著者
内田 彬浩 林 高樹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180113a, (Released:2018-12-07)
参考文献数
22

日本の購入型クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」のデータを用いた実証分析を行い、米国の「Kickstarter」を対象とした研究と比較した結果、以下の3 点が明らかになった。第一に、日米ともに目標金額と募集日数の増加により資金調達の成功率が下がり、積極的なPR により成功率が上がる。第二に、動画の使用が成功率向上に有効とした米国での研究結果に対し、日本では動画が成功率に影響を与えるとは言えない。第三に、日本では首都圏に所在する資金調達者が実施したプロジェクトの成功率が高い。これらは、今後の日本のクラウドファンディングの発展過程の理解に資すると考えられる。
著者
菊地 宏樹 北山 寛子
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0181116a, (Released:2018-11-30)
参考文献数
16

昨今、政府により推進されている働き方改革の中でもダイバーシティがキーワードとされて注目が集まっている。女性や高齢者、外国人の活用が進められていることから、ダイバーシティ研究の重要性は増すだろう。政府はダイバーシティに関して良い面ばかりを強調するが、その裏側には負の面も存在する。ダイバーシティ研究の中のフォルトラインの研究がそういった側面を我々に示唆してくれる。本稿では、フォルトライン研究の嚆矢となったLau and Murnighan (1998) を紹介し、フォルトラインという概念について、有名な例示を通して理解を提供しつつ、見落とされがちな「フォルトラインの活性化」という概念についても焦点を当てて紹介する。
著者
村田 賢太
出版者
Global Business Research Center
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.12, no.12, pp.841-850, 2013

クックパッドは、レシピ共有をはじめとし、ユーザーが毎日の料理を楽しめるようなサービスを提供している。本報告では、リーンスタートアップという手法のサイクルを回すために利用しているオープンソースの技術について、Ruby で開発されたもの、特にChanko とRSpec に関して説明する。そして、クックパッドが実際にどのように開発されているのかを紹介する。Chanko は新しい機能を作る際、できるだけ本来機能の安定性を損なわないように開発したい、コードの品質を落とさずに新しい機能を開発したい、できるだけ早く開発したい、という要求を実現するために開発された。後者はテストを実行する仕組みである。最後に、クックパッドの技術者が働くうえで尊重しているマニフェストについて紹介する。
著者
田路 則子 五十嵐 伸吾
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0180611a, (Released:2018-06-21)
参考文献数
7

スウェーデンのヨーテボリ市の大学院における起業家教育は開学から20年を迎え、100以上のスピンオフを送り出してきた。株式公開や売却を迎えたハイパフォーマーは10社以上、常時100社が大学のインキュベーションプログラムの中で支援を受けている。拡大人口90万人の地方で、技術シーズの提供、投資、経営支援がうまく廻る、北欧一の成功例として知られるようになった。筆者らは2011年より行ってきたフィールドワークの途中経過を公表したい。起業家活動の肝は、機会認識とチーム形成である。それをどのように、正規の教育の中で学習させ、卒業後の実践へと繋げているのかを紹介したい。
著者
福島 洋佑 熊澤 知喜
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.233-238, 2017-10-25 (Released:2017-10-25)
参考文献数
4

本稿では、組織アイデンティティ研究分野において著名なHatch and Scultz (2002) の内容をレビューし、同論文の正確な理解を試みる。同論文では、組織アイデンティティと組織イメージ、組織文化との間で生じる動学的なプロセスをモデル化しており、こうしたプロセスが遮断された際、組織が陥る二つの機能不全について述べている。こうした機能不全は同論文内では並立して描かれているが、同時に起こり得るものではなく、図の解釈において注意が必要であるというのが本稿の主張である。
著者
新宅 純二郎 二又 俊文 吉岡(小林) 徹 許 經明 瀬川 晶子
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.35-60, 2017-02-17 (Released:2017-02-25)
参考文献数
7

本稿は、2016年8月にフィンランドとドイツで実施した調査にもとづいたものである。前半では「ヨーロッパの産学連携」と題して、フィンランドのイノベーション基盤とドイツの産学連携で重要な役割を果たしているフラウンホーファー研究機構について紹介する。後半では「変貌するレガシー欧州企業」と題して、欧州を代表する大企業の戦略転換や組織改革について紹介する。まず、フィンランドのノキアが、端末部門のマイクロソフトへの売却など大規模なリストラの後どのように高収益企業に変貌しつつあるかについて紹介する。また、ドイツのシーメンスが、全社R&D組織を中心にして、Industry 4.0やIoT時代にどのように取り組もうとしているかについて述べる。
著者
吉川 達郎
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0161114a, (Released:2017-12-02)

『Topcoder (トップコーダー)』は、2001年に米国にて競技プログラミング・コミュニティとして始まり、現在世界で100万人のデータサイエンティストプログラマー、UI/UXデザイナーを抱えるクラウドソーシング・コミュニティである。本稿では『Topcoder』を活用したNASA、ハーバード大学、IBMを含む世界の先進企業のオープンイノベーションの事例を紹介する。クラウドソーシングとして一般的な簡易なタスクの遂行ではなく、世界中のハイスキルなリソースを活用して、クイックなプロトタイピングや高難度課題の解決をサポートする『Topcoder』のシステムについても詳しく説明する。
著者
菊地 宏樹 湯 哲海
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー
巻号頁・発行日
vol.15, no.11, pp.547-564, 2016

