著者
永井 里奈 佐藤 久一郎 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.3-11, 2022-04-22 (Released:2022-05-11)
参考文献数
18

人々にとってカラスとスズメは身近な鳥であり,日常生活の中でさまざま関わりを持っている.そういった関わりの結果,人々は,これらの鳥に好悪を含めた何らかの印象を持っており,また経年的に変化していると考えられる.しかし,定量的には調べられていなかった.そこで本研究では,新聞記事がこれらの鳥に対する人々の印象を反映しているという前提に立ち,人々のこれらの鳥に対する印象と,その経年的な変化を明らかにすることを目的とした.朝日新聞のオンライン・データベース「聞蔵Ⅱビジュアル」を使用して「カラス」および「スズメ」に関する新聞記事を検索し,どれくらい記事になっているか,またどのような印象で記事が書かれているか,それは経年変化しているかを調べた.その結果,1990年以降,「カラス」と「スズメ」に関する記事は,総記事数に対し,それぞれ0.08%前後,0.04%前後の割合で記事になっていることがわかった.カラスに対しては,否定的な印象で書かれている記事が多く,スズメは逆に肯定的な印象で書かれている記事が多かった.この傾向は,2000–2001年と2015–2016年の間で比較すると,強まっていることが明らかになった.
著者
浦田 亜希子 上田 恵介
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.107-111, 2003 (Released:2007-09-28)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

ヤマガラとシジュウカラに,サイズの異なるヒマワリの種子(小粒,中粒,大粒)を給餌して,両種間で餌サイズの選好性に差がみられるのかを,福岡市南部の油山の林縁で調査した.ヤマガラは採食効率の高い中粒,大粒の種子を選んでいた.またヤマガラはシジュウカラよりも大きなサイズの種子を選んでいた.ヤマガラは持ち去るにしろ,その場で食べるにしろ比較的大きな種子を選び,シジュウカラはその場で食べるときも,持ち去るときも,比較的小さな種子を選ぶ傾向があった.シジュウカラに比べ,ヤマガラの嘴が大きいことと餌場における両種の力関係が,この両種の餌サイズ選好性の差に影響しているのかもしれない.
著者
本間 幸治
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.35-40, 2017 (Released:2017-05-13)
参考文献数
15

都市部の農園において,その水浴び,砂浴びの順の傾向を調べる目的で,スズメPasser montanus を観察した.スズメの水浴びと砂浴びが連続して行われたケースでは,2014年には19件中の18件,2015年には28件中の24件において水浴びは砂浴びの前に行われていた.同様に,神奈川県内の既往の観察記録においては,水浴びと砂浴びが連続して行われた9件の記録の内,7件で水浴びが先に,砂浴びが後に行われていた.水浴び後に体を乾燥させること等がこの水浴び・砂浴びの順の傾向の理由と推測されるが,引き続き観察が必要である.
著者
平野 敏明 樋口 広芳
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2-3, pp.79-80, 1986-12-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

A dominance hierarcy of Motacilla wagtails (M. grandis, M. alba, and M. cinerea) and Water Pipits (Anthus spinoletta) was investigated on a stream in Utsunomiya, central Japan, in the winters of 1981-1983. An almost linear hierarchy existed among the species and between sexes, with ranking (most to least dominant) as follows: male M. grandis, female M. grandis, male M. alba, female M. alba, M. cinerea, and A. spinoletta. The proportion of victories by dominants was 100% except for a few encounters (5.7%) between female M. grandis and male M. alba. Dominance status was not necessarily related to their body sizes. Male M. grandis chased the other species more severely and more frequently than the others did.
著者
脇坂 英弥 江崎 保男
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.131-137, 2021-10-25 (Released:2021-11-12)
参考文献数
17

