1 0 0 0 OA 橋本脳症の1例

著者
太田 敬之 山岡 博之 古川 安志 下村 裕子 中野 好夫 若崎 久夫 古田 浩人 西 理宏 佐々木 秀行 南條 輝志男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.6, pp.1375-1377, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
9

症例は68歳,女性.画像診断で異常を指摘できない意識障害を認めた.橋本病の存在から橋本脳症を疑い,血清抗N末端α-enolase抗体陽性であった.橋本脳症は抗甲状腺抗体に関連した自己免疫性の脳症と考えられており,多彩な神経症状を呈する.原因不明の脳症を診た場合は,本症を考慮することが重要である.比較的まれな疾患である橋本脳症の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
著者
山田 研太郎 村尾 茂雄 吉田 秀雄 中島 敏夫 吉井 町子 木村 正治 吉岡 寛康
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.1007-1011, 1981
被引用文献数
3 10

非寄生虫性脾嚢腫は希な疾患であるが,今回我々は副脾から発生したepidermoid cystの1例を経験した.症例は51才,男性.下腹部痛のため来院し腹部単純撮影で左下腹部に環状の石灰化像を認めた.疼痛は速やかに軽快したが精査のため入院.下腹部に軽度の圧痛を認めるも腫瘤は触知せず.臨床一般検査ではγ-GTPの軽度上昇以外著変なし.経静脈性腎盂造影法(IVP)で腎孟腎杯の変形なし.上部消化管透視では腫瘤は胃体部の後方に位置した. CT-scan,超音波断層で膵尾部に嚢腫を認め,血管造影で伸展した大膵動脈分枝が見られた.膵嚢腫の診断で開腹.膵尾部から突出した直径約6cmの嚢腫を認め,膵尾部・脾臓とともに切除.内容は乳白色の液体で,寄生虫,毛髪,細菌を認めず.アミラーゼ・リパーゼは低値であつた.病理所見では嚢腫壁内に脾組織の薄い層が存在し内腔を重層扁平上皮様細胞がおおつており副脾のepidermoid cystと診断した.脾epidermoid cystの成因は明らかでないが,本例では重大な外傷の既往はなく迷入組織から発生したと考えられる.脾epidermoid cystは若年者に多く石灰化は希とされている.本例の石灰化は比較的高年令であることによるものであろう.副脾は10%以上の人に存在するが検索しえた範囲では嚢腫発生の記載はなく,本例が第1例と考える.
著者
加藤 俊一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1978-1982, 1997-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7

臍帯血中には骨髄中の造血幹継胞に匹敵する造血幹細胞が多数含まれ,その増殖能力は骨髄造血幹細胞を凌ぐものであることが示されている.一方,臍帯血中のリンパ球は成人梢血リンパ球に較べ,非自己認識と異物処理能力が未熟であるため,造血幹細胞移植に際してはgraft-versus-host (GVH)反応が軽度となる特徴がある.このような臍帯血細胞の特徴に着目し,臍帯血幹細胞を用いた造血幹継胞移植が行われており,骨髄移植や末梢血幹細胞移植などと同等の成果がえられ始めている.同胞間臍帯血移植は200例程度,非面縁者間臍帯血移植は500例程度行われており, 1~2×107/kg.以上の有核細胞が移植されれば生着が可能であり, HLAが異なるドナーからでもGVH病の合併は軽度であることなどが報告されている.非血縁者間での臍帯血移植を実施するための臍帯血バンクが各国で設立されており,今後は骨髄バンクとならんで非血縁者間での造血幹細胞移植を推進するシステムとなることが期待されている.
著者
貫井 陽子 高崎 智彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.2435-2441, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
6

ウエストナイル熱は1999年米国ニューヨーク市での流行を契機に全米へ感染が拡大し,世界的に注目を集めている.本邦でも2005年に米国旅行後の患者で感染が確認されている.感染は蚊に吸血されることにより成立するが,これまでに輸血,臓器移植,母乳を介した感染の報告もある.診断は,病原体検出及び血清学的診断により行う.現時点でヒトに対し有効な特異的治療法や認可されたワクチンはない.

