著者
柴田 健一 立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.117-160, 2017-06-25 (Released:2017-06-25)
参考文献数
65

本稿では競争ダイナミクスの主な先行研究のレビューを実施した。競争ダイナミクスは、企業の競争行動が競合企業のどのような反応を引き出し、それがどうパフォーマンスにつながるのかを実証的に研究する領域である。競争ダイナミクスの歴史はまだ浅いが、近年は多くの研究成果が発表されている。本稿では、競争ダイナミクスの研究の中から主要な論文を抽出し、そこで用いられている具体的な説明変数、被説明変数を整理し、競争ダイナミクスの研究領域を明確にすると同時に、現時点での当該分野における研究の成果について詳しく議論していく。
著者
生稲 史彦
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.33-66, 2002-04-25 (Released:2018-03-20)
参考文献数
28

本研究では、アンケート調査と売上データを用いた分析によって、どのような企業がデジタルコンテンツ(ゲームソフト市場)で効果的な製品開発を行い、高い企業成果をあげうるのかが検討されている。デジタルコンテンツの製品開発では、個人の能力・クリエイティビティが脚光を浴び、取り上げられることが多い。だが、分析の結果によると、ゲームソフトでも一定の範囲内の製品では、従来製造業などで見られたように、組織的な開発ノウハウの蓄積・活用が有効であり、高い成果に結びつくことが示されている。
著者
菊地 宏樹 北山 寛子
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.223-232, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
16

昨今、政府により推進されている働き方改革の中でもダイバーシティがキーワードとされて注目が集まっている。女性や高齢者、外国人の活用が進められていることから、ダイバーシティ研究の重要性は増すだろう。政府はダイバーシティに関して良い面ばかりを強調するが、その裏側には負の面も存在する。ダイバーシティ研究の中のフォルトラインの研究がそういった側面を我々に示唆してくれる。本稿では、フォルトライン研究の嚆矢となったLau and Murnighan (1998) を紹介し、フォルトラインという概念について、有名な例示を通して理解を提供しつつ、見落とされがちな「フォルトラインの活性化」という概念についても焦点を当てて紹介する。
著者
田中 辰雄
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.263-274, 2009-05-25 (Released:2018-02-26)

情報通信産業ではモジュール化が進んできた。モジュール化とは製品をユニットに分解してそのインタフェースを一般に公開し、ユーザがそれを自由に組みあわせることである。インターネットもパソコンもモジュール化製品の代表格であった。しかし、現在このモジュール化が逆転し、統合化へ回帰する兆しがある。パソコンの家電化、携帯電話の隆盛、VPN・NGN、クラウドコンピューティングなどをその兆しと捕らえることができる。はたしてモジュール化は終焉するのか。そもそもモジュール化はなぜ生じたのか。これらの問いに対し、歴史的な考察と実証分析をもとに答える事を試みる。結論は、今後はモジュール化が終焉し統合への回帰が進むというものである。
著者
水谷 浩之
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180328a, (Released:2018-09-21)
参考文献数
37

本研究では、Mintzberg, Raisinghani, and Theoret (1976) の漸進的意思決定モデルにおける中断に注目し、地方自治体の意思決定プロセスを分析した。その結果、漸進的意思決定モデルで指摘されている中断とは異なり、大まかな方針が決まった後に、他の意思決定との整合性をとるために起こる「意思決定後の中断」が明らかになった。漸進的意思決定モデルに「意思決定の連鎖」と「他の意思決定の影響」という二つの要素を加えたモデルにより、この現象を理解することができ、実態に即した地方自治体の意思決定プロセスの理論的な考察が可能になる。
著者
山城 慶晃
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0171027a, (Released:2018-06-08)
参考文献数
10

ハーレーダビッドソンジャパン (以下、HDJ) の成功要因として、他の二輪車メーカーは、業販・並行輸入のない統制のとれた販売網やHDJとそのディーラーによる顧客コミュニティ活動を指摘する。しかし、HDJは全て他人資本によるディーラーの正規代理店制度により流通系列化を推進し、販売網を構築してきた。これらのディーラーはHDJと代理関係にあるとはいえ、依然として売買関係にあるばかりか、大半は、経営資源に乏しく目先の売上を志向する家族的経営を行い、理屈だけではなく感情面での納得がないと動かなかった。こうしたディーラーに対し、HDJが経営や販売プロセスまで深く関与するのは、容易なことではなく、それ相応のプロセスを踏む必要があった。本論では、1989年から2008年までを対象期間として、HDJが他人資本であるディーラーに深く関与してHDJの意図する機動的な組織運営を可能とした流通系列化の背景には何があったのか、制度的マネジメントと人的マネジメントから説明する。
著者
鈴木 信貴
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.9, no.9, pp.635-662, 2010-09-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
32

モジュール型産業では、部品メーカーが競争優位を持ち、組立メーカーはなかなか競争優位を獲得することが難しいといわれている。戦後、日本の工作機械産業は、モジュール化によって世界市場を席巻したが、やはり、部品メーカーが競争優位を持ち、工作機械メーカーは競争力を失っていった。本稿では、モジュール化が進展した日本の工作機械産業において、複合加工機の開発に成功したヤマザキマザックの事例から、日本とアメリカという特性が異なる市場を活用し、探索的な技術融合と組織内外の幅広い提携活動によって、段階的に製品のインテグリティーを高め、競争優位を獲得したケースを分析する。
著者
黒川 利明
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.265-276, 2010-04-25 (Released:2018-02-25)
参考文献数
4

