著者
高橋 慧智 伊達 進 Khureltulga Dashdavaa 木戸 善之 下條 真司
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-137, no.13, pp.1-6, 2016-05-23

われわれは,ネットワーク内のパケットフローを動的に制御可能とする SDN に着眼し,並列分散プロセス間通信ライブラリ MPI の通信性能向上を目的とし,SDN-MPI の研究開発を推進してきた.SDN-MPI のプロトタイプ実装を通じて,本研究では,個別の MPI 関数を単独で実行した際の通信時間の短縮を実証した.しかし,これまでの実装は,MPI の個別の集団通信の高速化を実現するに留まっており,複数の集団通信が駆使された実際の MPI アプリケーションへの応用のためには,アプリケーションが呼び出す MPI 関数相互結合網の制御を連動・連携して行う仕組みが必要不可欠である.本稿では,そのような問題点に着眼し,われわれが開発してきた MPI 通信パターンに基づく SDN 制御を高速化するカーネルモジュールについて報告する.
著者
河辺 誠弥 谷口 秀夫 佐藤 将也
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2018-OS-142, no.2, pp.1-8, 2018-02-20

不揮発性メモリを有効利用するソフトウェア技術が研究されている.プログラムの実行を高速化する方式として,揮発性メモリと不揮発性メモリが混載された計算機を対象に,新しい実行プログラムのファイル形式 (OFF2F) が提案されている.OFF2F は,プログラムをメモリ上で実行するときのアクセス形態に着目し,2 つのファイルからなる実行ファイル形式である.本稿では,FreeBSD 11.0-RELEASE の初期化処理における OFF2F の効果予測を示す.
著者
窪田 貴文 鈴木 勇介 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2018-OS-143, no.9, pp.1-7, 2018-05-14

大規模なソフトウェアプロジェクトでは多くの開発者が修正 ・ 機能追加を行っており,膨大なファイルをコンパイルする機会が頻繁に生じている.例えば,オープンソースのブラウザエンジンである WebKit のビルドボットでは 31 日間のうち 26 日で 2000 秒超えるビルドが実行されており,その時のコンパイルしているファイル数は平均 1000 を超える.本研究では,まず,webkit を含むオープンソースの C/C++ プロジェクトのコンパイル時間を分析した結果を示す.その結果,コンパイラのフロントエンドにおいて冗長な処理が多く含まれていることがわかった.そこで本研究では,コンパイル結果を再利用することでコンパイラのフロントエンドの実行を高速化する手法を提案する.
著者
杉本 学 窪田 貴文 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2018-OS-143, no.14, pp.1-8, 2018-05-14

コンピュータシステムの信頼性を損なう要因の一つに,オペレーティングシステムのカーネルフェイラがある.実際,Linux には 700 以上のフォールトが存在し,半年間に 187,000 件以上の障害レポートが報告されている.カーネルにおけるフェイラでは,エラーがカーネル全体に伝播する場合は少なく,多くはカーネル内のプロセスコンテキストに閉じたプロセスローカルエラーとなっている.そして,フェイラの約 73 % はこのプロセスローカルエラーによるものである.本論文では,プロセスローカルエラーによるカーネルフェイラを検知しエラー状態を取り除くことで,カーネルの実行を継続する手法を提案する.プロセスローカルエラーでは,エラー状態がプロセスコンテキストに閉じているため,フェイラの発生したプロセスを強制終了することでカーネル内のエラー状態を回復させることができる.これにより,従来のカーネルではフェイラとなっていた場合でも,カーネルを停止させずに他のプロセスの実行を継続することができる.
著者
馬屋原 昂 佐藤 宏樹 石巻 優 今林 広樹 山名 早人
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.6, pp.1-7, 2017-07-19

マルチコアシステム上で多数のスレッドが同時実行される場合,メモリアロケーションがボトルネックになることがある.これは,複数のスレッドから同時にシステムコールが呼ばれることに起因する.TCMalloc,JEmalloc,SuperMalloc などの従来の汎用用途向けのメモリアロケータでは,各スレッドのローカルヒープメモリへロックフリーでアクセスすることで高速化を実現している.これに対して本稿では,完全準同型暗号計算を対象にした FCMalloc を提案する.完全準同型暗号計算ではメモリ使用量が既知の場合が多く,さらに,ある決まったパターンでメモリアロケーションが繰り返されるという特徴がある.こうした特徴を利用し,FCMalloc では pseudo free によってメモリマッピング情報を繰り返し利用することで,物理メモリレベルでメモリプールを用いる.さらに,ローカルヒープメモリ間の通信経路の構造を全結合とすることで,複数のスレッドによるアクセスのロック競合を減少させる.すなわち,システムコールの頻度を下げ,メモリ管理をできる限りユーザ領域で実現することにより高速化を実現する.完全準同型暗号上で構築した頻出パターンマイニングアルゴリズムである Apriori アルゴリズムを対象とした評価実験の結果,既存手法の中で最も高速である JEmalloc と比較して 2.4 倍の高速化を達成した.
著者
寺田 献 山田 浩史
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.5, pp.1-7, 2017-07-19

