著者
浅田 博 福田 淳
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.147-152, 2001-12-05 (Released:2011-01-31)
参考文献数
26
被引用文献数
2 2
著者
片平 健太郎 岡ノ谷 一夫 岡田 真人
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.204-213, 2011-12-05 (Released:2012-01-30)
参考文献数
43

本稿では,隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model,HMM)を用いた神経活動データ,行動データの解析手法について紹介する.実験的に操作可能な変数とは独立に状態が変化するような非定常なデータを解析する上で,隠れマルコフモデルによるアプローチは有効である.著者らが行った小鳥の歌に関する神経活動データの解析,行動データの解析の事例を中心に,その有用性と今後の展望について議論する.
著者
三村 和史
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.19-27, 2006-03-05 (Released:2011-03-28)
参考文献数
19

ニューラルネットワークの解析に適用されている統計力学的な手法は,確率モデルで記述できる課題に対して性能評価だけにとどまらず実用的なアルゴリズム開発へも役立っている.本稿では,ニューラルネットワークの解析が,情報処理の課題へどのように適用されているかについて有歪圧縮を例として解説する.
著者
鮫島 和行 大森 隆司
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.144-154, 1999-09-05 (Released:2011-01-17)
参考文献数
21
被引用文献数
4 6

For the application of reinforcement learning to real-world problems, an internal state space has to be constructed from a high dimensional observation space. The algorithm presented here constructs the internal state space during the course of learning desirable actions, and assigns local basis functions adaptively depending on the task requirement. The internal state space initially has only one basis function over the entire observation space, and that basis is eventually divided into smaller ones due to the statistical property of locally weighted temporal difference error. The algorithm was applied to an autonomous robot collision avoidance problem, and the validity of the algorithm was evaluated to show, for instance, the need of a smaller number of basis functions in comparison to other method.
著者
川本 達郎
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.162-169, 2014-12-05 (Released:2015-02-05)
参考文献数
15

グラフからモジュール構造を検出する操作は,グラフ分割·コミュニティ検出として,様々な研究がなされてきました.本稿では,よく知られた検出手法の基礎を説明するとともに,そのいくつかはラプラシアンの固有値問題として書き表すことができ,互いに関係していることを紹介します.
著者
大道 勇哉 五十嵐 康彦
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.2-9, 2018-03-05 (Released:2018-05-07)
参考文献数
13

多次元時系列データの中に潜む本質的な情報を取り出す手法として,動的モード分解と呼ばれる手法が注目されている.動的モード分解は流体解析の分野において提案された手法であるが,データの時空間的な特徴構造を抽出できるという利点から,今後さまざまな分野の研究において成果を生み出していくことが期待される.本稿では,動的モード分解の基本的なアルゴリズムと適用例について簡単に紹介する.
著者
毛内 拡 塚田 稔
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.112-118, 2022-09-05 (Released:2022-10-05)
参考文献数
13

本稿では,2021年に神経回路学会の名誉会員にご就任され,2022年の日本神経回路学会学術賞を受賞された塚田稔先生の業績を,「神経科学とアートの理解」という観点から紹介する.塚田先生は,玉川大学名誉教授で,日本神経回路学会の設立にもご尽力された.研究では,Hebb則と双璧をなす,脳で行われている学習の基礎原理である時空間学習則に関する多くの研究を,理論と実験の両側面から主導してきた.また,現役の画家でもあり,数多くの賞に入選し,大学や研究所,ホテル,個人などに多くの作品が収められている.アートを生み出し,理解する脳のしくみについても示唆に富んだ提案をされており,代表的な著書に「芸術脳の科学~脳の可塑性と創造性のダイナミズム~」(講談社ブルーバックス,2015)がある.この度著者(毛内)は,大変幸運なことに,塚田先生のご自宅のアトリエに伺い,直接インタビューを行う機会をいただいた.本稿は,そのインタビューの一部を解説記事としてまとめたものである.絵画を見ているときに脳のどこが働いているのか,神経科学的に考えてから見て絵画がわかるとはどういうことなのかを,「塚田の脳の自己組織化と芸術」の観点からご解説いただき,今後の展開についてもご紹介いただく.
著者
稲垣 秀彦
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3-4, pp.97-106, 2020-12-05 (Released:2021-01-08)
参考文献数
24

