著者
伊豆 裕一
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E15, 2009 (Released:2009-06-16)

わが国のブラウン管テレビには、1952年に発売が開始されて以来、2005年に液晶テレビなどフラットテレビに主役の座が入れ替わるまでの54年間の歴史がある。本研究は、東芝科学館に収蔵されている1950年代から70年代にかけて製造されたテレビの実機の分析等を実施し、その間のデザインの変遷について、市場やユーザーのライフスタイルの変化などに加え、材料や製造技術など工業デザインと関わりの大きな諸要素との関係を明らかにすることを目的としている。結果、デザインはさまざまな進化の過程をたどって現在に至っているが、外観デザインの特徴から4つの時代に分類することができる。また、デザイナーは、各時代において最新の加工技術を取り入れることで、コストダウンを図りながらユーザーニーズに適合した高品質なデザインを実現してきたことがわかる。
著者
石川 重遠 後藤 吉郎 山本 政幸
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.G02, 2009 (Released:2009-06-16)

この研究は、アメリカのゴシック体に影響を受けた日本のゴシック体の創出について明確にするものである。欧文書体とタイポグラフィの3名の専門の研究者がこの課題解決に取り組んでいる。山本は、ヨーロッパのサンセリフ体がアメリカに渡りゴシック体と呼ばれるようになった研究をしている。また、後藤は、アメリカの印刷技術が日本の近代印刷技術の礎を築いた研究をしている。石川は、日本語のゴシック体の創出に関する研究をしている。この3つの研究をつなげ、「和文ゴシック体創出と欧文書体との関連性研究」としてまとめたい。 今回の発表テーマは、和文ゴシック体の創出である。
著者
山本 政幸 石川 重遠 後藤 吉郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.G03, 2009 (Released:2009-06-16)

本考察は、19世紀アメリカで発達したゴシック体活字について、世紀末に23の鋳造所が合併してできたアメリカ活字鋳造会社(American Type Founders Company)の設立過程を追いながら、その特徴を明らかにすることを目的としている。まず、アメリカで最初のゴシック体活字が掲載されたボストン活字鋳造所の1837年の見本帳を実際に検証した後、19世紀後半に小文字やイタリックを加えていった各地の鋳造所の活字見本を追う。次に、合併後に書体デザイン部門や資料図書館を設置して新活字の計画的な生産に取り組んだアメリカ活字鋳造会社の方針を明らかにする。最後に、モリス・F・ベントンの仕事と、彼の設計したFranklin Gothic、Alternate Gothic、News Gothic、Lightline(Gothic)という四つの代表的なゴシック体のデザインの特徴を探る。
著者
山本 佐恵
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E13, 2009 (Released:2009-06-16)

日本は1930年代の万博で、当時「写真壁画」と呼ばれた巨大な写真パネルを展示した。写真壁画の様式には、それぞれ独立した小テーマを持つ写真壁画を複数面連続してつなげ、全体として一つの大きなテーマを構成する「組写真」形式と、様々な写真や図案を同じ画面上に貼り込む「コラージュ」形式がある。本発表では、後者の「コラージュ」形式のものについて発表する。原弘が構成した《観光日本》(1937年パリ万博)、山脇巌が構成した《観光日本》(1939年ニューヨーク万博)、亀倉雄策が構成した《楽しい日本》(1940年サンフランシスコ万博)の3点を取り上げる。 各写真壁画を構成する際、建築家の山脇の場合は会場の展示空間との兼ね合いを念頭におきながら、壁面装飾の一部として制作した。一方図案家の原は、写真壁画を「一枚の大きな観光ポスター」と捉え、広告としての役割を意識して制作した。同じく図案家の亀倉は、バウハウスやヘルベルト・バイヤーなどのフォトモンタージュ技法から多くの影響を受け、それらの技法を自身の写真壁画制作に取り入れた。本発表では、これらの写真壁画の制作の背景と、構成内容の特徴について報告する。
著者
牧野 暁世
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P40, 2009 (Released:2009-06-16)

擬音語・擬態語による色彩連想を検討した。予備調査により決定した12の擬音語・擬態語(さわさわ、ぎらぎら、ふわふわ、めらめら、きらきら、からから、どろどろ、むらむら、ざわざわ、ぴかぴか、ぱちぱち、ざーざー)と、PCCS表色系に基づく64色の色刺激を用いて、183名の大学生を対象に、各刺激語が連想させるイメージ(様子、状態など)ならびに色彩を調査した。その結果、連想イメージと連想色との間には関連が認められ、各刺激語の主要なイメージを代表するような色彩が多く連想された(たとえば、「さわさわ」→「植物」→「うすい緑」)。また、連想イメージの分析から、感情状態を表す「むらむら」を除き、他の11語はいずれも主として視覚に訴える語であることがわかった。これらのことから、擬音語・擬態語の感覚モダリティや感情属性が連想される色彩に大きく影響すると考えられる。
著者
浅野 智 棚橋 弘季 木村 博之
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.B06, 2009 (Released:2009-06-16)

