- 著者
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猿田 享男
- 出版者
- 一般社団法人 日本内科学会
- 雑誌
- 日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
- 巻号頁・発行日
- vol.85, no.2, pp.285-291, 1996-02-10 (Released:2008-06-12)
- 参考文献数
- 20
ある一定濃度のインスリンの存在下で,正常に発揮されるインスリン効果がみられない状態がインスリン抵抗性である.当初は,肥満者やインスリン非依存性糖尿病患者等,ある特殊な病態にみられる変化と考えられていたが,最近になって,想像された以上に多くの疾患がこの病態に関与していることが明らかとなった.さらにインスリン抵抗性を基礎病変として,糖代謝異常のほか,高脂血症,高血圧,血液凝固系の異常等の諸変化をきたし,動脈硬化の進展から,脳・心血管系疾患の発症に密接に関与する病態として注目されるようになった.このような諸病態を総括する名称としてsyndrome X, deadly quartet,あるいは本稿のテーマとなっているインスリン抵抗性症侯群等が提唱されている.さらにこのような病態を呈するものでは,内臓に過剰な脂肪蓄積を呈することが多いことから,内臓脂肪症侯群なる概念も提唱されてきている.