著者
目良 和也 市村 匠 山下 利之 三木 睦明
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.465-474, 2003-08-15

相手が発した文章の内容を,相手の好き嫌いの基準をもとに解析し,そこから相手の情緒を推測する手法として,情緒計算手法が提案されている.しかしこの手法では,連体修飾構造,特に節構造による連体修飾の際の好感度計算について有効であるとは言えず,これらの情緒空間に対して,例外処理となっていた.本研究ではこのような問題点を解決するため,連体修飾節の好感度計算に対して,ファジィ真理値限定を適用することによって,適切な計算と処理の統一を試みた.ファジィ真理値限定における真理値計算のうち,言語真理値による影響を修飾節の内容による影響と見なして計算を行う.その際,"好き"の度合を表す真理値と"嫌い"の度合を表す真理値を別々に用意し,被修飾語の持つ好感度に対して,修飾節の影響が打ち消す方向に大きければ,修飾構造全体の好感度を好きから嫌い,嫌いから好きへと変化させる.さらに,情緒計算手法の処理手順についても,効率化を図った.本手法を童話「かちかち山」に現れた連体修飾節に適用した結果を述べる.
著者
河合 由起子 熊本 忠彦 田中 克己
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.173-183, 2006-04-15
被引用文献数
5

近年,複数のWebサイトにまたがって存在している同一テーマのWebコンテンツをまとめて提示する情報統合に関する研究はますます盛んになっており,大量の情報をどのように分類し統合して提示するかが大きな問題となっている.筆者らは,複数のニュースサイトから収集した大量の記事をユーザの閲覧履歴に基づいて分類し,そのユーザが使い慣れているニュースサイトのトップページに写像して提示するという新しいタイプのニュースポータルサイトシステム「My Portal Viewer (MPV)」を提案してきた.MPVは,ユーザの閲覧した記事から頻度情報を用いてキーワード(ユーザが興味のある語)を抽出し,その興味語の有無に基づいて収集した記事を分類する.このとき,新しく生成したカテゴリの名称を興味語そのものとすることにより,それぞれのカテゴリにどのような記事が含まれているか判別しやすくしている.また,各カテゴリをユーザが普段利用しているニュースサイトのトップページに,元々のレイアウトを維持しつつ再配置することにより,読みたい記事がどこにあるか効率的に探し出せるようになっている.しかしながら,その一方で,興味語の有無という分類基準だけでは,ユーザの好む記事と好まない記事をうまく分離できないことがあった.そこで,本論文では記事の印象というこれまでにない新たな分類基準を導入し,ユーザの記事に対する選好を印象と興味の両面からモデル化するとともに,提案モデルをMPVに実装し,ユーザが共感(感情移入)しやすい記事を優先的に提示するMPV Plusについて検討する.
著者
堀田 創 野澤 貴 萩原 将文
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.347-356, 2008-06-15
被引用文献数
1 1

本論文では,位置情報に基づく新しいインターネット広告システムを提案する.インターネット上の広告システムは,一般的に効果の高いと考えられるユーザに対して広告を配信するものが望ましい.本研究では,広告効果向上の方法の一つとして,位置情報を根拠とする方式を提案している.位置情報に基づくインターネット広告配信は,ターゲットとしたい地域から近い位置に居るユーザに広告を配信することで実現される.しかしながら広告の効果的な範囲は地域ごとの特性および広告の質によってそれぞれ異なり,それらを詳細に広告主が指定するのは極めて困難である.その結果,産業界における実現可能性が非常に低くなるという問題がある.提案システムは,ニューラルネットワークにより自動的に広告の効果的な範囲を推定し,それを配信アルゴリズムに組み込むことで広告主に負担をかけない広告配信を可能としている.このシステムは携帯電話用の広告配信として利用され,現在も実際に運用されている.検証実験の結果,広告の効果的な範囲の自動推定および,位置情報に基づく広告が有効であることが確認されている.
著者
大原 健 能島 裕介 石渕 久生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.867-873, 2006-12-15
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