オペレーティングシステム (OS) が障害を検知した際の一般的な解決方法は OS とアプリケーションプログラム (App) の再起動である.これまでに OS の不具合からプロセスコンテキストを復元したり保護したりする手法が提案されているが,これらを両立する手法は提案されていない.再起動にかかる時間はサービスを提供することができないサービスダウンタイムとなり,サービスの可用性を大きく損なう.既存の手法では OS の障害によって App の実行状態が破壊される可能性があり,OS の障害から App の保護を行うことはできていない.本論文で提案する ShadowBuddy は発生した障害から App の実行を守るために,OS が不正な操作によって App の実行状態を破壊することを防ぎ,OS から保護された領域に App の実行状態を保存する.OS による不正なページテーブル操作,OS による App のメモリ空間への不正な読み書きを防ぎ,OS 内に存在する App の実行状態を破壊したとしても再現することのできるチェックポイントを作成する.ShadowBuddy は最小で数 % のオーバヘッドで,OS 透過に App のメモリ保護を行うことができる.
著者
田邨 優人 中島 耕太 山本 昌生 前田 宗則
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.22, pp.1-6, 2017-07-19

ハードウェアの進歩に伴い,従来よりも大幅に低レイテンシな記憶装置やインターコネクタが登場している.計算機環境のさらなる高性能化,大規模化が求められる昨今では,今後これらのデバイスが主流になると考えられるが,大部分の計算機システムではその高速性を活かせない場合が多い.その一つの原因としてカーネル内でデバイスからの応答の検知にハードウェア割り込みを使用していることが挙げられる.性能が重要視される HPC 分野などではハードウェア割り込みよりも高速にデバイスからの応答検知を行うために polling という手法が用いられる.しかし polling は CPU リソースを占有してしまうという特性から汎用的な計算機システムには積極的に用いられることはなかった.そこで本研究では CPU リソースを管理しながらカーネル内で polling を行うための polling idle ドライバを提案する.提案手法を NVMe over Fabrics に実装して評価を行ったところ,最大 47.1% のレイテンシ削減効果,最大 77.3% の iops 向上を確認し,また iops の上限値が従来から 40.2% 向上したことを確認した.
著者
小柴 篤史 坂本 龍一 並木 美太郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.21, pp.1-7, 2017-07-19

オンチップアクセラレータを用いたパイプライン並列処理は,チップ間のデータ転送とタスク実行をオーバラップすることでアクセラレータの演算性能を活用できる.しかしアクセラレータや DMA の実行制御,同期制御を頻繁に行う必要があるため,従来のデバイスドライバを介したアクセラレータ制御ではユーザ / カーネル空間のコンテキストスイッチに起因するオーバヘッドを招き,処理性能が低減する課題がある.そこで本研究では新たな OS の資源管理手法として,パイプライン並列処理向けのアクセラレータの制御機構を提案する.提案手法は,本来ユーザプロセスが行う煩雑なハードウェア制御をカーネルプロセスが代行する.これによりユーザ / カーネルプロセス間の通信を抑制し,制御オーバヘッドを削減する.本研究ではその初期検討として提案する OS 機構を Linux に実装し,ヘテロジニアスマルチコアプロセッサのプロトタイプを用いて評価した.アルファブレンダのパイプライン並列プログラムに提案機構を適用した結果,提案機構はデバイスドライバを用いる場合と比較してソフトウェアの制御オーバヘッドを 86.2% 削減し,プログラムの実行速度を 1.66 倍高速化することを明らかにした.
著者
穐山 空道 広渕 崇宏
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.12, pp.1-9, 2017-07-19

