著者
由比 真美子 青木 和彦 加藤 晶子
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.61, pp.67-68, 2008-12

東北地域は国内ソバ作付面積の30%近くを占める重要産地であるが、平均反収が少なく収穫量シェアは20%を下回っており、収量性や品質の向上により収益性を高めることが生産振興上の課題と考えられる。食品の健康機能性について関心が高まる中、ソバでも高ルチン・高抗酸化活性などの研究が行われてきたが、Fagopyritolの構成成分であるD-chiro-inositol(以下、DCI)についての情報は少ない。DCIには動物実験において血糖降下作用が認められ、類似成分のpinitolにはヒト臨床試験で効果が認められており、糖尿病の治療・予防効果が期待されている。本報では、前報の試験でDCI含量が多かった外国産遺伝資源3点と、国産遺伝資源の中では比較的含量が多かった「九戸在来1」について、個体別DCI含量を調査した結果を報告する。また、あらたに遺伝資源90点についても調査したので報告する。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.59, pp.219-220, 2006-12

デルフィニウムは冷涼な気候に適し、需要も伸びていることから、青森県では振興品目の一つとしている。しかし、市販品種は花色やボリューム等の切り花品質のバラツキが大きく生産上の課題となっている。そこで、雑種強勢育種法ならびに個体選抜により、これらの品質に優れ、揃いの良い品種を育成したので報告する。
著者
野沢 智裕
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.61, pp.31-32, 2008-12

大豆跡復元田を利用した水稲不耕起V溝直播の除草剤体系。水稲不耕起V溝直播は、愛知県農業総合試験場が開発した水稲直播技術であり、冬季代かきを前提とした栽培体系により、従来の水稲直播技術に比べて、栽培安定性が高く、移植栽培と同等の収量、品質を得ることができるとされる。この技術に魅力を感じた筆者は、積雪寒冷地では冬季代かきの実施が困難であると考え、代かきを省略した技術体系の実用化に向けて2005年から試験を実施してきた。これまでの試験から、大豆跡復元田においては、大豆収穫後積雪前までの期間にロータリ耕による整地を行うことで消雪後に固結し、播種前の代かきを省略しても実用的な播種が可能になること、播種量を8kg/10a程度とし、窒素成分で2kg/10aの施肥を苗立ち期に行うことにより移植並の収量が得られることなど、積雪寒冷地での実用化に目処が付いた。しかし、慣行の除草剤体系(一発剤→クリンチャーバスME液剤の体系処理)では雑草の防除効果が不十分であるという問題が残された。この問題を解決するため、愛知県が確立した除草剤体系を含む4種類の除草剤体系の比較を行ったので、その結果を報告する。
著者
浅野 真澄
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.62, pp.17-18, 2009-12

宮城県における移植時期は5月の連休中に集中し、障害不稔による冷害や出穂期の高温による品質低下などが懸念されていた。そのため、これらの改善を目的に移植を5月15日以降に行う晩期栽培を推進しており、移植時期盛期の県平均も5月9日と徐々にではあるが遅くなり始めている。また、「ササニシキ」においては、移植時期の違いによる収量の差は小さく、移植時期が遅いほど外観品質が良くなる傾向のあることが報告されている。そこで今回は、「ひとめぼれ」における晩期栽培が品質に与える影響や、収量を普通期移植と同等に維持するための移植方法等について検討した。
著者
大竹 真紀
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.67, pp.133-134, 2014-12

福島県会津地域はシュッコンカスミソウの夏秋期の主産地であり、市場性の高い品種を導入するとともに収量を上げる摘心方法の改善を進めている。主要品種「アルタイル」は、育成した谷によると、吸肥力が強く茎葉が剛直になりやすいため施肥量を控える必要があるが、窒素吸収の実態は明らかになっていない。そこで、高冷地の夏秋出荷作型において摘心方法にあった窒素施用量と採花本数について検討した。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.59, pp.223-224, 2006-12

ラークスパーは千鳥草とも呼ばれ、青から白、ピンクなど豊富な花色、一重と八重の花型、そして一本立とスプレーの草姿をもつ多様な花である。この花は、以前にデルフィニウムと同じ属の植物として取り扱われていた1年草であり、その生理・生態はデルフィニウムと類似すると考えられるが、デルフィニウムよりも開花までの期間が短く、ロゼット性が弱い。このことは、施設の占有期間や開花調節のし易さの点で大きなメリットと考えられる。そこで、青森県におけるラークスパーの作型開発を目的に、ポット試験によって、播種時期が生育と開花に及ぼす影響について、いくつかの知見が得られたので報告する。
著者
池田 泰子 高橋 秀昌 菅原 秀治 渡辺 伸
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.62, pp.113-114, 2009-12

