著者
縣 直道 大須賀 敦俊 窪田 貴文 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.9, pp.1-6, 2017-07-19

仮想化を利用したクラウド環境では,ひとつの仮想マシン上でひとつのアプリケーションのみを動作させる構成が一般的になっている.このようなクラウド環境の構成に特化した OS が提案 ・ 開発されている.これらの OS では,アプリケーション間の保護をハイパーバイザに任せることで機能を削減し,軽量化 ・ 省メモリ化を実現している.さらに,ベアメタルハイパーバイザ上で動作させることで,OS をアプリケーションに特化させることも可能である.一方で,プロセスの機能を提供しないため,マルチプロセスで動作するアプリケーションに対応することができない.また,ホスト OS の機能を利用することでマルチプロセスに対応した仮想化環境特化 OS の場合,ホスト OS が提供していない機能を実装することができない.本論文では,単一アドレス空間内で複数のプロセスを擬似的に実行させる手法を提案する.これによって,ホスト OS の存在を前提にせずマルチプロセスに対応することができ,既存のクラウド環境特化 OS と同様の軽量化を可能にする.
著者
中田 裕貴 松原 克弥 松本 亮介
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2020-OS-148, no.12, pp.1-8, 2020-02-20

近年,コンテナ型仮想化技術を用いて,マルチテナント向けクラウドコンピューティング基盤を実現する事例が増えている.コンテナ型仮想化システムでは,OS カーネルを共有しつつ,プロセス単位で OS リソースを多重化することで,各コンテナ環境を隔離する.しかし,隔離空間から抜けて,他コンテナに対しての攻撃が可能な OS リソースや機能が存在する.これらの利用は実行権限によって制限されているが,粒度が不十分である.従来,これらの OS リソースの制限をおこなうために,コンテナのセキュリティ機能を用いた制御,仮想マシンを用いた OS 多重化による隔離,ユーザランドにおけるネットワークスタックの再構築などの手法が提案されている.しかし,これらの手法は,設定が柔軟でなかったり,ネットワークのオーバヘッドを増大させる課題があった.本研究では,ハードウェア仮想化技術を用いつつ,OS を多重化せずに軽量かつ柔軟なネットワーク隔離手法を提案する.
著者
松原宏和 新妻弘崇 太田学
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.18, pp.1-9, 2014-11-11

ニコニコ動画や YouTube といった有名な動画共有サイトには膨大な動画が投稿されており,動画のあらすじは興味のある動画を効率よく探すために視聴者にとって大変有益である.そこで本稿では,動画の画像特徴量とコメントを用いて動画の重要場面を検出し,要約サムネイルを生成する手法を提案する.提案する動画要約手法の特徴は,画像特徴量の変化に基づいて検出した各シーンの動画をコメントに基づいて分類し,さらに各シーン中で最も盛り上がる場面のサムネイルを抽出する点にある.これにより,動画内容を網羅しつつ,視聴者が盛り上がる場面を抽出する.評価実験により提案手法の有効性を確認する.
著者
DouangchakSithixay 佐藤未来子 山田浩史 並木美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2013-OS-127, no.8, pp.1-10, 2013-11-26

本稿では,仮想化環境における省電力化を目的とし,消費エネルギー予測に基づいた省電力化を行う仮想マシンモニター (VMM) の設計,実装と評価について述べる.従来手法では,OS やアプリケーションを修正する必要があるが,本研究では VMM レイヤにおいて動的電圧・周波数制御 (DVFS) 時の仮想マシン (VM) ごとの演算性能,消費電力,ネットワーク I/O,ディスク I/O の予測に基づいた省電力制御を行うことで,VM のゲスト OS やアプリケーションに対して透過的に省電力を実現できるのが特徴である.本手法では,VM 実行時のキャッシュミス率やプロセッサ全体のメモリアクセス頻度などのハードウェアパフォーマンスカウンタの情報と仮想 NIC,仮想 I/O の情報を用いて,多変量回帰分析手法により求めた最適な演算性能,消費電力またはスループットをもとに DVFS 制御を実施する.実装には,Linux カーネルを用いた VMM である KVM を用いた.評価より,コア単位で DVFS 制御可能なマルチコア環境において,演算性能とスループットの条件の範囲内で VM が 1 台ある場合,最大でメモリバウンドベンチマークにて 38.3%,ディスクベンチマークにて 35.1%,ネットワークベンチマークにて 46.0%,VM が複数台ある場合,最大で 44.3% のプロセッサの消費エネルギーの削減率を確認した.
著者
古橋 健斗 松本 拓也 福田 浩章
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-140, no.1, pp.1-6, 2017-05-09

