著者
軸屋 泰隆 山田 仁一郎
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0221203a, (Released:2023-09-27)
参考文献数
78

「アントレプレナーのストーリーテリング」の研究は、今世紀に入ってから注目され始めた比較的新しい研究分野である。「アントレプレナーのストーリーテリング」の研究は、テーマや手法、研究が実施された地域に多様性があり、それ故、研究者が立脚している研究パラダイムも多様である。本稿は、「アントレプレナーのストーリーテリング」の先行研究をシステマティックレビューの方法論的アプローチによって概観し、これまでの研究潮流と今後の研究の方向性を探るものである。
著者
瀬尾 傑
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.13, no.10, pp.407-414, 2014-10-25 (Released:2015-10-25)

近年、マスメディアは、新聞や雑誌の読者離れを原因とする従来のビジネス・モデルの限界と、メディアへの信頼の低下という二つの危機を抱えている。このような背景から、報告者は大学で学んだマーケティングの知識や、前職の日経マグロウヒル(現日経BP 社)から蓄積してきたアメリカン・スタイルの経営手法を活用し、健全な経営体制を実現するオンライン・メディア『現代ビジネス』を創刊した。本稿では本誌創刊の経緯や現状、報告者が考えるオンライン・メディアの将来を紹介する。
著者
高井 文子 近能 善範
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.113-166, 2023-08-25 (Released:2023-08-25)
参考文献数
37

本稿は、1970年代後半から1990年代半ばにかけての日本のパソコン市場を対象に、市場の立ち上がりからNECによる寡占体制が確立し、やがてそれが崩れ去っていくまでのプロセスを時系列的に丁寧に記述することを通じて、リーダー企業が新たなイノベーションに十分に対応できず、競争力を大幅に毀損してしまう原因を探ることを目的としている。本稿では、事例を記述するにあたって、①プロセス戦略論の視点、②競争ダイナミクスの視点、③行為システム・アプローチの視点、という三つの視点を意識しながら、通常求められる以上に「厚い」事例記述を行う。
著者
真玉 修司
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0230323a, (Released:2023-08-22)
参考文献数
28

日本のトラック運送は、運送需要の低迷や低収益、トラックドライバーの高齢化や長時間・低賃金労働による低待遇のため持続性の危機にあると言われている。本研究では、トラック運送の危機を受けて、運送サプライチェーン関与者が、課題解決の本命とされるデジタル情報の活用をどのような観点で推進しているかを、インタビューを含む調査で明らかにする。調査の結果、デジタル情報活用推進は、危機に瀕しているトラック運送事業者の為というよりは発荷主・着荷主の運送効率化の為の活用推進となっていることが分かった。その背景には、運送を委託する荷主とトラック運送事業者間、及び運送を受け持つトラック運送事業者間の取引関係があることを明らかにした。
著者
土屋 秀太 馬 瑞潔
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0230508a, (Released:2023-05-23)
参考文献数
19

Meyer, Ding, Li, and Zhang (2014)は、多国籍企業が進出国から受ける制度的圧力 (institutional pressures) に対応するために海外進出戦略を変化させることを述べた。その上で多国籍企業が受ける制度的圧力の度合いが一様ではないことを想定し、より制度的圧力を受けやすい国有企業は私有企業と比較してどのような設立形態及び支配比率を選択するかを調査した。中国の上場企業の海外子会社のデータを用いて検証した結果、国有企業は私有企業よりも制度的圧力を受けにくい設立形態と支配比率を用いて進出国の状況に適応することと、その違いが国有企業に対する正統性の圧力が強くなる環境で大きくなることを明らかにした。そしてMeyer et al. (2014) は制度理論の拡張に貢献し、組織分野への異なる参入者に対する差異をうまく説明するとともに、特異な出自を持つ外国投資者が進出国の社会でいかに正統性を構築することができるかに対する示唆を与えている点での貢献があると主張している。本稿では、Meyer et al. の内容を詳細に解説すると共に、この研究の問題点についての指摘を行う。
著者
芳賀 裕子 立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-34, 2023-02-25 (Released:2023-02-25)
参考文献数
33

