著者
小久保 安朗 大木 央 杉田 大輔 中嶋 秀明
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.405-412, 2016-04-25

はじめに 仙骨骨折は,交通外傷や高所からの転落などによる高エネルギー外傷により発生し,骨盤輪骨折の23%に伴うと報告されている12).著者らの施設において,完全不安定型骨盤輪骨折の27%に仙骨骨折を伴っていたが,仙骨横骨折は全骨盤輪骨折224例中5例(2%)とまれであった20).不安定型骨盤輪骨折は高エネルギー外傷により発生するのに対し,仙骨横骨折は転倒などの比較的小さい外力でも発生することがある.また,最近は非常に軽微な外力で発生する骨脆弱性骨盤骨折が注目されており高頻度に仙骨骨折を伴うが,高エネルギー外傷で発生する仙骨骨折とは骨折の機序が大きく異なるため,同一の骨折として論ずることはできない.一方,仙骨骨折の約半数に神経損傷を伴うとの報告4)も存在する.本稿では,高エネルギー外傷に伴う仙骨・尾骨骨折の診断と治療について論述する.
著者
打田 明 竹林 崇 花田 恵介 道免 和久
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.895-899, 2014-07-15

Abstract:皮膚筋炎のリハでは急性期は筋への負荷を避け,CK値の正常化に合わせて運動負荷を漸増することが一般的といわれている.しかし,運動療法の開始時期や運動負荷量について一致した見解は得られていない.今回,亜急性期皮膚筋炎患者に対し,筋炎の再燃・増悪に配慮した筋力増強訓練とADL訓練を実施した.筋への各種運動負荷強度の設定としては,「筋疲労に対する主観的運動強度を修正Borg scale 3~4」,「翌日に筋疲労が残らない程度」,「CK値が上昇しない範囲」,といった基準を設定し,過用症候群を防止するよう努めた.その結果,無事に筋力増強とADLの拡大を認めた.亜急性期筋炎患者に対する訓練において,従来の一般的な指標に加えて,適宜過用症候群に対するリスク管理ができる主観的運動強度を用いた訓練を行う必要性を考える.
著者
梅林 大督 原 政人 橋本 直哉
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.985-991, 2018-11-25

はじめに Augmented reality(AR)とは,現実環境において視覚・聴覚などの知覚に与えられる情報をコンピュータ処理により追加,削減,変化させる技術である5,11).コンピュータ上で作成した仮想画像,映像,音声などを現実世界に反映する技術を示す.すでにわれわれの生活に広く浸透しており,スマートフォンやカーナビゲーションなどに用いられている.カーナビゲーションの実際を図示する(図1).カーナビゲーションは古典的には紙媒体の地図を読むことからはじまる.その後,ディスプレイの地図上に矢印を走らせることで経路を確認するナビゲーションが一般化された.これに対してARカーナビゲーションでは,ディスプレイの代わりにフロントガラスなどへ映像を投影して現実空間と融合させる手法が利用される.位置情報に付帯する情報を,ナビゲーションシステムを用いてフロントガラスに投影して現実視野と融合させたもの,これがARカーナビゲーションである.このナビゲーションシステムは自動車だけでなく,手術におけるナビゲーションにも有用であり応用されてきた.本稿では,AR技術の脊椎手術への応用の実際について紹介する.
著者
田中 真 小山内 隆生 加藤 拓彦 小笠原 寿子 和田 一丸
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1055-1062, 2015-09-15

Abstract:統合失調症患者61名と健常者54名を対象として,色彩に対して抱く感情およびイメージの特徴について分析を行った.色彩に対する感情語の選択割合が5割を超えた項目は,統合失調症群は一つもなかったのに対し,健常者群では青に対する平静,黄に対する愉快,緑に対する平静の3色が5割を超え,統合失調症群に比べ有意に選択割合が高かった.両群に対して色彩に対するイメージ課題を行った結果,青と緑において健常者群は冷たいととらえている者が多いのに対し,統合失調症群は熱いととらえている者が多かった.統合失調症群の中で,REHABにおける問題行動がある者および全般的行動得点が低い者は,そうでない者に比べ感情の適合割合が低かったことから,これらの者は通常経験すべき社会体験を十分に積む機会がなかったことに加え,色彩に対して感情を選択する際に何らかの混乱を生じている可能性が示唆された.

