著者
Yasomanee Jagodige P. Demchenko Alexei V.
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in glycoscience and glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.25, no.141, pp.13-42, 2013-05-31
参考文献数
106
被引用文献数
30

この論文はこれまでの10年間に我々のグループが報告した合成法、戦略とその応用の概観である。主な論点は合成化学的グリコシル化のための新手法の開発である。新たな脱離基・保護基、金属配位による合成、グリコシル化におけるピコリニル保護によるアプローチを含む項目について述べる。効率的なオリゴ糖構築に向けた新戦略の創案についても述べる。新しく導入された方法、例えば、一時的な不活性化の概念、逆アームド–ディスアームド戦略、チオイミデート基のみによるオルトゴナル法とアクティブ–ラテント法、O-2/O-5の協調的効果について最近の成果から焦点を当てて紹介する。さらに、新しい自動化テクノロジー、すなわち、表面支持繰り返し糖鎖合成とHPLC支援糖鎖合成についても紹介する。
著者
Y. C. Lee
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.22, no.125, pp.95-106, 2010 (Released:2010-08-13)
参考文献数
41
被引用文献数
10 12

宿主と病原体の相互作用は、多くの場合糖鎖と糖鎖結合タンパク質(GBP)の相互作用を介する。宿主細胞上の糖鎖が病原体のGBPに結合されることもあるし、病原体上の糖鎖が宿主細胞上のGBPに結合される可能性もある。病原体の中には、宿主細胞の防御機構を巧みに利用して、自分たちの生き残りを進めるものもいる。
著者
Milandip Karak Animeshchandra Haldar Kohei Torikai
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.33, no.195, pp.E115-E123, 2021-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
66
被引用文献数
1

Glycosylation procedure has long been categorized to one of the most delicate synthetic techniques in the field of organic chemistry, since it requires extremely dry and mild conditions, to prevent the decomposition of substrates, intermediates, and products as well as to activate only appropriate donor species. Although chemists have made great efforts to overcome the difficulty by brushing up their skills to carry out moisture-sensitive reactions and by developing numbers of acid-promoted glycosylation chemistry, there are still troublesome cases that cannot be addressed by human hands. To circumvent this dead-end situation, chemists turned their attention from training their own skills to the development of machinery which can conduct operations that human cannot. In this review, we introduced tools, currently applied and/or developed to facilitate chemical glycosylation reactions. We focused on brand-new results using electrochemical and microfluidic machinery, as well as a simple but useful apparatus, which have never been reviewed yet.
著者
Ihara Yoshito Inai Yoko Ikezaki Midori
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in glycoscience and glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.23, no.129, pp.1-13, 2011-05-31
参考文献数
71
被引用文献数
8

タンパク質<I>C</I>-マンノシル (<I>C</I>-Man) 化はα-マンノースがC-C結合を介してトリプトファン (Trp/W) 残基のC2原子に直接結合している特徴的な糖付加修飾である。<I>C</I>-Man化はある種のタンパク質のTrp-x-x-Trp (W-x-x-W) というコンセンサス配列のはじめのTrp残基で主に観察される。この修飾反応は酵素によって触媒されるが、これを担う<I>C</I>-マンノース転移酵素は同定されていない。現在までに知られている<I>C</I>-Man化タンパク質のほとんどがトロンボスポンジンタイプ1リピート(TSR)スーパーファミリーとサイトカインレセプターファミリーの2つのグループに分けられ、これらのタンパク質における<I>C</I>-Man化が機能的役割をもつことを示唆している。W-x-x-Wモチーフへの部位特異的突然変異導入により、ムチンやADAMTS-like1などの基質タンパク質のフォールディングと移送において<I>C</I>-Man化が重要な役割を果たすことが明らかにされている。さらにTSR由来の化学合成された<I>C</I>-Man化ペプチドを用いて、<I>C</I>-Man化ペプチドに結合するタンパク質としてHsc70が同定された。この相互作用はマクロファージ様細胞のHsc70によるTNF-α合成シグナルを増強した。これらの最近の報告は、特定のタンパク質上の<I>C</I>-Man化が細胞において大きな役割を持つことを示唆している。
著者
Keiko Tadano-Aritomi Ineo Ishizuka
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.15, no.81, pp.15-27, 2003-01-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
36
被引用文献数
5 5

