著者
中野 聡子 牧原 功 金澤 貴之 中野 泰志 新井 哲也 黒木 速人 井野 秀一 伊福部 達
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J90-D, no.3, pp.808-814, 2007-03-01

我々は,音声認識技術を用いた「音声同時字幕システム」の運用を行う中で,聴覚障害者が感じている字幕の読みにくさは,漢字等の誤認識だけではなく,言い誤りや会話的な表現など話し言葉固有の性質にも原因があるのではないかと考えるに至った.そこで本研究では,話し言葉固有の性質による読みにくさを含む字幕を読んでいるときの眼球運動を測定し,読返しの多さを定量的に調べると同時に,どのような表現部分の文章認知が困難であったかについて,被験者への聞き取りデータと合わせて実証的に明らかにすることを試みた.
著者
柳浦 睦憲 茨木 俊秀
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J83-D1, no.1, pp.3-25, 2000-01-25

組合せ最適化問題に対する効率的な近似解法の一般的枠組みとして,近年,遺伝アルゴリズム,アニーリング法,タブー探索法やそれらの変形版など,様々なアルゴリズムが提案されてきた.これらを総称してメタ戦略あるいはメタヒューリスティクスと呼んでいる.本論文では,これらメタ戦略に現れる様々なアイデアを,近似解法の基本戦略である局所探索法の一般化ととらえることで,体系的にまとめる.メタ戦略の一つの魅力は,その手軽さとロバスト性にある.この観点から,次に,メタ戦略の基本的なアイデアのみで構成したシンプルなアルゴリズムを,計算実験により比較した結果を述べる.これをもとに,手軽なツールとしてのメタ戦略の設計指針を与える.そのあと,より多くの手間をかけても,更に性能の高いアルゴリズムを構成したい場合に有効となる,やや複雑なアイデアについても簡単に紹介する.最後に,メタ戦略の理論的解析の話題にも言及する.
著者
大津 展之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09135713)
巻号頁・発行日
vol.J63-D, no.4, pp.349-356, 1980-04-25

濃淡画像を2値化し対象領域と背景に分離するしきい値レベルを選定する問題は,単に画像処理のみならずパターン認識の基本的な問題の一つである.supervisedな場合には統計的決定理論からしきい値を選定できるが,より実際的なunsupervisedな場合に対しては,これまで幾つかの直観的な手法が提案されてはいるが,それぞれしきい値の評価,一般性,計算量に問題があった.本論文では,このしきい値選定の問題を一般的基本的わく組みで捕え,分離されるクラスの濃度レベルでの分離度を最大とする判別規準の立場から,濃度ヒストグラムの0次と1次の累積モーメントのみを用いる簡単で汎用性を持ったnonparametric unsupervisedな自動しきい値選定法を提案する.本手法は,同時に原濃淡画像の最小2乗近似の意味でも最適な手法となっていて,多値化の場合へも容易に拡張することができる.幾つかの好ましい性質を明らかにし,又,実際の応用例により,本手法の有効性を検証する.
著者
藤原 一毅 鯉渕 道紘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.8, pp.1903-1912, 2013-08-01

スーパコンピュータの大規模化が進むにつれ,通信遅延が並列アプリケーションの性能に及ぼす影響が無視できなくなっている.このため,高次数スイッチを前提とした低遅延なネットワークトポロジーの活用が注目されている.これまでの研究で我々は,ランダムなショートカットリンクをもつトポロジーが低遅延性の点で優れていることを明らかにした.このようなランダムトポロジーは,一方で,ハイパキューブなどの規則的なトポロジーに比べて配線が非常に長くなるという問題を抱えていた.本研究において我々は,(1)不均一なランダムショートカットリンクを単純なトポロジーに付加し,(2)ラックレイアウトを施設配置問題として最適化することで,低遅延性を維持したまま総配線長を最大29%削減できることを示す.
著者
有賀 治樹 西山 乘 橋本 学 長田 典子
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J98-D, no.2, pp.328-330, 2015-02-01

複数の指先の追跡を最適経路決定問題として扱い,解析的DPTにより得られた追跡経路から運指を認識する手法を提案する.複数物体の相対的な位置関係の連続性を評価することにより,特徴が似た物体を同時に追跡できる.実験により,運指認識成功率98%を確認した.
著者
塚本 祐一 石川 佳治 北川 博之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.J87-D1, no.2, pp.202-215, 2004-02-01