情報デザインの学びに、人間中心設計プロセスの考え方を取り 入れ、調査をベースにデザインを考えるという試みは多く行われ てきた。特に最近ではエスノグラフィーの調査手法を取り入れた、 ワークショップも多く見受けられようになってきている。[1] その中で課題として挙げられるのが、調査のデータは揃ったが、 上手くコンセプト作成に結びつけることができないという状態 である。社会人のデザイナーであれば、過去の経験から自分なり の文法を編み出しているものであるが、経験の浅い学部生レベル であるとなかなかそうはいかないようである。 本研究は、真行寺ら[2]によって開発された「シャッフルディ スカッション」に注目し、その効果について検証しようと試みた。
著者
高橋 梓帆美 増田 卓矢 大平 裕子 小山 慎一 日比野 治雄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P03, 2009 (Released:2009-06-16)

電子ペーパーはハードコピー(印刷物)とソフトコピー(ディスプレイ表示)の長所を両立した媒体として開発されている。書き換え可能でありながら、省エネルギーで扱いが容易である事から、新しい表示媒体として期待されている。また、電子ペーパーに期待される機能は多く、使用状況に合わせた特徴が特化した様々な電子ペーパーの開発が求められている。しかし、電子ペーパーにおける読みやすさ研究は、現在、そのほとんどが電子書籍などの場合に限られている。その為、本研究では、デジタルサイネージとして公共空間で使用されると予想される大型電子ペーパーにおける最適な文字表示について検討を行った。電子ペーパーに表示した文章の行間隔、文字間隔を変化させ、読みやすい文字配列の評価を行った。その結果、行間隔が文字サイズの50%~75%、文字間隔が、文字サイズの25%以下の場合が最適である事が明らかになった。また、この結果は、今までに検討されてきたCRT等の別媒体での読みやすい文字配列の結果が電子ペーパーにも使用できる可能性を示していると考えられる。
著者
伊原 久裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.G07, 2009 (Released:2009-06-16)

ノイラートによって開拓された図像統計の手法「アイソタイプ」は、1930年代にアメリカとヨーロッパで大きな影響を及ぼし、類似した試みが数多く登場した。そのうち、世界でもっとも活発な展開が見られたのはアメリカである。この報告では、こうした動きを「アイソタイプ運動」と総称し、1930年代のアメリカにおけるその動向を概観するとともに、普及の要因と特徴を探る。 まず、ルドルフ・モドレイの著作『How to Use Pictorial Statistics』を参照して、1930年代のアイソタイプ運動の代表的印刷物および制作者を概観する。次に、アメリカにおけるアイソタイプ運動の興隆の背景に同時期のニューディールがあったことを示す。最後にアメリカでの特徴として「アメリカ化」としばしば形容されていた図像統計のあり方について考察を加える。
著者
滝本 成人
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.G12, 2009 (Released:2009-06-16)

本件は、福井県越前市のタケフナイフビレッジ協同組合青年部との共同デザイン開発である。市販の家庭用パン切り包丁への不満の意見を調査した。 実験用の試作品包丁を9種類作った。被験者を用い食パンとフランスパンのカット実験をおこなった。当初は鎌の刃の利用を試みた。しかし、滑らかに動かないことが明らかになったことと、制作での技術的な問題が明らかになった。次に、直刃の一部に波刃の加工を試みた。再度、被験者を用いカット実験をおこなった。その結果、ハーフセレーションブレイドの優位性が確認できた。包丁の制作においては越前打刃物の伝統技術を用いた。
著者
伊藤 俊樹 松永 泉
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P10, 2009 (Released:2009-06-16)

大阪人(関西人)と東京人の間では気質の違いがあると一般に言われているが、そのことを実証的に研究したものは少ない。本研究では、臨床心理学で用いられる投影法の技法を応用して、大阪人と東京人の人間関係の持ち方の違いを明らかにすることを目的とした。具体的には、なんらかの人間関係(特に何らかの葛藤あるいはネガティブな状況を推測させるもの)を投影で きるような場面を4 場面(カフェ、コンビニ、電車の車内、店内)設定し、図版を4 枚作成した。被験者にはその図版を見て、過去、現在、未来に渡る物語を作ってもらい、その物語の違いを大阪人と東京人の間で比較検討した。被験者は大阪環状線の内側に位置する6 区に所在する事業所(30 名以上)に勤務する18 ~ 59 才の男女37 名(女性12 名、男性25名 平均年齢34.7 才)。東京山手線の内側に位置する12 区に所在する事業所(30 名以上)に勤務する18 ~ 59 才の男女36名(女性15 名、男性21名 平均年齢34.4 才)である。結果は、大阪人の方が東京人より人と人との間に何らかの人間関係をみることが多く、感情表現がよりはっきりしており、大阪には東京よりも物語が生まれやすい土壌があることが分かった。
著者
櫻 哲郎 森田 寿郎 植田 一博
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.A16, 2009 (Released:2009-06-16)

