著者
平野 敏明
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.130-136, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
17

渡良瀬遊水地および近隣地域の2か所の隣接する塒で,冬期のトラフズクの食性を明らかにするために,2004年から2010年の冬期間のペレット分析を行った.渡良瀬遊水地では7年間に合計142個のペレットから236個体の餌動物を,猿島郡の調査地では3年間に108個のペレットから154個体の餌動物が得られた.どちらの調査地もネズミ類が主要な餌動物であったが,ペレットの割合は,渡良瀬遊水地では猿島郡より鳥類の割合が有意に多く,年によってその割合は著しく変動した.渡良瀬遊水地では冬期に多くの鳥類が就塒するために,両調査地における餌動物に含まれる鳥類と哺乳類の割合の違いは,採餌環境の違いによるものと考えられた.
著者
鮫島 正道 大塚 閏一
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.129-144, 1987-06-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2 4

19目44科111属162種(亜種を含む)430個体の日本産および外国産鳥類の成鳥の晒骨標本を作成し,方骨について,形状,方骨と隣接骨との連結方法,含気孔の位置と数などを主眼として検索し た.1)方骨の形状は,鳥類分類上の目•科内ではほぼ一致した.しかし,一部の目で目内変異が認められ,カワセミ科では科内変異が顕著であった.2)方骨と隣接骨の連結方法も鳥類分類上の目内でほぼ一致したが,一部に目内変異•科内褒異が認められた.3)方骨と隣接骨との四つの関節状態はそれぞれ相関関係がみられ,一つの関節が強い関節状態を示せば他の三つの関節も強い関節を示し,弱い関節のものは,他も弱い関節を示す傾向がみられた.4)方骨の各部位の観察で変異が最も少ないのは,含気孔の位置と数の形質であった.5)方骨の形状は生活型分類での鳥類の嘴の適応諸型との関連性が強く,目の異なるカツオドリとカワセミ,フクロウ類とワシタカ類などはそれぞれ非常に類似する方骨を有した.
著者
江口 和洋
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.p141-148, 1990-03
著者
由井 正敏
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.1-8, 2007-05-01 (Released:2007-07-12)
参考文献数
47
被引用文献数
2

岩手県内の北上高地には約30つがいのイヌワシが生息しているが,近年の繁殖成功率は急激に低下している.この原因として,イヌワシの好適な餌狩り場の減少が関与していることが明らかにされている.イヌワシの繁殖成功率を改善し個体群を安定させるためには,繁殖成功率が0.282以上になることが必要であると推定された.そのために必要な餌狩り場の暫定行動圏内(半径6.4 km)における面積を由井ら(2005)の重回帰式によって計算した.10年生までの幼令人工林のみでは560 ha(440~790 ha),放牧採草地や5年生までの伐採放棄地のみでは1,020 ha(670~2,120 ha),101年生以上の落葉広葉樹のみでは770 ha(560~1,240 ha)が必要であった.幼令人工林を必要量供給するためには,行動圏内の人工林を平均して67 haずつ76年に1回伐採して造林することで充足される.また,イヌワシの餌資源確保及び餌狩り場確保の点で列状間伐が有効と考えられた.人工林の伐採利用や間伐によって森林が明るくなることで,生物多様性が向上する可能性を指摘した.
著者
由井 正敏 関山 房兵 根本 理 小原 徳応 田村 剛 青山 一郎 荒木田 直也
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.67-78, 2005 (Released:2007-09-28)
参考文献数
43
被引用文献数
2 5

北上高地に生息するイヌワシ個体群の繁殖成功率は,国内他地域と同様に近年急激に悪化している.本地域の長期の調査結果のうち,1979~1988年(前期)及び1995~2001年(後期)の2期間のデータを用い,繁殖成功率と巣からの半径6.4km圏内の各植生構成との関係を分析した.巣のオーバーハングの状態,巣の標高,行動圏の重複状況,気象条件,及び巣への直接的な人為が繁殖成功率に及ぼす影響も同時に分析した.全期間にわたり詳しく調査した7つがいの繁殖成功率は前期の67%から後期の27%に低下した.直接的な人為影響によって繁殖失敗した巣の割合は前期6%,後期19%程度と推定された.前期から後期にかけてイヌワシの採餌に適した幼令人工林は77%,低木草地は43%減少した.人為影響による繁殖失敗を除いたデータによる重回帰分析の結果,101年生以上の落葉広葉樹老令林,10年生以下の幼令人工林,5年生以下の広葉樹林や放牧採草地を含む低木草地の各面積が広いと繁殖成功率は高くなった.劣悪な巣の状態及び巣の標高が高い場合には繁殖成功率は低下した.造巣•繁殖期の気温,香雨量は繁殖成功率に影響しなかった.結局,最近の繁殖成功率の顕著な低下は,イヌワシの好適な採餌環境の減少で部分的に説明できると考えられる.繁殖成功率の向上のためには,条件の良い営巣地の確保,人為影響の排除に加えて採餌適地の維持造成あるいは再生が必要である
著者
笠原 里恵 神山 和夫
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.35-51, 2011 (Released:2011-05-28)
参考文献数
25

