著者
大塚 吉則 藪中 宗之 野呂 浩史 渡部 一郎 阿岸 祐幸
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.827-832, 1994-11-30 (Released:2011-08-04)
参考文献数
16
被引用文献数
1

環境温度のアルドースレダクターゼ (以下ARと略す) 活性値に与える影響を明らかにする目的で, 水温を変化させて健常人を浸漬し, 末梢血中の赤血球を用いて検討した. AR活性の基礎値は健常人で1.11±0.12 (mean±SEM, U/gHb, n=34), 糖尿病患者で2.07±0.14 (n=45) であった (p<0.0001). またAR活性はHbA1と有意の相関があったが (P<0.01), 空腹時血糖値とは相関しなかった.次に水温の影響を検討したところ, 42℃10分間の水浸でAR活性は37.6%増加し (p<0.01), 39℃, 25℃ではそれぞれ52.2%(p<0.01), 47.0%(p<0.05) 減少した.また, 赤血球ソルビトール濃度は42℃において36.0%の増加を示した (p<0.05). これらのことから, 環境温度により糖尿病性合併症は何らかの影響を受ける可能性のあることが示唆された.
著者
蘆立 恵子 川村 光信 石井 昌俊 長谷 和正 東田 寿子 安藤 矩子 宮崎 滋
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.449-454, 2000-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
11

症例は38歳男性. 30歳時に2型糖尿病と診断され一時当院通院するも血糖コントロールは不良であった. 1994年9月頃より口腔内の白苔, 味覚異常, 嚥下困難が出現し, 再度当院受診. 内視鏡検査で口腔・食道力ンジダ症と診断された. 抗真菌薬での治療に難治であり1998年3月血糖コントロールおよびカンジダ症の治療目的で入院となった. インスリン療法を開始し良好な血糖コントロールが得られるとともにカンジダ症は急速に治癒した. しかし退院後, 血糖の悪化に伴いカンジダ症が再発した.食道力ンジダ症は免疫低下状態でしばしばみられ, 糖尿病でも血糖コントロール不良例や自律神経障害の強い例での報告が散見される. 本例は明らかな免疫不全がないにもかかわらず再発を繰り返し, 抗真菌薬のみでの治療には難治であった. しかし, 血糖コントロールの改善により速やかに治癒した. このことから, 感染症の予防や治療には厳重な血糖コントロールが極めて重要であると考えられた.
著者
西村 一弘
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.724-726, 2011 (Released:2011-10-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1

日本栄養士会災害対策本部は,日本プライマリーケア連合学会災害支援チーム(Primary Care All Team:以下PCATと略す)と協働して,平成23年3月11日に発生した「東日本大震災」における,被災地の栄養問題の把握とその解決に対し積極的に取り組んできた.その中で糖尿病患者に関連のある栄養問題を中心に検討すると,避難所の食事提供の不備や支援物資の配送における問題,ライフラインの崩壊が及ぼす食事提供の問題,特に今回は長期化する避難生活の中で発生した偏食による糖尿病をはじめとする慢性疾患(高血圧,脂質異常症など)や褥瘡の悪化,慢性的ストレスによる食欲低下の問題,炊き出しの調整の不備による食事提供の問題などが確認され,一つ一つの問題点に対して支援活動を展開してきた.その結果,大規模災害時には栄養士による介入として,災害直後から長期に渡る糖尿病患者をはじめとする慢性疾患患者への支援活動の必要性が示唆されたので報告する.
著者
松岡 幸代 佐野 喜子 津崎 こころ 同道 正行 岡崎 研太郎 佐藤 哲子 鮒子田 睦子 阿部 圭子 東 あかね 田嶋 佐和子 大石 まり子 坂根 直樹
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.327-331, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
15