1 0 0 0 OA 内科学会NEWS

出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.News7-News7, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
著者
工藤 二郎 自見 庄三郎 大久保 英雄 柳瀬 敏幸 迫 良治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.740-745, 1981-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

症例はIgA欠損症にSLEを発症したもので, SLE発症から9年間の長期にわたり,臨床経過を観察したものである. IgA欠損症に関しては, in vitroの実験系においてリンパ球の免疫グロブリン産生能を測定し,本症例にみられるIgA欠損は抑制性T細胞の機能亢進によるものであると推定した.症例は29才の女性. 20才の時,長時間日光に被曝した後,発熱,関節痛が生じ,検査所見ではRA(+),血沈亢進がみとめられたが,同時にlgA欠損も証明された.慢性関節リウマチの診断の下にステロイドの小量投与療法が行なわれたが,ステロイドの減量に伴つて,発熱,発疹,髄膜炎様の症状が出現した.これらの多彩な症状はステロイドの増量によつて消失した.その後9年間,年1回の検査を行なつて観察をつづけたが, RA (+), IgA欠損以外に異常を認めず,臨床的にも全く無症状に経過した. 29才の夏,日光に被曝後,急性増悪を来して再入院した.再入院時にはANF陽性, LE細胞の出現からSLEと診断され, 9年前の初回入院時の多彩な臨床症状も, SLEによるものであつたと推定された.寛解期にあつた時にリンパ球のlgA産生能をin vitroの系で測定したが, IgA産生障害が証明され,しかも患者のT細胞は正常人のB細胞のIgA産生を抑制するとの成績が得られた.この抑制T細胞の機能亢進はSLE発症の前から存在していたものと推定される.
著者
横江 勇 原岡 ひとみ 與那嶺 智子 佐藤 ルブナ 西脇 農真 武井 正美
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.769-774, 2015-04-10 (Released:2016-04-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)に対してetanercept(ETN)治療中の74歳女性.低疾患活動性で推移していたが,投与開始6年後,皮膚・肺サルコイドーシスを発症した.さらに,心臓 MRIでは心筋炎を示唆する所見を得た.ETNによるサルコイドーシス発症の可能性を考え,投与を中止したところ所見の改善を得た.TNF阻害薬投与中のサルコイドーシス発症はparadoxical reactionとして注目されており,通常の発症より明らかに頻度が高く注意を要する.
著者
工藤 一彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.1410-1419, 1982-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20
被引用文献数
6

近年,本邦中心として心尖部肥大を呈する心筋疾患が注目され,特に深さ10mmを越す巨大陰性T波との関連において幾つかの報告を見るが,その病理組織像から見た肥大形式についての検討は殆どない.今回の研究は,心内膜心筋生検法を用いて病理組織学的検討を中心に,いわゆる心尖部肥大型心筋疾患の肥大様式につき検討を加えた.対象は37例(内訳は, HCM16例,高血圧性心疾患13例,プロの競輪選手8例)で,心尖部肥大の程度を左心室造影像により4型に分類し,心尖部肥大を示す群として20例,非心尖部肥大群17例とした.心尖部肥大群の中で17例(85%)は,心電図上深さ10mmを越す巨大陰性T波を伴つていた.一方,非心尖部肥大群では,僅か4例(23%)に巨大陰性T波を伴うのみであつた.心筋生検は,右心室ないし左心室より行ない,光顕下に観察した.心筋の横径では,心尖部肥大群と非心尖部肥大群との間に有意な差は認めなかつた.心筋の配列の乱れおよび間質の線維症では,心尖部肥大群は非心尖部肥大群に比べて穏やかであつた.心筋の変性あるいは核の変化については両群間に有意な差はなかつた.病理組織上,心尖部肥大型心筋疾患における肥大様式は穏やかな肥大であり,高血圧や運動などの既知の原因に伴う二次性肥大に適合した肥大様式であるといえる.また,心尖部肥大では,著明な乳頭筋の肥大の存在が特徴的であり,この事は巨大陰性T波の出現の一つの説明にもマッチする.
著者
玉井 佳子 高見 秀樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.1622-1630, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2 4

後天性凝固因子インヒビターとは,後天的に産生される凝固因子に対する自己抗体であり,先天性凝固因子欠乏症と同様に出血傾向を生じる.後天性凝固因子インヒビター大部分が凝固第VIII因子に対する自己抗体であり後天性血友病Aと称され,しばしば生命を脅かす重篤な出血を惹起する.従来まれな疾患であるとされてきたが,本症の概念の浸透と検査技術の発展により,報告例が増加している.本稿では,後天性血友病Aを中心に概説する.

