著者
菊地 章太
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.247-256, 2004-03-31

聖母の「無原罪お宿り」の信仰は,その母アンナが肉のまじわりによらず神の恩寵によって,したがって原罪をはなれてマリアをみごもったとするもので,カトリック神学における重要な教義のひとつである。けがれのないマリアの聖性を主張するこの「無原罪お宿り」の信仰は,古くから教会暦のなかで大きな位置をしめていた。そのため人々の信仰生活に深くかかわり,宗教美術や文学にも多くの素材を提供しつづけたのである。聖母マリアの「無原罪お宿り」の信仰は中世にさかのぼり,対抗宗教改革の時代にフランスとスペインにおいてとりわけさかんであった。その萌芽というべきものは,東方正教会の典礼のなかに求めることが可能であろう。このように信仰としては古くから行なわれていたが,ローマ法王庁がこれを教義として正式に認可したのは,1854年のピウス九世の勅書によってである。この勅書が発布されてから,カトリック世界では聖母の出現をはじめとする奇跡があいついだ。1858年に南フランスのルルドにおいて,「無原罪お宿り」の聖母がひとりの少女の前にあらわれている。それ以来,この地はキリスト教における最大の巡礼地のひとつとなった。本稿は,このような聖母信仰の高揚をうながした勅書の意義をあきらかにしようとこころみたものである。
著者
菊地 章太
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.181-190, 2003-03-31

聖母の「無原罪お宿り」の信仰は,その母アンナが神の恩寵によってマリアをみごもったとするもので,カトリック神学における重要な教義のひとつである。けがれのないマリアの聖性を主張するこの「無原罪お宿り」の信仰は,古くから教会暦の中で大きな位置をしめていた。そのため人々の信仰生活に深くかかわり,宗教美術や文学にも多くの素材を提供し続けたのである。ローマ法王庁がこれを教義として正式に認可したのは,1854年のピウス九世の勅書によってであるが,その信仰はすでに西欧においては中世末期にはじまり,対抗宗教改革時代のスペインにおいてとりわけさかんであった。本稿は「無原罪お宿り」の信仰を考察するうえで基礎となる文献資料をもとに,スペインにおける聖母信仰の高揚のありかたを明らかにしようと試みた。
著者
北原 龍二
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.59-74, 2008-03-31

すでにこの連載稿(この紀要に連続して掲載中の「医学校教室論究」1〜をまとめてこう呼ぶ)の1.4.08.(桜花学園大学研究紀要 第5号 43頁 2003)において,関連病院問題についての概要は述べた。今回の連載稿「6」では,改めて,詳細・具体的にこの問題を考察する。ここでは,まず相当数の事例を挙げて,関連病院と医学校・教室との関係のすこぶる多様・複雑な諸相を,さまざまに提示する。なお,関連病院を語るには最低限二つの視点が必要である。1は医学校・教室から関連病院を見る視点(教室にとっての関連病院)であり,2は,関連病院から医学校・教室を見る視点(関連病院にとっての教室)である。この連載稿全体の趣旨から,主として1の視点に立つべきであるが,2の視点からの論述を含まないわけではない。また利用する文献資料において,2の視点からの論述と,1の視点からの論述とが明瞭に区分出来ない場合がある。論者が関連病院に属していても,その論述の基点は絶えず医学校・教室に置いている例は稀ではないからである。なおまた,記述の簡略化のため,関連病院に「」は付さない。筆者は,いわば・いわゆる世間の通念に従えば,などの意味を示すために,いい換えれば関連病院なる語は,厳密な定義に馴染まず,そのままでは学術用語とはなりがたいことを考慮し,本来は「」に括るべきと考えてはいるのであるが。関連病院とほとんど同義で系列病院・出張病院・派遣病院,出先機関,特に古くはジッツ(このカナ書きも一様ではないが)と呼ぶ例もあるが,引用文中における場合を除き,ここでは関連病院に用語を統一する。
著者
山中 正樹
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.A29-A37, 2004-03-31

川端康成の「みづうみ」の独自性は、他の川端作品にはない「追跡者」(=<行為者>)としての主人公が描かれているという点にあると言われる。それゆえ「みづうみ」には、後期の川端の思想が如実に表れているのだと評価されて来た。しかし、「みづうみ」の意義はそこに留まるものではない。主人公銀平の意識の在り様とその変容こそが重要なのであり、それは作中の<時間>と<空間>の問題として考えることができる。本稿は、この<時間>と<空間>という観点から、銀平の意識の変容をとらえ、そこから「みづうみ」を再評価しようとするものである。
著者
都 恩珍
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.203-221, 2004-03-31

同時発話は会話進行のトラブルから生み出される無意義なものでない。本研究では,同時発話の機能を導き出すために同時発話そのものの体系的な構造分析を試みた。発話文の類型を出発点とし,同時発話による発話の中止有無,中止発話の修復有無,最終的に同時発話前後の話題の類縁関係を考慮に入れるという重層的なプロセスを提案し,同時発話類型の細分化を試みると同時に,同時発話の会話進行への影響を主導性及び協力性の観点から捉えた。
著者
白石 晃一
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-18, 2005-03-31