本研究では, 道路状況が動的に変化するために, 道路利用者が経路選択を行う時に個々の経路の走行時間に関する情報が利用可能でないような交通流モデルを考える. このような交通流モデルに対して, 全走行車両の平均走行時間を最小にするために, 2種類の経路選択手法の性能を比較する. 一つは, 大域的に平均走行時間の最小化を行う手法である. この手法では, 全走行車両の経路選択を中央管理者が決定する. 走行車両台数が多い場合では, 走行車両に対する経路選択の組合せ総数が大きくなり, 最適解を求めることが困難になる. そこで本論文では, 遺伝的アルゴリズムを用いることで効率的に近似最適解を求めることにする. もう一つの手法は, 個々の車両ごとに局所的に走行時間の最小化を行う手法である. この手法では, 各車両は, 予測走行時間の短い経路を選択する. 本論文では, ニューラルネットワークを用いて走行時間の予測を行う. 数値実験により, 2種類の経路選択手法を比較し, 各々の手法の特徴を明らかにする.
著者
笹島 宗彦 來村 徳信 長沼 武史 倉掛 正治 溝口 理一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.171-189, 2008-04-15
被引用文献数
3 4

日常生活行動のオントロジーに基づくユーザモデル構築方式を提案し,携帯電話を介して利用されるモバイルインターネットサービス利便性向上への提案方式適用について述べる.現状のドメイン指向型で分類されたメニュー階層の問題点を改善するために筆者らは,タスク指向型メニューを提案してきた.プロトタイプでは良い性能を示したタスク指向型メニューを実規模に拡張するには,モバイルユーザの日常行動をできるだけ一般性をもってモデル記述するためのスケーラブルな方式が必要であり,本研究ではモバイルユーザの行動に関するオントロジーを構築して利用する.構築したオントロジーと提案方式に関する評価実験を行い,提案方式がモバイルユーザの状況モデル記述を支援し,現状のモバイルサービスが想定する状況の大部分を記述する能力があることを確認できた.
著者
Liu Yuan Tian Yajie Sawaragi Tetsuo
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.837-848, 2006-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

The container loading problem, a real hard problem, is usually difficult to obtain even a suboptimal solution because of not only multiple complicated restrictions but also of multiple objectives. In this paper, a heuristic algorithm is proposed for solving the container loading problem in the real-world. The algorithm is based on Drum-Buffer-Rope presented in the Theory of Constraints and the multi-agent cooperative negotiation strategy. A particular attention is focused on improving the constrained agent by striving for the trade-off of restrictions and cooperative negotiations, so that the final solution can arrive its biggest profit. Since many real-world problems are restricted by many complicated restriction that are difficult to be satisfied simultaneously, a method used by human experts called restriction relaxation is embedded in the proposed algorithm, which makes the algorithm have a high degree of flexibility. In this paper, the proposed algorithm is also compared with other two classical optimization algorithms based on Local Search and Tabu Search.
著者
古川 徹生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.618-626, 2007-12-15
参考文献数
7
被引用文献数
1

This paper introduces an extension of an SOM called the "SOM of SOMs," or SOM^2, in which objects to be mapped are self-organizing maps. In SOM^2, each nodal unit of a conventional SOM is replaced by a function module of SOM. Since each child SOM module in SOM^2 is trained to represent an individual map, the parent map in SOM^2 generates a self-organizing map representing the continuous change of the child maps. Thus SOM^2 is an extension from "self-organizing map" to "self-organizing homotopy". From another viewpoint, SOM^2 is a learning machine which represents a fiber bundle, whereas the conventional SOM represents a manifold. This paper presents the architecture and the algorithm of SOM^2 as well as some application results.
著者
桑原 優美 渡辺 則生
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.244-254, 2008-04-15
参考文献数
14
被引用文献数
1

