著者
平井 克亥 柳川 久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.166-170, 2013 (Released:2013-11-21)
参考文献数
20

北海道十勝平野において,ノスリButeo buteoの営巣パターンおよび営巣場所の特徴を調べた.調査期間中にノスリが営巣した場所は33ヶ所であった.ノスリは他の猛禽類の古巣にも営巣した.営巣木としてノスリにもっとも多く利用された樹種はカラマツLarix kaempferiであった.非営巣場所と比べて,営巣木は林縁からより離れた位置にあったが,それ以外の森林構造には営巣場所と非営巣場所違いはみられなかった.本研究の結果,ノスリの営巣場所の選好性は比較的弱く,このことが他種の古巣を利用した営巣や,カシワ林からカラマツ林へと主要な営巣環境をシフトすることを可能にしたと考えられた.その結果,十勝平野のノスリの営巣数は回復傾向にあるのかもしれない.
著者
高田 賢一郎
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.112-113, 2009-05-01 (Released:2009-05-20)
参考文献数
5
著者
濱尾 章二 宮下 友美 萩原 信介 森 貴久
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.139-147, 2010-10-20 (Released:2010-11-08)
参考文献数
28
被引用文献数
1 7

東京都心の隔離された緑地である国立科学博物館附属自然教育園において,冬季に捕獲した鳥の糞に含まれる種子を分析した.また,種子を排泄した鳥種の口角幅と採食されていた果実の直径を計測し,比較した.8種の鳥の糞から9種の植物種子が見出された.特に,ヒヨドリHypsipetes amaurotis,ツグミTurdus naumanni,メジロZosterops japonicusが93%の種子を排泄していた.これら3種は生息個体数も多かったことから,重要な種子散布者になっていると考えられた.種子は1種を除き,調査地内に見られる植物のものであったことから,調査地内外での種子の移動は少ないものと考えられた.鳥は口角幅より小さな果実を採食している場合もあれば,大きな果実を採食している場合もあった.ルリビタキ Tarsiger cyanurus,メジロ,アオジEmberiza spodocephalaでは,口角幅の最大値よりも果実直径の最小値の方が大きなイイギリIdesia polycarpaを採食していた.口角幅を超える大きさの果実を採食していたのは,結実期を過ぎていたことや都市緑地であることから,果実の選択が制約を受けていたためである可能性がある.
著者
MUNECHIKA Isao NOZAWA Kohei SUZUKI Hitoshi
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.133-138, 1999
被引用文献数
2

ヤマドリ属とキジ属の分類は定かではなく,1つの属とする説と分離独立させるとする2つの説があり,いまだ論争が続いている.ヤマドリ属(genus <i>Syrmaticus</i>)の分類学的位置づけを確定するため,キジ属(genus <i>Phasianus</i>)および両属に近いとされるコシアカキジ属(genus <i>Lophura</i>),カンムリキジ属(genus <i>Catreus</i>)の類縁関係について <i>Cyt-b</i> 遺伝子配列の比較から検討をおこなった.<br>1)ヤマドリと2)オナガキジと3)カラヤマドリ•ビルマカラヤマドリ•ミカドキジと4)ウチワキジ•エボシキジ•ニホンキジがそれぞれクラスターを形成した.分類学的位置づけが論議されているエボシキジ(Cheer Pheasant)はニホンキジ(Green Pheasant)のクラスターに含まれ,ヤマドリ属(genus <i>Syrmaticus</i>)よりもむしろキジ属(genus <i>Phasianus</i>)に近かった.
著者
LEISLER Bernd BEIER Josef HEINE Georg SIEBENROCK Karl-Heinz
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.169-180, 1995
被引用文献数
13

