著者
石田 孝造
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.72-78, 1990
被引用文献数
1

日本経済の発展・成長に伴い政治経済文化情報の一極集中がもたらした巨大都市東京は,経済空間として巨大であるだけでなく,機能的にも構造的にも特異な性質をもっている。東京都産業連関表の作成とそれに基づく分析はこの巨大都市東京の経済的機能と構造の特質を明らかにする。さらには一極集中のメカニズムを明らかにするうえで,多くの示唆をもたらすであろう。
著者
宍戸 駿太郎 川上 彰 黒川 基裕
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.40-50, 2011-10-31 (Released:2014-08-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

東日本大震災の経済・社会的損害の測定をストックとフローの両面から地域別に計測し,次に復興の過程の経済効果を地域別とマクロ経済の両面から代替的な政策の下で分析を行う.とくに財源とその規模をめぐる政策如何で,日本経済の中・長期の成長経路とデフレ脱出にいかに影響するかの観点から,代替的政策の評価を行う.使用される計量経済モデルは日米・世界モデル研究所のレオンチェフ・ケインジアンモデル:DEMIOS と(財),東北経済開発センターの地域間産業連関表ならびに経済産業省の全国・地域間産業連関表である.
著者
蒔田 真理子
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.25-45, 2017 (Released:2018-02-10)
参考文献数
15

昨今,日本では「観光」が新たな成長戦略の核となる産業の一つとして注目を浴びている.日本における「観光」産業は20数兆円の市場規模を有し,2012年以降拡大基調にある.近年は市場規模拡大に急増する訪日外国人の消費が寄与するところも大きく,現在,政権運営を担う安倍内閣はその消費需要の取り込みに力を注いでいる. 観光がもたらす経済効果は数多くの先行研究により様々な角度から検討され,近年は訪日外国人の消費(インバウンド消費)が訪問地にもたらす経済効果を計測した研究も散見される.しかしながら,東海地方を対象としたものはまだ少ない.そこで本稿は公的な観光統計を基に2013年から2016年の東海三県内におけるインバウンド消費額を推計し,産業連関分析の枠組みでその効果を計量的に検証した.
著者
山田 光男 村田 千賀子 安岡 優
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1-2, pp.80-95, 2010-06-30 (Released:2015-03-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1

鈴鹿 F1 日本グランプリには全国から多くの観戦者が集まり,その間交通アクセスや宿泊・飲食・土産など様々な支出を通じて地域経済に直接間接の影響をもたらしてい る.その影響は単に開催市にとどまらず広域にまたがると期待されるものの,これまでその経済効果の詳細な評価・分析が行われてこなかった.ここでは,F1 観戦客や大会主催者,チーム関係者,F1 ビジネス関係者,地元事業者,宿泊事業者等にアンケートやヒアリングによる実態調査を行い,その結果をもとに,東海3県およびその他都道府県の4地域間産業連関表を用いて2006年F1日本グランプリの経済効果を算出した.さらに,県表から市町村の経済効果を計測する簡便法を用いて鈴鹿市および三重県内周辺市町への経済効果の試算をした.
著者
安田 秀穂
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.16-23, 2002 (Released:2015-06-24)

「千と千尋の神隠し」の興行収入が過去の記録を更新するなど,映画館は活況である。映画館の経済波及効果はきわめて大きく,生産誘発係数は2.09である。しかし,映画館の現場にたずさわる人々からは依然として厳しい経営状況が続いており,景気はよくないとの声が聞こえる。映画産業の活況と現場の声とのギャップは何なのか。一般に経済波及効果はその産業の裾野にあたる産業が広いと大きくなると言いならわされているが,果たしてそのとおりなのであろうか。本論は経済波及効果の大小を決定する要因を明らかにし,次々と連鎖する裾野への展開によるよりも,最終需要が生じた産業それ自体の投入係数の性質によるところが圧倒的に大であることを実証的に確認し,映画産業の現場に生じたギャップのメカニズムを解明する。
著者
清水 雅彦
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.58-65, 1990
被引用文献数
1