本論文の目的は,長期の金融時系列のトレンドを分析するために,高木-菅野のファジィシステムを基にファジィトレンドモデルを提案することにある.従来の金融時系列モデルでは,時系列の分散のモデル化に関心が集中し,期待値は一定値あるいは特殊な構造をもつものと仮定されてきた.しかし,長期の時系列の場合これらの仮定は妥当ではない.ファジィトレンドモデルは時系列の変動する期待値のモデル化を可能にする.本論文では,ファジィトレンドモデルの同定法を提案し,その有効性をシミュレーションによって検討した.さらに実際の金融時系列である東証株価指数 TOPIX適用し,ファジィトレンドモデルによってトレンドに関するあらたな分析が可能になることを示した.
著者
林 勲 ウィリアムソン ジェームズ R.
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.434-442, 2006-06-15
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

人の視覚系では, 網膜に入力された画像信号は受容野に対応した視細胞で処理され, 外側膝状体を介して第一次視覚野に入力される. 視覚系処理過程を表現するHubel-Wieselの階層仮説モデルの一例としてTAMネットワークがある. TAMネットワークは4層の階層構造からなり, 第一次視覚野以降の視覚前野を模擬している. 与えられた教師値と出力値に差がある場合, 共振学習, ビジランス機能, 中間層へのノード増加によって, 高い学習機能を確保することができる. 一方, 受容野における方位選択性モデルとしてガボール関数があり, 画像の任意の周波数成分を抽出するガボールフィルタリングを構成できる.<br>本論文では, 入力層以前にガボール型受容野層を導入した新たなTAMネットワークを提案する. 受容野層は網膜層, 神経節細胞層, 外側膝状体 (LGN) 層から構成され, ガボールフィルタリングを用いて対象画像の方位選択成分を抽出し, 輝度情報を正規化して特徴マップを構成する. ここでは, 受容野構造と特徴マップ構造について議論し, 輝度情報の信号処理アルゴリズムを定式化する. また, アルファベットの文字認識の例を用いて, 本モデルの有用性と頑健性について検討する. なお, 他のHubel-Wieselモデルと異なり, ネットワーク構造から画像特徴をファジィルールとして獲得できるので, 獲得されたファジィルールの妥当性についても検討する.
著者
國近 秀信 松田 瑞生 平嶋 宗 竹内 章
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.310-318, 2006-04-15
参考文献数
13
被引用文献数
3

探求的学習においては, 学習の結果として生じた興味や疑問を追求することでさらに新たな情報を獲得したり, 既有の情報を再構成したりすることが重要である. 本論文では, Webを利用したe-Learningにおける教材外への探求的学習の支援を目的として, あらかじめ用意された教材への情報追加および学習者自身の理解を反映した教材の再構成による教材の成長活動を可能とする学習支援環境の実現について述べる. また, 本学習支援環境の実用性および学習への有用性の確認のために実施した評価実験についても報告する.
著者
田澤 和子 白川 真一 長尾 智晴
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.800-809, 2008-10-15
参考文献数
24

従来の神経回路網では,与えられた問題に応じて階層型や相互結合型などの基本構造を選択し,対応する学習方法を用いて結合荷重やしきい値を調整するのが一般的である.しかし,あらかじめ選択した構造で,与えられた問題を必ず解けるとは限らない.そこで,遺伝的アルゴリズム(GA)を用いて,任意性が高く未知の問題に柔軟に対応できる神経回路網の獲得を可能とするFlexibly Connected Neural Network(FCN)が提案されている.FCNはエイリアス問題を含むエージェントの行動制御などで有効性を示している.しかし,従来のFCNでは中間ユニットの個数は経験的に決定していた.あらかじめ与えた中間ユニットの個数が適切な場合は問題を解くことができるが,中間ユニット数が足りなければ問題の解は得られず,多過ぎると冗長な部分が増え最適化が困難になるという問題点があった.本論文では,FCNに進化過程で中間ユニット数を増減させる拡張を導入する.本手法は,中間ユニット数を進化によって自動的に決定するため,中間ユニットの個数に対する試行錯誤を必要としない.このユニット数自動決定型FCNを,静的環境での未学習マップにおけるエージェントの行動制御を扱うタルタロス問題に適用し,有効性を示すとともに,獲得した構造による行動規則の解析結果について述べる.
著者
小林 一行 御園 祐介 渡辺 嘉二郎 大久保 友幸 栗原 陽介
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.90-99, 2009-02-15
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

