著者
舛田 勇二 高橋 元次 佐藤 敦子 矢内 基弘 山下 豊信 飯倉 登美雄 落合 信彦 小川 克基 佐山 和彦
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.202-210, 2004-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
3
被引用文献数
5 6

美容上問題となる「目の下のくま」の発生要因として, 一般的に血流の停滞が言われているが, 実際にくまと血流の関係について調査した報告は少なく, また, くまについて皮膚生理学的に論じた報告もほとんどない。そこで本研究では, 非侵襲的な方法を用いくまを皮膚科学的に解析し, その要因を明らかにするとともに, その対応を考え, 「目の下のくま」改善効果の高い商品の開発を行った。くまの発生要因を明らかにするために, くまのある女性とない女性を対象に, 眼下部の皮膚メラニン量, ヘモグロビン量およびヘモグロビン酸素飽和度, 血流速度の計測を実施した。くまのある女性の眼下部では, ヘモグロビン量の増加およびヘモグロビン酸素飽和度の減少が観察された。くま部位では頬と比較して血流速度の低下が見られたことから, 上記結果は血流の停滞により引き起こされたと考えられる。またメラニン量の増加も同時に観測され, その傾向は高年齢層でより顕著であった。以上の結果から, くま部位の明度低下は, 血流速度の低下による皮膚毛細血管内の還元ヘモグロビンの増加と, 皮膚メラニン量の増加によるものと考えられた。以上の検討をもとに, くま発生の主要因である「鬱血」および「色素沈着」, くまを目立たせる小じわ, キメの悪化の各々に対処した「血行促進剤」「美白剤」「保湿剤」配合プロトタイプ製剤を処方し, 3週間の連用効果試験を実施した。その結果, 美容技術者による目視評価, 被験者のアンケートにおいてプロトタイプ製剤の, 高いくま改善効果が確認された。また, 機器測定によってもヘモグロビン酸素飽和度の上昇とメラニン量の低下が確認され, 「くま」の改善に本処方は効果的であることが示された。
著者
舛田 勇二 國澤 直美 高橋 元次
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.201-208, 2005-09-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
3 11

肌の透明感は美しい肌の大きな要因の一つである。しかし, 現時点では実用的な評価法は美容技術者による視覚評価しかなく, また, どのような皮膚生理特性がいかなる作用で透明感を変化させるかについては明らかになっていない。本研究の目的は, 光学的手法を用いて肌の透明感を客観的に評価する方法を確立することと, 透明感に与える皮膚生理特性の作用機序を明らかにし肌の透明感向上に高い効果のある商品を開発することである。ゴニオメーターの入射光部と受光部に偏光フィルターを組み込むことで反射光を拡散反射成分と鏡面反射成分に分離して計測可能な光学測定機器 (変角偏光反射率測定装置; 偏光ゴニオメーター) を開発した。偏光ゴニオメーターにより計測される鏡面反射光および拡散反射光と透明感との関係を解析した結果, 透明感と拡散反射光の強さには高い正の相関 (r=0.699) があることが判明した。一方, 鏡面反射光とはほとんど相関 (r=0.190) がなかった。透明感と皮膚生理特性間でのPLS解析 (Partial Least Square Analyses) の結果から, 透明感の高い肌はキメが細かく整っており, 角層水分量が多く, メラニン量, ヘモグロビン量が少ないことがわかった。透明感のある肌の皮膚生理要因に対応させて「美白剤」「血行促進剤」「高保湿剤」を配合した美容液を作製し, 一般女性パネルを対象に8週間の連用効果試験を実施した。連用後において偏光ゴニオメーターによる拡散反射光は統計的有意差をもって増加し, 被験者の自己評価においても透明感の向上が認められた。
著者
橋本 文章 春山 道子 山下 登喜雄 磯 敏明
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.126-133, 1989-09-15 (Released:2010-08-06)
参考文献数
6
被引用文献数
4 2

