著者
西野 忠 山内 英子
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1050, pp.62-67, 1983
被引用文献数
2

前報に引き続き, 等モル比混合物CaSO<sub>4</sub>+SrCO<sub>3</sub>, CaSO<sub>4</sub>+BaCO<sub>3</sub>の加熱時における交換反応を調べた. また, 上記2系の単純交換生成物対に相当するCaCO<sub>3</sub>+SrSO<sub>4</sub>, CaCO<sub>3</sub>+BaSO<sub>4</sub>についても検討し相互固溶を考察した. 次いで, CaSO<sub>4</sub>に対するSrCO<sub>3</sub>とBaCO<sub>3</sub>との交換速度を比較するため等モル比固溶体 (Sr, Ba) CO<sub>3</sub>を作製し, CaSO<sub>4</sub>との交換反応に供試した.<br>反応はCO<sub>2</sub>気流中で行い, 加熱試料のX線分析, HCl-CH<sub>3</sub>OHを用いた抽出液の陽, 陰両イオンの定量から反応過程を検討した. 得られた結果を要約すると,<br>(1) CaSO<sub>4</sub>+SrCO<sub>3</sub>は前報のSrSO<sub>4</sub>+BaCO<sub>3</sub>と同様, 交換生成物同士が相互に少量ずつ固溶した2相を与え, CaSO<sub>4</sub>+BaCO<sub>3</sub>では両陽イオンの単純交換型で進行する. 交換開始温度, 交換率を比較すると後者の単純交換型が速い.<br>SrCO<sub>3</sub>, BaCO<sub>3</sub>の粒径効果を除去するため固溶体 (Sr, Ba) CO<sub>3</sub>を用いても同様な結果が得られた.<br>(2) 交換反応の駆動力は交換されるべき両陽イオンの半径の差に基づくものと考えられる.
著者
佐藤 次雄 菅野 佳実 遠藤 忠 島田 昌彦
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1085, pp.133-138, 1986-01-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

SiC, Si3N4及びAlN試料を900°-1200℃の温度域において, K2SO4あるいはK2CO3溶融塩中に浸し, 0.1-20h反応を行わせ腐食挙動を調べた. AlNセラミックスは本実験条件下では, AlON及びα-Al2O3酸化被膜が形成されカリウム塩溶融塩腐食に対し極めて安定であり, ほとんど重量減少を示さなかった. SiCセラミックスはK2CO3溶融塩にはわずかに溶解しただけであるが, K2SO4溶融塩とは定量的に反応し, K2SO4/SiC反応モル比は0.8であった. Si3N4セラミックスは窒素雰囲気下ではK2SO4及びK2CO3溶融塩いずれとも定量的に反応し, 各々の反応モル比はK2SO4/Si3N4=1.6, K2CO3/Si3N4=3.5であった. 一方Si3N4-K2SO4系の反応は空気中では酸化物被膜の生成により抑制された. 窒素雰囲気下におけるSi3N4とK2SO4あるいはK2CO3との反応は, 固液不均一反応における表面化学反応律速の速度式に良く適合し, 見掛けの活性化エネルギーはそれぞれ724kJ/mol及び126kJ/molであった.
著者
石田 信伍 藤村 義和 藤吉 加一 若松 盈
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1042, pp.326-327, 1982-06-01

ウルトラマリンはソーダライト型のケージが最密充てんしたものであり, このソーダライト型ケージはまたLinde Aモレキューシーブ (MS) の構造中の主要な要素である. この理由で, MSからのウルトラマリンの生成は容易なはずであり, 実際に以下の (1)-(4) の過程を経てMS 5A及びMS 4Aからウルトラマリン・ブルーが合成できた. (1) Na<sub>2</sub>S飽和水溶液中でMSにNa<sub>2</sub>Sを含浸させ, このMS-Na<sub>2</sub>Sを乾燥 (N<sub>2</sub>ガス中), (2) 500℃におけるMS-Na<sub>2</sub>S上の硫黄蒸気の吸着 (N<sub>2</sub>ガス中), (3) MS-Na<sub>2</sub>S-Sを820℃まで加熱 (N<sub>2</sub>ガス中, 加熱速度17℃/min), (4) MS-Na<sub>2</sub>S-Sを820℃から500℃まで冷却し, これを500℃で空気酸化.<br>MS 5A及びMS 4Aからの酸化生成物はそれぞれ空色及び緑色であったが, 820℃で2-3時間空気中で再加熱したら青色になった.<br>MS 4Aからのウルトラマリンの生成は, ソーダライト類似構造を有していないNaAlSiO<sub>4</sub>組成のカオリンとNa<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>間の焼結生成物からのウルトラマリン生成に比較して, ずっと容易であった. 上述の結果から, ウルトラマリン・グリーンの生成はMS 4A中の多硫化物がソーダライト型ケージへ侵入することによって引き起こされたと推論された.<br>今のところ, モレキュラーシーブが高価格であることと, 生成物中の発色団濃度が低いために, このウルトラマリン・ブルーの合成法は実用的でないが, この方法はウルトラマリン合成に含まれている反応機構の研究のためには利点を有している.
著者
越智 康雄 森川 日出貴 丸茂 文幸 野崎 浩司
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1053, pp.229-235, 1983-05-01
被引用文献数
1 6