英国(イングランド)の中等学校での公民教育の中核となる義務教育第3段階(第7〜9学年,11〜14歳)の公民科の授業に関して,単元「人権」の授業展開を,学習指導計画と指導方法に注目して検討した。具体的に二つの学習指導計画(テューダーの教師用資料集ならびにフィーンの教科書と教師用書)をとりあげ,教師用資料集・指導書と生徒用教科書の内容を精査し,そこで重視されている思考・判断と討議・討論の過程を解明した。そして,子どもの権利の確認,責任の自覚,人権擁護のための積極的な活動への誘い,障害者差別反対の絵はがきやポスターや直訴状の作成に,また生徒のアムネスティー・インターナショナル支部設立運動に,「思考・判断と討議・討論(ディベートとディスカッション)と発表(発言・表現)を重視しながら,そこから出発して,人権擁護の行動を促す」という方向性を見出した。
著者
岩井 齊良
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.17-27, 2006-03-31

アリストテレスの論理学を数理論理学の立場から論じた。デジタルな手法を導入することにより,これまで難解とされてきた証明を万人向けの証明に書き換えた。
著者
布 和
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.201-210, 2003-03-31

1871年の日清修好条規は,近代中日関係史上における意義が大きい。当時の中国である清国は,アヘン戦争によって,欧米列強に強制的に不平等条約を結ばせられて,外国交渉に一種の拒絶反応を持った。一方,明治維新を起こした日本は,欧米的な近代化を謀りながら,近隣諸国に対して条約外交を展開した。その一環として,清国に条約を求めてきた。日本の要求に対し,清国の外交を掌る総理衙門がまず拒否したが,日本側の粘り強い交渉によって,また,清国の実力者曽国藩,李鴻章らの積極的な建議により,清国が日本と条約を交渉することになった。直隷総督兼ね北洋通商大臣李鴻章は清国側の交渉責任者で,これまでの研究では,李鴻章が対日交渉強硬論者で,日本警戒論を持つとされたが,それは李鴻章の一面でしかなかった。実は,総理衙門,曽国藩の対日警戒論と違って,日本連携論を前提に李鴻章が対日条約交渉を行おうとした。最終的に,曽国藩の意見によって対日連携方針が修正され,日清修好条規における李鴻章の対日連携論も消極的なものになったのである。
著者
白石 晃一
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.125-142, 2008-03-31

英国イングランドの中等学校義務教育課程後期段階(第4段階,第10・11学年,14〜16歳)の公民科における地球環境問題学習についての研究である。まず,英国の中等学校公民科教育の実情を教育水準局(Ofsted)報告書(2006年9月)に関する新聞記事に見た。優れた学習指導をおこなっている学校もあるが,4分の1の学校で基準に達していないとのことである。そこで,公民科教育の終点に置かれる「地球環境問題」学習を取り上げ,低水準の学習展開例を市販の学習参考書で確認した。重要語句・重要事項説明の書き写し練習と暗記という学習である。その上で,能動的な学習を提唱する教科書における地球環境問題学習を検討した。地球環境問題学習単元の公民科学習内容における位置づけについて,また学習単元「地球環境問題」の展開について,その学習活動例に注目して,調査した。そして,能動的学習の展開の模索という面で,日本の公民科教育と地球環境問題学習にとって参考になる,との結論をえた。
著者
森田 健宏
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.123-135, 2003-03-31

The purpose of this study was to investigate about the film technique when using home video cameras. For this study, 20 samples of video tape were offered from homes. In this study, detailed contents of film techniques were as follows; (a) zoomnig technique, (b) panning technique, (c) tilting technique, (d) cutting technique, (e) others. The main results were as follows, (I) zooming technique was the most frequently used in home video cameras. However zooming function operated more quickly than they thought. Viewers would get confused in many times if we look at the film. (II) panning technique was used so many times too. But since the way they use this technique did not suit the rule, they made the film unclear.
著者
森田 優己
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.257-270, 2004-03-31

規制緩和と地方分権の推進,環境問題の深刻化と少子・高齢社会の到来を契機として,交通政策はパラダイム転換を求められている。その渦中に投じられた地方自治体は,一方では,コミュニティバスを中心とする交通手段の現物供給によってシビルミニマムを確保し,他方では,敬老パスというシビルミニマムの現金支給形態において,高齢者のアクセシビリティを保障している。本稿においては,高齢者をとりまく交通環境の現状と交通バリアフリー法によるアクセシビリティ改善状況などを検討した上で,高齢者に対する交通権保障という視点から必要であるのは,交通分野内部におけるパラダイム転換ではなく,交通政策の底流をなすべき政治哲学の転換もしくは確立であることについて問題提起した。