ラズベリーはバラ科キイチゴ属の低木で、寒冷地での栽培に適し、結果樹齢に達するのが早く、新規導入する品目として有望である。二季成り性品種は、前年の秋果の結果枝が翌春の結果母枝となって夏果を結実し、春から伸長したシュートに秋果が結実する性質を持つ。ラズベリーの国内の需要は10年前の約10倍に増加しており、今後も安定的な需要が見込まれる。しかし現在は、需要のほとんどが輸入品でまかなわれている一方、国内ではほとんど産地形成されていない状況にある。山形県の内陸北部、最上地域は、中山間地域で冷涼な気候のため、ラズベリーの栽培に適すると考えられるが、多雪地域であり、こうした地域での栽培管理についてはこれまで明らかになっていない。そこで、二季成りの結果習性に着目し、省力的な越冬対策とともに、秋季に安定生産できる方法について検討した。
著者
小野 洋 野中 章久 金井 源太 古川 茂樹
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.65, pp.209-210, 2012-12

東日本大震災では農業生産・生活面で多くの混乱がもたらされ、とりわけ震災直後の輸送用燃料不足は深刻であった。こうした経験を通じ、域内で調達可能な再生可能エネルギーに注目が集まっている。農村における太陽光パネルの設置はその一例であるが、農業生産に関連した取組としては、耕作放棄地を利用した油糧作物生産があげられる。そこで本稿では、耕作放棄地におけるエネルギー生産の可能性を検討するため、ナタネを対象としたLCA(ライフサイクルアセスメント)を行う。ナタネはわが国を代表する油糧作物であり、1. 幅広い地域で栽培可能、2. 景観作物として集客可能性があり地域活性化に資する、3. 比較的少額の投資でエネルギー化が可能等の特長がある。なお、以下の分析に用いるデータは、岩手県西和賀町を対象とした現地圃場における実証試験結果である(新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業:平成21~23年度農林水産省)。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.55, pp.285-286, 2002-12

岩手県では、玉山村の黒平豆、葛巻町のそば、一関市の曲がりネギ、宮守村のわさび、岩泉町の龍泉洞の水など、地域を代表する特産農産物や商品、観光資源の提供等による地域資源の高付加価値化が取り組まれている。しかし、これら地域特産物は商品として見た場合、必ずしも実績のあるものだけではないことから、販売額等の実績があがっている特産物の成功要因を把握管理することは、他の地域や品目での地域資源の特産品化による地域活性化をはかる上で欠かせない。そこで地域資源の特産品化のポイントとなる事項について、販売金額等を基準とした場合の、いわば経済評価に裏打ちされた特産品化の要因を明らかにすることにより、今後のさらなる商品化に必要な要因を評価項目に見出すことを試みた。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.54, pp.51-52, 2001-12

水田への有機物施用は、かつては堆肥などの腐熟有機物が主体であったが、現在では、コンバインの普及に伴い稲わら施用が増加している。稲わらなどの未熟有機物の鋤こみは、土壌の還元化を促進させることから、異常還元が発生する危険性は以前よりも増大していると考えられる。また、福島県内の水田転換畑において、有機物残渣を起因とする異常還元と考えられる生育障害が報告されている。そこで、無代かき栽培による土壌の還元化抑制効果に着目し、代かき栽培との比較試験を行い、無代かき栽培における土壌の特性と水稲の生育、収量について考察した。
著者
小田桐理佳
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.58, pp.267-268, 2005-12
被引用文献数
1

えだまめは、全国各地で様々な品種が存在しており、地域特産品として産地化が図られている。最近は茶豆の評価が高く、新潟県や山形県ではすでに「新潟茶豆」や「だだ茶豆」等、ブランドとして確立されている。青森県では、在来種の「毛豆」(晩生種)から、その早生品種「あおもり福丸」「あおもり豊丸」が育成され、この3つの品種を組み合わせて「毛豆シリーズ」として産地化・ブランド化が図られている。これらは、育種や普及関係者の間では、莢の毛が茶色で毛の量が多いため見た目は悪いが、大粒で良食味であると評価されている。そこで、毛豆シリーズのブランド化に当たって、あおもり福丸、あおもり豊丸の食味や外観が消費者にどのように捉えられているのかを定量的に明らかにすることを目的にCS分析を行った。CS分析は、消費者が調査対象とする物のどの要素をどの程度重視しているか、またその改善すべき度合いを数量的に明らかにすることができる手法である。食味アンケートは、一般的な市販の枝豆と、良食味という評価が高い「茶豆系統」の枝豆と比較した場合の2回に分けて実施した。
著者
椿 信一 佐藤 友博
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.61, pp.177-178, 2008-12

近年、国内でのメロン消費量は低迷しており、本県でも地這いメロン栽培面積は減少の一途をたどっている。このようにメロンが消費者に敬遠されるようになった要因の一つに、発酵果や未熟果といった、外観で判別しにくい不良果の混入により、食味品質が不安定なことがあげられる。そこで、本県産メロンの消費拡大を図るために、県内の主力品種'KA-91'(商品名:"秋田美人")と比較して発酵果が少なく適期に収穫可能な、併せて果実肥大性を重視した独自品種を育成する。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.57, pp.67-68, 2004-12

