著者
谷口 忠大 高木 圭太 榊原 一紀 西川 郁子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.1078-1091, 2009-12-15
被引用文献数
2 9

近年,CO<SUB>2</SUB>排出量の抑制や,化石燃料の将来的な枯渇を背景に再生可能エネルギーの利用が注目されている.しかし,既存の中央集権的な電力ネットワークは系統末端での非定常発電を前提とする再生可能エネルギーとは必ずしも相性がよくないと言われる.このため,マイクログリッドを始め分散型の電力ネットワークが研究されている.本研究ではその一つである自律分散型の電力ネットワークであるECOネットを取り上げ,ECOネット内の発電消費の末端ノードであるミニマル・クラスター間での電力売買を通じた電力融通の自動化の為の機構について検討する.電力売買の自動化の為には,各ミニマル・クラスターにおける電力ロスの発電・消費における諸条件に基づき電力売買の方策を最適化する事が望まれる.本稿では,電力売買を行うエージェントの学習に強化学習を用いる事で電力ロスを低減し,収益を最大化させるような適応的取引エージェントの構築を目指す.ただし,そのような系ではマルチエージェント強化学習の系となるために,不完全知覚問題や同時学習問題が発生することが指摘されている.本稿ではそれらの問題に強いとされる方策勾配法,特にその一種である Natural Actor-Critic を用いて適応的取引エージェントを構築する.また,提案手法の有効性を示すために,6個のミニマル・クラスターにより構成されるローカルクラスターを対象にシミュレーション実験を行った.シミュレーション実験では,Natural Actor-Criticによりエージェントが適切な取引を学習する事が出来る事が示されたのと同時に,マルチエージェント強化学習環境下においても少なくとも一体固定的な取引を行うエージェントの居る条件下では良好な学習結果を生むことが示された.
著者
野中 俊昭 遠藤 靖典 吉川 広
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.484-495, 2006-06-15
被引用文献数
3

安全性や騒音防止の観点から, 鉄道車両の滑走防止制御 (ABS) に対する研究は非常に重要である. しかし, ブレーキというシステムにおいて, 滑走という非常に不確実性の高い現象を防止することは容易ではなく, 一般的な制御方法というものは存在しないのが実状である. ところで, ファジィ推論は, 不確実性の高い制御対象に対して高い有効性を発揮することが知られており, 滑走に対しても, 同様の効果が期待できる. そこで, 本論文では, ファジィ推論を用いたABSと, 最近になって実用が進んだ編成でブレーキを制御するシステムを統合することで, 滑走防止に対して有効な新たなブレーキシステムを提案する. また, このブレーキシステムによって, ファジィ推論を用いたABS単独で制御するよりも, ブレーキ距離の短縮と車輪踏面の損傷低減が実現できることを, 数値シミュレーションおよび実車試験によって示す.
著者
梶原 悠介 前田 陽一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.792-803, 2009-10-15

本研究では,コンピュータによる作曲の手法として現代音楽の作曲技法である12音技法を用いた作曲システムを提案する.12音技法は,段階的に作曲する手法のためコンピュータでの作曲に適しているという利点がある.12音技法での作曲の第1プロセスである12音音列の生成は,曲の主題や雰囲気を決定付ける重要なプロセスである.ここでは,一般的な音楽理論である協音程・不協音程の関係を基にした適応度関数を設計し,GAによる響きのよい音列の探索により12音音列の自動生成を行う.12音音列を生成するシミュレータを作成し,シミュレータが生成した12音音列と人が作成した12音音列の比較アンケートを行うことで本システムの有効性検証を行った.
著者
蓮井 洋志
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.247-255, 2009-04-15
被引用文献数
1

本研究では,作曲モデルを利用した対話型進化論的計算手法の作曲支援システムを作成している.作曲モデルは確率決定性有限状態オートマトンで,メロディーを学習し,その学習データをもとに作曲する.作曲モデルを個体とした対話型進化論的計算手法によって,ユーザの好みをモデルが学習し,ユーザの好みのメロディーを作曲する.ユーザが GUIで作曲モデルが作曲したメロディーを修正する.修正したメロディーの中からうまく選択して学習すると,好みに合うモデルとなる可能性があると考えた.実験の結果,作曲モデルは7曲メロディーを学習したときが,評価が一番高く,比較的修正したいと感じる曲数が多かった.そこで,7曲学習する作曲モデルを個体として,対話型作曲支援システムを実行したところ,世代が進む毎に作曲モデルの適応度が上がった.適応度は 12世代くらいで伸びが止まり,類似したメロディーだけになった.また,高い適応度の個体の子は類似したメロディーとなるために,高い適応度を持ちやすい.しかし,いろいろなメロディーを何度もを聞くうちに,ユーザの好みのメロディーが変わるために,適応度が一定しないことが分かった.世代を追うごとに作曲モデルだけでなく,ユーザの好みも明確化すると理解できる.
著者
野中 俊昭 遠藤 靖典 吉川 広
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.431-440, 2004-10-15
参考文献数
17
被引用文献数
5