東京という巨大都市には, ざまさやまな機能が集積している。なかでも,企業経営組織において中枢的役割を扱う本社事業所とその活動の集中は,巨大都市東京の日本経済における機能と役割を特徴づけている。このような巨大都市東京の産業構造と経済循環を産業連関表によって記述することが,東京都産業連関表作成のねらいである。そのためには,従来の産業連関分析理論の枠組と表章形式の検討を返して新たに各産業における本社活動部門を設定しなければならない。本社活動部門の設定は巨大都市東京における経済機能の一極集中に新たな分析視点をもたらす。
著者
錦見 浩司
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.26-33, 1992

日韓両国は歴史的・文化的にもつながりは強いが,経済的な依存性は現在どのようになっているのであろうか。アジア経済研究所の推計になる1985年の日韓I-O表はこの両国の結びつきを初めて数量的に究明した。例えば日本は農林水産物,繊維製品,化学製品,金属製品等の生産で韓国に依存しており,韓国は化学,金属,一般機械,電気機械,輸送機械等主に重化学工業の生産の面で日本に依存している。さらに興味あるのは韓国の成長を支えた輸出製品はその対日依存度が極めて高く,韓国の国際競争力は日本のそれをうまく取り込むかたちで強化されてきたことである。以下その詳細を両国の構造的依存性の立場から跳めてみよう。
著者
倉林 義正
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.25-32, 1991

去る1990年11月,ニューヨークの国連本部は,現行の「新SNA」に対してさらに改訂の草案を発表した。SNAは産業連関表や資金循環勘定,さらには国民貸借対照表を含む総合的な国民経済計算のシステムである。その改訂が意味するところは各国の経済・社会政策にとってもきわめて大きな影響を及ぼす。筆者はこの再改訂のさなかの3年有余を国連統計局長として在任され,再改訂に直接関与された。この再改訂の動きを実感のこもった,貴重な体験を含めて,以下に展開する。
著者
新井 園枝
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1-2, pp.18-29, 2016-01-31 (Released:2016-03-10)
参考文献数
5

戦後の日本経済発展の分析ツールとして産業連関表が大きく貢献したように,経済産業省では各地域経済分析のため「地域産業連関表の作成」,また,高度成長を続ける日本経済の負の部分としての公害を扱った「公害産業連関表の作成」(環境 IO 表の基礎),昭和48年のエネルギー問題に端を発した日本の構造変化に着目した「延長産業連関表の作成」,国際的なグローバル化が進む中での「国際産業連関表の作成」など,時代の行政ニーズに合わせて様々な産業連関表の作成を行い経済産業政策に貢献してきた.中でも地域産業連関表は平成2年表から全ての都道府県が産業連関表を作成するなど,経済産業行政を超えた地域の時代を分析するためのツールとして大きな広がりをみせている.そこで改めて経済産業省の地域表に焦点を当て,作成経緯と役割,その特徴について紹介するものである.これらを踏まえて,今後の統計のあり方について今一度考えていただければ幸いである.
著者
藤川 清史 渡邉 隆俊
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.31-44, 2003-02-28 (Released:2015-06-19)

近年,東アジア地域での自由貿易協定(FTA)を研究する機運が高まっている.そうした状況を背景として,本稿では次の2 つを主な目的としている.1 つは近年注目されているGTAP モデルの概要を紹介することである.自由貿易の経済効果を分析するためには多国間モデルが必要であるが,従来はそうしたモデルの開発には多くの時間と費用をかけねばならなかった.機動的対応のできるモデルがあれば使いたいという,かねてからあった要請に応えるために開発されたものがGTAP モデルである.もう1 つは,このGTAP モデルを用いて,東アジア地域で自由貿易協定が締結された場合を想定して,その経済的効果を予測することである.本稿では関税撤廃の直接効果のみに焦点をあて,FTA 後に予想される生産性上昇効果や資本蓄積促進効果は扱わなかった.そのために,予測される経済効果は大きくはないが,それでも,FTA 締結はグループからもれた域外国の経済厚生を低下させる傾向があること,また,FTA 締結国の数が拡大するほど世界全体の経済厚生も高まることが確認された.
著者
濵本 賢二 中谷 武
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.42-56, 2007