水稲の無農薬無化学肥料栽培において、紙マルチ除草やアイガモ除草など様々な雑草防除技術が確立されてきている。しかし、雑草防除効果に優れる技術は、資材費が高いことや多くの労力を必要とする等の課題がある。そこで、廃棄物として処理される籾殻を利用することにより、資材費を抑えた雑草防除技術を検討した。本報では雑草の防除効果について検討した結果を報告する。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.55, pp.85-86, 2002-12

岩手県における麦作は、主要な転作作物として重要な位置を占めているが、近年麦の本作化が推し進められる中その面積は急激な増大を見せている。しかし、通常の秋播き栽培では、播種作業が水稲や大豆の収穫作業と競合することなどが経営的課題となっている。このような中、春まき栽培や不耕起播種栽培なども試みられているが、十分な解決策とはなっていない。北海道においては、春巻き栽培の補完技術として根雪直前に春播性小麦を播種することにより、融雪直後から生育を開始させ、収量・品質を向上させる技術が取り組まれている。本県の主力品種である秋播性の「ナンブコムギ」について同様の方法で冬期に播種したところ、正常に出穂・成熟し、ある程度の収量も確保されることがわかった。ここでは、冬期播種栽培における生育特性と栽培方法について、これまで検討した結果を報告する。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.59, pp.147-148, 2006-12

2005年5月27日と6月4日に山形市や天童市を中心に降雹があり、オウトウ、セイヨウナシ等の幼果に被害が発生した。今後同様な被害が発生した場合の事後指導等に役立てる目的で、これら被害果の状況と収穫期の様相を追跡調査した。
著者
菊池 一郎 杉田 誠一 前田 亨
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.62, pp.127-128, 2009-12

平成20年5月26日に青森県津軽地域の鶴田町、板柳町及びその周辺で降雹がありブドウ'スチューベン'でこれまで経験の無い甚大な被害が発生した。雹害を受けた時点の新しょうは初期伸長中で軟らかかったことから、茎、葉柄に多数の打撲等の傷を受け、かつ葉の裂傷も多く、生育不良が懸念された。また、新しょうの茎と同様に花穂の穂梗、穂軸にも多数の打撲等の傷が観察された。そこで、被害を受けた花穂(果房)を被害程度別に追跡調査し、生育、品質等について比較検討したので報告する。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.55, pp.249-250, 2002-12

シンフォリカルポスはスイカズラ科シンフォリカルポス属に分類され、北アメリカからメキシコが原産地の洋種枝物花木である。1本の枝から数本の側枝が発生し、その先端に10数個の果実からなる果房を形成する。この果実は8月下旬以降に肥大し、直径1cm前後の球形状となり、品種により白色またはピンク色に着色する。収穫は果房の3分の1以上が肥大した頃に行い、葉付きで出荷される。暖地・中間値では実付きが悪くなりやすく、秋冷の早い寒冷地が栽培適地で、日本国内の主な生産地として長野県、群馬県などがある。この品目は最近注目されている枝物花木の一つであるが、消費者段階では果実および葉の萎れ、枯れが発生しやすく、改善が望まれている。近年、切り花の品質保持に及ぼす抗菌剤や糖の影響が明らかにされてきており、切り枝類にも効果が期待される。そこで、本研究ではシンフォリカルポス切り枝における抗菌剤とスクロースの連続吸水処理が鮮度保持に及ぼす影響について調査した。なお、本研究では平成12年から実施している新技術地域実用化促進事業「寒冷地における枝物花木類の栽培技術体系の確立」の一部をまとめたものである。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.56, pp.101-102, 2003-12

イタリアンライグラスは、関東以西の温暖地・暖地を中心に通常冬作の一年生作物として栽培されているが、出穂後も再生力があるので、夏があまり高温にならない地域に向けて2年以上の利用を目的とした品種が育成されている。北東北は夏が穏やかなので、これらの品種の越夏栽培が可能とみられるが、冬が低温・多雪であるため温暖地向き品種は越冬性が十分でなく、栽培面積は僅かにとどまっている。イタリアンライグラスは良質で春一番草の収量が高く、耐倒伏性に優れた品種も育種されているので、寒地型牧草の中でも特に採草に向いている。本試験では、温暖地で越夏性について選抜したイタリアンライグラス系統を寒冷地で越冬・越夏性等の評価と選抜を行い、寒冷地で採草に向く多年生ライグラス類の育種の可能性を検討した。
出版者
[東北農業試験研究協議会]
雑誌
東北農業研究 (ISSN:03886727)
巻号頁・発行日
no.55, pp.11-12, 2002-12

宮城県では近年移植期が4月末から5月始めの連休に集中するようになって、出穂期が早まり登熟期が夏季の高温に遭遇し産米の品質が不安定になっている。このため、5月中旬以降に移植して、登熟期の高温を回避することを推奨している。この作期のものを宮城県では「晩期栽培」と言っている。2001年は、「晩期栽培」を行っている主要品種の減数分裂期前頃から気温は平年より低くなり、さらに低温が継続するとの予報もあり、「晩期栽培」を行ったものに集中的な障害不稔の多発が危惧された。そこで、主として、「晩期栽培」を行った本県主要品種について出穂日別に不稔発生状況を調査したのでその結果を報告する。