日本のソフトウェア産業は厳しい状況に置かれており、渕一博の「ソフトウェア重工業論」からみれば、いまだ後進国のレベルにある。ソフトウェアを作り利用するだけで、システムやソフトウェアを作る「マザー・ソフトウェア」を作りだす段階に至っていない。この問題の他に、ソフトウェアに関する標準化戦略や教育についても考える必要がある。標準化に関しては、標準をとることが利益につながるように、標準を中心としたエコシステムの形成を考える必要がある。教育に関しては国の方針を明確にし、大学が企業に必要な人材を供給できるような教育システムを企業と連携して創る必要がある。これらの問題・課題に積極的に取り組むことで、未来の可能性が拓けると信じている。
著者
横澤 公道
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.25-46, 2018-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
69

本稿の目的は、 知識移転に関する論文の系譜を読み解くことにより、現在ある理論の空白を明らかにしたうえで今後の研究課題を提示することである。まずは知識移転としての経営システム移転論の発展経路を分析し、その後、特に戦略論をベースとする知識移転論に焦点を当て、その中でどのような課題が残されているのか調査した。その結果、知識移転論の大きな課題のひとつとして単一組織対単一組織の知識移転ではなく組織のコミュニティに対する研究とその優位性に関する研究が少ないことを明らかになった。コミュニティへの知識移転は、組織同士の境界線が比較的顕著になることからメンバー同士の制度、文化、力関係などの相互作用が顕著になり、知識移転の複雑化が見込まれる。しかし、移転の過程において、メンバー間において自主的に学習する制度を作ることで、独立した企業へ行うよりも、財閥、系列企業から作ったコミュニティを利用して移転したほうが知識の移転度が高い可能性があることを議論する。
著者
原 寛和 立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.47-106, 2018-04-25 (Released:2018-04-25)
参考文献数
85

製品デザインが市場成果に与える影響について、(i)企業レベル(ii)製品レベル(iii)デザイン組織レベルに分類して実証研究のレビューを行なった。いずれの研究も、製品デザインが市場成果にプラスの影響を与えることを支持している。ただし、そのメカニズムは単純ではなく、変数間の媒介効果や交互作用効果を多く含んでいる。これら既存研究のレビューを踏まえ、今後の研究として、(1)戦略的文脈の影響を考慮した研究 (2)消費者の反応を取り込んだデザインプロセスの研究 (3)デザインマネジメントの組織メカニズムの研究が必要であることを報告する。
著者
三富 悠紀
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.261-272, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)
参考文献数
19

ECサイトにおけるマーケティング研究は、非常に注目されており、研究も多岐に広がっている。例えば、ECサイトにおける消費者行動の解明やモデル化、バナー広告などの広告効果、eWOMといったユーザーが生成したコンテンツやソーシャルネットワークが与える影響に着目した研究などが多く行われている。本稿ではECサイトを対象としたマーケティング研究の初期の研究であり、ECサイトにおける消費者のページ閲覧行動の分類を行ったMoe (2003) の解説と評論を行う。その上でMoe (2003) の問題点と、今後の研究の方向性について議論を行う。
著者
吉川 達郎
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.273-280, 2017-12-25 (Released:2017-12-25)

『Topcoder (トップコーダー)』は、2001年に米国にて競技プログラミング・コミュニティとして始まり、現在世界で100万人のデータサイエンティストプログラマー、UI/UXデザイナーを抱えるクラウドソーシング・コミュニティである。本稿では『Topcoder』を活用したNASA、ハーバード大学、IBMを含む世界の先進企業のオープンイノベーションの事例を紹介する。クラウドソーシングとして一般的な簡易なタスクの遂行ではなく、世界中のハイスキルなリソースを活用して、クイックなプロトタイピングや高難度課題の解決をサポートする『Topcoder』のシステムについても詳しく説明する。
著者
和田 剛明
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.371-396, 2013-05-25 (Released:2016-07-25)
参考文献数
53
被引用文献数
1

企業が環境の変化に対応し、持続的に成長するための能力であるダイナミック・ケイパビリティについて多くの議論がなされてきたが、その主体、構築・発揮プロセスについての解明は進んでいない。本論文は、この課題に対して日本国内の経営学者の理論を援用することによりこれを探求し、企業事例によって検証を図るものである。
著者
許 經明
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.167-192, 2017

<p>本研究では、携帯電話産業において、コア部品サプライヤーの知識を中心とするブランド企業と生産受託企業の製品開発分業という企業間分業を分析した。本研究の定量分析の結果によると、生産受託企業がコア部品サプライヤーのツール・キットを活用することと、コア部品サプライヤーと技術コミュニケーションを行うことが、ブランド企業との製品開発分業における意思決定権限に正の影響を与えることが明らかになった。このようなトライアドの企業間分業においては、企業 (プリンシパル) と協業相手 (エージェント) の分業における意思決定の権限の割り当ては、企業 (プリンシパル) と協業相手 (エージェント) のどちらが相手企業よりどれほど第三者の知識を「獲得」するかによって決まることになると考えられる。</p>
著者
柴田 友厚 馬場 靖憲 鈴木 潤
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.213-232, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
28

企業が持続的に成長するには、現在の事業領域と技術領域を超えた新たな領域での探索が有効な方策のひとつである。先行研究は、近傍領域の探索に傾斜しがちな企業の特性を指摘すると同時に、探索活動を類型化した上でそれぞれの効果を明らかにしてきた。本稿は、先行研究が注意を払ってこなかった探索をすすめるプロセスに着目し、その解明に貢献することを目的とする。まず、探索の階層性という新たな概念を提示したうえで、富士フイルムとコダックの探索戦略の違いを明らかにする。そして両社の盛衰が分かれた理由を、探索の階層性に立脚して探索プロセスの違いから考察する。