著者
松原 靖子 櫻井 保志 Christos FALOUTSOS
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.4, pp.457-471, 2017-04-01

本論文では,大規模オンライン活動データのための非線形解析手法であるECOWEB (Ecosystem on the Web)について述べる.本研究では,“Xbox”, “PlayStation”, “Wii”等のオンライン検索キーワードの出現件数に関する時系列データが与えられたとき,それらのキーワード間の潜在的な関連性や競合性,そして季節性等の重要なパターンを自動抽出することを目的とする.より具体的には,オンラインユーザ活動の推移パターンを,自然界の生態系における種内・種間競争として捉えることで,潜在的なユーザ資源(ユーザの興味,時間等)を各アクティビティ(Xbox等のキーワード)がどのように共有,あるいは競合しているかを非線形動的システムとして表現する.実データを用いた実験では,ECOWEB が様々なオンライン活動における長期的な非線形パターンや季節性等の重要なトレンドを発見し,更に,長期的な将来予測を高精度に行うことを確認した.
著者
則 のぞみ 鹿島 久嗣 山下 和人 猪飼 宏 今中 雄一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.2, pp.194-204, 2017-02-01

ICU入室患者の死亡リスク予測問題において,疾病によってリスク要因がどのように死亡リスクに関係するかが異なる点を考慮するために,疾病ごとに個別化した予測モデルを構築する.疾病ごとの個別化に際して課題となるデータの疎性に対処するために,疾病の分類と電子健康記録の分類に関する二つのドメイン知識を取り込むマルチタスク学習手法を提案し,医療機関における実データを用いた実験で提案手法の有効性を示す.
著者
鳥海 不二夫 神谷 達幸 石井 健一郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1740-1750, 2011-11-01

近年,SNS (Social Networking Service)やBlog,Twitterなどのインターネットを利用したコミュニケーションツールの利用が拡大している.SNSのユーザは友人登録機能によってSNS上での他のユーザとの関係を表現する.このようにSNS上に現れる友人関係は,実社会において観測することの困難な人間関係を限定的ではあるが具現化する可能性がある.本研究では性質の異なる多数の小規模SNSを表現可能なネットワーク生成モデルを提案した.提案モデルは,SNSの成長モデルとして知られているCNN+Fitnessモデルに,管理者優先モデル,トライアドフォーメーションモデル,優先的近傍接続モデルを組み合わせて作られた.そして,それぞれのモデル適用率をパラメータとし,モデル化したいSNSに特化して最適化することで,現実の友人ネットワークの構造を近似する.パラメータの最適化にはSimulated Annealingを利用した.また,提案モデルの近似性能を確認するために,ネットワーク指標間の距離に基づいた評価関数を提案した.提案モデルを279の小規模SNSに適用し,提案評価関数で評価した結果,従来のモデルよりも高い精度で小規模SNSの友人ネットワークを近似できることを確認した.また,提案した3種類のモデルについて有効性を確認したところ,管理者優先モデル,優先的近傍接続モデルは友人ネットワーク生成モデル構築上重要であったが,トライアドフォーメーションモデルはネットワークの生成にほとんど寄与しないことが明らかとなった.
著者
熊本 忠彦 河合 由起子 田中 克己
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.3, pp.540-548, 2011-03-01

