著者
松井 晋 高木 昌興 上田 恵介
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.29-31, 2006 (Released:2007-07-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1
著者
富田 直樹 染谷 さやか 西海 功 長谷川 理 井上 裕紀子 高木 昌興
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.79-90, 2010-09-30 (Released:2012-12-04)
参考文献数
32

北海道苫前郡羽幌町天売島の天売港において,黄色の脚をもつ大型カモメ類の死体1個体の回収を行った。Olsen & Larsson (2003) に従い,死体標本は,主に背上面および翼上面の色と初列風切の模様の特徴からロシアのコラ半島からタイミル半島の南東部で繁殖する Larus heuglini と同定された。しかし,亜種を完全に区別することはできなかった。また,ミトコンドリアDNAのチトクロームb 領域と調節領域の塩基配列における先行研究との比較では,死体標本の持つ変異が近縁な種・亜種グループに共通して保有されるタイプと一致した。結果として,死体標本が帰属する分類群として可能性のあった候補のうち L. fuscus fuscus, L. h. heuglini, L. cachinnans barabensis, L. h. taimyrensis のいずれかであることまでは絞り込めたが,特定の種もしくは亜種まで明確に示すことはできなかった。L. heuglini とその近縁種については,交雑や遺伝子流動などの理由から分類学的に未解決の問題が多い。本研究において,死体標本やDNA標本による客観的なデータに基づいても,大型カモメ類の種・亜種を正確に同定することは,非常に困難であることが示された。
著者
高木 昌興 澤田 明
出版者
公益財団法人 自然保護助成基金
雑誌
自然保護助成基金助成成果報告書 (ISSN:24320943)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.83-93, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
22

本研究は,絶滅が危惧される南大東島におけるダイトウコノハズクOtus elegans interpositus個体群の絶滅リスクを分散させ,北大東島に亜種ダイトウコノハズク個体群を再成立させるための基礎情報を得ることを目的とする.北大東島には,現在,ダイトウコノハズクが生息していないことをプレイバック実験により確認した.南大東島において,狭い区域になわばりが高密度で集中する区域,樹林地に依存しない区域,営巣が不可能だった場所を巣箱により営巣を可能にした区域の特注を解析した.その情報と航空写真,北大東島の現地踏査により,北大東島において潜在的に繁殖可能な区域を定性的に抽出し,繁殖可能なつがい数を推定した.個体群の存続に重要な冬季の餌量を北大東島と南大東島で比較した.その結果,北大東島には49つがいが生息できる可能性があり,主要な餌となるワモンゴキブリ類とアシダカグモ類の生息数は島間で異ならず,冬季にも個体群を消滅させることなく生息し続けることが可能と判断された.
著者
西海 功 山崎 剛史 濱尾 章二 関 伸一 高木 昌興 岩見 恭子 齋藤 武馬 水田 拓
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本列島の島嶼部を中心に分布する陸鳥類の14分類群(19種)について、異所的な集団の種分化と種分類に関する研究をDNA分析、形態学的分析、およびさえずりの音声分析を含む生態学的分析によっておこなった。日本列島の島嶼部を中心とした陸鳥の集団構造や種分化が極めて多様なことが示された。つまり、遺伝的な分析からは、南西諸島の地史を直接に反映した集団構造は陸鳥類では全くみられず、集団の分化のパターンが種によって大きく異なることがわかった。遺伝的に大きく分化している地理的境界線の位置も種によって異なるし、遺伝的分化の程度も分化の年代も種によって大きく異なることが示唆された。また、形態的分化や生態的分化の程度も種によって異なり、それらは必ずしも遺伝的分化の程度と相関しないことが推測された。近縁種の存否がさえずりの進化に影響する、すなわちさえずりの形質置換があったり、人為的環境の改変への適応が行動を通して形態的適応進化を促進したりすることがわかった。また、リュウキュウコノハズクやキビタキなど多数の種で亜種分類の見直しの必要性が示唆され、ウチヤマセンニュウなどいくつかの種では種分類の見直しの必要性が示唆された。今回の研究期間ではっきりと種・亜種分類の見直しの検討が出来たのはメボソムシクイ類とコトラツグミのみであったので、それ以外の見直しは今後の課題として残された。
著者
浜地 歩 植村 慎吾 仲地 邦博 高木 昌興
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.S27-S33, 2017 (Released:2017-10-19)
参考文献数
21

2015年から2017年にかけて,宮古諸島でオオジュウイチとオニカッコウを記録した.オニカッコウは複数羽での長期滞在が確認されたことから,繁殖の可能性も考えられる.国内におけるこの2種の記録は増加傾向にあり,今後分布を拡大させる可能性がある.
著者
赤谷 加奈 高木 昌興
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.125-128, 2019-02-28 (Released:2019-11-21)
参考文献数
13

沖縄県南大東島において,2005年6月に巣内で捕食者に左翼をもぎ取られたオスのリュウキュウコノハズクOtus elegansのヒナを保護し,飼育する機会を得た.生後三年目2007年12月までの広告声(ホーホ鳴き)と飼育ケージ内の巣に見立てられた樹洞を引っ掻く行動の季節的変化を記録した.生後二年目2006年9月の換羽時期に初列風切が最後に抜けた14日後にはじめて広告声を発した.樹洞を引っ掻く行動は,生後三年目2007年3月にはじめて記録され,6月に最初の初列風切が抜け始める8日前まで続いた.
著者
高木 昌興
出版者
The Ornithological Society of Japan
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-81, 1999-05-25 (Released:2007-09-28)
参考文献数
75