本論文では,Intelligent Ground Vehicle Competition(IGVC)のナビゲーション競技のルールに準拠したウェイポイントナビゲーションシステムの実装例について述べる.IGVCとは,1993年から米国で開催されている自律走行車大会であり,自律型移動ロボットの技術向上を目指した大会である.毎年開催され複数の大学が参加している.その競技の一つとしてナビゲーション競技が設けられている.ナビゲーション競技とは,GPSによる位置検出を想定しエリア内に存在する障害物を避けながら,あらかじめ指定された複数ウェイポイントを何点通過できるか速さと正確さを競う競技である.ウェイポイントナビゲーションは,(1)移動ロボット上からみたウェイポイントの位置または方位の把握による長期経路プランニング,(2)外界センシングと障害物回避のための短期経路プランニング,そして(3)これら情報に基づく自律制御からなる.本論文では,これら一連の解決方法に,センサとして GPSとレーザレーダそれにジャイロ,速度計を用い,総合的な状況判断に複素拡張カルマンフィルタをベースとした SLAMアルゴリズムにより高精度なナビゲーションを実現する.さらに,与えられたウェイポイントマップに従い走行しながら,自己軌跡マップ,ランドマークマップを同時に作成する方法を提案した.提案する方法を実証するため実機でリアルタイム制御を行い,その有効性を確認した.
著者
竹之内 宏 徳丸 正孝 村中 徳明
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.38-53, 2011-02-15
被引用文献数
2

本論文では,多くの人の感性を用いた対話型進化計算(Interactive Evolutionary Computation:以下 IEC)として,2点嗜好法を適用した複数参加型トーナメント方式を用いた対話型遺伝的アルゴリズム(Interactive Genetic Algorithm:以下 IGA)を提案する.これまでに提案されている多くのIECシステムは,ユーザが1個人の場合を対象としている.このため,多くの人が納得する解を得ることができない.そこで本論文では,Web上から多くのユーザの感性を投票として獲得し,IGAの解評価に用いることを想定した多人数参加型のシステムを提案する.提案システムのように,多くの人が投票により解評価を行うIECインタフェースとして,これまでに複数参加型トーナメント方式が提案され,シミュレーションにおいて有効性が検証されている.しかし,実際のWebシステムなどで投票獲得を想定した場合,投票に参加するユーザ数を推定することは困難である.そのため,複数参加型トーナメント方式においては,解評価に必要な投票数を獲得できず,トーナメント対戦を進行させることができないといった問題が想定される.このような問題を解決するためには,獲得した投票の効率的な利用が求められる.そこで,統計的手法である2点嗜好法により,トーナメント対戦の勝敗結果を判定しトーナメントの効率化を図る.2点嗜好法の適用により,投票開始からより早い段階で解候補の優劣を判定できると考えられる.本論文では,シミュレーションにおいて,提案手法の有効性を検証した.シミュレーションにおいては,実際のユーザの代わりにビット列で作成された評価エージェントが解評価を行う.シミュレーション結果より,提案手法において,解評価に必要な投票数が約80%減少されることが確認された.さらに,従来の複数参加型トーナメント方式を比較手法とした性能比較を行った.その結果,提案手法は,トーナメントの効率化という観点より,有効であることが確認された.
著者
味方 さやか 小林 一郎
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.480-490, 2011-08-15
参考文献数
22
被引用文献数
3

