著者
渡辺 啓 大村 孝之 池田 智子 三木 絢子 勅使河原 喬史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.185-191, 2009-09-20 (Released:2011-12-09)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

W/O乳化は油性の成分を皮膚に展開しやすく,高いエモリエント性などの特徴がある重要な基剤である。このような機能性の一方で,W/O乳化には技術的に改善すべき課題が存在する。本研究では,乳化剤として複数の水酸基を有する親油性の界面活性剤であり,水との共存系で二分子膜が立方晶型に充填した特異なバイコンティニュアスキュービック液晶を形成することが知られているフィタントリオール(3, 7, 11, 15 -tetramethyl- 1, 2, 3 -hexadecanetriol)に着目した。その結果,非極性油,極性油,シリコーン油などさまざまな油分系において,97%もの高内水相比でありながら安定なW/Oクリームを調製することに成功した。乳化メカニズムを解明するため,水,油,フィタントリオール3成分系における相平衡を詳細に検討した。この結果,本乳化系においては,バイコンティニュアスキュービック液晶と構造的な相関性の高いバイコンティニュアスマイクロエマルション相を外相として有するという興味深い乳化メカニズムが明らかになった。さらに,皮膚に塗布時の溶媒の揮発に伴う組成変化により,薄い液晶膜が皮膚上に展開し,さまざまな機能が付与されることが明らかになった。本技術により,重要な機能であるエモリエント性,オクルーション効果がありながら,べたつき,油っぽさがない,極めてさっぱりとした良好な使用感触のクリームが初めて調製可能となった。
著者
石戸谷 豊昌 岡田 正紀
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.64-66, 2001

角層の自然剥離は, 角層中のプロテアーゼによりデスモゾームが加水分解することによって起こり, 乾燥による水分不足がプロテアーゼ活性を阻害し, 角層の剥離不全をきたすことが知られている。そこで被験者に睡眠不足をストレスとして与え, 就床時に嗜好性の高い香りをルームフレグランスの剤型として用い, 香りが角層中のプロテアーゼ (トリプシン) 活性にどのような影響を及ぼすかについて検討した。その結果, 香りの存在する場合の方が, 存在しない場合に比較して角層中のプロテアーゼ活性が有意に高かった。快適な香りが心理面に好影響をもたらし, 良質な睡眠により正常時の心身状態に近づいたためではないかと思われた。
著者
片桐 崇行 大久保 禎 及川 みどり 二木 希世子 釈 政雄 河合 充夫 竹ノ内 正紀
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.42-49, 2001-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
11
被引用文献数
8 11

より効果の高い美白剤を開発する目的で, メラニン産生にかかわるチロシナーゼとTRP-1の活性阻害に着目して研究を行った。その結果見出した4-n-ブチルレゾルシノール (以下BRと略す) は, 強力なチロシナーゼ活性阻害作用に加えTRP-1活性阻害作用も併せ持っていた。BRは細胞毒性によらずB16マウスメラノーマ細胞のメラニン産生を可逆的に抑制し、その力価は広く美白剤として応用されているアルブチン・コウジ酸より強力であった。0.3% BR配合ローションは, ヒト紫外線色素沈着に対し, 照射前から塗布した系で有意な抑制作用を示すとともに, 色素沈着が認められた後から塗布を開始した系においても, 有意な色素沈着消退促進作用を示した。また, 449名の健常女性を対象とした1ヵ月間の使用試験においてもシミ・ソバカスに対する有効性が認められたことから, BRは優れた効果の期待できる美白剤であると考えられた。さらには肝斑を対象とした臨床試験においても83.9% (52/62例) にやや有用以上の有用性が認められたことから, 肝斑に対する臨床的な応用も期待される。
著者
牧 祐介 森田 美穂 浅井 咲子 森田 哲史
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.12-17, 2017 (Released:2017-03-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

