著者
鬼頭 誠 田口 真祐子
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.175-182, 2005-04-05 (Released:2017-06-28)
参考文献数
21
被引用文献数
2

コーヒー粕施用による植物生育抑制作用の消失時期を示す指標を明らかにすることを目的とし,2年間にわたりコーヒー粕を連用した跡地土壌における各種作物の生育と土壌の理化学性の変化を調査した.1.コーヒー粕連用跡地土壌における各種作物の生育量は,施用したコーヒー粕の分解率が0.5kg kg^<-1>以下の場合には減少したが,分解率が0.5kg kg^<-1>をこえた場合には増大する傾向が認められた.2.コーヒー粕連用跡地土壌の有効態リン酸,交換性カルシウムおよびマグネシウム含量は,コーヒー粕無施用土壌中のそれらよりも大きくなる傾向が認められたが,無機態窒素および交換性カリウム含量は,作物生育の低下が認められた97年夏作には減少した.3.窒素およびカリウム施肥量を増加してもコマツナの生育量の減少は完全には回復せず,無機態窒素および交換性カリウム含量の低下が作物生育抑制の主要因でないことが明らかになった.4.コーヒー粕連用跡地土壌のC/Nおよび水溶性フェノール含量と作物生育の間には一定の関係は認められなかった.5.コーヒー粕連用跡地において作物生育量の増大が認められた時期には各種肥料成分含量の増大に加えて,土壌の透水性および保水性も向上していた.以上の結果から,コーヒー粕連用跡地における作物生育抑制作用の直接的な要因ではないもののその消失時期を示す指標として土壌中の無機態窒素含量が有効であると結論した.
著者
西尾 隆
出版者
一般社団法人 日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.463-471, 1994-08-05 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
11
著者
佐藤 孝 善本 さゆり 渡邉 俊一 金田 吉弘 佐藤 敦
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.78, no.1, pp.53-60, 2007
参考文献数
24
被引用文献数
2

重粘土水田転換畑では,土壌の物理性(通気性,排水性)が悪いために,畑作物の生育が抑制され,生産性が著しく劣る場合が多い.本報では,マメ科カバークロップのヘアリーベッチによる重粘土の物理性改善効果と,ダイズの初期生育に及ぼす影響について検討した.秋田県八郎潟干拓地内の水田転換畑にヘアリーベッチを水稲立毛間に播種した.ヘアリーベッチは旺盛に生長し,根は深度約45cmまで達していた.HV区では土壌構造が発達し,特に亀裂構造が深度50cmまで形成されており,圃場の排水性は向上していた.また,HV区ではダイズの生育初期において根の吸収活性および根粒の窒素固定活性が高く維持され,生育も良くなっていた.以上の結果から,転換畑においてヘアリーベッチを前作に植栽することで,ヘアリーベッチの蒸散作用により土壌の乾燥化を促進させるとともに,根の伸長により土壌の亀裂構造(粗孔隙)および毛管孔隙が発達し,土壌の物理性が大きく改善されて,ダイズの初期生育が促進されることが明らかになった.
著者
森泉 美穂子 金田 吉弘 福島 裕助
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.372-377, 2010
参考文献数
10

熱分析(熱重量測定:TG、示差熱重量測定:DTA、示差走査熱量測定;DSC)は、有機物の熱分解特性から有機物の化学形態の特徴を知ることのできる簡便法の一つである。田畑輪換の繰り返しにより土壌有機物の化学形態がどのような影響を受けるかを熱分析(DSC分析)により解析した。日本各地の連年水田および田畑輪換田土壌を採集し、それらのDSC分析を行い、DSC曲線の形態から有機物の熱分解特性を検討した。また、田畑輪換が繰り返されている圃場土壌のDSC分析を行い、田畑輪換の繰り返しが土壌有機物の形態に与える影響を調査した。更に、土壌肥沃度の変化と土壌有機物の形態との関わりを調査するために、4種類の土壌型の水田および輪換田土壌を用いて大豆栽培のポット試験を行い、試験前後の土壌の培養窒素量の測定およびDSC分析を行った。
著者
稲原 誠
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.241-242, 2006
被引用文献数
1
著者
新良 力也 西田 瑞彦 森泉 美穂子 赤羽 幾子 棚橋 寿彦 佐藤 孝 鳥山 和伸 木村 武 矢内 純太
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.73-80, 2010
参考文献数
30
被引用文献数
1

