著者
高倉 伸幸
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.603-608, 2014 (Released:2014-10-24)
参考文献数
14

要約:従来より,既存の血管に存在する血管内皮細胞は,どれも単一な細胞集団であり,既存の血管から新しい血管が形成される際にも,既存血管から単調に細胞増殖と細胞移動が生じて,新規血管分枝が形成されると考えられてきた.しかし,実際にはそうではなく,血管新生の過程では血管分岐の方向を決定するガイド役の内皮細胞や,増殖活性が高く血管分枝の長さを決める内皮細胞,そして血管を成熟させる内皮細胞の少なくとも異なる3種の内皮細胞が存在することが判明してきた.さらに,既存の血管には未分化性を維持して,かつ内皮細胞の産生能の極めて高い幹細胞様の細胞も存在することが解明されてきている.
著者
宮田 敏行 井上 徳光
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.695-707, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
75

自然免疫系を担う補体系は50種以上の可溶性および膜結合性のタンパク質が活性化や制御にかかわり,凝固系や血小板との相互作用を通して血栓症や凝固異常症を惹起・修飾する.補体の大きな役割は侵入する細菌やウイルスに対応して,幾つかの巧妙な方法でそれらを殺菌・排除することにあるが,逆に自己細胞をも攻撃することがあり,幾つかの疾患で中心的な役割を果たすことが最近の研究により明らかになってきた.ここでは,補体系と血栓症・凝固異常症との関わりを中心に解説する.
著者
伊藤 隆史
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.659-664, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
44

感染や組織損傷の兆候を察知すると,好中球は活性化する.活性化した好中球は,微生物やデブリスを貪食したり,好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps: NETs)と呼ばれる網状構造物を細胞外に放出したりして,感染防御に寄与している.その一方で,同様のメカニズムが,組織損傷を悪化させてしまう要因にもなっていて,NETs放出は適切にコントロールされる必要があると考えられる.本稿では,感染症病態におけるNETs放出の光と陰について概説し,そのなかでも特に,血栓症との関連について考察していく.
著者
安本 篤史
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.715-722, 2021 (Released:2021-12-25)
参考文献数
48

新型コロナウイルスによるパンデミックを収束させるために複数のワクチンが開発され,世界中でワクチン接種が進められる中,アデノウイルスベクターワクチン接種後に血小板減少症を伴う血栓症(thrombosis with thrombocytopenia syndrome: TTS)の症例が報告された.TTSはヘパリン起因性血小板減少症と病態が類似しており,血小板を活性化させる抗血小板第4因子抗体が原因で非典型的な部位に血栓症(脳静脈洞血栓症や内臓静脈血栓症など)を引き起こし,血小板減少と凝固異常を合併しやすいため高率に出血を伴うために初期治療が遅れると致死率が高いことで知られる.mRNAワクチンではほとんど発症報告がないことや若年者での発症が多いことから,アデノウイルスベクターワクチンを中止する国もでてきて,世界規模でTTSの病態解明が行われている.TTSの情報は日々更新されているため本稿の内容もすぐに古い情報となる.本稿を土台にして常に情報を更新しつづけていただきたい.
著者
新堂 晃大 和田 英夫 冨本 秀和
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.399-403, 2014 (Released:2014-07-01)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2
著者
玉井 克人
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.289-295, 2021 (Released:2021-06-22)
参考文献数
15

損傷組織の再生は,各組織に内在する組織幹細胞の量的・質的活性状態に依存する.例えば胎児皮膚には豊富な表皮幹細胞や間葉系幹細胞が存在するため,胎児皮膚を切開しても出生時には傷跡が残らないことが知られている.即ち豊富かつ機能的な組織幹細胞の存在は損傷組織の修復過程で組織発生プロセスを再現する,いわゆるre-generation(再生)を可能とし,結果として傷跡は肉眼的に認識できないレベルまで修復される.我々は,損傷組織内の壊死細胞から放出される核タンパクhigh mobility group box 1(HMGB1)が末梢循環を介して骨髄由来間葉系幹細胞を損傷組織内に集積させて,非瘢痕性機能的組織再生を誘導していることを見出した.現在,HMGB1の骨髄間葉系幹細胞動員活性ドメインペプチドを利用して,劣性栄養障害型表皮水疱症,急性期脳梗塞,変形性膝関節症,慢性肝疾患の患者を対象とした臨床試験が進行している.本稿では,その開発の経緯と現状をまとめるとともに,将来の再生誘導医薬の可能性を展望する.
著者
伊藤 隆史 和中 敬子 Ian Roberts
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.325-333, 2020 (Released:2020-06-19)
参考文献数
16