データセンタ省電力化のため計算精度を落とす代わりに消費電力を削減する近似実行 (Approximate Computing) が着目され,特に DRAM モジュールに適用し大容量化 ・ 消費電力増が進むメモリサブシステムを省電力化する研究が盛んである.近似実行では大幅な電力削減が可能な一方,データ化けによる計算誤差やクラッシュ等アプリケーションへの影響も大きく,実際のアプリケーションに対し近似実行の適用可能性の調査が必須である.適用可能性の調査には,どのデータを近似するか,DRAM の電力をどの程度削減するか等様々なパラメータが存在し,従って近似実行を活用するためにアプリケーションへの影響を様々なパラメータで軽量に調査できることが重要である.しかし既存研究ではメモリトレースツールやハードウェアエミュレータが利用され,これらは実機の数百倍から千倍程度低速である.そこで本研究では,コモデティな CPU のハードウェア機能を利用することでメモリへの近似実行がアプリケーションに与える影響を高速に見積もる手法を提案する.近似を許すデータと許さないデータを別々の NUMA ノードに配置しメモリコントローラーの性能カウンタから各データへの IO 量を取得することで,近似データへのエラー混入が計算結果に与える影響をハードウェアシミュレータなしに再現する.評価の結果,提案機構ではアプリケーションへの影響を実機の数倍程度の時間で見積もれることを確認した.
著者
石川 健一郎
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.7, pp.1-8, 2016-08-01 (Released:2016-07-29)

スケールアウト型分散ストレージで必要になる大量のデータとデータを記憶したサーバの対応の管理はテーブルでは難しく,適切に設計されたアルゴリズムによる管理が求められる.本論文ではデータを冗長記憶するスケールアウト型分散ストレージのために設計したデータ分散アルゴリズム ASURA を提案する.このアルゴリズムは次の特徴を持つ.1) データが冗長化されている場合においてもサーバ構成変更時に最小限のデータ移動のみ行う.2) 計算時間は 0.4μ 秒未満であり,オーダーは O(1) になる.3) データが十分あるときサーバ間のデータ分散のばらつきは 0.5%程度になる.4) サーバ容量に合わせてデータを分散できる.評価の結果,データを冗長記憶するスケールアウト型分散ストレージでは,類似アルゴリズムである Consistent Hashing,Random Slicing や Weighted Rendezvous Hashing などと比べて ASURA は優れた特性がある事を示した.
著者
山崎 修平 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.12, pp.1-7, 2016-08-01

近年,仮想化環境は広く使用されるようになっている.複数のマシンを動かすためにはハードウェア等の物理資源を仮想化して使用する必要があり,ハイパーバイザ型の仮想化ではハイパーバイザが物理資源を管理する.この様な環境ではスピンロックを獲得することができない仮想 CPU (仮想 CPU) が長期間ビジーウェイトしたままになってしまう Lock-Holder Preemption (LHP) という問題が発生することが知られている.この様な問題に対して,いくつかのハードウェアでは一定時間以上のビジーウェイトした場合にはハイパーバイザに制御を移すような機能が追加されている.Intel ではこれを Pause Loop Exiting (PLE) という.しかし,PLE を利用するだけでは LHP の完全な対策になっておらず,PLE が頻発することによってオーバーヘッドが掛かることがある.本論文では PLE の発生状況と,それに対するスピンロックの獲得状況を分析し,より効率よく PLE を使用するための新しい仮想 CPU スケジューリングの方法について提案する.
著者
田所 秀和 長谷川 揚平 石山 政浩 松崎 秀則
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-138, no.15, pp.1-7, 2016-08-01

スケーラビリティの向上を目的として Key Value Storage (KVS) を利用したストレージシステムが使われつつある.このようなストレージシステムでは,KVS を複数利用して Storage Pool を作成し,ユーザは Object や Block など用途に合わせた Storage Interface を通して Storage Pool 上の KVS を利用する.今般,SSD などの高速なストレージデバイスを活用して KVS を高速化する技術が進展しており,それと並行して Storage Interface の高速化も重要になりつつある.そこで本稿では,高速な KVS やネットワーク環境を十分に利用することができる高速な Block Interface を提案する.このシステムでは Linux(R) カーネルの Multi-Queue を利用しつつ,効率良く KVS と通信を行うことで,高い性能を達成している.memcached を用いた実験により,4KB ランダムリードで 1Miops を越える性能を確認した.
著者
谷川 郁太 石井 貴大 鈴木 智明 渡辺 晴美
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.5, pp.1-7, 2012-11-28

近年,組込み Windows 向けのシステムを開発においても C# が利用されるケースが増えてきている. C# の統合開発環境では, Form や UserControl にイベントハンドラを追加していくうちに,類似したイベントハンドラが多くできてしまう問題がある.本論文では,上記問題を解決するための類似したイベントハンドラ統合手法を提案する.また,募金箱と Twitter との連動システム 「ぶたツイ」 に適用し,その効果を評価する.Recently we have come to use C# for developing embedded systems. In developing system by using "Form" or "UserControl" on IDE, we often create many similar event handlers which cause the problem of becoming redundancy. For the sake of overcoming this problem, the paper proposes a refactoring technique for C# event handlers. To evaluate the technique, we will apply to ButaTwi, a cooperating system with collection box and Twitter, that is, Cloud and Embedded Devices system.
著者
佐久間 亮 吉村 剛 河野 健二
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2015-OS-135, no.16, pp.1-8, 2015-11-17