近年,地図情報の電子化や位置計測技術の発展,携帯端末などの普及を受けて,携帯端末をもって移動する利用者やナビゲーション機器を備えた自動車などの移動オブジェクトに対し,移動状況に即した周辺情報の提供を行う手法の開発が求められている.一般に,移動オブジェクトに周辺情報を提供する場合,移動体の現在位置を中心として決められた範囲を検索をすることが考えられる.しかし,これまで通ってきた経路やこれから通る予定経路が明らかであれば,それらの情報を利用してより適切な情報が提供できる余地がある.そこで我々の研究グループでは,移動経路や移動速度などを考慮して移動オブジェクトに対して情報を提供するための空間データベース検索モデルの開発を行い,提案した検索モデルに基づく移動オブジェクトに対する周辺情報提供モデルを,商用のGISソフトウェア上で実装した.本論文はこのシステムの設計について述べ,実験をもとにその有用性について評価する.
著者
千葉 直子 関 良明 橋元 良明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1714-1718, 2014-12-01

Twitter上で企業の未発表情報や,有名人等の顧客情報が投稿され,問題となる事件が頻発している.本論文では,民間企業に勤務するTwitter投稿者を対象に調査を行い,企業のリスク管理策の有効性について考察・提言した.
著者
岡崎 亮介 毛利 公美 白石 善明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1696-1700, 2014-12-01

使い慣れたGUIでシステムを利用してもらうための複数のSNSと連携する災害時支援システムのアプリケーションの開発では,SNSごとに異なるAPIを把握し,SNSに応じた実装をしなければならない.本論文では,複数のSNSの入出力を統合するフレームワークを提案し,再利用性と拡張性をもつことを示している.
著者
竹中 太一 槇 俊孝 若原 俊彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.12, pp.1693-1695, 2014-12-01

週刊サッカーマガジンなどの雑誌やSoFIFAのWebサイトでは,サッカーの各試合における選手の評価を行っている.本論文では,Webサイト上の試合後の監督や評論家などのコメントや寸評などから簡易にテキストマイニングして選手の評価を行う分析手法を提案し,実験を行ってその結果よりその有効性を示す.
著者
井上 仁 橋本 敦史 中村 和晃 舩冨 卓哉 山肩 洋子 上田 真由美 美濃 導彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J97-D, no.9, pp.1490-1502, 2014-09-01

本論文では,調理中に起きる食材切断行動を利用した食材認識手法を提案する.一般的な物体認識手法の多くは,画像だけを用いている.しかし食材は異種であっても色が似通っていたり,同一種でも形状が大きく異なるために,画像のみでは認識が困難である.本論文では,食材を切断する際に観測できる荷重と切断音を新たな特徴として統合的に利用する.食材切断時にまな板にかかる荷重は,食材の硬さを反映した特徴であり,切断時に発生する振動音は食材内部の構造を反映している.ゆえに,これらの特徴は画像と併せて用いることで,食材の認識精度を向上させることが期待される.三つの特徴を統合した際の認識精度について,23種の食材を用いて検証し,大幅な認識精度の向上を確認した.
著者
清水 俊幸 安島 雄一郎 吉田 利雄 安里 彰 志田 直之 三浦 健一 住元 真司 長屋 忠男 三吉 郁夫 青木 正樹 原口 正寿 山中 栄次 宮崎 博行 草野 義博 新庄 直樹 追永 勇次 宇野 篤也 黒川 原佳 塚本 俊之 村井 均 庄司 文由 井上 俊介 黒田 明義 寺井 優晃 長谷川 幸弘 南 一生 横川 三津夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2118-2129, 2013-10-01

スーパーコンピュータ「京」の構成と評価について述べる.「京」はスパコンの広範な分野での利活用を目指した10PFLOPS級のスパコンである.我々は,デザインコンセプトとして,汎用的なCPUアーキテクチャの採用と高いCPU単体性能の実現,高いスケーラビリティのインターコネクトの専用開発,並列度の爆発に抗する技術の導入,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性の実現を掲げ,2011年にそのシステムを完成させた.HPC向けCPU,SPARC64 VIIIfxと,スケーラビリティの高いTofuインターコネクトを専用に開発し,並列度の爆発に抗する技術としてVISIMPACTを実装した.冷却やジョブマネージャ等により,高い信頼性,柔軟な運用性,省電力性を実現した.「京」は2011年6月と11月にTOP500で世界一となった.また,複数のアプリケーションで高い実行効率と性能を確認し,スパコンとしての高い実用性を示した.
著者
田中 秀磨 王 立華 市川 隆一 岩間 司 小山 泰弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.8, pp.1913-1924, 2013-08-01