目元のくすみに悩む女性は多い。その理由としては,女性は日頃のアイメークなどに際し目元を注視する機会が多いことに加え,実際にくすみの程度が大きいことが考えられる。特に上眼瞼は,顔の中でもアイメークやその除去など摩擦や圧迫などの物理刺激に晒されている部位である。われわれは,上眼瞼におけるくすみの発生にはこれらの物理刺激が関与しているのではないかと考えた。そこで本研究では,物理刺激によるメラノサイトの活性化に着目し,上眼瞼のくすみの発生メカニズムを明らかにすることを目的として研究を行った。その結果,3 次元培養ヒト皮膚モデルに対する荷重負荷はメラニン生成を促し,ここに一酸化窒素が関与していることが明らかになった。さらに,一酸化窒素消去作用のある素材を用い,化粧品に配合して有効性評価を行ったところ,上眼瞼におけるくすみ改善作用がみられた一方,頬に対する作用はみられなかった。これらの結果から,上眼瞼のくすみ発生には,日常的に繰り返される物理刺激とそれに伴って生成される一酸化窒素が関与していることが明らかになった。
著者
後藤 眞
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.68-71, 2009-06-20 (Released:2011-12-07)
参考文献数
5

炎症性サイトカインであるTNFαなどが,メタボリック・シンドローム,動脈硬化,糖尿病など老化に密接に関連した疾患群の病因として有力視され,カロリー制限により,線虫をはじめ多くの多細胞動物でも寿命延長が観察され,熱産生を行うエネルギー代謝,炎症の解析が進み,自然免疫系を介する慢性炎症が老化の原動力として最近注目を集めている。本レビューでは,メタボリック・シンドローム,関節リウマチ,ウエルナー症候群を具体的な炎症性老化モデルの例として解説する。
著者
坂口 三佳 末永 えりか 川口 幸治
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.106-111, 2019

<p>毛髪は熱,紫外線,摩擦など外的ダメージを日常的に受けており,シャンプーやコンディショナーなどの毎日のヘアケアでダメージを防止することが求められている。シャンプーにカチオン性ポリマーを配合することにより,洗髪時にシャンプー洗浄成分とカチオン性ポリマーの複合体(コアセルベート)が形成され,すすぎ時の髪のきしみ感が低減されることが知られている。特に,近年注目されている"ノンシリコーンシャンプー"ではシリコーンの代わりにコンディショニング効果を担うためカチオン性ポリマーが配合されているが,シリコーン配合シャンプーと比較して洗い流し時にきしみを感じるといった声がいまだ多い。一方,シャンプー後のコンディショナー塗布時には毛髪表面に残存したコアセルベートの電荷が正の方向になるため,電荷反発でコンディショナーが付着しにくいといった問題がある。これらを解決すべく,疎水基を有する新規ポリマーを設計し,毛髪に対する効果を動摩擦係数や接触角などを測定することによりシャンプーすすぎ時のみならず,シャンプー後に使用するコンディショナーの効果も向上させることができる新規カチオン性ポリマーを開発したので報告する。</p>
著者
滝脇 弘嗣
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-9, 1998-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
55

皮膚科学では病理組織学や生化学, 細胞生物学などの手技を用いたin vitroの研究が中心であり, in vivoで行われる生理学的研究は少なかった。その理由のひとつに, 生理学的検査に必要な方法が普及していなかった事があげられるが, 電子工学やコンピューターの飛躍的発展に伴って様々な機器が開発・実用化され, 皮膚の性質や状態を非侵襲的に計量し, モニターできるようになった。工学的手法を用いて皮膚をin vivoで計測する新しい分野は皮膚計測工学と呼ばれ, 皮膚科の研究や臨床へ応用されつつある。その現状や問題点について概説した。
著者
傳田 光洋 高橋 元次
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.316-319, 1990-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
4
被引用文献数
5 15

We studied the change in skin thickness of forehead and cheek with age for healthy male and female subjects using ultrasound method. Skin thickness decreased with ageing in forehead and cheek in both sex groups, and it was thicker at every age group in males than in females.We also measured the skin thickness from twelve different sites at face in six healthy subjects. It was shown that skin thickness of eyelid was thinner than that of jaw or cheek.
著者
藤原 延規 豊岡 郁子 大西 一行 小野原 悦子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.107-112, 1992-10-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9
被引用文献数
1 3