<p>Bijker (1995a) では、まずオランダの洪水や堤防を巡る問題を唯物論的モデル・認知論的モデル・社会的形成モデルから説明している。そのうえで、社会的形成モデルの不十分な点を指摘し、より精緻なアプローチとして三つのフレームワーク (システムズアプローチ・アクターネットワーク理論・技術の社会的構成) を提示している。これらを用いて、オランダのデルタプランという大規模な堤防工事の事例分析を行った、というのがこの論文の大まかな内容である。この論文中で技術の社会的構成アプローチ (SCOT) はシステムズアプローチ、アクターネットワーク理論とともに、社会技術アンサンブルという、技術・社会などの異質な要素が密接に結びついたものを分析対象とするアプローチとされている。提唱された当初のSCOTは、社会技術アンサンブル的なものを分析対象としていたわけではなく、様々な批判を受けて、フレームワークをアップデートし、およそ10年の歳月をかけてこのパースペクティブに至った。近年、経営学ではSCOTのアプローチが新しい分析ツールとして紹介されるが、これまでの経営学の研究を見ると社会技術アンサンブル的な観点はむしろ普通に利用されており、SCOTというアプローチは社会技術アンサンブルに至る過渡期的なものであったのではないかと考えられる。それゆえ、まだ理論発展の余地はあり、Bijkerによるフレームワークのアップデートの結果として出てきた技術フレームに列挙されている要素の強弱や関係などを解き明かすといった方向性が考えられる。</p>
著者
木下 信行
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.333-338, 2015-06-25 (Released:2016-06-25)

現在の決済ネットワークは、銀行券の偽造防止や銀行のコンピュータのセキュリティ確保に大きなコストをかけて運行されている。企業では、グローバル化やIT 利用のユビキタス化がすすんでおり、現状の決済サービスでは限界がある。本稿では、決済の現状を説明したうえで、顧客ニーズの変化に対応するため、暗号通貨の基礎にあるIT や社会的枠組みを銀行が用いることを提案する。
著者
森川 亮
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.89-98, 2015-02-25 (Released:2016-02-25)

LINE は日本で開発され、世界で成功を収めた、初のアプリケーションである。コミュニケーションをテーマに開発されたLINE は、世界中に2 億人以上のユーザーがいて、今も成長し続けている。本稿ではLINE の開発経緯をはじめ、LINE の価値、サービスなどを紹介し、スマートフォン時代にLINE が構築した新たなビジネスモデルを説明する。最後は以上を踏まえ、LINE が目指す世界について論じる。
著者
岩尾 俊兵 中野 優
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.105-116, 2017 (Released:2017-04-25)
参考文献数
19

産業における技術革新はどのように発生し競争環境にどのような影響を及ぼすのだろうか。上記の研究課題に対し、3産業のパネルデータを用いて接近したのがTushman and Anderson (1986) である。彼らの発見は、産業において長期間のインクリメンタルな技術変化が断続的で「ラディカル」な技術革新によって中断され、また、技術革新にはある産業に属する企業が既存の能力で対応可能な、①能力増強型とそうでない、②能力破壊型のものがあるというものである。ただし、彼らはラディカルか否かの判断を特定指標の向上率で行っており、図表の作り方によってはラディカルなイノベーションというよりも連続的な技術のブレークスルーのようなものを測定している可能性もある。それによって技術変化が競争環境に与える影響を一部見逃しているかもしれない。
著者
秋元 創太 三富 悠紀 井上 剛
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
pp.0161117a, (Released:2017-02-17)
参考文献数
13

ユーザーイノベーションに関連する研究は、非常に多岐な分野へと広がっている。それに伴って、ユーザーイノベーションを起こせるような先駆的な顧客、所謂リードユーザーの特定が着目されている。本稿では、①はじめてリードユーザーを特定し、②特定したリードユーザーが考案した製品コンセプトを評価するプロセスを構築し、第三者から高い評価を得ることの二つの貢献をした Urban and von Hippel (1988) の解説と評論を試みる。その上で後続の研究を確認し、リードユーザーによって生み出された製品コンセプトが本当に優れているのかについて疑問を提示していく。
著者
加藤 木綿美 市來 和樹
出版者
特定非営利活動法人 グローバルビジネスリサーチセンター
雑誌
赤門マネジメント・レビュー (ISSN:13485504)
巻号頁・発行日
vol.14, no.12, pp.689-702, 2015-12-25 (Released:2016-12-25)
参考文献数
23

本稿は、ダイナミック・ケイパビリティ (DC) 論の主要論文のひとつであるEisenhardt and Martin (2000) を取り上げ、同論文のDCに対する視点を再確認するとともに、同論文の新規性、および貢献を再検討する。既存研究では強調されていないが、Eisenhardt and Martin (2000) は「DCに共通性があること」を主張し、「DCは直接的には持続的競争優位に繋がらない」と主張した論文である。彼らは、企業にとって持続的競争優位の源泉となるのはDCではなく「資源の持ちよう (resource configuration)」であるという主張を行っているのである。よって、本研究を引用して「DCは持続的競争優位の源泉である」と主張するのは誤りである。