・重症外傷の超急性期には,血管内皮細胞から組織型プラスミノゲンアクチベータ(tPA)が放出されることで線溶が活性化され,出血が助長されやすい.・リシンに類似した構造をもつトラネキサム酸は,リシン結合部位を介したプラスミノゲンのフィブリンへの結合を阻害し,線溶を抑制する.・CRASH-2試験において,重大出血を伴う外傷患者の院内死亡は,トラネキサム酸投与によって有意に減少した.特に,受傷後3時間以内に,できる限り早いタイミングでトラネキサム酸を投与することが重要と考えられた.・外傷性脳損傷患者の脳損傷関連死を検討したCRASH-3試験においては,受傷後3時間以内のトラネキサム酸投与によって軽症~中等症の患者の脳損傷関連死が減少し,特に,早いタイミングでトラネキサム酸を投与することが予後改善に繋がると考えられた.・トラネキサム酸1 gを最初の10分間で静注し,その後,同量を8時間かけて持続静注するプロトコールが用いられている.
著者
新妻 邦泰 冨永 悌二
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.296-302, 2021 (Released:2021-06-22)
参考文献数
34

脳梗塞とは,脳を栄養する血管が閉塞もしくは狭窄することにより,その灌流領域に血流不全が生じ十分な酸素や栄養が供給されなくなり,結果として脳神経細胞が傷害されてしまう疾患である.近年の血栓溶解薬やカテーテル治療の進歩により脳梗塞の転帰は改善してきているものの,未だそれらの再開通療法の適応となる患者は10%未満であり,大半の患者には脳梗塞が完成することになる.脳は脆弱な組織であり,かつ再生能力が限定的であることから,完成した脳梗塞に対する根本的な治療は存在しなかったが,近年では幹細胞治療により脳を再生させられる可能性が見いだされ期待が集まっている.本稿では脳梗塞に対する幹細胞治療の現状を概説後,Muse細胞を用いた新規治療開発につき述べる.
著者
石倉 宏恭 丸山 隼一 入江 悠平 泉谷 義人 内藤 麻巳子 鯉江 めぐみ 星野 耕大 仲村 佳彦
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.398-408, 2020 (Released:2020-08-12)
参考文献数
31
被引用文献数
2 2

今回,重症新型コロナウィルス2019(Coronavirus disease 2019: COVID-19)患者の凝固線溶異常について,若干の知見を得たので報告する.症例は6症例で,ICU入室から8日間の経過で血小板数が10×104/mm3未満に低下したのは1例のみであった.prothrombin time-international normalized ratio(PT-INR)は経過を通じて概ね正常で,activated partial thromboplastin time(APTT)は経過中5例で正常上限を上回ったが,1例を除き大きく延長する事は無かった.一方,FDPとD-dimerは経過中,正常上限を超えて推移し,2例は第7病日以降に著明な再上昇を来した.以上より,重症COVID-19患者は感染症にも関わらず,凝固線溶異常は「線溶抑制型」でなく,あたかも「線溶亢進型」の様相を呈していた.6例中4例がJapanese Association for Acute Medicine criteria(JAAM)disseminated intravascular coagulation(DIC)診断基準でDICと診断され,遺伝子組換え型ヒト可溶性トロンモジュリン(rhsTM)が投与され,3例が投与終了時点でDICから離脱した.
著者
内藤 篤彦
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.297-301, 2015 (Released:2015-06-18)
参考文献数
22

要約:個体老化とは「加齢に伴い死亡率が増加する原因となる様々な臓器の機能低下」と定義される生命現象である.加齢に伴って免疫系が老化する結果,免疫系本来の非自己を排除する機構と炎症反応を制御する機構が低下し,高齢者で認められる易感染性や慢性炎症が引き起こされる.補体分子C1q は自然免疫系において重要な役割を果たす因子であり,免疫系の老化が引き起こす慢性炎症に伴って血中濃度が増加することが知られているが,われわれはC1q が補体経路非依存性に加齢に伴う骨格筋の再生能低下という老化現象の原因になっていることを報告している.本稿では前半に加齢に伴う免疫系の老化現象について概説し,後半では補体分子C1q による老化誘導のメカニズムについて述べる.