筆者らは,コンテンツを見たり聞いたりしたときに人々が感じる印象をコンテンツそのものから抽出する手法の研究開発を行っている.本論文では,新聞記事を例として取り上げ,記事を読んだ人々が感じる印象を記事そのものから抽出するテキスト印象マイニング手法を提案する.具体的には,新聞記事データベースを解析し,記事に現れる各単語が記事の印象に及ぼす影響を数値化した印象辞書を構築するとともに,この印象辞書を用いて記事の印象値を算出する手法(算出法)を開発する.更に,この算出法が記事から算出する印象値と人々がその記事を読んだときに感じる印象値との対応関係を回帰分析により調べ,その結果得られる回帰式を用いて算出した印象値を補正するという方法で高精度なテキスト印象マイニングを実現する.ただし,提案手法により抽出される印象は,「楽しい悲しい」,「うれしい怒り」,「のどか緊迫」の3種類であり,それぞれの印象に対し7段階の評価尺度(印象尺度)を設定している.提案手法の有効性を検証するために行った被験者実験では,それぞれの印象尺度における平均誤差が0.69,0.49,0.64となり,特に「うれしい怒り」に対しては高い精度を得ている.
著者
白川 真澄 中山 浩太郎 荒牧 英治 原 隆浩 西尾 章治郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.3, pp.525-539, 2011-03-01

固有名詞や専門用語,及びこれら概念間の関係を網羅した大規模オントロジーの構築は,意味中心のWebを実現する上で重要な基盤技術である.最近の研究では,Wikipediaにおける概念の網羅性を活用した大規模オントロジーの自動構築に注目が集まっているが,概念間の関係の網羅性が低いことが課題であった.そこで本研究では,Wikipediaマイニングによって抽出した情報にWeb全体の情報を組み合わせることで,概念及び概念間の関係の種類を網羅した大規模オントロジーの自動構築を目指す.本論文では,大規模オントロジーの自動構築の核となる関係抽出の手法として,Wikipediaから抽出した連想シソーラスを利用して関係の深い概念ペアを取り出し,Web検索によって概念間の関係を抽出する手法を提案する.また,固有名詞間の様々な関係を定義した大規模オントロジー構築への第一歩として,提案手法を用いて実際にオントロジー構築を試みる.
著者
山本 仁志 岡田 勇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1836-1846, 2011-11-01

集団における規範維持のモデルとしてよく知られたメタ規範ゲームは,N人囚人のジレンマの拡張モデルとして,国際問題における協調問題など中央集権的でない集団においていかに規範を維持するかを検討する上で優れたモデルである.進化論的な分析によって,規範ゲームでは協調は維持されないが,メタ規範ゲームでは協調が維持されることが知られている.しかし近年,メタ規範ゲームがシミュレーションの世代数に対して脆弱であるとの指摘がなされている.我々は,様々なシミュレーション条件における協調の成立条件を精査し,脆弱性のメカニズムを探る.更に我々は,ジレンマ状態にある集団における協調の頑健にするための「社会的ワクチン」を提案し,その効果を検討した.社会的ワクチンとは,集団の中にごく少数の常に裏切り行為をとるエージェントが存在することで,集団全体の規範を高く維持することができる効果をいう.社会的ワクチンを導入することで,協調は広範なパラメータ空間で頑健に維持されることが分かった.
著者
青山 和夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J106-D, no.6, pp.366-374, 2023-06-01

LiDARは,地上の踏査では明らかにし難い密林に覆われた広範な地域の三次元構造を面的に捉えるリモートセンシングとして,マヤ文明のセトルメント・パターンに関する革新的なデータを提供しつつある.本論文では,筆者らによるグアテマラのセイバル遺跡とメキシコのアグアダ・フェニックス遺跡の調査の成果について論じる.筆者らの調査によって,大規模な公共祭祀建造物は農耕定住共同体や王権が確立された後ではなく,それ以前から建設されたことが明らかになった.初期の公共祭祀建造物の共同建設作業や公共広場で繰り返し慣習的に行われた公共祭祀という反復的な実践は社会的記憶を生成し,中心的な役割を果たす権力者の権力が時代とともに強化された.
著者
稲益 秀成 船井 遼太朗 中島 康彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.12, pp.725-735, 2022-12-01