硫酸化スフィンゴ糖脂質の代表であるガラクトシルスルファチド(SM4s)は神経系組織、特にミエリンの主要糖脂質であるが、次いで腎にも高濃度に発現されている。また、腎からはラクトシルスルファチド(SM3)を初めとする多種類のモノ硫酸化糖脂質やビス硫酸化糖脂質、さらに硫酸化ガングリオシドが見出され、尿細管におけるイオンバリアーとしての機能が示唆されている。一方、哺乳類の精巣には硫酸化グリセロ糖脂質であるセミノリピド(SM4g)が高濃度に存在することから、精子形成や受精における役割が議論されてきた。本稿ではこれら硫酸化糖脂質の分析法の進歩について述べるとともに、SM4sおよびSM4gの生合成に直接関与する酵素遺伝子のノックアウトマウスの解析結果を中心に解説し、硫酸化糖脂質の腎および精巣における機能について考察する。
著者
板野 直樹 木全 弘治
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.10, no.51, pp.23-38, 1998-01-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
69
被引用文献数
10 11

今日、ヒアルロン酸は脊椎動物の様々な組織やある種の連鎖球菌の莢膜に広く存在することが知られており、また変形性関節症の関節腔内に注入される補充物として医学応用されるなど、その重要性は年々増加している。ヒアルロン酸は特に、胚時期の細胞増殖や運動性の活発化している組織で、細胞外マトリックスの主要な構成成分として存在し、ヒアルロン酸結合分子や細胞表面受容体との相互作用により、細胞の接着、移動、分化をダイナミックに調節する。さらにこの遍在する高分子は形態形成や再生、創傷治癒、癌の浸潤・転移といった多彩な生命現象に関与することが示されている。他方、ヒアルロン酸の生合成機構解明に向けた研究、特にヒアルロン酸合成酵素を単離し同定する試みが、連鎖球菌や動物細胞を材料に過去十年以上にわたって精力的に行われてきた。ヒアルロン酸合成酵素を同定し、その遺伝子をクローニングすることは、ヒアルロン酸研究に新たな糸口を与えることになるだろう。近年我々をはじめ数グループが、ヒアルロン酸合成酵素の遺伝子を原核・真核細胞からクローニングし、ヒアルロン酸の生合成機構及び機能解析が急展開している。本レビューではヒアルロン酸合成酵素に関する最近の話題を紹介し、ヒアルロン酸研究が直面している問題点を指摘する。また最後に、ヒアルロン酸合成酵素遺伝子のヒアルロン酸生理機能研究への適用や臨床応用にも言及する。
著者
Hall Heike Schachner Melitta 山形 貞子 田中 啓友
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.10, no.55, pp.361-382, 1998
被引用文献数
2

細胞外マトリックスは細胞接着 (総説: Gumbiner、1996)、神経突起伸長の際の growth cone guidance (総説: Luckenbill-Edds、1997)、細胞移動 (総説: Lauffenberger と Horwitz、1996)、細胞極性 (総説: Drubin と Nelson、1996)、細胞死 (総説: Adams と Watt、1993) など個体発生と分化の基礎となる重要な事象全てに対し、足場として働いている (総説: Adams と Watt、1993)。細胞外マトリックスの分子構築はラミニン、IV型コラーゲン、ナイドジェン/エンタクチン、ヘパラン-、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの間の特異的相互作用によって作り上げられている (Sanes、1989; Timpl と Brown、1994; Yurchenco と O'Rear、1994; Timpl と Brown、1996; Timpl、1996)。この超-分子集合体の構築に関与する重要な分子が現在増えつつあるラミニンファミリーである (Burgeson ら、1994; Engvall と Wewer、1996)。この総説では細胞接着 (インテグリンと免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着糖タンパク質) に関与する自己-相互作用および細胞外マトリックスの他のメンバーである硫酸化糖鎖 (ナイドジェン/エンタクチン、フィブリン、パールカン、アグリン、α-ジストログリカン/クラニン) や糖タンパク質など、異なる型のリガンドとの相互作用を可能にするラミニンの独特な分子構造に焦点を絞ろうと思う。特にラミニンとそのリガンド間相互作用への糖鎖の関与について考察しようと思う。
著者
Edouard J. Battegay Regula Thommen Rok Humar 浅田 眞弘 岡 修一
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.8, no.42, pp.231-251, 1996-07-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
197
被引用文献数
14 16