水田で営巣するケリVanellus cinereusの繁殖期は農繁期と重複し,農業活動にともなう人為撹乱が本種の繁殖に影響を与える可能性がある.本研究では圃場整備済み水田の農事暦とケリの産卵のタイミングの関係を調査し,人為撹乱がケリの繁殖成功に及ぼす影響を検討した.調査は2008年から2015年の8年間,京都府の巨椋池干拓地(710 ha)で行ない,計176巣を確認した.ケリの産卵は3月から7月にかけてみられ,3月と4月に集中していた.また3月から5月の営巣場所は主に田面であったが,6月になると田面から畦に移行した.ふ化成功率は3月が最も高く,その後は月を重ねるごとに低下した.また畦での産卵は5月以降に微増するものの,ふ化成功に至る巣は少なかった.ふ化失敗の要因は,田面では耕起による巣卵の破壊,および湛水にともなう巣卵の水没が大半を占めた.調査地の水田では,4月下旬から5月上旬にかけて耕起がほぼ一斉に実施される.ケリの抱卵日数は約30日であるため,調査地のケリは3月に田面で産卵することにより,人為撹乱が始まる前にヒナをふ化させることができ,実際,3月産卵がヒナの半数近くを生産していた.このようにケリは,農業活動にともなう人為撹乱を回避しながら繁殖を行なっていることが示唆された.
著者
熊田 那央 藤岡 正博 本山 裕樹
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.23-32, 2014 (Released:2014-05-09)
参考文献数
44
被引用文献数
5 3

カワウPhalacrocorax carboのねぐらやコロニーの分布にアユPlecoglossus altivelisの放流が与える影響を明らかにするために,2006年から2008年の関東地域のカワウのねぐら・コロニーサイズと,その周囲20 kmの採食範囲でのアユ放流量の関係を調べた. 3月のカワウの総個体数は約14,000個体であった.アユ放流量は約120,000 kgで,これは,カワウ1個体あたり1日500 g 採食するとした場合の約17日分の資源量であった.このことからアユがカワウにとってある程度重要な食物資源になりうると考えられた.3月のねぐら・コロニーサイズを前年のアユ放流量で説明する一般化線形混合モデルを作成したところ,両者には関係がみられなかった.一方,3月から7月のねぐら・コロニーサイズの変化率と,ねぐらやコロニー毎の1個体あたりのアユ放流量との関係を説明するモデルを作成したところ,アユ放流量が多いねぐらやコロニーほどサイズが有意に増加した.以上の結果から,カワウはアユ放流量が多かった地域をねぐらやコロニー場所として選択しているわけではないが,繁殖期間中に周囲で多量のアユが放流されたねぐらやコロニーでは繁殖成績が向上したり移入個体が増加したりすることが示唆された.
著者
後藤 三千代 鈴木 雪絵 永幡 嘉之 梅津 和夫 五十嵐 敬司 桐谷 圭治
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.207-218, 2015 (Released:2015-12-13)
参考文献数
40
被引用文献数
1 2

山形県庄内地方にはハシボソガラスCorvus corone,ハシブトガラスC. macrorhynchosおよび冬の渡り鳥のミヤマガラスC. frugilegusが生息しているが,これら近縁のカラス3種が同所に生息している背景を食性より調査した.DNA解析により,種判別されたカラス3種のペリットの内容物を無脊椎動物,植物,その他に分け,構成比率をみると,ハシボソガラスは77.1,82.1,10.6,ハシブトガラスは43.9,73.8,47.2,ミヤマガラスは17.1,97.6,0,と食性は種により異なっていた.餌内容物を詳細にみると,ハシボソガラスから,水辺・水田の生物,地表徘徊性節足動物,草の種子および小型のコガネムシ類など地面近くで得られる生物が検出され,とくに水田の生物は1年を通じて検出された.さらに,樹木の果実の種子および大型のコガネムシ類など樹木と関わる昆虫類も検出された.ハシブトガラスから主に樹木と関わる生物や人家周辺の生物および廃棄物が検出され,ミヤマガラスからほぼイネだけが検出された.以上から,カラス3種の食性に一部重なりがみられるものの,ハシブトガラスとハシボソガラスの間では採餌場所の重なりが少なく,またハシボソガラスとミヤマガラスの間では,収穫後のイネ籾が水田に豊富に落ちている時期に採餌場所が重なることが,庄内地方でカラス3種が同所的に生息している背景と考えられる.
著者
藤巻 裕蔵
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.15-23, 1986
被引用文献数
3