オペレーティングシステムカーネルには多くのバグが存在している.Windows や Linux にも多くのバグが存在しており,Microsoft では Windows Error Reporting (WER) と呼ばれるシステムを用いてクライアントからバグによって障害が起きた際の情報を集めている.集めたクラッシュログを WER システムを用いてバグごとに分類し,多くのユーザで発現するバグからデバッグを行っている.バグの分類にはコールスタックに注目して類似度を計算する事によって分類を行う ReBucket が知られている.しかし,Linux では ReBucket のようなバグの分類をおこなっていないため,適用できれば,開発者がクラッシュレポートを分類する負担を軽減することができる.しかし,Linux ではフレームポインタの最適化によりコールスタックが正確ではない場合があり,同じバグでも異なる情報を出力することがある.本研究は事前調査として ReBucket を Linux に適用した場合の効果について,定量的に評価をおこなった.調査の結果,f-measure が 0.75 と Microsoft 製品に比べ,低いことが分かった.そのため,我々は分類精度を向上するため,Linux カーネルのコールグラフを生成し,正確なコールトレースを取得した.正確なコールトレースを用いて分類した場合,f-measure が 0.75 と以前と変わらないことがわかった.そのため,我々はその結果を分析しリアルバグのコールトレースの性質についての考察をおこなった.
著者
尾板弘崇 山田浩史 谷本輝夫 小野貴継 佐々木広
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014-OS-130, no.21, pp.1-7, 2014-07-21

近年,クラウドサービスは,課金額に応じて必要な計算リソースを利用することができるため,設備投資をせずに大規模なデータ処理が可能となる.クラウドサービスを提供する企業 (クラウドサービスプロパイダ) はサーバに仮想マシン (VM) を使用していることが多い.一方,マルチコアプロセッサが広く普及してきており,ひとつのチップ上に搭載されるコア数は現在も増え続けている.マルチコアプロセッサを搭載したマシン上で VM を立ち上げる場合,VM に割り当てる仮想 CPU(vCPU) 数は適切に分配する必要がある.vCPU を多く与えてもアプリケーションの中には並列性が頭打ちになるものがあり,性能が上がるとは限らず,少なすぎてもアプリケーションの並列性を生かせず,性能が出ない.そのため,適切に分配しない場合,無駄な課金やマルチコアプロセッサの非効率な利用につながってしまう.本研究では,クラウド環境においてマルチコア CPU 上で動作する VM の挙動を解析し,マルチコア CPU を効率よく動作させるための VM の集約方法や仮想マシンモニタ (VMM) が提供すべき資源管理手法確率のための足がかりとする.解析は,VM に割り当てるコア数を変化させながら,クラウド環境で動作するワークロードを模したベンチマーク [1] を動作させ,ワークロードのリソース使用率を観察する.具体的には,機械学習 (Data Analytics),キーバリュー型ストレージ (Data Serving),グラフマイニング (Graph Analytics),Web 検索 (Web Search) のワークロードを動作させる.実験の結果,クラウドサービスで実行されるワークロードには,vCPU 数を増やすともにスケールするもの,ある vCPU 数まではスケールするが,それ以降は変わらない,あるいは,逆に性能が下がってしまうもの,vCPU 数にかかわらずスケールしないものがあるということが明らかになった.
著者
川野直樹 山内利宏 谷口秀夫
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014-OS-130, no.22, pp.1-8, 2014-07-21

協調処理では,プロセス間通信の性能が処理性能に大きな影響を与える.このため,プロセス間通信の高速化が必要である.本稿では,Tender オペレーティングシステムにおいて,プロセス間通信に特化した領域 (プロセス間通信データ域) を実現し,この領域を利用したプロセス間通信の設計と実現方式について述べる.プロセス間通信データ域とは,プロセス間の複写レスでのデータ授受機能を支援する領域である.プロセスは,この領域を利用して通信することにより,複写レスなデータ授受と仮想アドレスから実アドレスへの変換の高速化を実現し,プロセス間通信を高速化できる.また,評価では,Tender オペレーティングシステムの既存のプロセス間通信との処理時間の比較結果を報告する.
著者
福元伸也 渕田孝康
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014-OS-131, no.28, pp.1-5, 2014-11-11