1 0 0 0 OA 潰瘍性大腸炎

著者
松永 藤雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.295-322, 1958-07-10 (Released:2011-02-22)
被引用文献数
4 2
著者
花房 俊昭
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.479-481, 2006-03-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
3
著者
尾上 剛士 薄井 宙男 八幡 真弓 吉江 祐 山本 康人 市川 健一郎 野田 誠 斉藤 壽一 磯部 光章
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.12, pp.2547-2549, 2006-12-10
被引用文献数
1

症例は42歳, 女性. 進行する浮腫, 全身倦怠感にて来院. 心エコー上右心負荷所見が強く当初原発性肺高血圧症を疑った. 入院後急性増悪しショック, 急性腎不全となったが右心カテーテル所見より脚気心が疑われビタミンB1投与により速やかに循環動態が改善した. 健康に関心が強く健康食品を中心とした食生活を送っていた事がビタミンB1欠乏の原因と考えられ, 偏った健康知識が致命的となりかねなかった教訓深い症例と考えられた.
著者
松本 英之 宇川 義一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.1076-1083, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

脳脊髄液減少症は,従来,低髄液圧症候群と呼ばれていた疾患とほぼ同一の病態の疾患である.その病態が脳脊髄液の減少に起因すると考えられるため,脳脊髄液減少症がより適切な疾患名となっている.脳脊髄液の減少により,頭痛,頸部痛,めまい,耳鳴,視機能障害,倦怠・易疲労感など様々な症状を呈する疾患と定義される.本疾患の診断に有用な画像診断法には,頭部MRI(magnetic resonance imaging)やRI脳槽・脊髄液腔シンチグラムが挙げられ,治療は安静臥床,輸液による保存的治療と硬膜外自家血注入療法が一般的である.脳脊髄液減少症は未だ医療関係者の間でも十分に認識されているとは言い難く,しばしば誤った診断,治療がなされている.現在,厚生労働省の班会議「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する調査研究」で,脳脊髄液減少症の診断・治療指針(ガイドライン)の作成を目標とした研究が進行中であり,その調査結果が待たれるところである.
著者
簑田 清次
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.71-74, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

免疫系は感染防御が一義的役割であり,ヒトは遺伝子数でいえばヒトの全遺伝子の100倍以上の細菌遺伝子が体内(特に腸管)にあるといわれている.腸内細菌群と宿主の免疫系はお互いに牽制し合い,またお互いを助け合い,共存している.この共存が崩れると腸管の疾患を越えて全身の免疫疾患が発症する可能性があり,関節炎モデル,気管支喘息モデル,I型糖尿病モデル,ヒトの関節リウマチなどを例に説明する.
著者
小林 祥泰
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.5, pp.838-844, 1999-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

脳血管障害を引き起こす凝固系異常には先天性と後天性がある.先天性ではアンチトロンビンIIIやプロテインC, S欠損症によるものが多く,分娩や手術などを契機に上矢状静脈洞血栓症や脳梗塞をきたす.後天性では抗リン脂質抗体症候群,播種性血管内凝固症候群(非細菌性血栓性心内膜炎), Gaisböck症候群が重要である.また,近年,脳梗塞の危険因子として高ホモシステイン血症が注目されている.
著者
谷脇 雅史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.7, pp.1801-1806, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

染色体・遺伝子異常は,リンパ系腫瘍の病型分類,予後推定,治療選択の指標となる.double-color FISHが臨床検査法として確立しており,とくに,悪性リンパ腫と多発性骨髄腫におけるBCL2-IGH,CCND1-IGH再構成などの特異的IGH転座の検出に欠かせない.染色体分染法で病型特異的異常を単一細胞に検出した場合は,診断的意義を有しているのでクローン性を判定するために間期核FISH法で確認する.