人口減少と高齢化が急速に進んでいるが,この傾向はこれからも確実に進行すると予測される.それに伴い,増大する社会保障支出に中長期的にどう対応するかが重要な政策課題となっている.本稿は,レオンチェフ型の投入産出構造に所得分配と消費支出を内生化したレオンチェフ・宮沢モデルを多世代型に拡張し,あわせて租税分析の測定方法を提案して,人口構成の高齢化の影響を定量的に明らかにする.具体的には,世帯主年齢を5歳刻みで9つの世代グループに区分して,各世代の消費関数を推計し,それを集計することでマクロ消費関数を構成して試算した.分析の結果,高齢化は消費性向の上昇をもたらし,生産,所得にプラスの効果を持つこと,また,政府支出の組み替えによって財政収支バランスと所得増大を両立させることが可能であることを示す.
著者
古屋 温美 横山 真吾 中泉 真吾
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.5-17, 2011
被引用文献数
1

古屋ら(2008)は,北海道厚岸町において発生したカキマヒ性貝毒事件(2005年4月),全国的な広がりを見せたノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行(2006 年 12 月)による,危害や風評による被害・損失額を算定し,産業連関表の活用により,被害額の地域内外への波及影響の程度を明らかにした.この研究で,産地や消費地への影響を最小化するには,厳格な品質衛生管理,正しい知識や情報の提供,危害発生時のリスク管理が重要であると述べた.本論文では東日本大震災による農林水産物の風評被害による経済的影響について分析を試みたが,カキの分析時と異なるのは,その原因が放射能という特殊なものであることと,農林水産物だけでなく様々な輸出品に対し,外国から風評被害を受けたことである.外国からの風評被害は,シンガポールの日本食レストランの経営等にも深刻な影響をもたらすなど,波及影響は計り知れない規模であり,厳格な品質衛生管理や正しい知識や情報の提供だけでは防ぐことの出来ない被害であった.本研究は,風評被害の要因となっている原発事故が未だ収束しない状況において,統計データなど公表資料が不十分であり,また,地域,品目や期間等が限られた範囲のデータを用いた分析となったが,今後,公表される統計データが充実すれば詳細な分析が可能になることから,引き続き想定される農林水産物の風評被害の経済評価の基礎研究としたい.
著者
古屋 温美 横山 真吾 中泉 真吾
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.5-17, 2011-10-31 (Released:2014-08-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

古屋ら(2008)は,北海道厚岸町において発生したカキマヒ性貝毒事件(2005年4月),全国的な広がりを見せたノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行(2006 年 12 月)による,危害や風評による被害・損失額を算定し,産業連関表の活用により,被害額の地域内外への波及影響の程度を明らかにした.この研究で,産地や消費地への影響を最小化するには,厳格な品質衛生管理,正しい知識や情報の提供,危害発生時のリスク管理が重要であると述べた.本論文では東日本大震災による農林水産物の風評被害による経済的影響について分析を試みたが,カキの分析時と異なるのは,その原因が放射能という特殊なものであることと,農林水産物だけでなく様々な輸出品に対し,外国から風評被害を受けたことである.外国からの風評被害は,シンガポールの日本食レストランの経営等にも深刻な影響をもたらすなど,波及影響は計り知れない規模であり,厳格な品質衛生管理や正しい知識や情報の提供だけでは防ぐことの出来ない被害であった.本研究は,風評被害の要因となっている原発事故が未だ収束しない状況において,統計データなど公表資料が不十分であり,また,地域,品目や期間等が限られた範囲のデータを用いた分析となったが,今後,公表される統計データが充実すれば詳細な分析が可能になることから,引き続き想定される農林水産物の風評被害の経済評価の基礎研究としたい.