血管新生、すなわち既に存在する微小血管から新たな血管を形成する過程は胚発生や創傷治癒、炎症、心臓や末梢血管の虚血性疾患、心筋梗塞、糖尿病性網膜症、そして癌などにおいて重要な機能を果たしている。血小板由来増殖因子 (PDGF) はこれらの過程のほとんどに関与しており、血管網の発達した結合組織の形成を誘導する。PDGF-A鎖、-B鎖から成るPDGFのホモあるいはヘテロの二量体と、PDGFレセプターのサブユニット (α型、B型) は、組織の損傷や修復の際には広く発現される。低酸素状態などの血管新生を誘導するような刺激はPDGF-B鎖の発現を促す。PDGFは血管新生を直接制御するような炎症性のあるいは結合組織の細胞を引き寄せ、これによって間接的に血管新生を制御する。また、血管を形成しつつある内皮細胞や微小血管由来の内皮細胞は、β型PDGFレセプターを発現するという特徴ある性質を示し、PDGFはこのような細胞には直接作用する。PDGFを外から投与したり局所的に過剰発現したりすると、血管網の発達した結合組織が形成される。胎盤形成、胚形成、創傷治癒、動脈硬化、癌といった血管新生が関与する過程やその疾患の際には、PDGFとそのレセプターが発現されることからも、血管が形成される際にはPDGFが実際に機能していると考えられる。このように、PDGF-BBは血管網の発達した結合組織間質の形成を促す。PDGF-BBに応答した新たな血管の形成は、β型レセプターを発現している内皮細胞に対する直接作用によるものもある。

1 0 0 0 OA 糖鎖とうつ病

著者
山形 弘隆 中川 伸
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.32, no.189, pp.J133-J136, 2020-09-25 (Released:2020-09-25)
参考文献数
57

うつ病の病態は未だ不明の点が多く、うつ病の診断基準には客観的な検査所見が含まれていないのが現状である。うつ病の血清・血漿タンパク質のバイオマーカーについては、神経栄養因子やサイトカインなど様々な因子が報告されているが、定量的な解析に留まっており、糖鎖を含めた質的解析に踏み込んだバイオマーカー探索研究はほとんどない。また、うつ病の基礎研究においても同様であり、病態に関与すると考えられるタンパク質はいくつか同定されてきているものの、糖鎖について解析された研究は数少ない。本稿では最近の知見を紹介しながら、うつ病に対する糖鎖研究の可能性について論じたい。
著者
平島 光臣 仁木 敏朗 正木 勉
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.30, no.172, pp.SJ55-SJ64, 2018-01-25 (Released:2018-01-25)
参考文献数
62

Galectin-9(Gal9)/Ecalectinは細胞由来の好酸球遊走因子として同定された。Gal-9はアレルギーモデル動物やアレルギー患者の好酸球集積や活性化に置いて役割を示している。なぜならGal-9はin vitroおよびin vivoで遊走活性を示すとともに色々な局面で活性化の機能も示すと考えられる。最近の研究では好酸球に限らず種々の細胞に対して分化・成熟、凝集、接着、細胞死などでの機能を果たしていることが示されている。現在、我々を含む多くの研究者によって生理的および病的な状態におけるGal-9機能について研究が進められている。本稿では種々の疾病モデル(過剰免疫や免疫低下状態など)でGal-9が治療的効果を示す結果を紹介するが、このことはGal-9が恒常性を保つことで優しい生理活性物質としての役割を演じていると予想される。
著者
小嶋 由香 Várnai Anikó Eijsink Vincent G. H. 吉田 誠
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.32, no.188, pp.J111-J119, 2020-07-25 (Released:2020-07-25)
参考文献数
95

