判とともに、その実行が再帰的に社会にもたらすものに目を向ける必要がある。教育観の変容を経て成立可能になったエビデンスに基づく教育は、それを要求してきた固有の歴史的・社会的文脈ゆえに教育を変質させ、教育の形骸化や空洞化をもたらすであろう。さらには教育学を廃棄に追い込んでいく可能性もある。
著者
麻生 誠
出版者
日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.21-32, 1966-01
著者
広川 由子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.297-309, 2014 (Released:2015-06-18)

本稿は、占領期日本における英語教育構想を新制中学校の外国語科の成立過程に焦点を当てながら明らかにすることを目的とする。占領初期の米国国務省案は、民主的な教育制度の確立要件として英語教育とその大衆化を掲げた。これがSFEの勧告となり、それをCI&Eが具体化したことによって新制中学校に外国語科が導入された。一方、文部省は導入に消極的な姿勢を示しており、導入を決定づけた英語教育構想は、米国政府から提出されたものだったと指摘できる。
著者
青木 栄一
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.201-212, 2019 (Released:2019-10-12)
参考文献数
28

教育行政学の親学問候補は政治学、経済学、社会学、歴史学、哲学等多様であってよい。その中で筆者自身は政治学を親学問として措定している。教育行政学は親学問としての政治学に貢献することを意識するべきである。政治学、教育学はアカデミアの中でそれぞれポスト、学会、雑誌、助成プログラム、ネットワークを有するコミュニティである。教育行政学の研究者はそれら両方のコミュニティに貢献する必要がある。
著者
山下 絢
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.322-332, 2013-09-30 (Released:2018-04-04)

本研究は、相対的年齢効果が生み出されるメカニズムに着目し、子どもの生まれ月と親の階層(社会経済的地位)や教育へのかかわり方との関係を、国内の全国規模データに基づき、定量的に明らかにするものである。分析の結果、母親が教育費の支出に積極的な場合に、その子どもが早生まれではない傾向が確認された。さらに通塾率に基づく地域区分から見た場合、通塾率が平均よりも高い地域において、同様の傾向が確認された。
著者
信田 さよ子
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.286-295, 2001-09-30 (Released:2007-12-27)
参考文献数
8