本稿では,脳がどのように動作を計画し実行するのか,その神経機構と情報処理について記述する.行動する際,我々はまずどのような動作をするかの意思決定を行う.その決定は短期記憶として維持され,脳が外部・内部情報に基づき,最適なタイミングと判断した時に実行される.例えば,バッターやテニスプレーヤーはボールがリーチに入る以前から,どのようにスイングするかを決め,それは短期記憶として維持される.そしてボールがリーチに入った瞬間,すなわちスイングするのに最適なタイミングだと視覚情報から脳が判断した際,計画された通りにスイングする.このように事前に計画された動作は,そうでないものに比べ,正確かつ初動(Reaction time)が速いことが知られている.このような動作計画の短期記憶は,Motor planningと呼ばれ,運動野及び,間接的・直接的に接続した他の脳領域が必要であることが知られている.動作の計画時,これらの脳領域では持続的神経発火(Persistent activity)が数秒以上に渡って観測され,それがMotor planningを維持していると考えられている.では,1)どのような数理的原理でこの持続的神経発火は維持されるのか?,2)どのような回路がこの持続的神経発火を維持しているのか?,3)どうして,この持続的神経発火は動作の情報を維持しながらも,動作を引き起こさないのか? これらについて,我々や他のグループが発見した最新の知見をまとめる.
著者
柳下 祥
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3-4, pp.144-151, 2020-12-05 (Released:2021-01-08)
参考文献数
34

報酬による学習においてドーパミンは主要な役割を担う.特に近年の光遺伝学を始めとした神経回路操作技術や遺伝子コードされるプローブを利用した神経活動の観察技術の進展により,ドーパミンが報酬予測誤差信号として学習を制御する実態がわかってきた.一方,ドーパミンがどのように学習の基盤となる神経回路の変化を起こすかについては不明な点が多かった.そこで,筆者らは光遺伝学によるドーパミン神経操作に加えてケイジド・グルタミン酸の2光子刺激による単一スパイン・シナプスでのグルタミン酸シグナルの操作技術を駆使しこの問題に取り組んだ.結果,学習に関わるドーパミン一過性変化が側坐核のD1受容体およびD2受容体発現細胞のスパイン・シナプスの可塑性を制御する機序を世界に先駆けて明らかにした.このシナプス細胞基盤の知見を元に,条件づけ学習を詳細に検討したところ,D1受容体発現細胞は汎化学習・D2受容体発現細胞は弁別学習を担うことがわかった.一方,消去学習はこれらの機序では説明がつかなかった.このようにドーパミン報酬予測誤差信号が側坐核のシナプスを介して制御する学習の実態の解明に近づいた.また,統合失調症とD2受容体の関連は古くから知られていたが,この関係をD2受容体発現細胞の機能低下と弁別学習障害により妄想の基盤となるサリエンス障害が生じるのではないかという仮説を提唱するに至った.このようにシナプス可塑性・学習により環境構造を内在化する機能を詳細に理解した上で,現在はさらに脳が社会環境と相互作用することが精神疾患理解に新たな道を拓くのではないかと考え,研究を進めている.
著者
下川 哲也 ライプニッツ 賢治 ペパー フェルディナンド
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.57-63, 2014-06-05 (Released:2014-07-31)
参考文献数
37

脳科学分野と情報ネットワーク分野との横断的研究として,脳機能ネットワークのグラフ理論解析を中心に解説する.前半は脳科学者を対象に,グラフ理論の解説とネットワーク研究の現状を紹介する.後半は情報ネットワーク研究者を対象に,新しいネットワーク設計の参考になりそうな脳ネットワークの特徴を紹介する.
著者
横井 惇 平島 雅也 野崎 大地
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.16-29, 2015-03-05 (Released:2015-05-15)
参考文献数
102

左右差は自然科学·人文科学を問わず様々に人々の興味をかき立てる魅力的な研究対象であり,生物の行動を神経回路-細胞-分子などの複数の階層から理解しようとするシステム神経科学の立場からも,ひとつの興味深い系であるといえる.本稿では,筆者らの最近の研究であるヒトの両腕動作における情報表現の左右差の紹介を交えながら,運動系における左右差について紹介する.
著者
銅谷 賢治
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.36-40, 2002-03-05 (Released:2011-02-21)
参考文献数
7
被引用文献数
1

この講義では, 進化/発達/学習/修飾というテーマに関連し, 脳の学習の機能分担アーキテクチャと適応戦略についての仮説, また, 神経修飾物質系の学習における機能モデルについて紹介する.
著者
磯 健一
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.27-38, 2017-03-05 (Released:2017-05-12)
参考文献数
36
被引用文献数
1 2

音声認識においてDeep Learning技術がどのように利用されているか,いくつかの方式について概観する.また実際の商用事例としてヤフー音声認識サービスYJVOICEにおけるDeep Learning活用事例を紹介する.
著者
夏堀 晃世
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.87-92, 2021-06-05 (Released:2021-07-05)
参考文献数
40