クラウドサービスでは,アプリケーションを提供するサービス提供者が物理マシンやネットワークを保有するインフラ提供者から必要に応じてリソース (e.g., 仮想マシン) を確保し,サービスを提供している.サービス提供者は,最大負荷 (必要になる仮想マシンの最大数) を見積もることでサービスの円滑な運用を目指しているが,予め見積もることは難しい.一方,インフラ提供者は,物理マシン,仮想マシンの負荷状況 (e.g, CPU やメモリ使用量) をもとに仮想マシンを再配置し,データセンタ全体の運用効率向上を目指している [1] [2].この検証には実運用に適用することが望ましいが,サービス提供者の SLA を保証する必要があり,実現は難しい.また,大規模なデータセンタを準備することも難しいため,シミュレーションでの検証を行わざるをえない [3].そこで本研究では,RaspberryPI を利用し,サービス提供者,インフラ提供者それぞれの要求を容易にテストできる環境を提供する.具体的には,複数の RaspberryPI を使用した仮想データセンタの構築と負荷状況の監視,仮想マシンの操作を実現する.また,必要に応じて仮想マシンを増減し,スケールアウトする機能を実現する.そして,仮想マシンの移動,スケールアウトを本環境で実行し,その機能性能を示す.
著者
清水 祐太郎 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-140, no.14, pp.1-11, 2017-05-09

メモリ技術の発達により,メインメモリサイズの巨大化が進んでいる.こうした主記憶が大規模な環境では TLB ミスによるレイテンシが問題となる.TLB ミスを減らす手法の一つとして,HugePage の利用が挙げられる.HugePage を利用することによって,ページテーブルの 1 エントリあたりがカバーできるアドレスの範囲が拡大し,TLB のカバレッジも同様に増加する.これまでに HugePage を利用するための手法がいくつか提案されている.しかしながら,アプリケーション自身がメモリ管理を行う場合では,いずれの手法でも十分に効率的な割り当ては行えない.本研究では,アプリケーションレベルでのメモリ管理を考慮しながら,効率的に HugePage を割り当てるための手法を提案する.今回提案する手法によって,必要とする分だけ HugePage を利用することが可能になる.本研究では,提案手法を Linux kernel 4.7.10 と memcached 1.4.31 上に実装を行った.性能評価を行い既存手法と比較した結果,実メモリ使用量のデフォルトからの増加量を 93.6% 程度削減しながら,既存手法の約 99.4% のスループットを達成した.
著者
小嶋 奨 福田 浩章
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.20, pp.1-7, 2016-08-01

Software Defined Network(SDN) はネットワークをソフトウェアで定義することによって制御する技術である.SDN はパケットの転送機能を有する複数のスイッチと,パケットのルーティングを管理するソフトウェアを物理的に分離する.そして,両者を共通プロトコルで接続することで,ネットワークの機能をコントローラーで一元管理し,プログラムで柔軟に変更することができるため注目されている.SDN はスイッチとそれを制御するコントローラで構成される.コントーラがスイッチを制御するための標準プロトコルである OpenFlow では,スイッチはパケットが保持する情報のうち OSI 基本参照モデルのレイヤ 4 以下の情報に従った機能しか利用することができない.しかし,ネットワーク機能にはレイヤ 5 以上の情報を用いる次世代ファイアウォールや,L7 ロードバランサの持つ機能が存在する.これらのレイヤ 5 以上の情報に従った機能を利用する方法は,パケットをコントローラに送ることや,専用機能を有するネットワーク機器を配置することで実現できる.しかし,前者ではコントローラに頻繁にパケットを送る必要があるため通信速度の低下が発生し,後者では SDN の利点であるネットワーク構築の柔軟性を欠くこととなってしまう.そこで,本稿では,コントローラを介さずにスイッチでパケットのレイヤ 5 以上の情報に従った動作を行うための機構を提案する.本機構により,コントローラとの通信で発生する速度の低下を低減することが期待できる.
著者
斎藤 直人 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.1, pp.1-9, 2016-08-01

