著者
上野 良樹 奥 和代
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.175-182, 2006 (Released:2006-05-30)
参考文献数
26

HITのII型は免疫学的な機序によって起きることが明らかにされているが, I型のHITなどに見られるヘパリンによる血小板への作用は必ずしも明らかにはなっていない. われわれはこれまで全血を用いたin vitroの系においてヘパリンによる血小板凝集が起きる場合に物理的刺激による血小板の活性化と, RGD配列をもつ粘着蛋白のGPIIb/IIIa complexへの結合とそのクラスタリングが必要であることを報告してきた. 今回血小板の凝集を誘起するヘパリンの条件を検討するために未分画ヘパリンによる血小板凝集作用をかきまぜ刺激あるいは寒冷刺激下において低分子ヘパリンおよびヘパリン類似物質(ヒルドイド, ダナパロイド)と比較した. 低分子ヘパリンはかきまぜ刺激下では有意の血小板凝集効果を示したが, 寒冷刺激下ではその作用はほとんど認められなかった. ダナパロイドは寒冷刺激下で軽度ではあるが有意の血小板凝集効果を示した. しかし, ヒルドイドはいずれの刺激下でも未分画ヘパリンより有意に強力な血小板凝集作用を示した. この作用は未分画ヘパリンと同様にRGDSにより阻害された. これらの結果より, ヘパリンによる血小板凝集作用にはその分子量や硫酸化の状態が関与しているものの非特異的な作用であると考えられた.
著者
小泉 淳
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.370-379, 2013-08-01 (Released:2013-09-10)
参考文献数
13

a.急性胸痛・呼吸困難・失神などから急性肺血栓塞栓症が疑われてショック症状を呈する広汎型患者に対しては,ベッドサイドで低侵襲に施行可能な心臓超音波検査や胸部単純X線写真で拾い上げ,PCPSなどで管理しつつ血管内治療を兼ねた肺動脈造影で確定診断することになる.b.非広汎型では下肢静脈を含めたCTが第一に推奨される.c.ヨード系造影剤の使えないアレルギー,腎機能低下症例や,妊婦,臨床的に強く疑われるのにCTで陰性であった場合(末梢性のshower embolismなど),血栓溶解療法の際の治療効果判定例などに核医学検査を施行する.d.MRIは患者管理の困難性,空間分解能の低さ,撮像時間の長さにやや難があるが,CTを施行できない場合の代替手段として,また血栓のagingやperfusionなど,CT,核医学検査同等以上の情報を提供しうる.
著者
篠澤 圭子 野上 恵嗣
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.482-493, 2014 (Released:2014-09-03)
参考文献数
45
被引用文献数
1

要約:APC レジスタンス(APCR)の原因として発見されたFactor V R506Q(FV Leiden)変異は,欧米白人における主要な静脈血栓症のリスクファクターであるが,これまでアジア人からは検出されていない.今回私達は,血漿FV 活性が低下しているにもかかわらず,重篤な深部静脈血栓症をおこした日本人少年のFV 遺伝子からW1920R(FV Nara)変異を同定し,日本人において初めてAPCR に関連する血栓性素因を報告した.FV-W1920R は,APC から受ける不活性化と,APC によるFVIIIa の不活性化におけるコファクターとしての機能の,両者の機能障害によってAPCR を示すことを解明した.とくに,APC によるFVIIIa の不活性化に対するFV-W1920R のコファクター機能は,FVIII のR336 の開裂を完全に阻止することにより,FV-R506Qよりも強い機能不全であることを明らかにした.
著者
小林 達之助 海渡 健 大坪 寛子 薄井 紀子 相羽 恵介
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 = The Journal of Japanese Society on Thrombosis and Hemostasis (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.443-449, 2009-08-01
参考文献数
20

39歳,女性.2007年5月帝王切開直後からAPTT延長を伴う出血傾向を認め当院入院.APTT71.6秒,FVIII activity 3%,FVIII inhibitor 6BU/mlであり後天性血友病Aと診断.頻回かつ大量の遺伝子組換え活性化第VII因子(rFVIIa)製剤を使用し出血症状は軽減.FVIII inhibitorには副腎皮質合成ステロイド薬による免疫抑制療法を開始したが軽快せず,cyclosporine A(CyA)を併用したところ,inhibitorは約6ヶ月後に消失した.分娩後発症の後天性血友病ではFVIII inhibitorは自然経過にて消失するとの報告もあるが,本例では早期からのステロイド薬とCyAの併用が著効を呈した.分娩後発症の後天性血友病Aはしばしば重篤な出血症状を呈するため,止血療法としてのバイパス療法の施行基準及びCyAを含めた適切な免疫抑制療法の解析が必要である.

1 0 0 0 OA ADAMTS13物語

著者
副島 見事 小亀 浩市 松本 雅則
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.377-397, 2009 (Released:2009-08-20)
参考文献数
86
被引用文献数
1 1
著者
原田 直明 岡嶋 研二
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.616-618, 2010 (Released:2010-12-20)
参考文献数
7

この論文は撤回されました。
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.629-646, 2014 (Released:2014-10-25)
参考文献数
104
被引用文献数
5 8
著者
榛沢 和彦
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.39-44, 2008 (Released:2008-03-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2

Point1)深部静脈血栓症(DVT),特にヒラメ筋静脈血栓は日本人でも多い.2)DVT検査法のゴールドスタンダードは下肢静エコーと造影CTである.3)大腿静脈は臥位で,下腿静脈は座位でエコー検査する.4)静脈血栓の診断は血栓陰影の有無と圧迫法で確認する.5)ヒラメ筋静脈血栓は非生理的状態で急速進展し肺塞栓症の原因になる.6)器質化したDVTは慢性反復性となり非生理的状態で肺塞栓症の原因になる.