安全性や騒音防止の観点から,鉄道車両の滑走防止制御に対する研究は非常に重要である.しかし,ブレーキというシステムにおいて,滑走という非常に不確実性の高い現象を防止することは容易ではなく,一般的な制御方法というものは存在しないのが実情である.ところで,ファジィ推論は,不確実性の高い制御対象に対して高い有効性を発揮することが知られており,滑走に対しても,同様の効果が期待できる.そこで,本論文では,ブレーキ距離の短縮を第一目的として,鉄道車両に対するファジィ推論を用いた新たな滑走防止制御手法を提案する.本論文で提案する制御手法は,同時に計算量の低減とチューニングの容易化も図っている.また,数値シミュレーションを通して,提案する制御手法によってブレーキ距離の短縮が実現されていることを示す.
著者
松村 嘉之 大倉 和博
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.972-980, 2008-12-15

本稿ではセル生産における自律分散的な作業現場において,作業者が持つ作業機械に関する情報について作業者機械評価表を用いて簡便に抽出することを試みる.そして,作業現場がフラットな組織に近く,リーダーが存在しない場合に,PM理論に基づく一定のリーダーシップを持つインフォーマル・リーダーを選出し,ナレッジ・マネジメントを促進する簡潔な方策を提案する.そして,実際のクリーニング工場のセル生産現場において,PM理論に基づくインフォーマル・リーダーを中心にして作業者から作業機械情報を抽出し,それに基づくナレッジ・マネジメントによって作業時間を短縮することによって,心理的見地に基づく情報共有の有用性を実証した.
著者
徳丸 正孝 村中 徳明 今西 茂
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.299-312, 2007-06-15
被引用文献数
2 4

カオスニューラルネットワークは連想記憶の能力を持つことが知られており,想起過程において複数の記憶パターンの特徴を併せ特つような新たなパターンが想起されるなどの興味深い振る舞いを示すことが知られている.本研究では,カオスニューラルネットワークの新たな分野への応用の試みとして,記憶と忘却を繰り返すことにより徐々に変化するパターンを発想し続けるシステムを提案する.本システムでは,複数の記憶パターンを記憶したニューラルネットワークにより新たなパターンの想起を行うが,記憶パターンの1つを忘却し,新たに出現したパターンを記憶して想起を続ける.これにより,本システムは想起パターンの特徴を徐々に変化させながらも新たなパターンを次々と想起し続けることができる.このようなシステムはエンターテイメント分野などへの応用が期待できるが,本論文では応用例として,雰囲気を徐々に変化させながら楽曲を奏で続けるシステムを作成した.実験の結果,本システムが記憶と忘却を繰り返しながら新たな楽曲を生成していることが確認された.また,聴取実験により,本システムの奏でる音楽は,数小節のメロディを繰り返すような単純な音楽よりも飽きないものであり,また心地よいものであることが確認された.
著者
鈴木 聡 森島 泰則 中村 美代子 槻舘 尚武 武田 英明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.513-525, 2008-08-15
被引用文献数
1

本研究では身体化エージェントの登場位置・身体方向に注目し,物理空間・仮想空間の間に寸断されたユーザと身体化エージェントの位置関係を乗り越え,対等な社会的関係の構築が行える環境を追求する.身体化エージェントの身体方向と,画面奥行き方向の仕切りを基準とした身体化エージェントの登場位置に着目し,これらのユーザへの影響を心理実験により検討を行った.この際,人間同士の2者対話における身体配置の選好における男女差の存在が知られているため,考慮に入れた.実験1(N=48)では作業の遂行(写真の記憶再認課題)と身体化エージェントの印象に対して上記の要因が与える影響について,男女差も考慮の上検討した.実験2(N=51)においては身体化エージェントの身体方向の,ユーザが認知するエージェントとの距離への影響について実験を行った.これらの実験の結果,エージェントの登場位置のみならず,身体方向もエージェントとの距離のユーザの認知に影響し,男性のユーザは女性のユーザより距離を離した形でのエージェントの身体配置を好む可能性が示唆された.身体化エージェントの身体配置,およびその影響の男女差を踏まえた身体化エージェントの設計の必要性を本研究は示している.
著者
山中 努 田中 祐也 土方 嘉徳 西田 正吾
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.691-706, 2010-12-15
被引用文献数
1 2