近年,ビッグデータと呼ばれる大規模データから有益な情報を抽出しようとする試みが広く行われており,テキストデータの解析に関する多くの研究がなされている.本研究では,シソーラスの分類語彙表を用いて,単語の特徴ベクトルである共起行列を生成する手法を提案する.出現単語のみによる共起行列を,単語の意味を考慮した分類語に変換することにより,共起行列の次元数が増大するのを抑えることができ,単語の特徴ベクトルをより的確なベクトルとして表現できる.また,得られた共起行列から分類を行うための学習器には,アンサンブル学習の 1 つであるランダムフォレストと大規模データに対して高度な分析が可能な機械学習フレームワークである Jubatus を用いた.実験では,ニュース記事のカテゴリ分類を行い,複数の学習アルゴリズムについて検証した.
著者
阪東幸二 芝公仁
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.11, pp.1-8, 2014-05-07

MapReduce では,データ処理を複数の Map タスクと Reduce タスクに分割し,各ノードに分散して並列に処理を行う.Reduce タスクは Map タスクによって出力されたデータを入力とするため,他のノードからネットワークを介したデータのコピーが必要となる.このときのコピーするデータ量を削減することで,効率的に処理することができる.Hadoop MapReduce における Reduce タスクの割り当ては,他のノードからコピーする通信データ量を考慮していない.本稿では,各ノードが格納する Map タスクの出力データ量を取得し,通信データ量を考慮した Reduce タスクの割り当てを行う手法について述べる.本手法によって,クラスタ全体での通信データ量を削減し,効率的にタスクを処理することが可能になる.
著者
青木 英郎 長井 昭裕 関山 友輝 大島 訓
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.18, pp.1-6, 2012-07-25

マルチコアのサーバにおいて,メモリ回収専用コアの割当てにより,リアルタイム性を必要とするアプリケーションがオーバヘッドの低い安定的なメモリ確保を可能とする手法を述べる.計算機の低価格化にともない,高信頼性、安定性が求められる制御システムでも,PC アーキテクチャを基にした計算機と Linux などの汎用 OS が利用されるようになってきた.汎用 OS のメモリ管理では、プロセスやディスク I/O のページキャッシュに、可能な限りのページを割り当てる.このため、メモリ管理機構は,新たなページ割当て要求に対して、オーバヘッドの高いページ回収処理を実行しないと、要求されたメモリが割り当てられない状況が発生する。本研究報告では,ページ回収の契機となる閾値をコアごとに設定できるようにし,コアごとに異なるポリシでページを回収する.これを利用することで,アプリケーションの実行コアに回収が発生しない低い閾値,ページ回収コアに高い閾値を設定するシステムが設計できる.評価により,コア別のページ回収は,システムのメモリ負荷が高くなった場合にでも,アプリケーションの実行を保証する仕組みとして有効であることを確認した.This technical report presents a method to ensure that real time applications allocate memory with low overhead memory by assigning memory reclaiming core in multicore server. Nowadays, PC based computers and general purpose operating systems are popularly used for control systems. In general purpose operating systems like Linux, memory manager allocates pages as much as possible for processes and disk I/O cache. Thus, in many cases, new page allocation would cause page reclaiming, which is very high overhead procedure. The method that we propose enables memory manager to have different page reclaiming thresholds for each core. To use this method, system administer can set page reclaiming policy to cores. If the threshold is low, the core is able to use for running real time application. Moreover, page reclaiming core has high threshold. In our evaluation, the method is feasible to insure execution of application against high memory pressure.
著者
追川 修一
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.14, pp.1-8, 2009-04-15

信頼性やセキュリティ向上のためには,オペレーティングシステム(OS)カーネルの内部状態をカーネル外部から別のソフトウェアにより監視することが有効である.単一システム内でそのような監視を行うためには,監視対象となるOSと監視ソフトウェアを実行するOSからなる,複数OSの共存環境が必要となる.OS共存環境は,本来OSで行うべき処理を阻害しないように,できるだけ軽量であることが望ましい.本論文では,OS共存環境におけるカーネル間の隔離機能の有無による性能差について調査するため,IA-32システム上でOS共存環境を実装し,実験を行った結果について述べる.実験結果から,カーネル間の隔離機能の有無による性能差は大きいこと,また性能差はCPUによって変化することがわかった.Monitoring the internal conditions of the operating system (OS) kernel is an effective technique to improve reliability and security. It requires the colocation of two OSes running on a single system, a monitored one and the other that executes monitoring software. Enabling such colocation should be lightweight in order not to disturb the execution of the monitored OS. We implemented the OS colocation software layers with and without the OS isolation mechanism on IA-32 systems. This paper investigates the performance impact imposed by OS isolation at the OS colocation software layers.