- 著者
-
小川 基
高木 秀明
- 出版者
- 一般社団法人 日本発達心理学会
- 雑誌
- 発達心理学研究 (ISSN:09159029)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.1, pp.1-12, 2018 (Released:2020-03-20)
- 参考文献数
- 30
母子関係におけるゆるしについては,これまで古澤平作による阿闍世コンプレックス理論などを中心に精神分析的な考察が深められてきた一方で,実証的には十分に検討されてこなかった。本研究では,母親から子どもへのゆるしのプロセスを明らかにすることを目的とし,調査,分析を行った。具体的には,母親10名に対して「母親が子どもをゆるすプロセス」について,またその子どもである青年12名に対して「子どもが母親からゆるされるプロセス」についてのインタビュー調査を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果,双方において4段階のゆるす/ゆるされるプロセスモデルが生成された。これらの結果より,母親は子どもからの傷つき・困らされ体験後も,自らの親としての機能を維持しようと努めること,また,それが結果的に子ども側のゆるされた実感につながっていることが明らかとなった。同時に,ゆるす側としての母親とゆるされる側としての子どもとの間に生じうる認識のずれや,それに伴う母子関係における臨床的問題について考察を行った。