Human skin surface has been analyzed in situ after washing with fatty acid soap by attenuated total reflectance using Fourier transform infrared spectroscopy. The residue of fatty acid soap on the skin was observed when calcium ions were present in the water being used, and it was confirmed to be adsorbing onto the skin as fatty acid calcium salts. This adsorption residue was quantified using the Amide I or Amide III absorption bands of the epidermal horny proteins as an internal standard.The behavior of adsorption residues has been examined with this method, and it was confirmed that the quantity of adsorption residue increased depending on the calcium ion concentration in the water. Furthermore, it was suggested that the adsorption residue was induced by the insoluble salt formation from fatty acid anions adsorbed onto the skin and calcium ions at the time of rinsing. Fatty acid calcium salts adsorbed onto the skin were gradually desorbed by sufficient rinsing, but the influence of calcium ions was also seen in this case. This desorption speed was slower when calcium ions were present.
著者
吉村 政哲 城倉 洋二 花沢 英行 野崎 利雄 奥田 峰広 芋川 玄爾
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.249-254, 1993-12-16 (Released:2010-08-06)
参考文献数
20
被引用文献数
4 1

Lauroyl beta-alanine (LBA) is a unique amino acid derivative-surfactant which has recently been found to have very low potential of inducing a specific inflammationrelated receptor on epidemal cells, intercellular adhesion molecule-1 (ICAM-1) when incubated with human keratinocytes. This led us to assume that this surfactant possesses very low cutaneous inflammatory properties as opposed to ordinary commercially available anionic surfactants. Thus, we have assessed the biologic effects of LBA on several cellular derangements in the stratum comeum, cytotoxicity against human keratinocytes and an influence on arachidonic metabolism in skin tissue in comparison with those by other ordinary anionic surfactants such as potassium myristate (SOAP), sodium dodecyl sulfate (SDS), sodium cocoyl isethionate (SCI), acylmethyl taurine (AMT) and monoalkyl phosphate (MAP).Permeability experiments using hairless pig skin indicated that LBA is 10 and 3 times as lower permeable as SOAP and MAP, respectively. In in vitro study on human keratinocytes, of all anionic surfactants used, LBA showed the lowest inhibitory effect on cell growth which was accompanied by a lower level of the release of arachidonic metabolite such as prostaglandin E2 (PGE2) from human keratinocytes. This mild cellular effect was also corroborated by the previous observations that LBA elicits on substantial expression of ICAM-1 which has recently been identified on surface of epidermal cells in inflammatory dermatosis typified by T cell infiltration, in contrast to a marked expression by some of other anionic surfactants.In order to clarify in vivo cutaneous effect, cumulative cup shaking test was carried out on the inner surface of human forearm skin by applying surfactant aqueous solutions twice a day for four days. Whereas almost all anionic surfactants induced severe scaling and erythematous reactions during repeated treatments, LBA was the only surfactant which did not elicit any roughness and inflammatory reaction. This non-inflammatory property was also corroborated by an additional study on damaged skin that roughened forearm skin after acetone/ether treatment can be slightly restored even by successive applications of LBA, but not other anionic surfactants used. These findings indicate that LBA has biologically low active properties to both stratum coreum and epidermal cells which may lead to the development of a unique surfactant applicable to damaged skins.
著者
池田 英史 西浦 英樹
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.9-18, 2013-03-20 (Released:2015-08-22)
参考文献数
16
被引用文献数
2 1

近年,敏感肌を自覚する女性が増えており,敏感肌をターゲットにした市場も広がっている。しかし,敏感肌化粧品の安全性評価は明確なin vitro試験法が存在しないことから,実際の敏感肌者で評価を行っていることが現状である。そのため,敏感肌を想定したin vitro試験法の確立が望まれている。また,化粧品業界では,動物愛護の観点から動物を使用しない動物実験代替法を用いることが増えている。このような背景から,今回われわれは敏感肌の症状の一つであるバリア機能の低下に着目し,3次元培養表皮モデルLabCyte EPI-MODEL 13日培養品および6日培養品を用いて,敏感肌を想定した安全性評価ツールとしての可能性を検討した。6日培養品は13日培養品に比べ,角層が薄く,セラミド量も顕著に低い値を示し,TEWL値も高い傾向を示した。また,in vitro皮膚刺激性試験の結果から,角層の薄い6日培養品はほとんどの化学物質および化粧品製剤において,13日培養品よりも高い刺激感受性であることを示した。さらに被検物質の暴露時間を長くすることで,より明確な結果になることを確認した。これらの知見は,LabCyte EPI-MODEL 6日培養品を用いることで,化学物質および化粧品製剤の潜在的な皮膚刺激レベルを評価することができ,敏感肌化粧品開発における安全性評価ツールの一つになり得る可能性を示唆している。
著者
山下 真司 松井 康子 戸叶 隆雄 吉岡 正人
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.219-223, 2012-09-20 (Released:2014-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