耐糖能異常を伴う肥満者41名を同じ指示エネルギーの減量食群と,1日1食をフォーミュラ食(マイクロダイエット®; MD)に代替したMD群の2群に無作為に割り付けた.MD群では,減量食群に比べて早期(4週間)に減量効果がみられた(-1.3 kg vs. -3.0 kg; p=0.014). 空腹時血糖とHbA1c値は,MD群では介入12週間後に有意に低下したが,減量食群では有意な変化を認めなかった.収縮期血圧は両群で介入後に有意に低下したが,拡張期血圧と中性脂肪値はMD群でのみ有意に低下した.ビタミンB1, B2, B6, E, 鉄,カルシウムは,MD群で減量食群よりも有意に多く,減量時のビタミン,ミネラルの不足を回避できたが,減量食群では,蛋白質,鉄,B1, B2が有意に低下した.以上の成績は,フォーミュラ食を併用した減量プログラムが安全にかつ早期に減量効果が得られることを示している.
著者
三原 俊彦 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.965-973, 1978-11-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8

1958年に日本糖尿病学会が設立されたのを契機として, 全国各地の病院に糖尿病専門外来がつくられ, 糖尿病患者が長期にわたって管理を受けることができるようになった.1958年発足以来1976年まで18年間にわたって糖尿病患者の治療・管理を行っている糖尿病センターに通院している患者をみると, 糖尿病罹病期間の長いものが多数みられる.現在当センターを受診している糖尿病患者の実態を明らかにする目的で, 1976年1月1日より12月31日までの1年間に当センターを受診した糖尿病患者について一定の形式で問診, 診察, 諸検査を施行した.所定の調査項目の結果がすべて明らかとなった糖尿病患者1,629名の臨床像はつぎの通りであった.患者の男女比は1.23であり, 調査時年齢のピークは60歳代, 糖尿病推定発症年齢のピークは50歳であった.糖尿病推定発症より調査時までの推定罹病期間は, 従来の報告に比し長いものが多く, 10年以上の罹病歴をもつものが38.4%をしめた.糖尿病の家族歴を有するものは39.3%にみられ, 従来の報告に比し高い頻度を示した.糖尿病罹病歴の長いものが多かったこともあり, 糖尿病性合併症の頻度も高く, 糖尿病性神経障害、網膜症, 蛋白尿の頻度は, それぞれ, 53.0%, 39.4%, 33.5%であった.今後ますます糖尿病性合併症を有する糖尿病歴の長い患者の割合が増加してくることが予想される.
著者
三原 俊彦 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.479-484, 1979

糖尿病患者の代表的な糖尿病性合併症とされている神経障害, 網膜症, 腎症 (蛋白尿) をどのような組み合わせで有しているかという点に関して, その実体を明らかにする目的で本調査を行った. 対象は, 1976年1月1日より1976年12月31月までの1年間に東京女子医科大学糖尿病センターを受診した1,191名の糖尿病患者である. 神経障害, 網膜症, 蛋白尿の有無による組み合わせよりI型-VIII型の合併症分類型を設定した. すなわち, I型はいずれの合併症も有しないもの, II型は神経障害のみを有するもの, III型は神経障害と網膜症を有するもの, IV型は神経障害, 網膜症, 蛋白尿のすべてを有するもの, V型は蛋白尿のみ有するもの, VI型は神経障害と蛋白尿を有するもの, 孤型は網膜症のみを有するもの, 粗型は網膜症と蛋白尿を有するものである。合併症分類型別頻度は, I型17.8%, II型16.4%, III型18.5%, Iv型15.7%, V型9.5%, VI型8.1%, 顎型10.0%, VIII型40%であり, I型, II型, III型, IV型の頻度が高かった.糖尿病罹病期間と合併症分類型との間には密切な関連がみられ, 罹病期間の短いものでは, I型, II型, V型が多く, 罹病期間の長いものではIII型, Iv型が増加した. しかし, VI型, VII型, VIII型においては, 糖尿病罹病期間の長短と頻度との間に密切な関係はみられなかった. 調査時年齢, 初診時朝食前血糖値と合併症分類型との間には著明な関連はなかったが, Iv型, VIII型において高血圧の頻度が高かった.
著者
小川 渉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.321-323, 2009-05-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
4
著者
松浦 信夫 竹内 正弘 雨宮 伸 杉原 茂孝 横田 行史 田中 敏章 中村 秀文 佐々木 望 大木 由加志 浦上 達彦 宮本 茂樹 菊池 信行 小林 浩司 堀川 玲子 菊池 透
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.427-434, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
25

