著者
佐藤 翔 冨本 壽子 逸村 裕
出版者
「図書館情報メディア研究」編集委員会
雑誌
図書館情報メディア研究 (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.53-65, 2009-10

大学・研究機関において機関リポジトリの設置が普及するにつれ、リポジトリで公開したコンテンツの利用状況、中でもどのような特徴を持つコンテンツがよく使われるのかに注目が集まっている。本研究では論文の特徴の一つとして被引用数に着目し、機関リポジトリに収録された文献における被引用数とダウンロード数の関係を分析、被引用数からよくダウンロードされる論文を推測することが出来るかどうかを検討する。分析対象は北海道大学(HUSCAP)、京都大学(KURENAI)、筑波大学(Tulips-R)の3つの機関リポジトリに収録された雑誌掲載論文のうち、Web of Scienceにも収録されている論文である。各論文の被引用数と2008年中のダウンロード数をそれぞれ集計し、相関関係の有無を分析した。また、出版年や分野ごとの引用慣行による影響を排除するため、出版年別および物理学分野の論文に限定した場合についても分析を行った。分析の結果、被引用数とダウンロード数の間には相関はなく、被引用数の多寡からは機関リポジトリ収録後によくダウンロードされる論文を推測出来ないことがわかった。
著者
新藤 透 Shindo Toru
出版者
「図書館情報メディア研究」編集委員会
雑誌
図書館情報メディア研究 (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.19-28, 2005-09-30

『新羅之記録』は正保3 年(1646)に成立した,松前藩の歴史書である。同書の冒頭部には近江国園城寺内にある新羅明神の縁起に関する記述がある。『新羅之記録』の著者,松前景広は園城寺を訪れた際,寺僧から新羅明神の縁起を聞いたとされている。従来,『新羅之記録』と新羅明神に関する史料との関係を検討した研究は見あたらない。 そこで,拙論では『新羅之記録』と新羅明神に関する史料とを比較し,両者にどのような関係があるのか検討をした。その結果,『新羅之記録』は新羅明神の史料を参考にして書かれたことが明らかになった。 'SHINRA- NO- KIROKU ' is a historical record of the MATSUMAE HAN which was formed in 1646. This book contains a description about the origin of SHINRAMYOUJIN which is in the Onjyoji in Oumi-no-kini in the beginning part. It is supposed that the author, MATSUMAE Kagehiro of 'SHINRANO- KIROKU' has heard the story of the origin of SHINRAMYOUJIN from the temple monk when he visited Onjyoji. In this paper, it was reviewed the relation between the description in 'SHINRA-NOKIROKU ' and the historical records about SHINRAMYOJIN. As a result, it is found that 'SHINRA- NO-KIROKU' consulted the historical records of SHINRAMYOUJIN.
著者
村上 孝弘
出版者
「図書館情報メディア研究」編集委員会
雑誌
図書館情報メディア研究 = Library, information and media studies (ISSN:13487884)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-12, 2017-09-30

本稿では、大学図書館実態調査の「館長の地位」に関する調査項目に着目し、その項目が設置された歴史的背景について『国立大学図書館長会議議事要録』などの一次資料から明らかにした。「館長」の地位は、大学図書館基準をはじめ大学図書館関係法規において早くから重要なものと認識されていたが、各大学の実態は法規とは大きくかけ離れていた。そのため、大学図書館近代化の時期(昭和30年代中期から40年代)に大学図書館界は国立大学図書館長会議を中心に、その実質化に向けて長く議論をおこなってきた。その後、昭和50年代以降に大学図書館界の議論の中心は「機械化-情報化」に置かれるようになり、「館長の地位」などの管理運営的要素は中心的要素から次第に外れていくこととなる。しかし、国立大学法人化等を契機として、現代では大学における管理運営の課題が再認識されている。「館長が自動的に大学の評議員となる」ことをとおして図書館の学内における総体的地位の向上が目指されていた当時の議論を振り返ることは、現代の大学ガバナンスを検討するに際しても、重要な歴史的視点を有しているといえよう。