情報の発信源の特定や物流の経由地点など,位置情報の利用が普及拡大している.またクラウド環境においては,ユーザ認証やアクセス制御にこれまで以上の安全性が要求され,位置情報や時刻など物理的な情報を組み合わせる手法も検討されている.このように位置情報を利用する場面が多々出現している状況であるが,位置情報とは座標であり不変的な情報のため,発信者の主張を信用するのみで信頼性が乏しいという問題がある.更に位置を詐称していることをネットワークプロトコルで見破ることは難しい,という欠点もある.そこで位置情報そのものの正当性を示す認証方式が必要である.本論文では準天頂衛星及び地上放送の電磁波を利用して,準同型暗号による位置情報を認証するプロトコルを2種類提案する.
著者
名生 貴昭 松井 智紀 榎堀 優 西尾 信彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.5, pp.1267-1278, 2013-05-01

スマートフォンなどに搭載されたセンサの観測値を収集・蓄積し,解析する研究がなされている.我々は,この一連の活動をいわゆるライフログになぞらえてライフログセンシングと呼んでいる.本論文は,蓄積されたその観測値を効率的に解析するためのフレームワークであるDwarfstarを提案する.我々は30か月間にわたってライフログを蓄積してきた経験から,(1)センサごとの観測周期の違いをアプリケーション側で吸収する手間と,(2)分散環境において時系列性を維持しつつ断続的に観測値の増分を処理することを課題とした.本論文では,それぞれの課題について(1)ウィンドウスキャンと呼ぶスキャン操作の拡張と,(2)分割インクリメンタル処理と呼ぶ処理モデルとその分散環境における処理系によって解決した.HBase上に実装したプロトタイプを用いた実験から,ウィンドウスキャンその他の拡張による性能低下が15%程度であり,分割インクリメンタル処理は単一ホストでのみ処理する手法に比べて平均4.1倍高速であることを確かめた.更に,サンプルアプリケーションを用いた開発実験では,開発工数を約三分の一に削減でき,Dwarfstarの有効性を確認した.
著者
野本 済央 小橋川 哲 田本 真詞 政瀧 浩和 吉岡 理 高橋 敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.1, pp.15-24, 2013-01-01

対話音声に対し怒りの感情を高精度に推定するための新しい特徴量について提案する.怒りの種類は,怒鳴った怒り(hot-anger)と静かな怒り(cold-anger)の二つに分類される.hot-angerの推定には従来研究により韻律的特徴の有効性が示されてきたが,cold-angerの推定はこれまで困難であった.本論文では,2話者による対話を前提とし,韻律的特徴以外に対話特有の特徴も捉えることでcold-angerの推定も可能とする.一方の話者が怒っており,もう一方の話者が怒られている対話状況に現れる顕現的な特徴を捉えるため,各話者の発話区間の時間的関係性から“対話的特徴”(発話時間,相づち回数,発話権交替時間,発話時間比)を提案する.コールセンタ対話音声に対し分析を行い,提案する対話的特徴がhot-anger,cold-angerによらず怒り対話音声の推定に有効であることを明らかにした.更にSVMを用いた実験により,韻律的特徴と併用することでcold-angerにおいてF値で24.4 pt,hot-angerにおいて8.8 ptの精度向上を確認し,提案する対話的特徴量の有効性を示した.
著者
中川 優里 泉井 透 伊勢川 暁 荒井 健太郎 其田 雅徳 成田 雅彦 小木 哲朗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.825-833, 2012-04-01

高度情報通信社会の進展に伴い,購買情報や行動履歴などの個人に関わる情報は,日々膨大に生み出され,社会の様々な場所に分散して記録されている.これらの情報は,マーケティング等に用いられるなど,企業にとって大きな興味の対象となる一方で,情報を生み出している個人がこれらの情報を把握し,一元的に管理することは困難であり,また,企業に対して自分の思いどおりに自分の情報を利用させて対価を得るといった運用手段もない.本論文では,これらの課題を解決するために,より重要性を増してきた個人に関わる情報を日々生成する個人が,自身の情報を自分自身で利用し,そして,その情報を利用したい第三者に適切な対価と引き換えに利用させることを実現するためのフレームワークを提案する.そして,個人に関わる情報の中でも,運用になじみやすい購買情報に着目し,これらの課題に対する解決案を提示し,その実現性を検証する.
著者
麻生 英樹 高崎 晴夫 小野 智弘 土生 由希子 竹中 毅 本村 陽一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.846-854, 2012-04-01