災害が起こった際には,複数のライフラインが同時に被害を受ける可能性がある.その際,我々は迅速かつ効率良く都市機能を復旧させる計画が必要となる.都市機能においては,複数のライフラインは相互依存関係を持っていることが考えられ,被災地の復旧順序や復旧人員の配置は被害地域全体の復旧速度に大きく影響する.現在までに一つのライフラインの復旧計画問題を解く研究は多くなされてきたが,複数のライフライン間の相互連関を考慮した復旧計画問題を解く研究は少なく,とても重要であると考えられる.そこで,本研究では複数のライフラインが同時に被害を受けた状況を想定し,ライフライン間の相互連関を考慮した復旧計画を作成することを目的とする.復旧計画作成手法として,遺伝的アルゴリズムを用い,複数の制約条件下における組み合わせ最適化問題を解くことにより課題を達成する.遺伝子のコーディングにおいては,復旧班の配置と復旧順序を同時に考慮した遺伝子モデルを利用して計算することにより,ライフライン間の相互連関を考慮した復旧計画の作成を実現しているまた,提案した遺伝的アルゴリズムを用いた解法の性能を向上させるために Random Flip という局所探索手法を導入し,満足する災害復旧計画を少ない計算時間で求められることを確認した.
著者
益子 行弘 萱場 奈津美 齋藤 美穂
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.186-197, 2011-04-15
参考文献数
32
被引用文献数
1

これまで「笑顔」は「喜び」の感情が表出した表情として扱われてきた.しかしながら「笑顔」には「喜び」といったポジティブな感情だけでなく,「苦笑い」などネガティブな感情を示す語も日常的に用いられる.本研究では,日常用いられ,意味の違う5種類の「笑い」語から表出された表情について,表情の変化量とポジティブ度から分類を行った.クラスター分析およびクラスター間に検定を行い,変化量が小さくややネガティブな笑顔,変化量が中程度でポジティブ度も中程度の笑顔,変化量が大きくポジティブ度も大きな笑顔の3つのクラスターを設定した.さらにこれらの特徴を検討するため,運動解析ソフトを用いて顔の各部位の変化量を測定した.その結果,ポジティブ度が高くなるにつれ,眉尻は上がり,目の縦幅は狭くなり,口の縦幅は広くなるが口角の変化は小さくなることがわかった.特に変化の小さな笑顔は,口の変化量に対して眉・目は変化量が小さいため,口元の変化を元に笑顔の度合いが判断される可能性があると考えられる.3種の笑顔の心理的な影響を検討するため,それら笑顔について,人物印象評定を行った.因子分析の結果,[好感度][活力性][支配性][女性らしさ]の4因子まで検討した.変化が大きくなるほど[活力性][支配性][女性らしさ]が高いと評定されるが,[好感度]については変化量が大きくなるほど低くなることが明らかとなった.
著者
高間 康史 瀬尾 優太
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.316-326, 2009-06-15
参考文献数
21

本論文では,可視化表現共有型掲示板システムに基づく地域防犯活動支援システムを提案し,防犯活動に関するオンライン議論の支援機能について有効性を検証する.近年,子供を狙った犯罪が各地で発生しており,地域防犯活動の重要性が高まっている.数多くの地方自治体などにおいても,防犯活動に向けた様々な取り組みが行われるようになってきているが,児童への安全教育,防犯情報の共有などの個々の活動は独立に行われており,連携はあまり考慮されていない.本論文では,児童による地域安全マップの作成から,得られた安全マップを保護者などで共有し,これを元に防犯活動についてオンラインで行う議論までの一連の地域防犯活動を包括的に支援可能なシステムを構築する.児童が作成した地域安全マップを題材としてオンラインで行われる,防犯活動に関する議論を支援するために,可視化表現共有型掲示板システムのコンセプトを採用する.近年,コミュニケーションやグループでのデータ分析における可視化表現共有の有効性が指摘されており,可視化表現に対する気づきや解釈を共有し,議論することで対象データセットの広い探索・深い理解につながることが期待されている.タスク志向の議論を支援するために,可視化表現共有型掲示板システムでは可視化表現中の着目部分に注釈(グラフィカルアノテーション)を付与してメッセージ中で引用する機能,議論のコンテクストを把握するための関連メッセージ検索機能を備えている.本論文では,議論対象とするアノテーションを効率的に検索する機能も新たに提案し,タスク志向の議論をより効率的に支援する事を試みる.提案システムを小学校の授業で実際に利用してもらい,得られた地域安全マップを題材とした地域防犯活動に関する議論を,提案システムを用いて行った.議論参加者による評価の結果,提案システムは防犯活動に関する議論支援に有効であることを示す.また,議論支援機能のオンライン議論における使われ方について,スレッドを分析して考察した結果,スポット引用機能,スポット検索機能が具体的なスポットに言及しながらの議論を促進する役割を果たすことを示す.本論文で提案したシステムの支援機能は現状では限られたものであるが,今後,犯罪・事故情報なども共有可能とすることや,議論中の情報見落としを防ぐ機能の追加などにより,地域防犯活動支援システムとしてより実用的なものへ拡張していくことが期待できる.
著者
榎本 美香 中野 有紀子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.540-556, 2008-08-15
被引用文献数
1