The effect of the alkyl chain length of fatty acid soaps (C12-C18) and the other type of surfactants using for cleansing foams on adsorption on skin and on selective cleaning ability have been studied. It has been also examined whether there is any relationship between the adsorption volume of the surfactants, selective cleaning ability and skin condition.Squalene and cholesterol were used as indicator of the selective cleaning. The selective cleaning ability of the surfactants has been obtained from the wash-off ratio of cholesterol/squalene +cholesterol. Potassium palmitate and potassium stearate indicated to have higher wash-off ratio than other surfactants and had the selective cleaning ability. Besides these surfactants did not adsorb on skin. Moreover in an users' test of cleansing foams, the skin condition applied the sample including palmitic acid and stearic acid was better than that of another sample.In conclusion, it has been suggested that the surfactants which do not adsorb on skin and have selective cleaning ability maintain the skin condition to be good.
著者
末次 一博 白石 秀子 泉 愛子 田中 弘 芝 篤志
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.44-56, 1994-06-30 (Released:2010-08-06)
参考文献数
21
被引用文献数
2 3

A large variety of microorganisms such as Propionibacterium acnes and Staphlococcus epidermidis exist on the human skin surface, forming a skin microbial flora. This flora is likely to influence the skin surface defence and the skin surface condition. This report covers the correlation between the skin microbial flora and the skin surface condition.We found that the larger numbers of P. acnes are concerned in the worsening of skin surface condition. The skin condition closely correlated to the amount of free fatty acids on the skin, and also we found that the larger quantity of the free fatty acids leads the worsening of skin surface condition. These results suggest that the lipase of P. acnes may hydrolyze triglycerides on the skin surface into the free fatty acids which irritate the skin.On the other hand, we found that both S. epidermidis itself and the peptides produced from various proteins by S. epidermidis have high antioxidative activity. This result suggests that S. epidermidis protects the lipids on the skin from oxidation caused by e. g. ultraviolet rays.From these results we suggest that P. acnes make worse the skin surface condition, whereas S. epidermidis serves an important function of prevention of the worsening of the skin condition by harmful lipids peroxides.
著者
栃尾 巧 森地 恵理子 広瀬 統 中田 悟 久世 淳子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.121-127, 2008-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
18

近年の研究から, メイクアップは心理的な指標だけでなく生理的な指標においても精神的ストレスの緩和効果があることが示されている。本実験において, われわれは, 精神的ストレスとsuperoxide dismutase (SOD), catalase (CAT) のような活性酸素消去酵素の関係およびメイクアップによる精神的ストレス緩和効果の活性酸素消去酵素に対する影響について調べた。実験1において, 精神的ストレス負荷前後に唾液中のコルチゾール濃度とSOD活性を測定したところ, 負荷前に比べコルチゾール濃度の増加とSOD活性の低下がみられた。また, 実験2において, 精神的ストレス負荷後にメイクアップを行った実験群は, 精神的ストレス負荷前に比べ, 唾液中のコルチゾール濃度は減少傾向にあり, SOD, CAT活性は増加した。また, 心理的効果として, 状況不安の低下や精神的健康度の上昇などが示された。以上の結果から, メイクアップは精神的ストレスによる心理的不安を解消し, 活性酸素消去酵素の活性低下を抑制すると考えられた。
著者
岡本 亨
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.187-193, 2016-09-20 (Released:2017-03-21)
参考文献数
12

角層の乾燥は肌荒れを引き起こす。角層保湿はスキンケア化粧品にとって重要な機能である。角層保湿においては,角層に水を保持することと,皮膚からの水の揮散を防ぐことが重要である。スキンケア基剤の物理化学的な性質はこれらと密接に関係しており,適切な基剤設計を行うことで保湿作用を高めることができる。保湿剤は角層保湿において重要な役割をもっている。保湿剤は角層に貯留されることで保湿機能が高まることから,角層への浸透性を高めるためには,保湿剤の角層への分配を高める成分を水相に配合する手法が有効である。また,αゲル基剤は少量の適用でも優れた角層保湿効果を示す優れた基剤である。炭化水素油分のような疎水的な成分で肌を閉塞すると,皮膚からの水分蒸散が妨げられて肌表面に水分を保持することができる。閉塞効果は分子量の高い油分で高まるが,基剤を肌上に均一に展開することが重要である。さらに,保湿剤の浸透と水分のオクルージョン効果を両立した基剤としてαゲル基剤の超微細エマルションについて紹介する。これらのコンベンショナルな手法に加えて,角層細胞間脂質の修復に関する新たな知見について議論する。
著者
矢部 信良 百瀬 重禎
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.372-378, 1998-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
12
被引用文献数
40 39