環境省の行っているガンカモ類の生息調査で得られた数値データとモニタリングデータを解析するソフトウェアであるTRIMを用いて,日本で越冬するカモ類13種における1996年から2009年までの個体数の増減を日本の8地方区分による地方別,また都道府県別に解析した.結果として,分析期間中,マガモ Anas platyrhynchos とコガモ Anas crecca は全国的に減少傾向にあった一方でキンクハジロ Aythya fuligula やスズガモ Aythya marila は全国的に増加傾向にあった.ヒドリガモ Anas penelope では地方による個体数の増減は少なかった.多くの種において個体数の変化傾向は県や地方によって異なっていたが,13種中9種が関東地方で,8種が中部地方で減少傾向を示し,8種が近畿地方で,5種が中国もしくは四国地方で増加傾向を示した.この結果は調査が行われている1月中旬において,多くのカモ類の分布が変化していることを示唆している.カモ類の個体数に影響を及ぼし得る要因として,繁殖地や越冬地の環境変化,餌付け状況や地球温暖化による移動距離もしくは渡りの時期の変化等が考えられるが,今後のさらなる研究が望まれる.
著者
上野 吉雄 佐藤 英樹
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.71-84, 2001-05-31 (Released:2007-09-28)
参考文献数
15
被引用文献数
3 3

広島県沿岸部において1988年11月から1990年7月にかけて,のべ406個体(うち,巣内雛に117個体)のエナガに標識してつがい形成および繁殖生態について調査した.1)調査地は森林•宅地•農耕地などが複雑に入りくんだ林縁部で,11月から翌年の2月にかけてみられる冬季群のメンバーは安定しており,それらの行動圏も決まっていた.2)成鳥が繁殖期の前に移動し,群れ間でのつがい形成が普通に起こることが明らかになった.3)冬季群は繁殖期に解消され,繁殖期には群れそのものが存在しないことが明らかになった.4)繁殖終了後,冬季群形成前に多くの個体が消失する一方,調査地外から移入してくる個体がいることが明らかになった.5)冬季群のメンバーは,前年と同じ群れに残っていた成鳥,調査地内で出生した幼鳥からなる標識個体,調査地外から移入してきた幼鳥を含む未標識個体で形成されたが,移入個体が半数近くを占あたので,林縁部のエナガの冬季群が血縁集団である可能性はうすいと考えられる.6)ヒナが孵化した巣では高い割合でヘルパーが現れたが,中でもオス親がヒナの孵化以前に消失した巣にヘルパーが現れる率は非常に高かった.7)履歴の確認できたヘルパーはいずれも繁殖に失敗し配偶者が消失したオスであった.
著者
クールマン フランク
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2-3, pp.79-86, 1987-12-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
8

1975年春から1987年初夏(1980年と1984年の春は除く)にかけて,神戸市中央区の住宅地に接する木の茂った傾斜地で,トビの個体群調査を行なった.調査地は約4km×2kmの広さで,市街とその先の海へ向かいほぼ北西-南東方向に走る多くの沢がある.10月から2月までの非繁殖期は,日没ごろにここへ集まるトビの数は一定していなかった.主なねぐらの位置が西へ移ったのはカラス,とくにハシブトガラスとのねぐらを巡る争いが関係しているかもしれない.番いのトビは65本(うち針葉樹が29本)の木に巣を掛け,高さは平均地上10mであった.いくつかの巣は2-4回再利用されたので,計94の巣について調査したことになる.1978年の最大15から巣数はしだいに減少し,1987年はわずか3となった.最近5年間の調査では34巣のうち少なくも18巣から卵が消失し,1巣からは半分喰べられたひな1羽がみつかった.トビの営巣失敗と個体数の減少は,ハシブトガラスの捕食によることが大きいと思われる.34巣からはせいぜい4羽のひなが巣立ったにすぎない.
著者
玉田 克巳
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.11-19, 2008-05-01 (Released:2008-05-21)
参考文献数
30