1 0 0 0 OA 巻頭言

著者
吉山 博吉
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.5, 1989 (Released:2015-08-29)
著者
中村 洋一
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.16-29, 2009-10-31 (Released:2015-03-28)
参考文献数
7

最近の日本においては,国民経済計算や産業連関表を中心とする包括的な経済統計の信頼性の向上のため,それらの推計方法や相互の関連について改革を 進めることの必要性が認識されている.とくに経済センサスの活動調査が 2011年を対象に初めて実施されることを受け,国民経済計算,産業連関表ともに推計の枠組みから見直すことが必要となっている.このため本稿では,国際 標準であ る国連の基準と日本の現行体系を比較し,主要国の経験を参考にしつつ,日本における改革の方向を探ることを目的とする.第1節で は国連の産業連関表の枠組みを概観する.第2節では日本の国民経済計算における産業連関表の取り扱いについて述べる.第3節では日本の産業連関表基本表と 国民経済計算および国際基準との関係について述べ,第4節では主要国の産業連関表について,国民経済計算との関連を中心に概観する.最後に結論を簡単に述べる.
著者
山田 誠治 萩原 泰治
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.188-197, 2012

産業連関分析を行うためには,ソフトウェアの利用が不可欠である.本誌では,得津・藤川らの VBAの利用,加河・稲村による Matlab の利用について,「産業連関分析入門」シリーズ,「応用産業連関分析講座」シリーズを掲載してきた.今回は,後者の続 編 として,Scilab を紹介する.Scilab はMatlab のクローンソフトであり,フリーソフトウェアであることからアクセスがより容易である.第 1 回として,基本的な解説と,兵庫県連関表を用いた計算例を示す.
著者
塩谷 英生 朝日 幸代
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1-2, pp.16-29, 2009-06-30 (Released:2015-03-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

地域固有の特性を持つ資源を活用する地域観光政策には地域比較が可能な観光統計,訪問地や訪問数を含め正確に情報を収集すること,さらには観光客数など統計精度を高め,調査することが現在の課題である.本論文では観光統計を概観し,その利用方法を紹介する.また,観光イベントの波及効果には地域産業連関分析が頻繁に利用されていることから,2000年地域産業連関表の旅館・その他の宿泊所の部門の評価を行う.この生産額について全国表と都道府県表の合計値を比較すると−1.46%の乖離率となり,都道府県表の作成の精度は比較的高い.一方で移輸入,移輸出は乖離が大きく,推計に課題を残している.次に新しく調査方法が整備された宿泊旅行統計のデータを用いて,地域別波及効果を分析した.3億938万人の宿泊客は3兆8417億円の直接効果がある.その結果,各都道府県での効果を合算すると7兆234億円であり,部門別の波及効果は旅館・その他の宿泊所へ大きく影響する.
著者
明 素延
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.73-87, 2016

1990 年代後半からの情報通信技術の急速な発展に伴い半導体などの情報通信機器の価格低下が著しく,経済全体における情報通信機器の活用による生産性向上の効果が注目されている.本稿では,日本と韓国のICT製造部門において固定基準年方式による既存の接続産業連関表のデフレーター及び実質値のバイアス可能性を検討したうえで,ICT製造部門の生産性向上が他産業部門の生産性に与える効果の計測を行った.分析の結果,情報通信機器の価格低下が既存の接続産業連関表のデフレーターに充分に反映されていないことが明らかになった.そして,このような情報通信機器の価格低下の過少評価は韓国の方が大きく,ICT製造部門の生産性向上による他産業部門へのコスト削減効果あるいは生産性向上に与える効果が過小または過大評価になっていることがわかった.
著者
新井 益洋 石田 孝造 桜本 光 清水 雅彦
出版者
環太平洋産業連関分析学会
雑誌
産業連関 (ISSN:13419803)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.57-69, 1994
被引用文献数
3

東京都の産業構造は,日本の本社の約50%が集中し,その本社に必要な対事業所サービス,金融・保険等のサービス化が進んでいる。また本社の就業者は135万人に達する。そして本社活動,サービス,財の生産に,毎日通勤者として都外から250万人流入し従事している。このように他の地域とはきわめて異なる東京経済を,雇用と本社活動の面から分析し,東京一極集中の分析視点からの試論として,本社移転のシミュレーションを行なった。経済効率の点からは,本社移転は非効率的である。