本研究では,エージェントを相手にした時のインタラクション方略に人相手のときとの異同があることを示し,人間の行動モデルをベースにヒューマンエージェントを実装するとき,考慮すべき人間のインタラクション方略のあることを提案する.ここでは,パソコン操作課題における人と人,人とエージェントの対話を素材として,どのように言語・非言語行為がインタラクションの中で配置されるのかを分析することで,エージェントに対したときに選択される方略を明らかにする.まず,人対人と人対エージェント対話の基礎的特徴を観察し,人対エージェントの対話では人の発話量が少なく,相づちや応答が稀にしか差し挟まれないことを示す.次に,非言語行為を含めた人対人の行為の配置規則を定式化し,人対エージェントのインタラクションにおいてこの規則がどのように破られるかを示す.そして,この違反が,相づちや応答の変わりに,相手発話への理解を示すためになされた補償的行為であることを明らかにする.
著者
田島 敬士 吉岡 元貴 小澤 順
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.379-387, 2008-06-15
被引用文献数
1 1

カーナビゲーションシステムにおける到着地推定は推定対象走行の走行日時や走行経路といった走行属性が一致する車両走行履歴を用いて行われる.用いる走行属性によって到着地推定への有効性は異なる.そこで本稿では,到着地推定に用いる走行属性の違いによる到着地推定への有効性の違いについて評価した.走行属性の到着地推定への有効性は,走行属性と到着他の間の相互情報量を用いて評価した.履暦数が減少すると相互情報量は増加するため,履歴数の少ない走行属性を選ぶと相互情報量が余分に増加してしまう.この履歴数による情報量の変動を除いて,正規化した相互情報量によって評価した.ユーザ20人から車両走行履歴を平均3ヶ月の期間収集し,評価した結果,ユーザの出発直後は,走行時刻属性の到着地推定に対する有効性が高く,走行途中は,出発地と初めに通過した2つの主要交差点という走行経路属性の到着地推定に対する有効性が高いことが判明した.よって,出発直後は走行時刻属性が推定対象走行と一致する走行履歴,走行途中は走行経路属性が推定対象走行と一致する走行履歴を用いて到着地を推定する手法が有効である.
著者
村田 信治 野里 博和 古谷 立美 村川 正宏
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.272-281, 2008-04-15
参考文献数
9

本論文では,過去の探索履歴から探索点までの距離に基づく加重平均を導入した確率的二分探索法を提案し,レーザシステムの光軸の位置と角度の多目的調整に適用して調整時間の大幅な短縮と調整精度の向上を図り,この効果を定量的に評価する.本研究において,確率的二分探索法を用いることで調整時間の大幅な短縮が可能になり,加重平均値を調整手法の評価値に用いることによりノイズの影響を軽減した調整が可能になる.提案手法を用いた調整実験の結果,調整時間を従来の3 時間から 12 分へと大幅に削減した上で,ノイズの影響を軽減した精度の高い光軸の位置と角度の同時多目的自動調整を実現した.