ドイツのBavariaにある養魚池群のオオヨシキリ個体群において一夫多妻繁殖のいくつかの側面について調査した。18年間に得られた、少なくとも片親が色足環で個体識別されている428巣の記録を分析の対象とした。<br>対象となった雄の数の15年間の平均は30羽/年で、そのうち11.3%は一夫多妻、13.9%は独身だった。<br>一夫多妻の第一巣では第二雌の巣よりも10日早く産卵が始まった(Fig.1)。<br>繁殖結果の統計値をTable1にまとめた。第二雌の巣立ち雛数は一夫一妻雌よりも低かったが(相対成功度は0.79)、同時期に一夫一妻だった雌とは有意に異ならなかった(相対成功度は0.85)。繁殖集団に加わることのできた巣立ち雛の割合は第一雌の雛がもっとも高かったが、一夫一妻の雛と第二雌の雛とでは有意差はなかった。したがって、一夫多妻のいき値モデルを排除することはできない。<br>雄の配偶ステータスには年齢が影響し、年長の雄がより高い割合で一夫多妻になる(Fig.2)。年齢と雌の配偶ステータスとには有意な相関はなかった(Fig.3)。雄の最年長記録は11歳、雌は10歳だった。<br>雌による配偶者選択における雄の質となわばりの質との相対的な重要性を知るために、29雄(一夫多妻4羽、一夫一妻22羽、独身3羽)を対象に、判別分析を用いて3種類のなわばりの特徴と11種類の雄の特徴(身体的な形質、年齢、さえずりのレパートリー数、攻撃性、ホルモンレベル)を分析した。一夫多妻を予測するもっとも有効な基準となるのは、開水域に面したヨシ原の縁が長いこと、攻撃性が弱いこと、さえずりのレパートリー数が多いことであった(Table2,Fig.4のaxis1)。第二の判別軸に沿っては3群の雄が十分に分離されていないが、この軸は若齢、短い翼と総排泄腔突起、レパートリー数の少なさおよび黄体形成ホルモン(LH)のレベルが低いことを表している。ヨシ原の縁の長さは営巣場所としてだけでなく、採食生態上も重要なのかもしれない。一夫多妻雄の攻撃性の低さは、それらが早い時期に渡来することとテストステロンのレベルの季節的減退によって説明できるだろう。<br>結論は次の3点である。(1)一夫多妻が生じることの説明を、以前の論文で支持された「だまし仮説」に求める必要は必ずしもない。(2)本調査地は一夫多妻のための生態的条件に関して最適な場所とは言えないが(不自然に多い魚のために餌供給が抑えられている、一夫多妻の頻度もやや低い、1雄とつがう雌数が2羽を越えることはほとんどない、雛の餓死がやや頻繁に生じる)、雌による積極的な配偶者選択を可能にするのには十分な、繁殖条件の予測可能な差異が存在するようだ。(3)雌は雄の特徴となわばりの質の両方を基に配偶者を選んでおり、雄•なわばり双方の要因には正の相関がある。
著者
梅田 直円 岡ノ谷 一夫 中村 和雄 古屋 泉
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.9-16, 1993-03-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
10

ムクドリによる農作物の被害は年々増加する傾向にあり,効果的な防除法の開発が望まれている.ムクドリがどんな刺激を嫌うかを条件反応の抑制効果によって定量化することを目指して,ムクドリをオペラント条件づけの手続きで訓練できるかどうか試みてみた.実験に使った3羽のムクドリすべてにキーつつき反応を学習させることができ,そのうち2羽は間欠スケジュールで安定した反応をするようになるまで訓練することができた.キーつつき反応に及ぼす種々の視•聴覚刺激の効果を測定することで,効果的な追い払い法の開発に寄与できるであろう.

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出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.59-59, 2016 (Released:2016-05-28)
著者
細野 哲夫 巣山 第三郎
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.177-178, 1998-02-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
3

The first breeding of Pica pica was observed in Oami, Otari Village, Nagano Perfecture (36° 53′20″N, 137°52′10″E) in 1997. The nest was built on a utility pole with twigs of Japanese Cedar, a kind of oak etc. All chicks fell from the nest and died before fledging.
著者
岡ノ谷 一夫 米田 智子 井関 聡
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.231-233, 1995
被引用文献数
4

ジュウシマツのディスタンス•コール(DC)には性的2型がある。ジュウシマツの原種はコシジロキンパラであるといわれているが定かではない。沖縄県大宜味村喜如嘉のイグサ田•水田には野生コシジロキンパラがほんの少数生息している。今回これらのコシジロキンパラのDCを録音してソナグラフで分析した結果、ジュウシマツのDCにみられるのと同様な2型があることがわかった。この2型は雌雄に対応するものと推測される。
著者
今村 知子
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.63-69, 2014 (Released:2014-05-09)
参考文献数
41
被引用文献数
1
著者
SODHI Navjot S. ADLARD Robert D. 永田 尚志 KARA A. U.
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.65-67, 1999
被引用文献数
5