M&Aの企業への効果は、先行研究から必ずしも明らかではない。M&Aで移転する経営資源に着目した多くの先行研究から明らかにされていない、M&Aの成功要因がある。それはM&Aのダイナミックケイパビリティであり、資源を評価し、再配分を実施する組織統合能力である。本研究は、企業成長の手段であるM&Aを事業成果に結びつけるために必要な本社能力とは、具体的にどの様なことかを解明した。M&Aを業績に結び付けられない要因、結び付けられる要因の両方をインタビュー調査により明らかにした上で、M&A成功に必要な七つの本社能力を抽出した。そしてこれら七つの項目は、三つのM&Aの実施各フェーズ (戦略立案、ディール実行、PMI) において横断的に実施することが重要であった。
著者
立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.7, no.8, pp.627-632, 2008-08-25 (Released:2018-03-04)

近年の台湾・韓国に代表される東アジア新興国の成長には著しいものがある。半導体・液晶パネル産業のような設備投資競争が国際競争力の鍵となる産業において、各国の税制が果たす新しい役割について紹介を行う。1990年代以降、先進国から新興国への技術普及スピードに税制が大きく関与していると考えられている。しかし、その詳細は明らかになっていない。本稿研究では、設備投資に関わる各国の制度を整理した上で、同一事業を日本・台湾・韓国で行った場合、制度要因のみで、どの程度、企業業績に影響があるのかを推定した。
著者
高橋 伸夫 中野 剛治
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.2, no.10, pp.481-530, 2003-10-25 (Released:2018-03-19)
参考文献数
29
被引用文献数
4

ややもすると特許件数やロイヤルティー収入の額に目が行きがちな大学の技術移転を産学連携の現場の視点から捉え直す。そこは、マーケッタビリティーを機軸とする営業活動の中で、大学と大学に所属する研究者の権利をいかに守るかのせめぎ合いの現場である。真の技術移転とは特許の移転ではない。特許を作り出せるだけの技術をもった人の移転である。研究教育機関としての大学の真価はそこにある。
著者
高橋 伸夫
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.2, no.8, pp.339-366, 2003-08-25 (Released:2018-03-19)
参考文献数
15

日本型の人事システムの本質は、給料で報いるシステムではなく、次の仕事の内容で報いるシステムだということである。仕事の内容がそのまま動機づけにつながって機能してきたのであり、それは内発的動機づけの理論からすると最も自然なモデルでもあった。他方、日本企業の賃金制度は、動機づけのためというよりは、生活費を保障する視点から賃金カーブが設計されてきた。この両輪が日本の経済成長を支えてきたのである。今こそ原点に立ち返り、従業員の生活を守り、従業員の働きに対しては仕事の内容と面白さで報いるような人事システムを再構築すべきである。
著者
三木 朋乃 高 永才
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.775-788, 2011-11-25 (Released:2017-10-10)
参考文献数
13

本稿は、医療機器市場に参入したことのない富士フイルムが、なぜ、世界に先駆けてデジタルX 線画像診断システムを開発し、普及させることができたのかを明らかにしていく。事例分析の結果、富士フイルムは既存のアナログX 線画像診断装置をモジュール化し、世代を超えて共通利用していたことが分かった。さらに、既存顧客の声を聞き入れ、レントゲン写真の診断に使われていた知識やノウハウがデジタルX 線画像診断システムに使えるように製品開発を行っていたことが明らかになった。こうした製品開発プロセスは、顧客の移行コストを削減し、富士フイルムのデジタルX 線画像診断システム (Fuji Computed Radiography) の普及につながった。
著者
岩瀬 勝則
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.43-68, 2021-06-25 (Released:2021-06-26)
参考文献数
54

本研究では、国内マザー工場移転の中での技能継承活動という堀場製作所でのケースを取り上げる。注目したケースは、干渉フィルタ製造工程のひとつである蒸着工程であり、装置の操作などに高度な熟練技能を必要とする特徴をもつ。この工程では、技能伝承がなおざりにされがちな状況下で取り組んだOJTにより、技能伝承の効率化を実現した。詳細なケース分析の結果、その要因は、1) 異なる特徴を持つOJTの組合せ、2) マザー工場移転という緊迫した状況、そして3) “積極性”を醸成する内省支援OJTの三つからなることが明らかになった。
著者
三嶋 恒平
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.8, no.11, pp.635-674, 2009-11-25 (Released:2018-02-26)
参考文献数
43