仮想化技術を利用したデータベース管理システム (DBMS) の統合が実運用されている.DBMS はトランザクションをログ先行書き込みで実現しているものが多く,ログ先行書き込みはストレージへシーケンシャルに書き込むことで高速化している.しかしながら,DBMS の統合を行うと,複数の DBMS で発生したログ書き込みが同じディスク上の各 VM イメージ内の DBMS ログファイルを往復しながら書き込まれるためシーケンシャルに書き込みを行えない.本研究では,複数 DBMS で発生したログ書き込みをハイパーバイザで制御し,シーケンシャルに行う手法を提案する.提案手法では,複数の VM の各ディスクイメージに保存されていた DBMS のログファイルを1つに統合する.そして,複数 DBMS からのログ書き込みを制御し,統合されたログファイルへシーケンシャルに書き込む.提案手法を Xen 4.2.1,MySQL 5.6.17 に実装し,4 つの DBMS で同時にワークロード TPC-C を実行した.結果,各 DBMS のスループットの平均で 23%向上し,提案手法の有効性が確認できた.
著者
村田 直郁 川島 英之 建部 修見
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-137, no.8, pp.1-11, 2016-05-23

分散データベース管理システムにおいて外部キー制約や二次索引,実体化ビューの管理を行うための高性能な処理方式として Read Atomic Multi-Partition(RAMP) トランザクションがある.RAMP トランザクションは隔離性を緩和することで高性能化を実現した研究であるが,それを先進的デバイスによって高性能化する技法は未開拓である.そこで,本研究では高性能インターコネクトである InfiniBand を利用し,Remote Direct Memory Access(RDMA) の機能を用いて RAMP トランザクションを高速化する手法を提案する.まず,RDMA-Write による GET/PUT オペレーションの高速化手法として GET+/PUT+方式を提案する.続いて,RDMA-Read による更なる GET オペレーションの高速化手法として GET*方式を提案する.提案手法の評価のため,プロトタイプ In-Memory Key-Value Store を実装する.Yahoo! Cloud Serving Benchmark を用いた実験において,従来方式と比べて最大 2.67 倍の高速化を達成することを示す.
著者
伊波 立樹 東恩納 琢偉 河野 真治
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-137, no.11, pp.1-8, 2016-05-23

当研究室では処理の単位を Code Gear,データの単位を Data Gear を用いて並列実行を行う Gears OS を開発している Gears OS では並列実行をするための Task を Code Gear と Data Gear の組で表現する.Task の依存関係は Code Gear を実行するために必要な Input Data Gear と Code Gear で作られる Output Data Gear によって決定し,それにそって並列実行を行う.依存関係の解決などの Meta Computation の実行は Meta Code Gear で行われる.Meta Code Gear は Code Gear に対応しており,Code Gear が実行した後にそれに対応した Meta Code Gear が実行される.本論文では Gears OS のプロトタイプとして並列処理機構を設計し,CbC(Continuation based C) で実装する.
著者
Hiroshi Mine Taku Shimosawa Soki Sakurai Tadashi Takeuchi
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-137, no.14, pp.1-8, 2016-05-23

With online video editing systems, file servers supporting standard file sharing protocol and achieving high I/O performance with real-timeness are required to reduce the overall system cost. AVFS is a file system optimized for the efficient storing and access of video files. Samba is a widely used file server application and enables client terminals to access files via a network. Since Samba is not adapted to efficiently process accesses to video files using features provided by AVFS, modifications of Samba such as the addition of deadline information to I/O requests are required to benefit from AVFS. In this paper, we propose rt-Samba, the Samba-AVFS cooperation method composed of a Samba VFS module and an I/O surrogate daemon using real-time features provided by AVFS. Using this method, I/O access performance is improved while keeping the amount of modifications in Samba low. Furthermore, the standard CIFS protocol is preserved, allowing the use of unmodified editing stations for accessing files. Evaluation results of a Linux file server implementation of our proposed method show that rt-Samba achieves 3 times higher read throughput and 1.1 times higher write throughput keeping the storage I/O stability compared to an original Samba server accessing files on Ext4.
著者
山中隆広 湯本高行 新居学 佐藤邦弘
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.12, pp.1-8, 2014-11-11

近年,情報検索におけるシステム向上により,入力したクエリに対して一般的に知られている情報を入手することは簡単である.しかし,一般的な情報ばかりでは既知の情報ばかりが推薦されてしまう問題がある.本研究では,クエリに関係し,かつ一般的にあまり知られていない情報,つまり希少な情報を推薦することを目的とする.手法として,クエリのカテゴリ推定を行い,ユーザが選択したカテゴリを用いて,クエリに関係するおおまかな文書集合を抽出する.その文書集合で所属確率と非典型度の二つの指標を組み合わせて希少なWebページの推薦を行う.それぞれの指標の算出には確率モデルを使用する.その結果,クエリに対して同義語のカテゴリでは平均適合率が 0.81 であった.
著者
杉本 洋輝 光来 健一 山口 実靖
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-136, no.3, pp.1-7, 2016-02-22