我々が開発した,CPUの構造に基づくリニアアレー型CGRAは,汎用プロセッサ上でのアルゴリズムのデバッグが容易であること,配置・配線の探索空間が小さくコンパイルが高速であることが特徴である.そこで,これらの特徴を活かしたJust-in-Time実行環境を開発した.これにより,様々なPE数の環境において,最適なマッピングを動的に生成できる.代表的なDCNNの行列積と畳み込み誤差逆伝播処理を評価した結果,JITコンパイル時間はわずか1~3秒であった.そして,行列サイズ2048 × 2048の場合,実行環境全体の実行時間に対するJITコンパイル時間は1.3%~22.18%となり,データサイズが大きい場合やカーネルが再利用可能な場合は,JIT方式の実行環境による高速化を確認できた.
著者
小林 和央 風間 一洋 吉田 光男 大向 一輝 佐藤 翔 桂井 麻里衣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J105-D, no.5, pp.310-321, 2022-05-01

本論文では,オルトメトリクスで用いられる論文評価指標の時系列ベクトル表現から検知したバーストの有無や期間・回数などのバースト特性から,多様なユーザによって生み出された論文の評価について多面的に分析する.実際に,2年間のソーシャルメディアの論文言及データから論文言及人数,CiNii Articlesの検索ログから論文閲覧人数を求め,それらの時系列変化から言及バーストと閲覧バーストを検知した.次に,論文とそのバースト特性の関係を,言及バーストと閲覧バーストの対応,閲覧人数の順位,論文の書誌情報,検索語,時系列変化を用いて分析した.その結果,閲覧人数では特定の専門分野の研究者や学生向けよりも,ソーシャルメディア上の情報拡散の影響を強く受けた一般的なユーザ向けの論文がより上位にくることと,ソーシャルメディアの情報拡散と学術イベントが引き起こすバースト特性は異なることがわかった.最後に,バースト特性を用いて,ユーザ属性に応じた学術情報検索を実現する可能性について検討する.
著者
山元 翔 橋本 拓也 神戸 健寛 吉田 裕太 前田 一誠 平嶋 宗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.2, pp.232-235, 2016-02-01

筆者らはこれまでに,1回の加減で解決できる算数文章題を対象として,三文構成モデルによる作問学習支援システムを開発している.本研究では,システムを小学校2年生で学習する乗算の領域へと拡張するものであり,システムの拡張から1クラス9時限の実践利用までを行ったので,報告する.結果としては,システムを利用することで問題解決能力はあっても,構造の理解が浅い学習者に対して,構造理解を深められることを示唆する結果が得られた.
著者
瀬村 雄一 吉田 則裕 崔 恩瀞 井上 克郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.215-227, 2020-04-01

近年実務に使用されるプログラミング言語は多様化し,ある一つのプログラミング言語においてもその文法はバージョンごとに差異をもつ.字句単位のコードクローン検出ツールCCFinderXは,多様な言語に対応するためのシンプルな仕組みをもたない.提案ツールとして,構文解析器生成系の一つであるANTLRの構文定義記述を入力として与えることで,新たな言語の字句解析が可能になるコードクローン検出ツールCCFinderSWを開発した.評価実験では,42言語の構文定義記述からコメントや予約語,文字列リテラルの情報を抽出し,81%の言語でこれら3種類の情報が抽出可能であることを示した.また,C++で記述されたソースコードに対するコードクローン検出においてCCFinderXと出力を比較し,ほぼ同等の検出能力をもつことを示した.
著者
木下 涼 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.314-329, 2020-04-01

項目反応理論では異なるテストを受検した受検者を同一尺度上で評価することができる.しかし,そのためには受検者の同一母集団からの独立ランダムサンプリングを仮定し,共通項目を含む複数のテストデータをもとにリンケージと呼ばれる処理が必要である.リンケージはテスト実施に膨大な作業を伴うだけでなく,前述の仮定により理論的に最適値を得る保証はない.この問題を解決するため,本研究では深層学習を用い,受検者の母集団と独立性を仮定しないテスト理論としてItem Deep Response Theoryを提案する.提案モデルはリンケージを必要とせず,受検者が単一母集団からのランダムサンプリングでない場合にも精度の低下が抑えられ,複数の母集団からサンプリングされている場合に頑健である.ここではシミュレーション・実データ実験より,提案モデルは未知の項目への反応予測精度が高く,特に受検者が同一の母集団からランダムにサンプリングできない場合に項目反応理論に対して大きく能力推定精度と反応予測精度を向上させることを示す.
著者
大澤 昇平 松尾 豊
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.10, pp.870-881, 2017-10-01

FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを対象にした分析研究では,分析対象となるエンティティの属性情報を収集するために,ソーシャルメディアの提供するAPI (application programming interface)に対するサンプリングが行われることがある.APIの中でも,検索APIに対するサンプリングはこれまで事例が少なく,効率的なサンプリング手法については明らかになっていない.本論文では,Wikipediaから得られるオントロジーを用いることで,検索APIを利用したサンプリングの効率を高めることができることを示す.具体的に,オントロジーから複数の辞書を生成し,収集したいトピックに合わせて適応的に用いる辞書を変える手法を提案する.また,辞書の評価指標として推定Jaccard指標を提案する.実験では,提案手法がFacebookから25.8%にあたる1800万件のエンティティをサンプリングでき,推定Jaccard係数を用いた手法が既存手法よりも効率が高いことを報告する.
著者
川又 泰介 赤倉 貴子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J102-D, no.3, pp.163-172, 2019-03-01

Web上で試験を行うe-Testingは時空間の制約なく受験が可能という利点がある一方で,試験中の不正行為が容易に発生し得るという問題がある.そこで,試験中のなりすまし受験を防止するために,バイオメトリクスを用いた受験者認証法が提案されているが,認証の要求による受験の阻害が課題として挙げられている.そこで本研究では,受験を阻害することなく継続的に受験者を認証するため,Webカメラとペンタブレットを用いて顔認証と筆記認証を組み合わせた受験者認証システムを開発した.システムを実環境に近い状況で使用した結果,顔・筆記共に実時間で認証処理を完了可能であり,被験者は認証処理を意識することなく受験することが可能であることが分かった.
著者
嶋 和明 本間 健 池下 林太郎 小窪 浩明 大淵 康成 佘 錦華
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J101-D, no.2, pp.446-455, 2018-02-01

電子機器の音声入力操作が一般的になった.音声入力操作に必要となる言語理解器開発のためのコーパスは,主にWOZで収集されてきた.WOZは,人が機械に話すときに見られる簡潔な発話スタイルの収集に向く.しかし,ユーザは,言語理解に優れる機械と対話するなかで,多様な発話をするように変化すると予測される.本研究は,機械相手の簡潔な発話だけでなく将来起こりうる多様な発話も収集することを目的とし,インタビューによるコーパス収集法を提案する.具体的には,カーナビをターゲットとして,質問者から回答者にカーナビに何と言うか質問し,回答を得る.回答者には,機械向けの発話収集であり,かつ機械は進化しているため発話の制限がないことを教示する.インタビューで得たコーパスと現製品の発話ログデータ(製品ログ)を比較したところ,コーパスが一発話あたり11.7%多く形態素を含み,多様な発話を収集できたことを確認した.また,現製品の言語理解用データとしての有用性を調べるため,コーパス,製品ログ,両者混合の3パターンで学習させた言語理解器を構築し,評価した結果,両者混合学習で最高精度となり,有用性を確認した.
著者
関 良明 千葉 直子 橋元 良明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1709-1713, 2014-12-01

手軽な情報発信手段であるTwitter経由の情報漏えいを企業は危惧している.本論文では,従業員のTwitter投稿者を対象にインターネットを使った質問紙調査を行い,業務に関する投稿経験と投稿意識について,職種,雇用形態・勤続年数,性別による傾向分析と,情報漏えい予備群の抽出を試みる.
著者
熊本 忠彦 鈴木 智也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.5, pp.788-801, 2015-05-01