酸化セリウムを利用した新しい紫外線遮断剤を合成した。不定形シリカによりコーティングすることにより, 酸化セリウムの高い紫外線遮断効果を保ったまま触媒活性を低下させることに成功し, 種々の化粧品剤型への応用が可能となった。水溶液中で水酸化セリウムと珪酸ナトリウムから合成した粒子は, 酸化セリウムと不定形シリカの割合が7:3の場合に紫外線遮断能と, 触媒活性の低さの面から最も化粧品素材として有用性が高かった。この1次粒子は平均で, 長径が50nm, 短径が6nmの針状微粒子であった。化粧品製剤への応用についての検討を行った結果, 高いSPFを与える配合量においても, 肌上に使用した場合の高い透明性と, とくにメーキャップ製品の外観色に与える影響を最小限に抑えることができることを確認できた。
著者
見城 勝 大倉 さゆり 任田 美穂 金子 智佳子 太田 尚子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.365-373, 2000-12-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
15
被引用文献数
5 3

皮脂は皮膚表面に恒常的に分泌されて皮膚表面の保護的作用を果たす一方, 過剰あるいは不十分な分泌による肌状態への影響が懸念されている。皮脂成分と肌状態の関係についてはこれまでも多くの研究が行われているが, 季節変動に着目して検証した例は少ない。われわれは皮脂の分泌量および組成と肌状態評価値について, 個人レベルでの季節的な変動幅 (冬, 春) について検討を実施したところ, 以下に示す興味深い結果が得られた。 (1) 総皮脂量と組成は冬, 春で大きく変動し, その傾向は個人により異なっていた。 (2) 肌状態評価値も季節変動があり, 傾向は個人により異なっていた。 (3) 皮脂成分と肌状態の解析を個人で対応させて実施したところ, 皮脂中の遊離脂肪酸比率の低下に伴い乾燥性の肌荒れが改善すること, 不飽和度 (遊離脂肪酸中の不飽和/飽和比率) の低下により角質細胞面積が増大傾向にあること等が見出され, 皮脂成分の変動が肌状態に影響を与えている可能性が示唆された。 (4) 肌質との関係については, 不飽和度が高く総皮脂量が少ない人たちがやや敏感肌および敏感肌群に属していたことから, 皮脂組成が肌の敏感度にも影響を与えている可能性が示唆された。
著者
江浜 律子 岩渕 徳郎 飯野 雅人 中沢 陽介 出田 立郎 辻 善春 大浦 一 荒瀬 誠治 岸本 治郎
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.35-40, 2011-03-20 (Released:2013-03-18)
参考文献数
8

最も一般的な女性の薄毛は “female pattern hair loss (FPHL)” に分類され,男性ホルモン依存性脱毛 (androgenetic alopecia : AGA) とは異なる特徴を示す。AGAでは頭頂部や前頭部が顕著に薄毛化するのに対し,FPHLではより広範囲にわたってびまん性に毛髪密度が低下し,髪の生え際の後退は認められない。アデノシンは細った毛髪を太く成長させることにより太い毛の割合 (太毛率) を高めて男性におけるAGAを改善することが示されている。本研究では女性の薄毛改善に対するアデノシンの有効性を検討した。薄毛女性を対象とした12カ月間連用試験の結果,アデノシン配合ローション使用群ではプラセボ群に比較して太毛率が有意に高くなった。さらにアデノシンに加えてパナックスジンセンも配合したローションの6カ月連用試験の結果,連用前後の比較で毛髪密度の増加が認められた。いずれの試験においても副作用は観察されなかった。以上の結果より,アデノシンは男性のみならず女性のQOL (quality of life) をも改善する安全で効果的な育毛剤として有益であることが示された。
著者
飯田 年以 大庭 美保子 松野 文雄 古賀 信義
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.278-286, 2014-12-20 (Released:2016-12-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