木材腐朽菌は、森林生態系における木質バイオマスの主要な分解者であり、セルラーゼや溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO)などの多様な酵素を細胞外に分泌することで木材細胞壁中のセルロースを分解する。興味深いことに、褐色腐朽菌と呼ばれる木材腐朽菌の一群は、数種の例外を除いて、結晶性セルロースを分解するために重要なセルラーゼであるセロビオヒドロラーゼ(CBH)を欠損しているが、LPMOをコードする遺伝子は広く保存されている。このことは、褐色腐朽システムにおけるLPMOの重要性を示唆していると考えられる。本総説では、木材腐朽菌による木材分解プロセスについて概説した後、LPMOの発見に至るまでの歴史的経緯、およびLPMOの特性に関する最新の知見について述べる。さらに、褐色腐朽菌由来のLPMOに関する我々の研究を紹介し、褐色腐朽システムにおけるLPMOの生理学的役割について論じる。最後に、褐色腐朽システムの進化の過程におけるLPMOの重要性についても議論する。
著者
Emma J McKenzie Yun-Peng Su Luisa Martinez-Pomares 隈本 洋介
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.14, no.79, pp.273-283, 2002-09-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
70
被引用文献数
10 10

マンノースレセプター (MR) は二種類のレクチン活性をもつ特徴的なバイファンクショナル分子である。N末端のシステインリッチ (CR) ドメインは内因性の酸性糖質を主に認識し、C型レクチンドメイン (CRD) は微生物などの表面糖鎖や、MRを介して体内から消失する分泌型の内因性糖タンパク質に結合する。本総説では、クリアランス (組織マクロファージ (Mφ) や洞様毛細血管の内皮に発現する場合)、抗原輸送 (樹状細胞(DC)上に発現する場合や可溶化型MRがリンパ組織へのターゲティングを介在する場合)、および細胞接着 (リンパ管内皮に発現する場合)におけるMRの役割を中心に、MRに関する生物学の最近の知見について取り上げる。
著者
Amir Hossein Mohseni Sedigheh Taghinezhad-Saroukalaei Josef Voglmeir
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.32, no.187, pp.E99-E104, 2020-05-25 (Released:2020-05-25)
参考文献数
69
被引用文献数
1

The recombinant production of glycoenzymes plays a significant role in industrial biocatalysis. The selection of an expression system which allows the high-level production of recombinant glycoenzymes using extracellular and intracellular expression, and the need for correct protein folding make Gram-positive bacteria interesting alternatives to the commonly used Gram-negative expression host Escherichia coli. In this overview we summarize recent approaches using Gram-positive bacteria as cell factories for the recombinant production of glycoenzymes, with a special focus on the optimization of glycoprotein production in lactic acid bacteria.
著者
Taiki Kuribara
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.32, no.185, pp.E31-E34, 2020-01-25 (Released:2020-01-25)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

Glycoproteins are synthesized in the endoplasmic reticulum (ER). Glycan structures on the glycoprotein function as folding, secretion, and degradation signals. Especially in the sorting step of glycoproteins, mannose trimmings of Man9GlcNAc2 (M9) mediated by α1,2-mannosidases in the ER are involved in secretion and degradation. Several glycan isomers produced through the sorting process are assumed to be secretion and degradation signals. However, it is unclear whether these mannose trimmings occurred regioselectively or randomly. To answer this question, we found selective inhibitors of the production of secretion and degradation signals, respectively. With these selective inhibitors, mannose trimming pathway analysis was carried out. The pathway analysis results indicate that two independent mannose trimming pathways exist in the ER.
著者
野上 敏材
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.31, no.181, pp.SJ74-SJ75, 2019-07-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
12

もう6年以上前になるが、鳥取大学への異動直前に「有機電気化学的手法に基づくグリコシル化反応の制御」という、「だから何なんだ?」というような業績名で奨励賞を頂いた。その後は賞の名を汚さぬよう、大学院生を中心とする共同研究者と取り組んだ結果、電気化学的手法を用いたオリゴ糖液相合成の自動化へと展開することが出来た。まだまだ合成出来るオリゴ糖の収率もバラエティも満足出来るものではないが、共同研究企業の力添えもあって、装置の改良や合成サンプルの提供など着実な進歩を遂げているので、その歩みをご紹介したい。
著者
Azuma Jun-ichi Sakamoto Masahiro
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in glycoscience and glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.15, no.81, pp.1-14, 2003-01-02
参考文献数
38
被引用文献数
1 56