Twitterには,面識のない人でも気軽にフォローできるという特徴があり,他者とつながるための手段として有用と言える.しかしながら,その一方で,匿名の人からフォローされたり,既にフォローしているユーザ(フォロイー)のリツイート等により,知らない人のツイートを目にしたりする機会も多く,そのような人たちをフォローすべきか否か迷うことがある.そこで本論文では,フォロー候補となるユーザがどのような印象選好(普段,どのような話題の,どのような印象のツイートを見たり投稿したりしているか)を有しているかを可視化するシステムを提案する.老若男女1,000人が参加した被験者実験の結果によれば,43.2%〜46.5%の人が提案システムによる印象選好の提示を有用と認めたことが確認された.本システムを用いユーザの印象選好を可視化することで,フォローの是非を,有益な情報源かどうかといった単なる損得勘定だけでなく,自身の感性に合ったユーザかどうかという視点から判断することも可能となる.なお,同じ処理をTwitter上のキーワード検索に適用することで,任意のキーワードの印象文脈(そのキーワードがどのような話題の,どのような印象のツイートにおいて用いられているか)を可視化する機能も付加している.
著者
今里 文香 堀田 圭佑 肥後 芳樹 楠本 真二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.5, pp.847-850, 2015-05-01

本論文では,機械学習を用いてコードクローンの危険予測を行う手法を提案する.提案手法では,過去に存在したコードクローンの情報を学習し,その情報をもとに,現在ソースコード中に存在するコードクローンの危険予測を行う.
著者
伴野 明 勝山 一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.1, pp.214-224, 2015-01-01

最近,映像に香りを付加する研究が進展している.香りの付加で重要となるのは,香りの知覚である.映像と一体的に香りを提示しても利用者が香りを知覚しなければ香り付き映像コンテンツの価値は高くない.そこで,香りの知覚率を高める研究が幾つか行われてきた.しかし,利用者へ吸気センサや香り提示装置を装着するなどの従来法では,香り知覚率が高くても装着感があるため自然さに問題がある.現実空間では香りは風に乗って運ばれる.香りは環境を知る重要な手掛かりを与えるため,人は風を知覚したとき,それまでの呼吸パターンを変化させ,効率的に香りを嗅ごうと吸気している可能性がある.そこで,本研究では,顔に空気触覚を提示し,これに連動して香りを提示すれば香りの知覚率は向上すると言う仮説を設定し,これを検証する実験,及び,そよ風が吹く映像コンテンツと空気触覚の連動による香り提示実験を行った.その結果,空気触覚を提示すると,条件反射的に吸気動作が生じる場合があること,このタイミングで香りを提示すると香りは高い頻度で知覚されることを明らかにした.
著者
住元 宗一朗 中川 博之 田原 康之 大須賀 昭彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.11, pp.1800-1811, 2011-11-01

近年増加したコンテンツ投稿型SNSでは日々膨大にコンテンツが増え続けるため,嗜好には合っているもののユーザが見逃してしまうようなコンテンツは少なくない.また,多くの推薦技術では精度を重視するあまり,その推薦結果に面白みがないという課題がある.本論文では,主に音楽,イラスト,詩等の創作者向けであるコンテンツ投稿型SNSにおける未知性,意外性を考慮した推薦手法について述べる.未知性に関しては,質の高いコンテンツを投稿する投稿者(有力投稿者)に注目し,コンテンツの質を確保しつつもロングテールのテール部分に属する,ユーザがまだ知らないコンテンツを推薦する.意外性に関しては,多くのコンテンツ投稿型SNSで利用されているFolksonomyを利用する.以上の二つの推薦部からなる推薦エージェントを提案し,イラスト投稿型SNSであるPixivの実データを用い,未知性,意外性に関する評価実験を実施した.その結果,推薦リストの6割に未知性,意外性のあるコンテンツが含まれ,本研究の有効性が確かめられた.