手の甲は年齢が隠せない部位であり,手荒れや乾燥などが悩みの上位に挙げられている。これまで手の甲の測定データとしては,保湿クリームで角層水分量の上昇や経皮水分蒸散量が低下して手荒れが改善するといったものが主流で,弾力や色などの知見は少なかった。われわれは,日本を含め3カ国の30~50代女性633名を対象にアンケート調査し,顔以外では手の甲に悩みを持つ人が多いことを見出した。そこでその状態を調べるため,日本人と日本在住の欧米白人の30~50代女性73名の手の甲について,角層水分量などのほか,弾力や色を測定した。その結果,弾力は日本人が欧米白人よりも高い傾向にあるが,いずれも加齢に伴い低下していた。それ以外の角層水分量などは,加齢との関連はみられなかった。一方,弾力の低下とともにb*値(黄み)が減少する傾向にあるのが日本人で,ヘモグロビン量が増加する傾向が日本人と欧米白人でみられた。さらに,視感により手の甲のきれいな人ときれいではない人を約10名ずつ選び,測定値を比較した結果,手の甲のきれいな人は弾力と明度が高く,赤みが低いことが明らかになった。これら条件が美しく見える手の甲を保つ秘訣となると考えられた。
著者
小西 奈津子
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.89-93, 2008-06-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
4

最近, 美容雑誌・女性誌の影響もあってか, 世の女性の毛穴に対する美意識が高まってきているように感じる。実際に, 外来でも毛穴をなんとか改善したいという患者が少しずつだが増えてきている。このような毛穴の開きを主訴に来院される患者に対し, 女性外来ではまずは正しいスキンケアの指導を行っている。間違ったスキンケアを行っている患者は多く, 特に10代の患者はその傾向が強い。正しいスキンケアを指導するのみでかなり改善するケースも珍しくない。そして必要に応じてレーザーや光治療などといった治療を行っている。レーザーと一言でいっても様々なものが存在するが, 当院で扱っているのは波長1450nmのダイオードレーザー (Smoothbeam) である。SmoothbeamのFDAでの適応疾患には, 尋常性〓瘡, 〓瘡瘢痕, シワがあるが, 毛穴治療にも有効である。また光治療としてはLumenis oneを導入している。Lumenis oneは波長域が500-1200nmと広く, 色素性病変 (肝斑を除く), シワ, たるみ, 赤ら顔, 開大毛孔などといった光老化の皮膚諸症状に有効である。今回はこれら治療機器を用いた女性外来での毛穴治療法について紹介する。
著者
芳賀 理佳 鈴木 幸一 松川 浩 田中 結子 一ノ瀬 昇 竹中 玄 藤田 早苗
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.285-291, 2010

香水やオーデコロンなどの香り製品は,身だしなみや香りを楽しむために使用するほか,異性から魅力的に思われたいといった理由からも使用されていると思われる。われわれは,「男性の魅力を香りで向上させることができるのか」を研究目的に,男性の印象を形成する一つの要素である声に着目し,男性の声の印象度試験を行った。試験には声に関するパラメーターを単純化するため,男性1人の声から機械的に基本周波数のみを変化させた高さの異なる6種の声を用いて女性被験者に評価させた。まず,香りを漂わせない状態で印象度試験を行ったところ,男性の声の高さの違いにより女性が感じる声の好みや印象が異なることがわかった。次に,試験に用いる香料を調整した。文献や伝承をもとに心理的な作用があるとされている香料成分34種から,専門パネルが官能評価により男性のポジティブなイメージに合致する香料成分を6種類選定した。その中で高揚感・魅力的なイメージが大きいL─ムスコンに着目して男性の声の印象度試験を行ったところ,L─ムスコンの提示の有無で男性の声の印象が変化した。そこでさらに,6種類の香料成分の中からL─ムスコンを含む1種以上の香料成分を含有する男性向けボディケア製品の香りを3種類創作した。この3種類の香りの中から男女ともに嗜好性が高く,香りのイメージが湧きやすいフローラル・スウィート調とシトラス・ムスク調の香りを試験用香料と選定した。選定した香料を用いて男性の声の印象度試験を行った結果,低い声 (基本周波数が120Hzより低い声) に対してはフローラル・スウィート調の香りに,高い声 (基本周波数が120Hzより高い声) に対してはシトラス・ムスク調の香りに,男性の声の爽やかさを向上させる効果が観測された。さらに,試験後の女性被験者の気分状態は,香りを漂わせなかった場合と比較して香りを漂わせた場合に,イライラする感じ,ほっとする感じ,イキイキする感じ,わくわくする感じが有意に改善された。
著者
島田 邦男 土田 衛 大西 日出男 中野 博子 大東 俊一
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.202-208, 2013-09-20 (Released:2015-09-18)
参考文献数
8
被引用文献数
1 2