直径が3nm以下のセルロースミクロフィブリルを含むハイドロコロイドがヤドリギ、<i>Viscum album</i> L.、の果実およびバジルの種子の外珠皮に存在している。ヤドリギの場合では、セルロースミクロフィブリルは viscin と呼ばれる組織中に存在するロープ状の細胞中に細胞の長軸に対して直角の方向にコイル状にパックされている。一方、バジルの場合では、種子の外珠皮に存在する筒形の細胞内にコイル状にパックされている。これらの細胞が含水するに伴ってセルロースミクロフィブリルはほどけて周囲に広がっていく。ハイドロコロイドは一種のセルロース-ヘミセルロース性の多糖のコンポジットである。両ハイドロコロイドには(1,4)-結合したキシランとグルコマンナンの他に高度に分岐したアラビノガラクタンが含まれていることがメチル化分析の結果わかった。ハイドロコロイドの部分酸加水分解によりグルコマンナンタイプのヘミセルロースがセルロースと密接な関係にあり、酸性の多糖が水不溶性のセルロースをコロイド状態に保つ役割をしていると考えられる。
著者
Masato Noguchi
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.31, no.181, pp.SE85-SE86, 2019-07-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
23

Formamidinium-type dehydrating reagents such as 2-chloro-1,3-dimthylimidazolinium chloride are useful as selective activators toward hemiacetal hydroxy groups at the sugar-reducing end in an aqueous media. This synthetic method enables us to obtain various sugar-containing compounds directly from the corresponding free saccharides using corresponding nucleophiles. Azide and aryl thiol act as suitable nucleophiles for this method and the resulting compounds are used as intermediates for glycoconjugates. This study aims to describe the progress of direct modification of the sugar-reducing end using a formamidinium-type electrophile.
著者
Ichiro Matsuo
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.31, no.181, pp.SE38-SE39, 2019-07-25 (Released:2019-07-25)
参考文献数
13

N-Glycosylation of secretory and membrane-bound proteins is an essential and highly conserved protein modification of eukaryotes. In the endoplasmic reticulum (ER), a combination of various enzymes, chaperones, lectins and cargo receptors constitutes the “glycoprotein quality control” (GQC) system, which elaborately regulates folding, transport and degradation of glycoproteins. Thus, function of asparagine linked sugar chains in the GQC process has been attracting attention. Understanding of these phenomena has progressed as a result of interaction analyses and substrate specificity studies of glycan related enzymes using synthetic sugar chains. In this review, our approach to the systematic synthesis of the ER type of asparagine linked sugar chains (N-glycans) and recent progress of this field is described.
著者
Nobuhiro Yuki
出版者
FCCA(Forum: Carbohydrates Coming of Age)
雑誌
Trends in Glycoscience and Glycotechnology (ISSN:09157352)
巻号頁・発行日
vol.11, no.62, pp.345-353, 1999-11-02 (Released:2010-01-05)
参考文献数
53
被引用文献数
3 4

ウシ脳ガングリオシド注射後にギラン・バレー症候群患者が発生した。一方、カンピロバクター・ジェジュニ腸炎後の発症するギラン・バレー症候群患者では、GM1ガングリオシドに結合するIgGクラスの自己抗体がしばしば検出される。ギラン・バレー症候群の亜型とみなされているフィッシャー症候群では、GQ1bガングリオシドに反応するIgGクラスの自己抗体が上昇している。われわれは、ギラン・バレー症候群患者から分離されたカンピロバクターのリポ多糖とGM1との糖鎖相同性の存在を明らかにした。さらに、フィッシャー症候群患者から分離されたリポ多糖とGQ1bとの糖鎖相同性も見出した。病原体とガングリオシドの糖鎖相同性が、抗ガングリオシド抗体産生とそれに引き続いて起こるギラン・バレー症候群、フィッシャー症候群発症に関与しているにちがいない。