2000年以降、タイオートバイ産業は輸出を本格化させ、国際的な競争優位を顕在化させた。これは単にタイに進出した日系企業が元来備えていた競争優位に由来するものではなかった。こうした国際競争優位の確立は、第一に進出先であるタイにおける厳しい企業間競争と、第二に日系完成車企業を主体としたタイにおける漸進的な能力構築行動、の二つが結実したものであった。
著者
山口 洋平
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.3, no.6, pp.253-288, 2004-06-25 (Released:2018-03-18)
参考文献数
26
被引用文献数
2

デジタルスチルカメラ市場は2003年に出荷金額が1兆円を突破し、デジタル家電市場の拡大の中で、日本企業が高い競争力を持つ産業として大きく注目を浴びている。カシオ計算機は「QV-10」を発売することによってデジタルカメラ市場を創出したが、その後銀塩カメラメーカーが仕掛けた多画素・高画質競争の中で低迷した。そのカシオ計算機が2002年に投入した「EXILIM」はデジタルカメラらしさを追求した機種で、それまで多画素・高画質という製品スペックをめぐる競争が行われていたデジタルカメラ市場にとって、製品コンセプトのイノベーションをもたらす斬新な製品であった。本稿では、なぜカシオ計算機が「EXILIM」を開発することになり、どのような過程で開発が進められたかを見ていく。
著者
横山 禮士 佐藤 秀典
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.73-88, 2022-04-25 (Released:2022-04-25)
参考文献数
25

既存企業における新規事業立ち上げのためには、先行研究で指摘されてきた成功要因だけでなく、組織メンバーの認識の枠組みへの既存事業の影響を軽減し、そこから抜け出すことが必要である。とくに不完全な独立組織の場合には、組織メンバーは既存事業と新規事業の間で葛藤することになり、これを克服するためには、組織メンバー間での対話や議論、正当性の獲得を通じて新規事業の組織アイデンティティを形成することが必要である。
著者
折橋 伸哉
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.2, no.6, pp.279-304, 2003

<p>タイの自動車産業は、1997年の通貨危機(アジア経済危機)を契機に、それまでの高成長から一転、まさに存亡の危機に立たされた。タイでは生き残りを掛けて各社が必死の対応を行った。それを概観すると共に、最近のタイ自動車産業の状況と課題を検証する。</p>
著者
立本 博文
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0161116b, (Released:2017-04-03)
参考文献数
57

プラットフォーム企業の台頭は顕著であるにも関わらず、既存研究のプラットフォーム戦略の理論モデルには国際的・地理的条件が含まれていない。本研究は1994−2007 年の日韓台の半導体製造装置産業の取引データを用いて、半導体装置企業の新興国市場展開がプラットフォーム戦略にどのように影響するのかを実証分析した。実証分析の結果から「高い新興国市場向け販売率」は、プラットフォーム戦略の効果を高めることがわかった。また、「ハブへのポジショニング」「オープン標準対応製品の高販売率」「新興国向けの高販売率」には強い正の交互作用が存在することもわかった。すなわち、プラットフォーム企業が競争優位を獲得するためには新興国展開が不可欠な条件であることがわかった。
著者
菊地 宏樹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0210901a, (Released:2022-02-14)
参考文献数
48

本稿では、技術の限界に対する認識がいかにして更新されていったかを、東海道新幹線を事例として考察した。技術の限界を考えるにあたり、分析のフレームワークとしてSCOT から派生した技術フレームを使用している。また、技術の限界を考えるにあたり、研究段階における技術の限界に対する認識である純粋技術屋的限界と、実際に営業に投入する段階における技術の限界に対する認識である政策技術屋的限界に分けて考察を行い、それぞれの技術の限界に対して、これを規定する要因と更新する要因を明らかにした。