頭皮マッサージのストレスや快適感に及ぼす影響を生理学的指標,心理学的指標を用いて検討した。その結果,頭皮マッサージにより,唾液中のコルチゾール濃度は有意に低下し,分泌性免疫グロブリンA濃度は有意に上昇した。Visual Analogue Scale(VAS)を用いた検討では頭皮マッサージの前後で身体的疲労の軽減,リラックス度の上昇が認められ,POMS短縮版ではネガティブな感情を示す指標の低下が認められた。ストレスに関連した唾液成分濃度の測定およびVASやPOMS短縮版の結果から,頭皮マッサージにはストレスを軽減させる作用や快適性を向上させる作用があることが示唆された。
著者
曽我 元 森田 康治 新井 賢二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.97-103, 2014-06-20 (Released:2016-06-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

日常的に行われる美容行動の一つである地肌マッサージに関して,血行促進を効率的に実現できる方法を考案することにした。そこで,種々のマッサージ基本手技が皮膚血流に与える作用を個別に評価した。その結果,頭皮においては,圧迫法が最も血流上昇作用が高いという特徴を見出した。ほかの基本手技も組み合わせて,約3分間のセルフマッサージ方法を創案した。この方法により地肌をマッサージすると,即時的な血行促進作用が認められ,平均で約120%まで上昇し,20分程度持続することを確認した。また,地肌が動きやすくなり,1週間の連用を行うと動きやすさのスコアに上昇傾向が認められた。この方法は,地肌マッサージの生理学的意義を明らかにする目的で,頭皮の物性や血流量に与える影響と,それに加えて,毛髪の成長に関わる作用を評価するために有用である。
著者
篠崎 純子 藤井 孝吉 久永 真央 梶浦 貴之 岩崎 敬治 津田 孝雄 不藤 亮介
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.296-305, 2014-12-20 (Released:2016-12-20)
参考文献数
13

腋臭は特定の細菌(腋臭菌)によって発生するので,デオドラント剤には各種抗菌剤が配合されている。これらの抗菌剤は多菌種に作用するので,常在菌への影響が大きい上に,腋臭菌が耐性を獲得して効果が減少する可能性もある。また,未知の腋臭菌に対して抗菌剤が効かない可能性もある。以上から,抗菌剤に代わる新規デオドラント素材が求められている。そこでわれわれは,新規腋臭菌の分離と腋臭の主成分である3-hydroxy-3-metyl-hexanoic acid(HMHA)の産生を抑制する素材を探索した。その結果,新規腋臭菌として2 菌株,Anaerococcus sp. 株とCorynebacterium genitalium株を分離し,これら腋臭菌のHMHA産生を抑制する素材としてペンタガロイルグルコース(PGG)を見出した。PGGを用いたヒト試験では,細菌遺伝子解析からPGG塗付によって腋臭菌が減少し,常在菌の菌数変動は少ないことを確認した。一方,新たに開発した腋ガス捕集法により定量したHMHA濃度には今回の試験条件では統計的に有意な減少は認められなかったが,PGG塗布により官能評価で腋臭強度の有意な減少が確認された。以上から,PGGは既存抗菌剤とは異なり,細菌叢に大きな影響を与えずに腋臭菌のみを減少させ,腋臭を低減できることが示された。
著者
小山 純一 仲西 城太郎 佐藤 純子 野村 純子 鈴木 裕美子 増田 嘉子 中山 靖久
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.16-26, 1999-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
22
被引用文献数
4 3