仮想化環境下において,HDD へのアクセスは二重のキャッシュ (ホスト OS ページキャッシュ,ゲスト OS ページキャッシュ) を介して行われる.このような二重キャッシュ環境ではホスト OS ページキャッシュへのアクセスに通常とは逆向きの負の参照の時間的局所性が存在することが実 OS を用いた検証で確認されており,ホスト OS にて通常の参照の局所性を期待している LRU は効果的に機能しないことが確認されている.また,キャッシュ管理手法としては LRU より FIX (キャッシュ内容固定) の方が性能が高いことがシミュレーションにより確認されている.本稿では,仮想化環境においてキャッシュ対象領域を固定化するファイルシステムを構築し,仮想化環境における I/O 性能の向上手法について考察する.
著者
中川 岳 川田 裕貴 追川 修一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-136, no.15, pp.1-6, 2016-02-22

プログラムの実行単位であるプロセスは,CPU 時間,メインメモリといった種々のリソースを消費する.その中でも,利用可能なメインメモリ量はシステムの安定性に与える影響が大きい.そのため,ユーザは大量にメインメモリを使用するプロセスを把握し,必要に応じてリソース制限を行うなどして,利用可能なメインメモリを一定以上に保つことが望ましい.しかしながら,プロセスはときにユーザの意図しない,大量かつ急速なメモリ消費を行う.既存のオペレーティングシステム (OS) のリソース管理機構では,このような大量のメモリ消費によるシステムの不安定化を未然に防ぐことは難しい.システムでメモリリソースの枯渇が起こった場合に,動作中のプロセスを停止することによって,利用可能なメモリ量を確保するメモリ管理戦略も存在する.しかしながら,この戦略には,不安定化の原因ではないプロセスを誤って停止する問題もある.そこで本発表では,プロセスのメモリ消費のふるまいに基づいた,プロセスのリソース管理を提案する.この提案手法では,プロセスのメインメモリ消費の速度に着目し,問題のあるメモリ消費の予兆を検出する.問題のあるメモリ利用を行ったプロセスについては,スケジューリングから一時除外し,それ以上のシステムの不安定化を防止する.この手法を用いれば,これまで対処が難しかった,ユーザが意図しない,大量かつ急速なメモリ消費を検出することができる.また,その問題のあるメモリ消費に伴うシステムの不安定化を未然に防止することができる.本発表では,その提案手法の設計について議論する.
著者
広渕 崇宏 高野 了成
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2015-OS-135, no.5, pp.1-9, 2015-11-17

次世代不揮発性メモリはリフレッシュ電力が不要である反面,書き込み時の消費電力が DRAM よりも大きいとされる.そこで,STT-MRAM と DRAM を搭載した計算機を想定して,仮想マシンに対して動的にメモリ割り当てを最適化するハイパーバイザを試作した.仮想マシンに対して透過的に,書き込みが頻出するページを DRAM に配置し,消費電力を抑制することを目指す.提案ハイパーバイザは,DRAM および MRAM から仮想マシンのメモリを割り当てる機構,軽量なメモリアクセスのトレース機構,ページマイグレーションを判断するアルゴリズム,DRAM と MRAM 間でページをスワップする機構からなる.Qemu/KVM に対して提案ハイパーバイザを開発している.本稿では Work-in-Progress として,現状のプロトタイプ実装を紹介する.簡易な実験を行った結果,提案機構が書き込みの多いページを DRAM へ動的に再配置できることを確認した.
著者
花井俊介 灘本明代 難波英嗣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.26, pp.1-7, 2014-11-11

近年,「クックパッド」 や 「楽天レシピ」 に代表されるようにユーザ投稿型レシピサイトが普及している.これらユーザ投稿型レシピサイトには,非常に酷似したレシピや,特殊な器具を用いているレシピ,説明がほとんどなされていないレシピ等,一般のユーザにとってあまり有用でないと思われるレシピが多数存在しており,ユーザのレシピ検索の妨げとなっている.本研究ではこのようなレシピをスパムレシピと呼び,これらスパムレシピの内,酷似したレシピを自動抽出する手法の提案を行う.本論文では,酷似レシピを抽出するはじめの一歩として,ユーザ実験を行い酷似レシピの特徴を抽出しユーザはどのようなレシピを酷似レシピと思うかの分析を行う.さらにその結果を考慮してユーザ投稿型レシピサイト中のレシピをクラスタリングする手法の提案を行う.
著者
和田 健 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-158, no.9, pp.1-11, 2023-02-14

