著者
今田 恒夫 亀井 啓太 鈴木 和子
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.129-135, 2015-12-20 (Released:2015-12-20)

血清尿酸値の調節には,遺伝素因に加えて,生活食事習慣,合併症などの背景因子が関与している.本検討では,2004年に山形県高畠町の地域健康診断を受診した1599名(男性45.1%,平均年齢61.3歳)を対象として,血清尿酸値と尿酸代謝関連遺伝子の一塩基多型SLC22A12(rs505802),ABCG2 (rs2231142)の関連に,背景因子(年齢,性別,高血圧,糖尿病,肥満,飲酒,喫煙,腎機能,脂質異常)が与える影響を横断的に検討した.交絡因子で補正した重回帰分析では,SLC22A12とABCG2各遺伝子多型と血清尿酸値の関連は,腎機能正常群(推定GFR 60mL/分/1.73m2以上)では有意であったが,腎機能低下群では有意ではなかった.性別では,男性において各遺伝子多型と血清尿酸値の関連がより強かった.また,ABCG2遺伝子多型は喫煙と有意な交互作用を認め,喫煙群で遺伝子多型と血清尿酸の関連が強かった.本検討結果より,日本人地域住民において,尿酸代謝関連遺伝子SLC22A12とABCG2の一塩基多型は血清尿酸値の独立した関連因子であり,その関連性には,腎機能,性別,喫煙などの背景因子が影響することが示唆された.
著者
清水 徹 今西 努 加藤 大
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.143-149, 2007 (Released:2012-11-27)
参考文献数
9

尿路結石症は,痛風の合併症のなかでも尿酸が直接あるいは間接に関与する重要な合併症であるが,その実態には未だ不明な点が多く残されており,痛風患者における腎結石の有病率でさえも正確に杷握されていない.統計学上の定義に従うと,有病率(prevalence)は「ある一時点において疾病を有している人の割合」であり,痛風患者における腎結石の有病率は,結石の有無を横断的に検査することにより求めることができる.従来,腎結石の状況をリアルタイムに検査する適切な手段はほとんど見当たらなかったが,マルチスライスヘリカルCTの普及に伴い,他の方法では困難とされていた小結石やX線透過性の尿酸結石の診断が可能になった.最近4年間に来院した原発性痛風患者312例の内,初診時に腎臓をマルチスライスヘリカルCTで検査した253例について調べたところ,23.7%に相当する60例に腎結石が認められた.一方,問診による尿路結石歴の調査では,CTを施行した253例の結石歴陽性率は312例における陽性率よりも1.2倍高かった.これは臨床上のCT撮影の必要性というバイアスが関与しているためと考えられることから,23.7%を1.2で補正して得られた「19.8%」が,痛風患者におけるほぼ適正な腎結石有病率と推定された.