健常な人にとっての一般的な皮膚の悩みとして, 皮膚表面に生じる落屑の発生があげられる。冬季の肌荒れによくみられる現象である。形態学的, 生化学的な検討により肌荒れの現象面については解明されてきたが, 落屑の発生メカニズムはまだ明らかでない。本研究では角層の接着, 剥離のメカニズムを明らかにし, どのような因子が影響しているのか, またどのようなスキンケアが有効かを検討した。角層中には2種類のセリン酵素が存在し, それぞれトリプシン様 (30kDa), キモトリプシン様酵素 (25kDa) であることがわかった。遺伝子解析によりキモトリプシン様酵素はすでに報告されている角層中のキモトリプシン様酵素 (SCCE) と一致した。トリプシン様酵素はIV型トリプシノーゲンと新奇なトリプシノーゲンであることがわかった。角層シートは緩衝液中で単一細胞にまで分散するが, 分散した角層からはデスモソームは検出されなかった。逆に熱処理した角層やセリン酵素阻害剤を添加した場合はデスモソームは分解されず, 分散も起こらなかった。ロイペプシンあるいはキモスタチンの単独では抑制効果はアプロチニンの半分でしかなかった。しかし, ロイペプシンとキモスタチンを混合した場合はアプロチニンと同程度の抑制効果がみられた。この結果からデスモソームが角層細胞の接着に大きな役割をはたしており, このデスモソームを2種類のセリン酵素 (トリプシン様, キモトリプシン様) が分解することにより角層細胞が剥離することが明らかになった。加齢によりトリプシン様酵素の活性が低下することが明らかになり, 加齢による角層の肥厚に酵素活性の低下が関与していることが示された。酵素によるデスモソームの分解は角層中の水分に影響されることが明らかになった。冬季の乾燥により角層中の水分が減少しデスモソームの正常な分解が妨げられた結果, 落屑が生じると考えられた。この研究により角層の剥離過程に二つの因子が関係することがわかった。一つは角層中の水分量である。酵素自体は正常であっても角層中の水分量が減少することにより酵素の働きが妨げられる。この場合は保湿剤が有効であった。もう一つは酵素活性そのものの低下であった。この場合にはデスモソームの分解を促進する薬剤が必要であった。ジカルボン酸類がデスモソームの分解を促進しその種の薬剤としての可能性が示唆された。
著者
高橋 元彦 丹 美香 木村 知史 池野 宏
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.22-29, 2008-03-20 (Released:2010-08-06)
参考文献数
12

現代社会では, 多くの人が身体的, 精神的ストレスを感じている。ストレスの増加は交感神経の過剰な亢進をもたらすことから, 自律神経機能のバランスを崩しやすい状態にあると考えられる。このような状態は, 白血球分画の顆粒球の増加など生体防御機能にも影響を及ぼし, 生体においてさまざまな悪影響を生じせしめる可能性が高まることが安保らによって報告されている。一方, ニキビ病態においては, Propionibacterium acnesは炎症性誘発物質である好中球走化性因子を産生し, 毛胞に集積した好中球が活性酸素を放出し炎症反応が惹起されることなど好中球のニキビ病態への関与が報告されている。そこで, われわれはストレスによる好中球の増加あるいはリンパ球の減少によって, ニキビの発症しやすい状態あるいは悪化しやすい状態となるのではないかと考え, ニキビ患者群と健常者群における「ニキビができやすい状況」「生活習慣」「ストレス度」といったニキビとストレスとの関連性にかかわる意識調査および顆粒球の大部分を占める好中球, およびリンパ球の白血球中における割合を比較し, ストレスとニキビとの関連性について検討した。さらに, 好中球の増加は好中球由来の活性酸素の増加を招き, 血液の酸化度を上昇させるのではないかと考え検討を加え, フリーラジカル測定システムFRAS4を用いて, 酸化指標として抗酸化力 (BAP) および酸化ストレス度 (d-ROM) を測定した。意識調査からニキビ患者群は心身に負荷を感じたときに, ニキビを発症しやすいと感じていること, 生活習慣においても「不良」に分類される割合が健常者群より高いことが明らかとなった。また, 白血球分析からは, ニキビ患者群は健常者群に比べて好中球の割合が高くリンパ球が低かった。さらにニキビ患者群では, ストレスが多くないと感じている被験者に比べ, 多いと感じている被験者の方が好中球の割合が有意に高いことがわかった。血液酸化指標についても, ニキビ患者群で有意に抗酸化力が低下していることが見出された。以上の結果より, ニキビ患者はさまざまな負荷に対して多くのストレスを感じやすく, ストレスが炎症性の反応にかかわる好中球の増加を招き, 好中球由来の活性酸素を増加させることにより生体内の酸化を促進し, ニキビを悪化させている可能性が示唆された。
著者
水越 興治 二川 朝世 山川 弓香
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.119-127, 2013-06-20 (Released:2015-08-25)
参考文献数
12
被引用文献数
5 1