希土類を層間に含む一連のメリライト型化合物Ln<sub>2</sub>GeBe<sub>2</sub>O<sub>7</sub> (Ln=Y, La, Pr, Sm, Gd, Dy, Er) を合成した. 粉末X線回折図形から, これらの化合物はすべてメリライトと同形であり, 空間群P42<sub>1</sub><i>m</i>に属することが明らかとなった. Cu Kα線を用いて粉末X線回折図形の強度をステップ走査法 (15°≦2θ≦100°, ステップ幅: 0.05°) で測定し, プロファイル解析法によりこれらの化合物の結晶構造を解析した. <i>c</i>軸の長さは層間にある希土類イオンのランタノイド収縮に対応して短くなる. また<i>a</i>軸の長さもランタノイド収縮に対応してBe<sub>2</sub>O<sub>7</sub> 4面体グループが小さくなるために短くなる. 本研究で解析したメリライト型化合物の層間の8配位席は他の同形化合物と比べてひずみが小さい. 希土類を含む化合物は低温で特徴的な磁性を示すことが多いが, これらの化合物は4.8Kまで磁気相転移を示さなかった.
著者
柳田 博明
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.78, no.896, pp.111-120, 1970-04-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
61
被引用文献数
1 2
著者
佐藤 正雄 福田 俊平
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.71, no.805, pp.101-104, 1963 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11

Experiments were made to prepare yttrium iron garnet (Y3Fe5O12) single crystals in molten YF3-PbF2 solutions. The solubilities of Y2O3 in YF3 were obtained by differential thermal analysis, and those of Fe2O3 in PbF2 in air by chemical analysis of quenched specimens.Mixtures of Y2O3 and Fe2O3 were dissolved in YF3-PbF2 solutions at 1300°-1350°C and then the solutions were cooled at the rate of 4-10°C/hr to prepare yttrium iron garnet single crystals.Spacings of these crystals were compared with those of crystals prepared by the other methods.
著者
木下 真喜雄 板谷 清司
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1046, pp.570-575, 1982-10-01
被引用文献数
1

酸化マグネシウムに二リン酸ケイ素を0.1-3.0mol%添加したときの焼結について, 昇温法 (昇温速度10℃・min<sup>-1</sup>, 室温~1400℃) 及び定温法 (1400℃, 5h) によって検討した. 昇温法では熱膨張計で収縮率を測定し, 定温法では焼成体のかさ密度を調べた. また両法で得られた焼成体の微細構造を調べた.<br>昇温法による焼結結果は定温法の結果とほぼ一致した. 昇温法において, SiP<sub>2</sub>O<sub>7</sub>添加MgO試料の収縮率曲線はMgO単味試料の曲線に類似していた. しかしながら, SiP<sub>2</sub>O<sub>7</sub>を添加した試料の収縮は初期及び中期過程 (900°-1300℃) で遅れ, 最終過程 (1300°-1400℃) で促進された. 一方, 定温法におけるMgO試料のち密化はSiP<sub>2</sub>O<sub>7</sub>の添加量の増加につれて抑制されたが, SiP<sub>2</sub>O<sub>7</sub> 0.1mol%添加MgOのち密化はMgO単味のものと同程度であった. 焼結中の反応生成物は無定形相, Mg<sub>2</sub>SiO<sub>4</sub>, Mg<sub>3</sub>(PO<sub>4</sub>)<sub>2</sub>及びSiO<sub>2</sub> (α型石英) であった. ペリクレースの粒成長はこれら生成物によって1300℃まで抑制された. また, 1300℃以上で生成する微量の液相によってMgOのち密化と粒成長が促進された.
著者
青木 能理顕 鈴木 謙治 長谷川 洋 安井 至
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1078, pp.327-333, 1985-06-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
5 6