伝統芸能文楽では,3人の人形遣いが1体の人形を操作し,多彩な動作を実現している.本研究ではこの協調操作技術のメカニズム解明を目指し,合図となる非言語情報“ほど”に着目した動作解析を行った. まず人形の構造・操作方法について調査を行い概要を把握した.“ほど”とは操作の主導権を握る主遣いが 動作開始時に“型”と呼ばれる動作パターンや,動作の大きさ・速さなどの情報を他の人形遣い(左・足遣い)に伝達する合図と言われている.“ほど”を含む人形各部位の位置姿勢情報を計測するため,磁気式センサ内蔵型文楽人形を製作した.実機を用いて現役の人形遣いによる演技の計測実験を行った.得られた主遣いの操る右手と,左遣いの操る左手の速度情報に対しウェーブレット解析による位相解析を行った.結果“型”動作は3つの動作要素に分けられ,主遣いに対し左遣いが高い追従性を持つ動作要素の前に,主遣いが先行する“ほど”にあたる動作要素が発見された. 以上より,人形の協調操作において,主遣いの動作中に含まれる“ほど”と呼ばれる動作要素が,左遣いの動作追従を促し,人形全体の協調動作を実現していることを明らかにした.
著者
臼井 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E18, 2009 (Released:2009-06-16)

イタリア人の官吏・建築家アンジョロ・マッツォーニは、2大戦間期にイタリア全土にわたってモダンデザインの駅舎を多数実現した。1935年以降に竣工した駅舎については、彼は建築のみならずベンチやカウンターなど造付け家具、椅子や机、棚など据置家具、そしてコーヒーメーカーなどプロダクト、駅名板などグラフィック、さらには鋏立てなどステーショナリーまで、ありとあらゆるものを設計している。駅舎の建築と家具のデザイン的特徴について通覧すると、各駅でほぼ同じスタイルが繰り返されている。そして、建築と家具の形態を極端なまでに単純化させることでトータルなデザインとしての全体的な統一感が図られている。マッツォーニは一貫してこのようなトータルデザインを追求し、結果的にモダンデザインの駅舎を全国的に普及させた。イタリア国鉄の一つの駅舎スタイルを実現した建築家として、マッツォーニを改めて評価する。
著者
岩崎 信治
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.E19, 2009 (Released:2009-06-16)

1930年代までの日本建築史では曖昧にしか語れなかった日本美について明確に提唱した二人の建築家がいた。岸田日出刀(1899-1966)とブルーノ・タウト(1880-1938)である。岸田は1929年に文と写真による日本美を「過去の構成」の出版で示した。タウトは1933年に来日し、日本美について書いたものを「ニッポン」の題名で1934年に出版した。両氏が取り上げた日本美は、伊勢神宮、桂離宮、京都御所、弧逢庵など殆どがお互いに共通しており、共に日本美の聖地として永遠性を認めていた。このことは岸田の動機によることが大きく、タウトよりいち早く日本美を発見した岸田日出刀を高く評価すべきと考える。
著者
木村 光 林田 直澄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P28, 2009 (Released:2009-06-16)

豊橋鉄道東田本線は、半世紀以上の長い歴史を持つため、市内の周辺環境と合わなくなってきており、様々な問題が生じている。現在の都市環境と社会に合わせたLRTのあり方を研究し、今後の都市における公共機関の改善を視野に入れた。今回の研究で、2階建ての車両に2階建てのホームを提案した。これによって、短時間の間でスムーズに乗客の乗り降りができる。また、エレベーター付きの歩道橋と連続して、利用者は使用できる。
著者
越山 才 阿部 眞理 白石 照美
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.P36, 2009 (Released:2009-06-16)

近年、人々の環境に対する意識は高まりにより、様々な方面で環境に配慮する動きがみられる。その中に環境配慮紙というものがある。環境配慮紙は現在印刷用紙として使用されているが、それ以外の用途も期待できる。本研究では、環境配慮紙の力学的性質をまとめ、その結果をもとに新たな利用方法を見出すことを目的とする。本稿では8種類の環境配慮紙とPPC及び和紙に対し、4種類の強度試験を実施した。試験の結果、環境配慮紙の中で強度が高かったのはバガスとわら、低かったのはケナフであった。しかしいずれも和紙及びPPCと比較すると弱いことがわかった。
著者
山崎 和彦
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第56回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.C15, 2009 (Released:2009-06-16)

UCD手法は,ユーザーが見たり触ったりするものを対象に,統合的なユーザー体験をデザイン対象とする。また,プロトタイプとユーザー評価を繰り返えす事がUCDの重要な原則の一つになっている。ここでは,プロトタイピング手法の中でも,効率よくユーザー評価する手法としてペーパープロトタイピング手法に着目した。Snyderはペーパープロトタイピングをユーザー評価の一つの手法として「ペーパープロトタイピングとは,ユーザビリティテスティングの一種である。ペーパープロトタイピングでは,ユーザーを代表する人物が,現実に想定される課題を紙製のインタフェース上で実行する。この紙製のインタフェースは「コンピュータ役」の人によって操作されるが,コンピュータ役はそのインタフェースがどのような働きをするかを説明しない。」と定義している。ここでは,ペーパープロトタイピングを評価だけではなくデザインの各段階でも活用できることを考慮したペーパープロトタイピングの段階的な活用方法を提案する。