皮膚は最外層に位置する臓器であり,温湿度,日照量等の環境や日焼け等の流行といった体外から身体に影響を及ぼす外的要因や,かゆみ,痛み等の身体内部の個人差に起因する内的要因からの影響を受け,その状態は個人間でさまざまに異なっていると考えられる。したがって,それら外,内的要因を知り適切なスキンケアをすることは,健やかで美しい肌を維持するために重要であると考えられる。そこでわれわれは,外的,内的要因による皮膚状態の違いや変化が存在するかを検討するために,沖縄県から北海道に及ぶ日本全地域の,のべ5893536件の女性の皮膚状態の調査を20年間にわたり行ってきた。その結果,見た目のシミ,肌の色,シワの状態が2000年付近を境に傾向が変化し,この変化は肌色に関する流行の変化 (ガングロブーム,美白ブーム) や,UVの害に対する社会的認識の変化 (母子手帳から「日光浴」の項目の削除) との関連性が考えられた。また,毛穴の目立ちが,日照時間に相関する傾向が示された。皮膚のバリア機能の指標である角層細胞の配列規則性が,すべての季節で,敏感である対象者ほど悪いスコアをとる傾向が示された。また,健常な肌と考えられる対象者のほうが,角層細胞の配列規則性の年間の変動が大きい傾向であることが示された。
著者
岡野 由利 岡本 存生 山村 達郎 正木 仁
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.411-416, 1996-03-15 (Released:2010-08-06)
参考文献数
5

毛髪の成長は多くの要因によって複雑に制御されている。男性型脱毛症の原因のひとつとして男性ホルモンの作用が挙げられる。男性ホルモンであるテストステロンは5α-ReductaseによってDHTに変換され, さらにDHTがレセプターに結合することによってホルモン作用を発揮する。そこで我々は80種類の植物抽出液を調整し, この中から5α-Reductase阻害作用を示す成分のスクリーニングを行った。その結果ホップ抽出液が高い阻害作用を示すことがわかった。さらに, ホップ抽出液には培養毛根由来細胞の増殖を促進する作用が認められた。この抽出液を用いてマウスを用いた育毛養毛試験を行ったところ, ミノキシジルと同等の発毛促進作用を示した。また, ヒト頭髪に用いた場合には毛髪成長速度を促進する作用があることも認められた。長期使用試験においても良好な結果が得られたことから, ホップ抽出液は有効な育毛養毛用化粧品原料であることが示された。
著者
北村 謙始 山田 久美子 伊藤 明 福田 實
出版者
The Society of Cosmetic Chemists of Japan
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.133-145, 1995-09-10 (Released:2010-08-06)
参考文献数
19
被引用文献数
14 13

With the purpose of clarifying the role of internal factors in the process of dry skin occurs, dry skin was induced experimentally by an ionic surfactant and, using the model system, we investiglated from a pharmacological perspective as a new experimental plan. Through this research, we have conceived a new theory explaining how dry skin occurs. Furthermore, on the beais of this theory, we have developed a new effective compound for its treatment.In order to study on the mechanism by which dry skin occurs, we used anti-inflammatory agents and inhibitors against histological impairment mediators, as well as various substances that were considered to regulate the function of epidermal cells. The results strongly suggested that the occurence of dry skin involves a cause bringing about the over-manifestation of the epidermal plasminogen (PLG) activation system, which in turn causes abnormalities in the regulating mechanisms for the proliferation and differentiation of epidermal cells, and these result in dry skin.We discovered 4-aminomethylcyclohexanecarboxylic acid (t-AMCHA), which was the most effective substance in view of the theory on the occurrence of dry skin. Then we investigated in detail the efficacy of t-AMCHA. The results of our studies confirmed that t-AMCHA strongly suppresses the over-manifestatation of the PLG activation system in the epidermis when dry skin was occurring. In addition, t-AMCHA demonstrated superb effectiveness against phenomena caused by dry skin, including the loss of moisture from the horny layer, the increase in transepidermal water loss (TEWL), accelerated turnover in the horny layer, and the changes in various other indicators such as epidermal hypertrophy.We also performed a double-blind trial on a preparation containing t-AMCHA. Results demonstrated that the preparation containing t-AMCHA definitely made better and faster improvement than the preparation without t-AMCHA in skin surface texture. Furthermore, the t-AMCHA containing preparation showed superior stability and safety and had excellent usability.We demonstrated for the first time that the intraepidermal PLG activation system plays a major role in the process by which dry skin occurs, and founded a new theory on the occurrence of dry skin. In addition, on the basis of this theory, we discovered the effective substance t-AMCHA and conducted research on its practical application. As a result, we have not only verified the theory but also developed a revolutionary new effective substance for cosmetics.