我が国の水田ではコメの生産調整のために1969年から転作が開始され、1978年に水田利用再編対策が開始されてからは、連作の回避、地力回復、村落内の負担の公平性等の理由から田畑輪換が広く実施されている。1980年以降は水田面積約2,900,000haのうち調整面積は500,000haを超え、2009年度には作物の作付けされた水田面積2,330,000haの約3分の1(710,000ha)が畑地利用されているとみられる。このような状況の中でダイズ等の収量低下が顕在化し、土壌有機物含量等の肥沃度の低下が懸念されている。しかし、連作水田とは異なり、湛水・還元環境と落水・酸化環境の繰り返しが、有機物の蓄積や分解にどのような影響を及ぼし、土壌窒素給源等をどのように変化させているか、あるいは土壌リン酸の可給性が連作水田とどのように異なっているのか等についての知見は十分整理されていない。このため、田畑輪換条件での肥沃度変動の法則性やメカニズムの解明が必要である。一方、肥沃度維持対策では、家畜ふん堆肥や緑肥等の資材施用の有効性や適正施用量についての知見が必要であり、土壌からの養分供給や土壌への蓄積を踏まえた施用方法の確立が求められている。そこで、土壌肥沃度部門と肥料・資材部門が共同で、田畑輪換水田における肥沃度の現状と関連研究の到達点を共有し、今後の展望を明らかにするため、1.田畑輪換水田の現状と土壌管理についての問題提起、2.田畑輪換水田の土壌窒素と施用有機物の挙動、3.土壌有機態窒素の実体について、4.田畑輪換土壌におけるリン酸の挙動と各種資材による供給、5.家畜ふん堆肥を利用した肥培管理、6.緑肥を利用した肥培管理の6課題でシンポジウムを開催したので概要を報告する。
著者
川崎 晃 織田 久男 山田 宗孝
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.667-672, 2004
参考文献数
23
被引用文献数
5

カドミウム(Cd)の安定同位体(^<113>Cd濃縮金属,94.8%)をCdトレーサーとして利用する手法を確立するため,土耕ポット栽培のダイズ試験における最適トレーサー添加量を求めるとともに,Cdがダイズ子実へ移行しやすい生育時期について調べた.^<113>Cdの0.1M硝酸溶液(1,000mg Cd L^<-1>)を蒸留水で希釈し,ポット(1/5,000アール)あたりの^<113>Cdトレーサーの添加量が0.2mgもしくは1mgになるように注入した.収穫期のダイズ子実のトレーサー由来Cd濃度は,ポットあたり0.2mg添加時が0.01未満〜0.04mg kg^<-1>,ポットあたり1mg添加時が0.01〜0.10mg kg^<-1>となり,ほぼすべての処理区で^<113>Cdトレーサーが定量できた.また,トレーサー示加に伴う収量の低下や土壌pHの変化は認められなかった.すなわち,ポットあたり0.2mgの^<113>Cdトレーサーの添加により,ダイズの生育に影響を及ぼすことなく,Cdの吸収をトレースできることが明らかになった.ここで開発した^<113>Cd安定同位体を用いたトレーサー法は,従来のRIトレーサー法と異なり,RI管理及びRI半減期の制約を受けない利便性の高い試験法である.さらに,トレーサー出来のCdだけでなく,土壌、由来のCdも同時に定量できるという利点がある.この手法を用いて,生育時期の異なるクイズのポットに注入した^<113>Cdトレーサーの子実吸収量から,経根吸収されたCdがクイズの子実に移行しやすい時期は,粒肥大始め期より以前であることが示唆された.