分子軌道法 (Intermediate Neglect of Differential Overlap: INDO法とGAUSSIAN-80H: ab initio法) を使用してホウ酸ガラスの最小構造単位であるBO3ユニットのB-Oの結合距離及びBO3ユニットを2個結合させた場合の結合角, 更に三員環 (boroxol環) のB-Oの結合距離, 四員環の最適構造を検討した. 分子軌道法では全原子価電子を考慮できるINDO法を用いてBO3ユニットの最適構造を求め, BO3ユニット2個の結合角を計算した. ホウ酸ガラスの局所的な構造については, B-Oの結合距離が1.35-1.45Åであることが明らかになり, Mozzi, WarrenらによるX線の結果と十分良い一致をみた. 更にINDO法により求めた2個のBO3ユニットを結合させた場合のB-O-Bの結合角が120度に近いことにより, boroxol環の存在を強く示唆する結果が得られた.次に, INDO法の結果を参考にしてHand-built法を使用してboroxol環, BO3ユニットを基本構造単位として構造モデルを作成し, ホウ酸ガラスのマクロな構造を検討した. 動径分布曲線と角度分布曲線及び層間距離を検討した結果, ホウ酸ガラスの主要な部分はboroxol環からなっていて, それに加えて少量のBO3ユニットが含まれていることが明らかになった.
著者
岡本 祥一 岡本 敞子
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.85, no.986, pp.518-522, 1977-10-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7
被引用文献数
4 5

水酸化第一鉄沈殿は, 沈殿生成の際に水溶液中に共存する多くの重金属イオンを共沈除去し, 水質を浄化する作用が強い. 共沈機構は, CdI2型の水酸化第一鉄結晶への各種金属イオンの置換固溶である場合 (Mg2+, Zn2+, Cd2+, Mn2+, Co2+, Ni2+) もあるが, Hg2+およびCu2+の場合には, 酸化還元反応が優先する新しい共沈機構によることが明らかとなった. 水酸化第一鉄沈殿の酸化の機構について, 沈殿結晶の固液界面における酸化反応の生ずる位置が異なるため反応生成物が異なると考え, topotacticな酸化と, 溶解析出を伴う酸化とに区別して, 新しい共沈機構について考察を加えた.
著者
土谷 敏雄 新井 敦
出版者
公益社団法人日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:18842127)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1028, pp.181-191, 1981-04-01

バイオガラスの化学的耐久性と生体組織との結合機構がHenchにより研究された. これらのガラス中に含まれたNa<sub>2</sub>O, CaO, SiO<sub>2</sub>とP<sub>2</sub>O<sub>5</sub>成分はバイオガラスの必須成分と見なされる. しかし, Henchによって研究されたこれらのバイオガラスは, 埋入後時間とともに機械的強度が減少するという重大な欠点を持つため, まだ実用化されでいない.<br>この実験において新成分としてAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>とB<sub>2</sub>O<sub>3</sub>を含むNa<sub>2</sub>O-CaO-SiO<sub>2</sub>-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>-Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>シリーズ, Na<sub>2</sub>O-CaO-SiO<sub>2</sub>-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>-B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>シリーズ, Na<sub>2</sub>O-CaO-SiO<sub>2</sub>-P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>-B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>-Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>シリーズのガラスの化学的耐久性とビッカース硬度を研究した. これらのガラス中に含まれたAl<sub>2</sub>O<sub>3</sub>とB<sub>2</sub>O<sub>3</sub>は, 化学的耐久性と機械的強度を増加すると期待される. 化学的耐久性はpH=1.0, pH=3.0, pH=5.0のHCl溶液で測定した.<br>幾つかの興味ある結果がビッカース硬度において得られた. Xシリーズガラスのビッカース硬度はSiO<sub>2</sub>の増加とともに増加した. EとFシリーズガラスのビッカース硬度は, B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>/P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>が1に等しいmol%比で極大を示し, (B<sub>2</sub>O<sub>3</sub>+Al<sub>2</sub>O<sub>3</sub>)/P<sub>2</sub>O<sub>5</sub>が2に等しいmol%比で極大を示した.<br>これらの性質は組成との関連で決定した.<br>これらの性質の測定から, E 15, A 20, A 30のバイオガラスがHench (45 S 5) ガラスより良いことが示された.
著者
服部 豪夫 毛利 純一
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1034, pp.568-571, 1981-10-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

酸化カルシウムの再炭酸化反応の動力学を検討した. 炭酸カルシウムを真空中, 800℃で1時間〓焼し, 酸化カルシウムを得, これを500℃に降温させ, そこに炭酸ガスを導入し反応させた. 炭酸ガス圧12-55Torrの条件で, 石英スプリングを用いた熱重量測定により求めた反応時間-反応率曲線を解析して次の結果を得た.(1) 酸化カルシウムの再炭酸化反応は二つの過程よりなっていた.(2) はじめの過程は直線則で表される界面反応が律速の過程であり, 続いて(3) 第2の過程は放物線則がなりたつ, 拡散律速反応の過程であった.(4) 両過程の速度定数はいずれも測定した炭酸ガス圧力の範囲内で直線的に変化した.