近年,GPS機能付きの携帯電話や,マイクロブログなどの手軽な情報発信サービスの普及により,時空間情報を伴うテキストデータ(メッセージ)が増加しつつある.本研究では,公園などの施設の管理者や自治体の防災センターの職員などが,上記テキスト情報を用いて管理区域の状況把握を行うことを支援するシステムを提案する.提案システムでは,メッセージを決まったカテゴリに分類する自動分類,類似するメッセージを集約するクラスタリング,メッセージが通常より密に発生していることを検出するバースト検出の3つの機能を備えている.万博記念公園で被験者120人に,現場の状況を携帯メールでサーバに通知してもらう実験を行い,時空間情報を伴うテキストデータを収集した.このデータを用いて,提案システムの評価を行った.
著者
加藤 聡 堀内 匡 伊藤 良生
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.452-460, 2009-08-15
被引用文献数
5

自己組織化マップ(SOM)を用いたクラスタリングは,k-means法などと比較して,任意形状のクラスタ抽出を比較的容易に行えることが特長の「距離ベース」の手法である.一方,個々のデータ同士の距離に注目するのではなく,データ集合の分布の状態に注目した「分布ベース」のクラスタ抽出法があり,具体的にはベイズ型情報量基準(BIC)をk-means法のアルゴリズムに適用するx-means法などを挙げることができる.この情報量規準を用いたクラスタ抽出のアプローチは,SOMを用いたクラスタリング手法にも比較的容易に適用可能であると考えられる.そこで本論文では,SOMによって初期のクラスタ候補群を生成し,これらを情報量規準に基づく判定手法によって徐々に併合するクラスタリング手法を提案する.提案手法に対して,人工的に作成したデータセットおよびUCI Machine Learning Repositoryのデータセットを用いた評価実験を行い,SOMのみを用いたクラスタリングと比較して,より本来のクラスタ分割に近いクラスタリング結果が安定的に得られること,情報量規準としてはBICよりも赤池情報量規準(AIC)が提案手法には適していること,クラスタ数の自動推定が可能であることなどの知見を得た.
著者
中村 俊輔 古殿 幸雄
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.211-217, 2008-04-15

本論文は,人間の日常生活行動の中で,購買行動に着目しつつ,企業のマーケティング活動や需要予測などを円滑に行うためのファジィ推論モデルの構築を試みる.具体的には,主成分分析の適用によって有用になるであろう気象要因の選定を行い,また,来客数と気象要因の相関分析をも試みる.そして,分散分析を適用する事によって,日々の売上高や来客数と気象要因との関係について解析を行う.これらの解析結果から,人間の購買行動に影響を及ぼす気象要因を選定し,ファジィ推論モデルが構築される.最後に,著者らは需要予測の想定の確立を試みる,同時に,本ファジィ推論モデルの有用性を明らかにするために,従来の予測手法である回帰分析の予測結果と比較する.
著者
森田 譲 前田 保憲 日隈 崇文
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.262-270, 2004-06-15

本論文では、ニューラルネットワークを利用し、倒立振子制御におけるPIDゲインのセルフチューニングを行い、評価関数の最小となるPIDゲインが存在することを明らかにした。実システムの制御対象として無駄時間を含む1重倒立振子を考える。この制御系は1入力2出力系を構成し、台車、倒立振子および角度補償器と位置補償器を含めた系を伝達関数で表し、これに時系列処理を行いニューラルネットワークで同定する。このニューロエミュレータはPIDゲインをチューニングする際に必要なシステムヤコビアンを計算するときに用いる。つぎに実システムモデルに対して、別のニューラルネットワークを用いて、倒立しているが不安定なPIDゲインの初期値からセルフチューニングを開始する。この結果チューニングで得られたPIDゲインを用いて実験を行い、測定された振子の角度および台車の位置の情報とも整定時聞か短くなり、かつシミュレーション結果とよく一致することを示した。
著者
古川 忠延 松尾 豊 大向 一輝 内山 幸樹 石塚 満
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.557-566, 2009-08-15
被引用文献数
1

ブログ上では日々コンテンツが更新されては,他のブロガーを巻き込んでの議論が行われている.本稿ではブログにおけるこうした話題伝播を解析することによる話題語の判別手法を提案する.ブログにおける話題伝播が語とブロガーの影響力によって起こるという仮説の下で,ブログ間の話題伝播を表現する行列を特異値分解することによって,それぞれの影響力を算出し,強い影響力を持つ語を重要語と判別するものである.本手法により,多くのブログ上で突発的に盛り上がる話題だけでなく,嗜好の類似したブロガー間で継続的に言及されている話題の抽出をすることが可能である.