野生鳥獣の生息地の減少や分断化は個体の移動分散を妨げ,近親交配が起きる確率を高くする.小さな個体群では遺伝的浮動が強く働き,配偶相手が近縁である可能性が必然的に高くなる.個体数が激減し,近親交配によって地域的な個体群の絶滅が加速されると危惧される一方で,近親交配の回避が困難と思われる少数個体から個体数が回復した個体群,また近年になって確立した大洋島の個体群が存在する.実際,近親交配が繁殖能力や生存に関係する代謝能力などの形質値の平均を低下させることは実験動物や家畜の研究から古くから指摘されている.野外鳥類でも個体識別した個体群を用いて,長期的に家系が明らかされ,近親交配が検出されてきた.その結果,野外鳥類の近親交配は孵化率を低下させることがわかった.また,DNAを用いた研究では近親交配の指標として利用することができるヘテロ接合度と繁殖や生存に関係する変数との間に負の相関関係が認められている.しかし,近交弱勢を伴わない場合や近親交配によってできた子供が高い生産性を持つ場合があることもわかった.さらに,個体群のおかれている地理的状況や人口統計学的要因によっては,近親交配を回避するよりも近親交配を選択した方が適応的な場合もあり得ることが示唆された.今後は,人為的に個体群を創設するか,定着の歴史が異なる同種個体群を見つけだし,人口統計学的データ,個体,および個体群の両方のレベルで対立遺伝子数やヘテロ接合度などの遺伝的構造に関する変数,さらに繁殖成績に関する変数をモニターすることが必要である.そして,それらの関係を詳細に解析することで,近親交配が個体群の遺伝的構造や生活史形質に与える影響を明らかにできるであろう.
著者
高木 昌興
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.30-38, 2002-10-25 (Released:2008-11-10)
参考文献数
21

アカモズの一亜種(Lanius cristatus superciliosus)は,北海道において過去30年間に急激に減少した。1992年から1996年までの5-7月の繁殖期に北海道で得られたアカモズの繁殖成績と雛の成長について報告する。調査期間中に合計41巣から情報を得た。平均巣立ち成功率は53.7%,平均一腹卵数は5.3卵,平均孵化雛数は5.1雛であった。巣立ちに成功した巣あたりの平均巣立ち雛数は4.4雛で,その巣立ち率は90.3%であった。繁殖失敗の主要因は卵,もしくは雛の捕食であった。カッコウによる托卵率は低く,アカモズは托卵されたカッコウの卵を選択的に除去するか,巣を放棄することで托卵を受け入れなかった。15巣75雛の体重とふ蹠長の成長をロジスティック曲線で近似させ,漸近体重27.1g,日あたり体重増加率0.4,体重増加の変曲点5.7日目,漸近ふ蹠長は24.9mm,日あたり伸長率は0.3,ふ蹠伸長の変曲点4.4日目の結果を得た。
著者
高木 昌興
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.1-17, 2009-05-01 (Released:2009-05-20)
参考文献数
72
被引用文献数
6 8

The characteristics of the avifauna of the Nansei Shoto are explained. The Nansei Shoto consists of the Ryukyu, Senkaku, and Daito islands. The avifauna of the islands, in particular in relation to the species endemic to the islands and those species also occurrign in the islands as well as in both Kyushu and Taiwan, was investigated by means of the literature, mainly the “Check-List of Japanese birds. Sixth Revised Edition (The Ornithological Society of Japan 2000)”. The number of breeding bird species on islands was greatest on the largest islands, and reached maxima (37 species) on both Okinawa and Iriomote islands. In order to understand the similarities between the avifaunas of the various islands, Nomura-Simpsons' coefficient of breeding birds on twelve representative islands of the Nansei Shoto, Kyushu, and Taiwan were calculated. The results of the cluster analyses of the similarities among islands were partly explained by the distances between islands. It is inferred that disparities between the similarities of avifaunas and distances among islands result from differences in the environments of each island.
著者
村田 浩一 仁位 亮介 由井 沙織 佐々木 絵美 石川 智史 佐藤 雪太 松井 晋 堀江 明香 赤谷 加奈 高木 昌興 澤邊 京子 津田 良夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.501-503, 2008-05-25
被引用文献数
2

南大東島に生息する野鳥4科4種183個体の血液原虫感染状況を調査した.そのうち3種109羽(59.6%)に血液原虫感染を認めた.ダイトウコノハズク30個体の末梢血液中に原虫を認めなかった.Haemoproteus sp.およびPlasmodium sp.感染がダイトウメジロ14羽(45.2%)に認められた.モズおよびスズメにPlasmodium spp.感染が認められ,感染個体比率はそれぞれ92.2%(94/102)と5%(1/20)であった.
著者
上田 恵介 江口 和洋 西海 功 高木 昌興 高須 夫悟 濱尾 章二 濱尾 章二
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

オーストラリア・ダーウィンにおいてアカメテリカッコウとその2種の宿主の調査を実施した。その結果、寄生者のヒナを宿主のハシブトセンニョムシクイとマングローブセンニョムシクイが積極的に排除するという事実が世界ではじめて明らかになった。ヒナ排除の事実はこれまでの托卵鳥研究で報告されたことはない。アカメテリカッコウはもともとハシブトセンニョムシクイを主要宿主として、ヒナ擬態を進化させたものであろうが、近年、マングローブセンニョムシクイにも寄生をはじめたものと考えられる。