小児において適応が認められていない,経口血糖降下薬メトホルミンの有効性,安全性を評価するために,臨床試験を行った.47名が試験に登録され,38名が試験を終了した.HbA1c値を指標とした主要評価項目では38名中30名(78.9%)が有効と判定された.HbA1c値,空腹時血糖など7項目を指標とした副次評価項目を経時的に比較検討した.試験開始前に比し12週,24週終了時でのHbA1c値,空腹時血糖は有意に低下した.乳酸値を含めた臨床検査値に異常なく,有害事象は47例中16例に,副作用は1例に認めたが,試験を中止するような重篤なものは認めなかった.
著者
橋本 敏博 桝永 秀彦 奥山 牧夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.149-154, 1991-02-28 (Released:2011-08-10)
参考文献数
8

胃内発酵によりアルコール性低血糖をおこした血液透析患者の1例を報告する.症例は72歳男性で, 慢性血液透析を施行していたが, 幽門部胃潰瘍を合併し, 固形物は食べ難い状態であった.昭和63年9月10日, 意識障害にて入院, 著明な低血糖を呈し, ブドウ糖の静注にても血糖維持が困難であった.呼気にアルコール臭がするため, 胃内発酵によるアルコール性低血糖を疑い胃管を挿入したところ, アルコール臭のする多量の食物残渣が吸引された.それととともに, 低血糖症状は消失した.胃管挿入前の血漿エタノール濃度は0.2mg/mlであったが, 胃吸引後は測定限界以下となった。胃液培養からはCandida alubicansおよびTorulopsis glablataが検出され, in vivoでそのアルコール発酵能が証明された.
著者
香川 昌平 野村 早苗 小林 邦夫 四宮 由美子 津村 洋子 伊勢 久代 松岡 瑛
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.135-145, 1977

ラット膵灌流法をもちい, 種々のイオン環算下でのglucose刺激によるインスリン分泌動態を検討し, インスリン分泌機構の解明を試みた.<BR>[実験成績]<BR>I.K+, Li+-free液, 6.2mMK+, Rb+, Li+液による灌流: Glucose-freeの場合, K+, Li+-free, 6.2mMLi+液は後期相のインスリン分泌を惹起するが, 6.2mMK+, Rb+液はインスリン分泌を誘起しなかった.10mM theophyllineを含むK+, Li+-free液は対照の3倍量のインスリンを分泌するが, 6.2mM Li+液はtheophyllineによる影響はうけなかった.Hill plotの解析から, K+, Li+-free液, 6.2mMK+, Rb+液のglucose刺激によるKm値は, それぞれ, 6.5, 8.9, 8.7mMであった.<BR>II. 24.8mM, K+, R+, Li+液による灌流: Glucose freeの場合, 24.8mMK+, Rb+液は一過性のインスリン分泌を惹起するが, 24.8mM Li+液はインスリン分泌を誘起しなかった.また, 12.4mM Li++6.2mMK+液の前灌流により, 24.8mMK+液のインスリン分泌は対照に比し低下した.<BR>III. 6.2mMK+液から6.2mM K+, Rb+, Li+液に変換した際のα-およびβ-D-glucose刺激によるインスリン分泌: 16.7mM濃度で, 6.2mM K+液では, 両anomer刺激によるインスリン分泌は同等であるが, 6.2mM Li+液では, βanomerに優位なインスリン分泌がみられ, 6.2mM Rb+液では, ともにインスリン分泌は抑制された.<BR>以上より, Li+はK+, Li+-free条件に比して, インスリン分泌を低下させるが, receptorの親和性を増大させ, βanomer刺激に優位なreceptor conformationへ変化させる可能性が示された.