渡り鳥は,渡りのストレスで血液内寄生虫に感染しやすくなったり,越冬地でも感染する可能性があるため,留鳥よりも感染率が高いと考えられる,利根川および霞ケ浦湖岸のヨシ原において捕獲されたホオジロ,ホオアカ,カシラダカ,アオジ,シベリアジュリン,オオジュリンの6種類のホオジロ(<i>Emberiza</i>)属から血液を採取し, <i>Haemoproteus</i> spp, <i>Trypanosoma</i> spp, <i>Splendidofilaria</i> spp, <i>Plasmodium</i> spp,<i>Leucocytozoon</i> spp の5種類の血液内寄生虫(原虫)の感染率を調べた.血液を採取した352個体中,血液内寄生虫が感染していたのは,カシラダカ,アオジ,オオジュリンの各1個体であり,全体の0.8%にすぎなかった.カシラダカとオオジュリンでは配偶子母細胞や分裂前体をもった成熟した原虫が見つからなかったので種名まで同定できなかったが,アオジに感染していたのは <i>H.coatneyi</i> であった,<i>Emberiza</i> 属においては,渡りをする種が留鳥性の種より血液内寄生虫の感染率が高いという予測は支持されなかった.本研究と前報(Sodhi <i>et al</i>.1996)によって,日本に生息しているホオジロ属では血液内寄生虫の感染率が低く抑えられていることがわかった.ホオジロ属の血液内寄生虫感染率がどのようなメカニズムで低く抑えられているかはわからない.
著者
内田 博 高柳 茂 鈴木 伸 渡辺 孝雄 石松 康幸 田中 功 青山 信 中村 博文 納見 正明 中嶋 英明 桜井 正純
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.131-140, 2007-11-01 (Released:2007-11-17)
参考文献数
21
被引用文献数
3 3

1994年から2003年にかけて埼玉県中央部の丘陵地帯で,20×20 km,400 km2の調査区を設定して,オオタカの生息密度,営巣環境,繁殖成績,繁殖特性などを調査した.調査地での生息密度は1996年から2003年にかけて100 km2あたり平均12.8から14.0ペアであった.調査地内の隣接最短巣間距離は平均で1.74±0.59 km(±SD,範囲0.79−3.05 km, N=37)であった.営巣樹木は214例のうち,スギが54%,アカマツ30%,モミ13%と常緑針葉樹が97%を占めた.巣の高さは平均14 m,営巣木の69%の高さにあり,胸高直径は平均41 cmであった.巣は林縁から平均68 m,人家から155 m,道路から100 mの距離にあり,人の生活圏に接近していた.繁殖成功率は平均72%で,年により53~87%まで変動があった.巣立った雛は,産卵以降の全巣を対象にした場合平均1.49羽で,繁殖に成功した巣だけの場合,平均2.06羽であった.巣は前年繁殖に使用して,翌年も再使用したものが61%であった.また,9年間も同じ巣を使っているペアもいた.巣場所の再使用率は繁殖に成功した場合65%で,失敗すると50%だった.繁殖に失敗した67例の理由のほとんどは不明(61%)であったが,判明した原因は,密猟3例,人為的妨害4例,巣の落下4例,カラスなどの捕食5例,卵が孵化しなかったもの4例,枝が折れて巣を覆った1例,片親が死亡4例,近くで工事が行われたもの1例などであった.また,繁殖失敗理由が人為的か,自然由来のものであるかで,翌年の巣が移動した距離には有意差があり,人為的であればより遠くへ巣場所は移動した.
著者
倉沢 康大 板橋 豊 山本 麻希 綿貫 豊
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.137-141, 2012 (Released:2012-04-27)
参考文献数
26
被引用文献数
2 5

繁殖地を離れて1週間にもおよぶロングトリップ中にミズナギドリ類は餌の大部分を消化・吸収し,吸収しづらいトリアシルグリセロール(TAG)やワックスエステルを胃油として胃に蓄積する.胃油のもととなる餌生物を特定するため,胃油中のTAGの脂肪酸組成を新潟県粟島で育雛中のオオミズナギドリにおいて分析し,潜在的な餌の脂肪酸組成と比較した.胃油の脂肪酸組成は,カタクチイワシあるいはサンマに似ていたが,他の外洋性の生物を食べた可能性も完全には否定できない.この2種だけを食べたと仮定すると,その比率はオイルベースでカタクチイワシが77%,サンマが24%と推定された.