推薦などの個人化サービスでは,ユーザの購買履歴やWeb閲覧履歴等のライフログ情報を利用してユーザの嗜好等を推定し,個々のユーザに適応したサービスを実現している.システムが自分の購買履歴等の情報を収集・利用することについて,漠然とした懸念を感じているユーザも多く,米国を中心とした調査では,インターネット上のプライバシーに関する懸念がサービスの利用意向に負の影響を与えることが示されている.我々は,ライフログ等のパーソナルな情報を利用する個人化情報サービスの利用意向とパーソナル情報の二次利用の受容性に関する大規模なインターネット調査を実施した.調査においては,様々な属性をもつ模擬サービスを60種類構築し,4,000名を超える被験者に対してサービスを体験してもらった後にアンケートを行った.本論文では,そこで得られたデータに構造方程式モデリングを適用して,推薦サービスの利用意向に影響を与える因子の分析を行った結果について報告する.
著者
小林 哲郎 一藤 裕 曽根原 登
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.834-845, 2012-04-01

提供されたライフログの管理や匿名化に関する情報セキュリティ的研究が進む一方,ライフログ提供者の心理的抵抗や提供を促進するインセンティブや制度に関する研究は不足している.そこで本研究は,ライフログ提供を促進する有効な制度設計のための基礎的な知見を提供することを目的に,ライフログ調査研究への参加依頼を実験刺激として,収集するライフログの種類,金銭的謝礼の金額,対価として提供されるライフログ活用サービスを要因操作した無作為配置被験者実験を行った.その結果,コミュニケーション履歴を提供することへの心理的抵抗が最も強く,GPS位置情報を提供することへの心理的抵抗は比較的弱いことが明らかになった.また,金銭的謝礼はライフログ提供を促進するがその効果は非線形であることが示唆された.一方で,レコメンデーションサービスやライフログ可視化サービスはライフログの提供を促進するインセンティブとしての効果が見られなかった.これらの知見を総合することで,できるだけ潜在的提供者の心理的抵抗を緩和しながらライフログの提供を促進する方法について考察を行った.
著者
伊藤 則之 安永 守利
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.12, pp.2004-2030, 2011-12-01

プロセッサの設計では,高い動作周波数を実現するために様々な設計手法が研究され,そして適用されている.このような高性能実現のためには,アーキテクチャ設計や論理設計だけでなく,半導体上で実現する回路設計や物理設計も重要となる.プロセッサの回路設計や物理設計では,高い動作周波数をできるだけ短い期間で実現するために,マニュアル設計と自動設計が選択的に適用される.この両者を組み合わせて適用するために,すべてが自動設計であるASIC設計とは異なり,設計手法に多様性が生まれる.本論文では,実際のプロセッサ設計に適用された設計手法をサーベイし,高性能化を実現するための回路設計及び物理設計の設計フローとCADシステムをまとめる.また,最後に,今後のプロセッサ設計における設計手法の展望について述べる.
著者
秋間 雄太 川久保 秀敏 柳井 啓司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1248-1259, 2011-08-01

近年,Folksonomyの出現により,データベースにタグなどによって意味的な価値を付与することが進められてきたが,階層構造のような概念間の関係を組み込んでいるデータベースは少ない.そこで,本研究では,意味的な階層構造を考慮した画像データベースの作成方法を提案する.階層構造の構築方法は,大量の画像データの各概念のノイズを除去した後に,各概念を視覚特徴を用いたベクトル表現,タグを用いたベクトル表現,視覚特徴とタグを統合したベクトル表現の3種類のベクトル表現で,JSダイバージェンスによる距離尺度を用いて概念間の距離関係を推定し,更に概念エントロピーを作成することで,概念の広がりから上下関係を推測する.最終的には,作成した階層構造を,視覚的な特徴のみで作成した場合とタグ特徴のみで作成した場合,そしてタグと視覚特徴を結合した場合での表現結果を考察した.結果として,視覚特徴での階層構造,タグ情報による階層構造のそれぞれにおいて特有の階層構造を確認することができ,また,統合した階層構造は両方の階層構造を加味し,それぞれの特徴を内包した新しい階層構造を作り出すことに成功した.構築された階層構造には人手での発見が難しい概念間の関係が含まれ,画像検索へ役立つ可能性を示す.
著者
坂地 泰紀 増山 繁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.8, pp.1496-1506, 2011-08-01

本論文では,新聞記事から因果関係を含む文を自動的に抽出する手法を提案する.現在,ウェブページや新聞記事を含む大規模な機械可読文書が入手可能であり,その中には実アプリケーションに役立つ様々な情報が存在し,テキストマイニング技術を用いることで獲得することが可能である.そのような情報の一つに因果関係があり,本研究では因果関係の存在を示す手掛りとなる表現に基づいた因果関係を含む文の抽出を行った.その結果,人手により作られた辞書やパターンを用いず,自動的に因果関係を含む文を抽出することができた.本手法は,素性として構文的な素性と,意味的な素性を用いた.また,追加学習データを自動的に獲得することができる.その結果,性能が向上し,F値0.797を達成した.