ヘアアイロンやコテのような高温の熱を利用した毛髪のスタイリングが広がってきているが,毛髪はこのような熱によりダメージを受けてしまう。そこで本研究では,毛髪の熱ダメージおよび,毛髪のアミノ酸組成における熱ダメージの指標について検討した。熱により毛髪中のシスチン残基からランチオニン残基が生成するため,毛髪のアミノ酸組成におけるダメージの指標として利用されてきたシステイン酸に加え,ランチオニンもダメージの指標として確認する必要があると考えられた。実際,ブリーチやパーマを施した毛髪ではシステイン酸の増加がみられたが,熱処理を行った毛髪ではシステイン酸でなくランチオニンの増加がみられた。さらに,熱処理による毛髪の水分量の低下や引張り強度の低下も確認した。以上のことから,熱処理により毛髪がダメージを受けると同時にランチオニンが増加し,熱ダメージの指標として毛髪のアミノ酸組成によるランチオニンの定量が有効であった。
著者
上條 正義
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.92-99, 2011-06-20 (Released:2013-06-20)
参考文献数
27

人のモノとの接触知覚には,手などによって触診する能動的触知覚と人の意識には関係なく接触する受動的触知覚がある。接触する行為は,接触した物体の特性を理解する一つのコミュニケーション手段であると考えることができる。経済産業省から感性価値創造イニシアティブが宣言された以降,製品に新しい価値を付加する感性価値への関心が高まり,多くの産業において感性価値創造の取り組みが活発になっている。製品に付加する価値として,接触知覚における手触り,肌触りの良さが重要な要件として注目されている。本稿では,繊維製品の風合いが人体に対して与える影響を事例として,生理反応を計測することによって手触り,肌触りストレスを評価する研究について紹介する。
著者
水野 誠
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.271-277, 2013-12-20 (Released:2015-12-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1

日本では,日焼け止め化粧料の紫外線防御効果はSPFやPAといった指標で表されている。これらは国の定めた基準ではなく,日本化粧品工業連合会 (粧工連) が自主基準として制定した試験法での測定結果に基づいたものである。本稿では,日本において2013年1月から追加導入されたUVA防御効果におけるPA++++表記をはじめ,紫外線防御効果に関する測定法や表記法についての最近の動向について紹介する。
著者
大江 昌彦 奥村 秀信 山村 達郎 松中 浩 森岡 恒男
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.220-225, 2004-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

海水に含まれるミネラル成分であるオリゴマリン®について, 保湿ならびに肌荒れ改善作用に着目して検討を行った。その結果, オリゴマリン®は培養真皮線維芽細胞を活性化して, コラーゲン産生を促進した。また, 培養ケラチノサイトに対しては, 角化マーカーであるトランスグルタミナーゼ (TG-1) やインボルクリンの発現を高め, 角化を充進させることを確認した。さらに, オリゴマリン®の配合量に応じて角層水分量が増加することから, 肌表面での保湿作用が確認できた。実際に, 乾燥肌の被験者を対象とした使用試験の結果, オリゴマリン®を配合したローションの使用部位で角質水分量の増加, TEWLの減少, ならびに角質細胞形態の改善が観察された。したがって, オリゴマリン®には, 真皮マトリックス構造を強化するとともに, 表皮の角化を促してバリア機能を改善することで肌表面の水分保持能を高め, 肌荒れの予防・改善に有用であることが示唆された。
著者
石戸谷 豊昌 岡田 正紀
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.64-66, 2001-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
7