エネルギーの恒常性維持(ホメオスタシス)は,細胞の生命活動を維持する上で極めて重要である.脳においては,特定の神経活動に伴う局所血流増加がNeurometabolic couplingとしてエネルギー恒常性維持の一端を担うと考えられ,それにより生理的条件下で,神経の細胞内エネルギーは常に一定に保たれると予想されてきた.しかしこれまで,生体脳においてエネルギー恒常性維持が達成されていることを検証した報告は無かった.そこで筆者らは,細胞共通のエネルギー通貨として利用されるアデノシン三リン酸(ATP)の神経細胞内濃度の生体計測により,脳のエネルギー恒常性維持の生体検証を行った.その結果,大脳皮質の興奮性神経の細胞内ATP濃度は,動物の睡眠―覚醒に伴い皮質全体でシンクロして変動し,動物の覚醒時に増加することを見出した.この結果は動物の覚醒時,神経活動増加に伴うエネルギー需要増加をさらに上回るエネルギー合成活動が,皮質全域で同時に迅速かつ持続的に行われることを示唆している.このことから,動物の覚醒時に皮質全域の神経細胞内ATP濃度を一気に増加させる,全脳レベルのエネルギー代謝調節機構の存在を初めて予想できた.動物の睡眠覚醒に伴い,脳の広域で一貫した神経細胞内ATP変動を引き起こすエネルギー代謝調節機構の実体として,筆者らは,ノルアドレナリン神経をはじめとする覚醒中枢神経の関与を予想している.これらの汎性投射神経が広範な投射先で伝達物質を拡散放出し,グリア細胞の一種であるアストロサイトへ作用して局所血流調節と神経への乳酸供給という2種類の代謝調節活動を制御することで,広範な脳領域で一貫した神経細胞内ATP濃度最適化に寄与している可能性があると考え,現在研究を進めている.
著者
髙堂 裕平
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.81-86, 2021-06-05 (Released:2021-07-05)
参考文献数
10

近年,神経科学領域における神経回路の評価において,非侵襲にマウスからヒトまで共通して用いることのできる磁気共鳴画像装置(MRI)の利用が広まってきている.技術の進歩により装置が高磁場化し,より一層その有用性が増している.磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)は,高磁場化の恩恵を受けた撮像法の一つであり,脳の局所における脳内代謝物の測定を可能にする手法である.本手法を用いることで,脳の一定領域における神経伝達物質,エネルギー代謝に関わる代謝物,浸透圧調整物質等,種々の脳内代謝物の測定が可能となる.本稿では,神経回路の評価に有用な分析手法であるMRSの概要について紹介し,MRSで測定される脳内代謝物から伺える神経-グリアカップリングの脳機能における重要性についても述べてみたい.
著者
平井 志伸
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.93-101, 2021-06-05 (Released:2021-07-05)
参考文献数
62

統合失調症(SZ)や双極性障害(BD)をはじめとする精神疾患は思春期後期から若い成人期に好発し,遺伝的脆弱性を背景にして,様々な環境要因がその発症を後押しすることが知られている.産業革命以前食卓に上ることはなかった砂糖(ブドウ糖と果糖が結合した二糖類)は,世界中で爆発的に消費量を増やし,現在では作製が容易な果糖ブドウ糖液糖(異性化糖のこと)の開発成功も相まって,所謂,単純糖の摂取量は止まるところを知らない.しかし,脳機能への詳細な影響の検討は未だ研究途上である.単純糖の摂取量は思春期で最も多く,それはちょうどSZやBDの発症時期と合致する.我々は,思春期における単純糖の摂取過多が精神疾患の発症に関与するのか,動物モデルを作成することで因果関係の証明を試みた.そして,単純糖の摂取過多は脳の生理学的,行動学的変化をもたらし,その表現型はGlyoxalase-1という種々の精神疾患で活性や発現低下が報告されている酵素のヘテロ欠損を伴うと,決定的なSZやBD様の所見を示す結果となった(Prepulse inhibitionスコアの低下,作業記憶の低下,脳波におけるGamma帯域の活動異常,PV陽性抑制性インターニューロン(PVニューロン)の機能低下等).我々は更に,作成した精神疾患モデルマウスにおいて非糖尿病性の毛細血管障害,血中から脳内へのGlucose取り込み低下を検出した.また,マウスで観察された毛細血管障害と同様の所見を,SZ,BDの患者死後脳でも見出した.以上の結果は,単純糖摂取過多による何らかの代謝異常により精神疾患が発症しうることを示唆し,血管障害が新たな表現型もしくは治療対象となりうることを示している.本稿では,我々の研究結果に関連するPVニューロンの機能と神経振動(Neural oscillation),血中から神経細胞までの物質輸送についての最近の知見も交えて紹介したい.

2 0 0 0 OA 編集後記

著者
毛内 拡
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.114, 2021-06-05 (Released:2021-07-05)