Reboot-based Recovery は,ソフトウェアの再起動によって,コンピュータシステムを不安定な状態からリカバリするためのシンプルかつ強力な方法である.Reboot-based Recovery は,Unikernel と呼ばれる新しいタイプのオペレーティングシステムへの適用という課題に直面している.Unikernel は,OS の機能がライブラリのようにアプリケーションにリンクするライブラリ OS である.アプリケーションと Unikernel が密接に結びつくために,Unikernel のみの再起動にアプリケーションの再起動を伴うことになり,Unikernel に関係のないメモリの内容を消去し,再構築してしまう.本論文では,Unikernel のみの Reboot-based Recovery を効率的に行う VampOS を紹介する.VampOS は,Unikernel コンポーネント間のインタラクションを記録し,再起動したコンポーネントにそれらを再実行させることで,リンクされたアプリケーションの実行状態を維持したまま,Unikernel のコンポーネント単位での Reboot-based Recovery を行う.ソフトウェア若化を行う最適化されていない VampOS のプロトタイプを Unikraft 0.8.0 に実装した.プロトタイプを用いた実験により,実行時のオーバヘッドは最大で 13.6 倍であるものの,意図的に挿入したメモリリークのバグの影響を僅かなダウンタイムで緩和することを示した.
著者
荻野 良太 福山 将英 川島 英之
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-158, no.20, pp.1-6, 2023-02-14

本研究では高性能ハッシュ索引である Optimistic Cuckoo Hashing(OCH)をセキュアに実行するために Intel SGX 内部で動作する OCH を提案する.提案手法を設計,実装し,SGX で評価した.その結果,提案手法は 1 スレッド時に 80 万 ops,4 スレッド時に 220 万 ops の性能を示した.しかし,256 スレッド時にはその性能が 40 万opsに低下した.比較のために Enclave を使用しない Optimistic Cuckoo Hashing を評価したところ,1 スレッド時には 50 万 ops,4 スレッド時で 170 万 ops,256 スレッド時で 3300 万 ops だった.この性能劣化の原因を追究すべく mutex,memory access 速度,Enclave へのデータ受け渡し速度等を調査し,Enclave 内での並列メモリアロケーションがボトルネックであることを突き止めた.
著者
小森 工 本田 晋也
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-158, no.16, pp.1-9, 2023-02-14

組込みソフトウェアの大規模化・複雑化に伴い,高い信頼性を保ちつつ豊富な機能を実装する手法が必要とされている.プロセッサごとに機能を分割して実装する方法はコストや面積,電力等の観点から不利であるため,仮想化技術を利用して同一のプロセッサ上で複数のソフトウェアを動作させる試みが幅広く研究されている.特に ARM 社の TrustZone 拡張は仮想化との相性が良く,アプリケーションプロセッサにおいて仮想化に応用した例は多いものの,マイクロコントローラに対して適用した例は少ない.本研究では TrustZone 機能を実装した ARMv8-M アーキテクチャ上で動作する仮想化環境である SafeG-M を提案する.提案手法は既存のリアルタイム OS に小規模な変更を加えることで実現され,評価実験においてわずかなオーバヘッドで動作することが示された.
著者
荻原 湧志 萬 礼応 大矢 晃久 川島 英之
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2023-OS-158, no.3, pp.1-8, 2023-02-14

ロボット用ミドルウェアの代表格である ROS (Robot Operating System) において,Transform Library (TF) ライブラリは各座標系間の変換情報を有向森構造で管理し,効率的な座標変換情報の登録,座標変換の計算を可能にした.ROS の中核的なパッケージであるにも関わらず,TF ライブラリには次の三つの問題があることがわかった.まず,非効率な並行性制御により,TF の有向森構造へのアクセスが完全に逐次化され,アクセスするスレッドが増えるに従ってパフォーマンスが低下する問題がある (P1).次に,データの鮮度よりも時間的整合性を優先するため,座標変換を計算する際に最新のデータを参照しないという問題がある (P2).最後に,有向森構造の変更によって座標変換の計算時に意図しないエラーが生じるという問題がある (P3).本論文では,データベースの並行性制御法における 2PL 及び Silo を応用することにより,P1 と P2 を解決した.これらの手法は,読み取りのみのワークロードにおいて従来手法の最大 429 倍のスループットを示し,読み書きを組み合わせたワークロードにおいて従来手法の最大 1276 倍のデータ鮮度となることを示した.