国内におけるワタリガラスCorvus coraxの生息状況は,北海道で稀な冬鳥とされているが,近年では観察記録が増えてきている.本研究では,釧路支庁管内において野外で確認したワタリガラスの記録をまとめるとともに,北海道東部を対象に文献調査を行い,近年のワタリガラスの生息状況と分布の変化について明らかにした.野外観察では94件の確認情報が得られた.確認情報はすべて内陸部のもので,環境は森林植生が89% を占めた.文献調査から124件の確認情報が得られ,野外観察とあわせて218件の情報が得られた.ワタリガラスは冬鳥として飛来していた.1969~1978年の間は3市町の海岸部に分布していただけである.1991~1997年には9市町,1998~2005年には16市町村で確認されており,ワタリガラスは海岸部のほかに内陸の市町村にも分布していた.北海道東部では,1990年代に狩猟と駆除によるシカCervus nipponの捕獲数が増加し,ワタリガラスがシカの残滓を食べているところも目撃されている.シカの捕獲数が増加した時期とワタリガラスの分布が拡大した時期は一致しており,シカの捕獲数増加がワタリガラスの分布拡大の一因になっていると考えられる.
著者
佐野 昌男
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.33-35, 1990-08-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
8
被引用文献数
2 1

One male and two young of the House Sparrow Passer domesticus were found on Rishirt Island, northern Hokkaido, on August 4-7, 1990. This is the first record of the species in Japan.
著者
風間 健太郎 佐藤 雅彦
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.30-32, 2008-05-01 (Released:2008-05-21)
参考文献数
9
被引用文献数
1
著者
森岡 弘之
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.p149-150, 1989-03
著者
三上 かつら 高木 憲太郎 神山 和夫 守屋 年史 植田 睦之
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.112-123, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

本研究では,渡り性の水鳥類の全国的な渡来地について,規模の大きな渡来地や希少種の渡来地が保護区域に指定されているか,日本に渡来するガンカモ類やシギ・チドリ類の生息に各渡来地がどのように寄与しているのかを解析し,重要な渡来地でありながら保護区域に指定されていない場所の抽出を行なった.河川湖沼の鳥の調査サイト84カ所のうち,35.7%が特別地域,22.6%が普通地域,41.7%が未指定であった.干潟の鳥の調査サイト152カ所のうち,10.0%が特別地域,24.7%が普通地域,66.7%が未指定地域であった.個体数,ラムサール基準値(一部フライウェイ基準値)を超えた種数に着目すると,河川湖沼の鳥が多数訪れるサイトは比較的保護されているが,干潟の鳥が多数訪れる場所については保護指定が遅れている状況が示された.また全ての渡来地を希少種の渡来数に対する寄与率で順位づけしたところ,希少種が多数渡来するサイトは限定的であり,全体的に渡来数数の多いサイトが少数あり,渡来数の少ないサイトが残り多数を占めるという傾向がみられた.したがって,ガンカモ類,シギ・チドリ類といった渡り性の水鳥が集団で生息する特性も考慮すると,保護区による保護が効果的であるといえる.今回検出された寄与率の高かったサイト(大授搦,曽根干潟,泡瀬干潟,宇佐海岸,大阪北港南地区,白川河口など)は優先的に保護区域に指定される必要があるだろう.
著者
高木 昌興
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-17, 2009-05-01 (Released:2009-05-20)
参考文献数
72
被引用文献数
6 8

The characteristics of the avifauna of the Nansei Shoto are explained. The Nansei Shoto consists of the Ryukyu, Senkaku, and Daito islands. The avifauna of the islands, in particular in relation to the species endemic to the islands and those species also occurrign in the islands as well as in both Kyushu and Taiwan, was investigated by means of the literature, mainly the “Check-List of Japanese birds. Sixth Revised Edition (The Ornithological Society of Japan 2000)”. The number of breeding bird species on islands was greatest on the largest islands, and reached maxima (37 species) on both Okinawa and Iriomote islands. In order to understand the similarities between the avifaunas of the various islands, Nomura-Simpsons' coefficient of breeding birds on twelve representative islands of the Nansei Shoto, Kyushu, and Taiwan were calculated. The results of the cluster analyses of the similarities among islands were partly explained by the distances between islands. It is inferred that disparities between the similarities of avifaunas and distances among islands result from differences in the environments of each island.