(1)北海道大学苫小牧地方演習林(北海道苫小牧市)の落葉広葉樹林で1982&bull;1983両年に森林構造ど繁殖期の鳥類群集の関係を調べた.<br>(2)調査地では1982-83年の冬に一部の伐採が行われ,胸高直径5cm以上の樹木の密度,基底面積,うっ閉度は1,665/ha,27.65m<sup>2</sup>/ha,85%からそれぞれ1,060/ha,18.75m<sup>2</sup>/ha,64%に減少した.<br>(3)調査期間中に44種の鳥類が観察されたが,そのうち35種がなわばりを持ち,それ以外の種は一時的に飛来したものであった.<br>(4)つがい数の多い種はキビタキ,ヤブサメ,センダイムシクイ,ハシブトガラ,シジュウカラ,ゴジュウカラ,ニュウナイスズメであった.<br>(5)1982年と1983年とを比較すると,ホオジロ,アオジ,シメのように開けた環境を好む種のつがい数が増加したが,他の種のつがい数はほとんど変化しなかった.また,平均多様度指数も1982年に4.27,1983年に4.44であった.<br>(6)北海道の落葉広葉樹林や針広混交林の鳥類群集との比較を行い,今回調査した鳥類群集の特徴を明らかにした.
著者
濱尾 章二
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.1-7, 1993-03-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
7
被引用文献数
10 11

ウグイスの雄の個体識別が,さえずりによってどの程度可能であるかを検討した.調査は1990-91年に新潟県妙高高原で行った.2羽の雄のさえずりについて分析したところ,人が聞いて異なるパターンだと思われた場合には明らかに異なるソナグラムが,同じパターンだと思われた場合には互いに大変よく似たソナグラムが得られた.25羽の雄のさえずりの聞こえ方を調べたところ,30のパターンが認められ,各個体が用いるパターンの組合せはほとんどの個体の間で異なっていた.これらのことから,ウグイスではさえずりによる個体識別がある程度可能であろうと思われた.
著者
川路 則友
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.98-102, 2009-05-01 (Released:2009-05-20)
参考文献数
8
被引用文献数
4 2

北海道札幌市において,赤色卵を托卵されたメジロの巣を発見し,追跡したところ,ツツドリのヒナがふ化し,仮親であるメジロからの給餌を受けたのちに巣立った.その巣から近いところにあったセンダイムシクイの巣でも赤色卵が見つかったが,それはのちに捕食された.しかし,赤色卵を産むウグイスの巣が約500 m離れた位置で確認されたが,巣内には托卵はなかった.これまで北海道中北部ではツツドリによるウグイスへの赤色托卵例が報告されている.ツツドリによる赤色卵の托卵は,北海道南西部以南でウグイスを主要な宿主とするホトトギスが生息していない北海道中央部で,卵色の形質置換を行うことにより確実にウグイスへの托卵を成功させるために進化してきたものと考えられている.メジロはツツドリの主要な宿主ではないが,ウグイスの生息密度が低いために,本州以南での主要な托卵相手であるセンダイムシクイや,メジロといった他種まで宿主として利用していると考えられる.
著者
溝田 智俊 佐々木 みなみ 山中 寿朗
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.115-130, 2007-11-01 (Released:2007-11-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1 7

カワウ,アオサギおよびゴイサギの営巣地下にある2地域の土壌(福島県本宮および福岡県久留米)について,窒素動態を無機態窒素含量と安定同位体比の時系列変動を指標として解析した.顕著に高い無機態窒素含量(8 g/kg乾土)が孵化と雛の成長期に見出された.巣立ちと営巣地から見られなくなった後,無機態窒素含量は急速に低下した.土壌の硝化活性は,やや冷涼な本宮営巣区にくらべて温暖な久留米営巣区で高かった.硝化と連動した脱窒過程が繁殖期後期に顕著であることが特異的に高い硝酸態窒素の同位体比から推察された.カワウは繁殖およびねぐらとして1年を通じて森林を利用するために,土壌に連続的に糞窒素が搬入される.その結果,一時的に利用するサギ類に比較してカワウ営巣区ではアンモニア生成速度が高く維持されると推定された.
著者
蔡 煕永 藤巻 裕蔵
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.17-22,50, 1996-04-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

