- 著者
-
櫻 哲郎
森田 寿郎
植田 一博
- 出版者
- 一般社団法人 日本デザイン学会
- 雑誌
- 日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
- 巻号頁・発行日
- pp.A16, 2009 (Released:2009-06-16)
伝統芸能文楽では,3人の人形遣いが1体の人形を操作し,多彩な動作を実現している.本研究ではこの協調操作技術のメカニズム解明を目指し,合図となる非言語情報“ほど”に着目した動作解析を行った. まず人形の構造・操作方法について調査を行い概要を把握した.“ほど”とは操作の主導権を握る主遣いが 動作開始時に“型”と呼ばれる動作パターンや,動作の大きさ・速さなどの情報を他の人形遣い(左・足遣い)に伝達する合図と言われている.“ほど”を含む人形各部位の位置姿勢情報を計測するため,磁気式センサ内蔵型文楽人形を製作した.実機を用いて現役の人形遣いによる演技の計測実験を行った.得られた主遣いの操る右手と,左遣いの操る左手の速度情報に対しウェーブレット解析による位相解析を行った.結果“型”動作は3つの動作要素に分けられ,主遣いに対し左遣いが高い追従性を持つ動作要素の前に,主遣いが先行する“ほど”にあたる動作要素が発見された. 以上より,人形の協調操作において,主遣いの動作中に含まれる“ほど”と呼ばれる動作要素が,左遣いの動作追従を促し,人形全体の協調動作を実現していることを明らかにした.