著者
南部 陽一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.199-201, 1975-03-05
著者
黒岩 大助
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.756-764, 1976-10-05

日本における雪氷研究の先駆者であった故中谷宇吉郎の仕事が, この国の雪氷学の発展にどのような影響をあたえてきたかについて解説した. 中谷宇吉郎は外国の著名な学者の研究をいち速く日本でまねることによって安心する学者ではなく, また, 物理学の主流から外れているようでも常に独創的な分野を開拓した学者である. 来日する外国の雪氷学者はこの国の雪氷研究者の数の多いのに一様に驚く. そして日本の雷氷学はもう中谷の名前を知らない若い世代によってすすめられようとしている. この一文は物理学を志す若い人々に雪氷の研究はもはや "探検" というロマンの時代は終り, 近代物理学の研究対象としても十分面白いものであることを理解していただけることを期待して書いた.
著者
鈴木 増雄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.880-883, 1995-11-05

学部学生時代から30数年ご指導を受けてきた久保亮五先生が去る3月31日に他界されて,もう3ヵ月が過ぎたが,今もって先生が身近に居られていつでもお逢いできるような気がしてならない.学部3年のときに受講した久保先生の熱力学・統計力学の講義は必ずしもわかり易くはなかったが,今でも思い出せるほど印象深い講義であった.それは,第一線で独創的な研究を行い,すでに世界的な業績をあげた物理学者の真摯な姿勢の窺える講義であった.
著者
只木 進一 菊池 誠 杉山 雄規 湯川 諭
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.166-171, 2000-03-05
被引用文献数
4

自動車の流れ,特に交通渋滞は,私たちが日常的に経験する現象であり,その原因の理解と対策は今日の大きな社会的問題の一つです.交通流の理解及びその制御の研究は,1950年代からこれまで交通工学の分野で続けられてきました.近年,物理モデルによる統一的な交通流現象の理解への研究が始まっています.本稿では,高速道路上の交通流に対する追従モデルとセルオートマトンモデルを中心に,物理的モデル化を通した交通流研究の動向を示したいと思います.
著者
中西 襄
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.44-45, 1993-01-05
著者
中村 卓史
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, 2004-04-05
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
藤堂 眞治
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.275-282, 2015-04-05

スーパーコンピュータやワークステーションが計算物理における「実験装置」であるとすると,シミュレーションソフトウェア(プログラム)はそれらを使いこなすための「実験技術」であると言える.将来の研究成果につながる「技術」は,個々の研究者あるいは研究グループが,門外不出のものとして日々磨きあげていくべきである.このような立場に立つと,シミュレーションに使うプログラムは,これまでの経験と知識に基づき「速く」て「信頼できる」ものを自分で一から作るのが当然であり,できあいをブラックボックスとして使うのは研究として認められないということになろう.コンピュータの計算速度は年とともに指数関数的に伸びている.シミュレーションの手法もそれ以上の速さで進化している.例えば,量子磁性,高温超伝導など,電子相関の強い量子多体系に対する代表的な手法の一つである量子モンテカルロ法は,状態更新のアルゴリズムにおいて,近年,多くの本質的な改善がなされ,バイアスのない最も精密な数値解析手法となっている.それに伴い,アルゴリズムはますます複雑化している.プログラム開発や並列化,チューニングのためのコストは増加し,研究者の「専門化・固定化」も大きな問題となっている.その一方で,実験家の間でも,日常的なツールとしてのシミュレーションの需要が高まっている.このような状況のもと,計算機実験の技術開発や整備は,もはや個人の素養に頼るだけではなく,コミュニティー全体で取り組み共有していくべき段階にきているのは明らかである.本稿では,計算物性物理,量子統計物理分野におけるそのような取り組みの一つである「ALPS」を紹介する.ALPS(Algorithms and Libraries for Physics Simulations)は,量子スピン系,電子系など強相関量子多体系の有効模型のシミュレーションのためのオープンソースソフトウェアの開発を行う国際共同プロジェクトである.ALPSでは,主に,量子統計物理分野のシミュレーションの共通基盤となるライブラリやデータ解析ツールを開発すると同時に,最新のアルゴリズムに基づく質の高いアプリケーションプログラムの提供を目指している.ALPSには,厳密対角化,古典・量子モンテカルロ法,密度行列くりこみ群,動的平均場近似など,量子多体系の有効模型に対する標準的あるいは先進的なアルゴリズムを用いたアプリケーションが用意されており,興味ある模型の特性や計算したい物理量に応じて,最適なアプリケーションを選ぶことができる.ALPSのようなコミュニティーコードを用いることで,計算物理の専門家でなくとも,様々な模型について手軽にシミュレーションを始めることができる.それだけでなく,新たなプログラムやアルゴリズムを開発する際のリファレンスコードとして,あるいは計算物理教育の題材,シミュレーション結果の共有やアーカイブ化のためのツールとしての活用など,ハイエンドのスーパーコンピュータによる大規模シミュレーションだけでなく,計算物理の裾野を広げていくためにも,このようなコミュニティーコードの整備・知識共有は,今後ますます重要となっていくに違いない.
著者
吉岡 伸也 木下 修一
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.64, no.8, pp.619-623, 2009-08-05