エゾライチョウ Bonasa bonasia の齢査定法としては初列風切羽9番目の暗色縞の数,初列風切羽1番目の先端部のベージュ色の幅,下顎骨に見られる層構造の数による方法がある.しかし,前2方法で用いられる形質には地理変異があり,必ずしもよい齢査定の基準とはいえず,下顎骨を用いる方法は手数がかかる.エゾライチョウの頭頂の未含気化部は成鳥になっても消失することはなく,成長するとともに小さくなる,この部分の大きさが齢査定の基準として有効かどうかを,飼育で齢の明らかな37羽(1か月齢~5年齢)を用いて検討し,その結果を1991/92,1992/93の狩猟期に捕獲された49羽に適用してみた.計測部位は頭骨全長(TL),頭骨最大幅(GW),未含気化部の長さ(AL)と幅(AW)の4か所である.未含気化部の大きさの指標として,AL,AW,ALXAW,AL/TL,AW/GWの5つの値を用い,これらと実際の齢との関連を調べた.TLとGWの平均値は1か月齢のそれぞれ42.3±2.5(n=5,平均値±SD,以下同様),19.8±1.1mmから4-5か月齢の51.7±0.7(n=6),23.1±1.1mmに増加したが,その後は8-10か月齢で51.8±1.4と23.0±1.4mm(n=6),≧12か月齢で52.4±0.8と23.9±0.5mm(n=11)で,頭骨の大きさは4か月齢で成鳥の大きさに達した.ALの平均値は1か月齢で9.1±0.7mmで,その後徐々に減少し,≧24か月齢で5.9±1.7mmとなった.AL/TLの平均値も1か月齢の0.217±0.025から≧24か月齢の0.112±0.032%に変化し,ALと同じような減少のしかたを示した.ALXAWの平均値は1か月齢の71.5±7.4(n=5)から5か月齢の31.6±6.8(n=4)に減少したが,その後は≧24か月齢の17.0±7.6(n=5)に徐々に減少した.AWとAL/GWの平均値は1か月齢のそれぞれ7.8±0.3mm,0.395±0.031%から9~10か月齢の2.6±0.7mm,0.115±0.032に変化し,それ以後には大きな変化は見られなかった.エゾライチョウは6月に孵化するが,北海道におけるエゾライチョウの狩猟期は10月1日~1月31日なので,狩猟で捕獲される個体で,1年未満のものでは4~7か月齢,1年以上のものはすでに15か月齢以上である.そのため,上述の5つの指標でこれらの2つの齢群を区分できるかどうかを検討した.ただし,7か月齢の個体がいなかったので,若齢群を4~8か月齢とした.4~8か月齢と≧15か月齢との間で5つの指標を比較すると,AW,ALXAW,AW/GWの3指標の平均値には有意な差が認められた.しかし,AWとAL×AWは2つの齢群の間でそれぞれ一部重複するため,指標としては不適である.AW/GWの平均値は2つの齢群の間で有意な差が認められ,範囲も若齢群で0.158~0.306,成鳥群で0.063~0.145で重複しなかった.これらの結果から,4-8か月齢と≧15か月齢とを区分すのに適切な指標は,AW/GWで,区分する基準値は0.15%とできる.この方法を,狩猟で捕獲された49羽に適用したところ,33羽(67%)が1年未満,16羽(33%)が1年以上の個体であった.
著者
福田 道雄
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.91-95, 2020

<p>日本では,現在非常に多数のペンギンが飼育されている.このような状態になった理由を解明するため,ペンギンの渡来史を調べた.『禽譜』によれば,ペンギンの全身と部分の皮が,江戸時代の享保年間(1716–1736)と1821年に渡来し,どちらの種もキングペンギン<i>Aptenodytes patagonicus</i>であった.筆者は,貴志孫太夫が転写したと考えられる『鳥獣図』に描かれたフンボルトペンギン<i>Spheniscus humboldti</i>の図を見つけた.そして,その原図で写生されたフンボルトペンギン標本の渡来時期は,貴志忠美が没した1857年以前と推定できた.</p>
著者
宮澤 楓 島田 将喜
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.153-162, 2017
被引用文献数
1

ヤンバルクイナによる台石を使用したカタツムリの殻の割り方と殻の割れ方の対応関係を,行動の直接観察と殻の割れ方の分類によって明らかにした.沖縄県国頭村にて,センサーカメラをもちいた行動観察と,カタツムリの殻の採取を行った.動画内で識別された4個体すべてから地上に露出した石に,カタツムリの殻口を嘴で咥え保定し繰り返し叩きつけて殻の反対側を破壊し中身を食べるというパタンが観察された.台石使用行動はヤンバルクイナにとって一般的で定型化した採餌行動と考えられる.採取されたカタツムリの殻の割れ方は4つのタイプに分類されたが,うち大多数を占めるType 1と,Type 2はヤンバルクイナによる食痕の可能性が高いことが示唆された.クイナ科の系統でこの台石使用行動が直接的証拠により確認されたのは,ヤンバルクイナが最初である.台石使用行動は,丸飲みは不可能だが常時利用可能性の高い大型のカタツムリを採食可能にするという機能をもつ.