角層の自然剥離は, 角層中のプロテアーゼによりデスモゾームが加水分解することによって起こり, 乾燥による水分不足がプロテアーゼ活性を阻害し, 角層の剥離不全をきたすことが知られている。そこで被験者に睡眠不足をストレスとして与え, 就床時に嗜好性の高い香りをルームフレグランスの剤型として用い, 香りが角層中のプロテアーゼ (トリプシン) 活性にどのような影響を及ぼすかについて検討した。その結果, 香りの存在する場合の方が, 存在しない場合に比較して角層中のプロテアーゼ活性が有意に高かった。快適な香りが心理面に好影響をもたらし, 良質な睡眠により正常時の心身状態に近づいたためではないかと思われた。
著者
徳永 晋一 棚町 宏人 井上 滋登 森岡 智紀 辻村 久 丹治 範文 波部 太一 山下 修
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.190-198, 2011-09-20 (Released:2013-09-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

毛髪表面は18-MEA (18-メチルエイコサン酸) に覆われ,疎水的かつ低摩擦に保たれている。しかし,18-MEAはヘアカラーなどのアルカリ処理で容易に失われ,毛髪表面は親水化し摩擦は増大する。それは,毛髪の指通りや櫛通り,感触の悪化に影響すると考えられる。そこで,前述のようなダメージ実感を改善するため,18-MEAを表面に高吸着させることによる疎水性・低摩擦などの表面物性を回復させる技術開発を行い,18-MEAと特定の長鎖3級アミン (ステアロキシプロピルジメチルアミン:SPDA) の組み合わせにより,それが可能であることを見出した。その高吸着性のメカニズムを明らかにするため,18-MEAとSPDAから形成される吸着膜の解析を行った。その結果,その吸着膜はアルキルを外側に向けた状態で,表面を均一に覆い,18-MEAの末端の分子運動により最表面に液体状の相を形成することで,耐摩擦性を有することを見出した。さらに,18-MEAとSPDAを含有するコンディショナーの使用テストでは,滑らかな感触に加え,浮き毛や跳ね毛を減少させるなど,ヘアスタイルのまとまりをも向上する効果をもつことを見出した。
著者
窪田 正男 駒木 亮一 伊藤 芳和 新井 みち代 庭瀬 英明
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.295-298, 1994-12-05 (Released:2010-08-06)
参考文献数
6
被引用文献数
7 9

It has been known empirically that the odor evolved from human hair and scalp is different from the odor from body or foot.We tried to identified the volatile compounds evolved from human hair and scalp using headspace sampling method and extraction by acetone.By the headspace method, over eighty of compounds were detected and almost thirty subsequently identified. The latter belong to various chemical classes such as alkanes, alkenes, alcohols, aldehydes, and acids. we tried to reconstitute of the odor according to the result of analysis and using the sense of perfumers.Moreover, the changing of volatile compounds and increasing of scalp resident bacteriars during three days were investigated.
著者
河野 善行
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.253-261, 2002-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1

保湿は肌荒れに対して大変有効な手段であり, また化粧品の最も基本的かつ重要な機能と考えられる。そして多くの種類のエモリエント剤や保湿剤が皮膚の水分保持や乾燥を防御することを目的として用いられてきた。角質層においては, 自然保湿成分 (NMF), 皮脂および細胞間脂質の重要性が証明されてきた。皮膚科学的なアプローチの観点からわれわれは皮膚保湿のメカニズムのアナロジーを皮膚上で再構築してきた。具体的には肌荒れに対して, 水, 保湿剤および脂質を等価に皮膚に補う“モイスチャーバランス”の有用性を証明してきた。これらとは別に化粧品の開発に薬理学的なアプローチの観点も重要であり, 新規な化粧品有効成分の開発に大変役に立つ方法論である。近年われわれは, 肌荒れにおいて表皮プロテアーゼが重要な役割を果たすこと, またその活性を阻害することが修復を促すことを明らかにしてきた。そして表皮プロテアーゼであるプラスミンの阻害活性を有し, 肌荒れに効果を有するt-AMCHAを開発した。本総説では, 皮膚の保湿のメカニズムと, 皮膚科学的にまた薬理学的に開発されたスキンケア化粧品についてレビューする。