タマムシを始めとして,昆虫や鳥など多くの生物が輝きのある鮮やかな色を持っている.これらの色は構造色と呼ばれ,自然界のフォトニック材料とでも呼ぶべき微細な構造体にその起源がある.近年のフォトニクス研究の高まりに呼応するように,生物の構造色は再び注目を集め,微細構造が示す光学特性はもちろんのこと,波長よりもはるかに大きい構造や視覚との対応をも利用した,総合的な発色の仕組みが明らかになりつつある.
著者
高橋 忠幸 内山 泰伸 牧島 一夫
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.707-712, 2010-09-05
被引用文献数
2 1

非熱的放射を示す天体現象の研究は,宇宙線の加速機構やその加速現場を探るとともに,宇宙のエネルギー形態の一つである非熱的エネルギーの果たす役割を知る上で重要である.硬X線領域での放射スペクトル測定は,熱的放射から切り離された非熱的放射を選択的に調べることを可能にするが,これまでの衛星では高い感度が得られなかった.日本のX線衛星「すざく」は,広いエネルギー範囲でのスペクトル測定に威力を発揮し,硬X線領域においては世界最高の感度を有する.本稿では「すざく」による硬X線観測の結果を中心として,高エネルギー粒子加速(超新星残骸,ガンマ線連星)と極限状態での非熱的現象(マグネター)の研究を紹介する.
著者
萩野 浩一 有友 嘉浩
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.654-661, 2013-10-05

On August 12, 2012, the anticipated event for the element 113 (with the atomic number 113 and the mass number 278) was detected in the fusion reaction between ^<70>Zn and ^<209>Bi by the experimental group led by Dr. Kosuke Morita at RIKEN. The potential energy between two colliding nuclei consists of a short range nuclear attraction and the long range Coulomb repulsion, and the potential barrier, which is referred to as the Coulomb barrier, appears due to the strong cancellation between the two interactions. For relatively light systems, such as ^<16>O + ^<209>Bi, fusion takes place once the Coulomb barrier is overcome. In contrast, for massive systems, such as ^<70>Zn + ^<209>Bi used in the experiment by Morita, et al., the quasi-fission process, in which the two nuclei reseparate after the Coulomb barrier is overcome, becomes increasingly dominant, and the fusion cross sections are hindered accordingly. Moreover, even if the fusion is succeeded, the compound nucleus quickly decays by the (ordinary) fission. In this article, we first discuss how it is rare to synthesize a new element by heavy-ion fusion reactions and discuss a significance of the experimental result of Dr. Morita, et al. We also discuss a comparison between the so called hot fusion and cold fusion reactions, a transition of fusion dynamics from light systems to heavy systems, and the role of nuclear structure such as nuclear deformation on fusion of massive systems.
著者
田崎 晴明
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.797-804, 2008-10-05

マクロな系の平衡状態に関する普遍的な体系である熱力学と統計力学を非平衡定常系にまで拡張するという(まったく未解決の)課題について,問題意識と現状を解説する.特に,過剰熱の概念,「ゆらぎの定理」,確率分布の表現,そして,拡張クラウジウス関係式といった,非平衡定常系の物理学の鍵になりうる結果について,基本的なアイディアと意義を述べる.この解説では,非平衡物理の「業界用語」を持ちださず,古典力学と平衡統計力学の初歩的な知識だけを使って,ミクロな時間反転対称性がいかにマクロな非平衡物理と関わりうるかを描き出したい.
著者
梅村 勲
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.277-281, 1982-04-05
著者
小松 英一郎
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.583-590, 2007-08-05
被引用文献数
1

ウイルキンソンマイクロ波異方性探査衛星(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)-通称WMAP-は,ビッグバンの残光「宇宙マイクロ波背景幅射」を史上最高の精度で観測する天文衛星だ.2001年6月30日の打ち上げ,2003年2月11日の初年度の観測成果発表に続き,去る2006年3月16日,3年間のデータから得られた成果を発表した.今回の発表のハイライトは,宇宙マイクロ波背景幅射の微小な偏光の直接測定である.そこから何が得られるのか,またこれから何が期待されるのか,本稿で簡単に紹介する.