1 0 0 0 Cobb症候群

著者
関 俊隆 飛驒 一利
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.390-393, 2015-04-25

Cobb症候群とSpinal arteriove-nous metameric syndrome Cobb(コブ)症候群は神経皮膚症候群の1つであり,脊髄動静脈シャント(spinal arteriovenous shunts:SAVS)と椎体や皮膚などに発生した血管病変が同一の髄節に認められる疾患である.1915年にStanley Cobb(1887-1968)が,突然の背部痛および対麻痺で発症した8歳の男児の症例を報告したことに始まる3).この男児は左背部にポートワイン母斑と,同じ髄節レベルに脊髄血管腫が認められた.しかし,本文中の手術所見および手術シェーマから推測すると,脊髄血管腫ではなくSAVSであったと思われる. Cobb症候群と同様に顔面や網膜の血管奇形に脳の血管奇形が合併する場合があり,合併する脳の血管奇形がAVSの場合をWyburn-Mason(ワイバーン・メイソン)症候群11),静脈奇形の場合をSturge-Weber(スタージ・ウェーバー)症候群10)と呼んでいる.これらの症候群は脳や脊髄の同一分節の異なる部位に複数の血管奇形が認められる場合を指しており,近年ではmetameric syndromeとして考えられている6).脳病変におけるmetameric syndromeは,AVSの場合はcerebrofacial arteriovenous metameric syndrome(CAMS)2),静脈奇形の場合はcerebrofacial venous metameric syndrome(CVMS)9)に分類され,さらにこれらは3つの領域に分けられている.また,脊髄にAVSを合併するCobb症候群は,spinal arteriovenous metameric syndrome(SAMS)として考えられるようになってきている7).ヒトの脊髄は31の髄節に分かれており,8対の頸髄,12対の胸髄,5対の腰髄,5対の仙髄,そして1対の尾髄からなっている.そのため,Cobb症候群(SAMS)はSAMS 1からSAMS 31に分けることができる7).

1 0 0 0 Tinel徴候

著者
長尾 聡哉
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.297-299, 2015-04-25

Tinel徴候とは,末梢神経損傷が回復途上にあることを示す徴候であり,銃創後の末梢神経損傷手術例について初めて報告がなされた.第一次世界大戦中にあたる1915年,ドイツの生理学者Paul Hoffmann(1884-1962)とフランスの神経学者Jules Tinel(1879-1952)によって相次いで報告されたことから3,11),ドイツ語圏ではHoffmann-Tinel徴候とも呼称されている.前述の文献によれば,同徴候は「神経走行に一致した部位を末梢側から中枢側へ指で軽く叩打していくと,神経線維の再生部位に一致して異常感覚を生じる」と記載されており,Hoffmannは異常感覚をeine prickelnde Empfindung(チクチク感)と表現し,英訳者であるBuck-Gramckoらはcreeping sensationと訳している4).また,Tinelは異常感覚をfourmillement(蟻走感)と表現し,Kaplan7)はこれをtinglingと英訳している. 本徴候は,知覚神経再生の際に軸索の再生が髄鞘の再生に先行するため,先端は無髄で機械的刺激に対して鋭敏であることに起因すると考えられている.本徴候は受傷後早期には出現せず,受傷後3〜4週から出現する.経時的に末梢へ移動し,中枢側から軽減していく場合は神経再生の進行を意味し,本徴候が移動せずに同じ部位に留まっている場合は再生が進まず損傷部に神経腫が形成されていることを示唆する.また,長期にわたって本徴候が出現しない場合は,末梢神経の機能再生は期待できず,予後が不良であることを意味している.
著者
Evert Mary M. 長谷 竜太郎
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.31, no.11, pp.1017-1022, 1997-11
著者
帖佐 悦男
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.322-324, 2015-04-25

提唱名 Fabere sign(test),figure-four testと呼ばれることもある

1 0 0 0 脊髄梗塞

著者
佐藤 慶史郎 内山 剛
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.103-106, 2016-02-25

はじめに 脊髄梗塞は,脊髄を支配する血管の血流障害により引き起こされる急性脊髄障害,脊髄実質の壊死である.急性脊髄障害の5〜8%,全脳卒中の1〜2%とまれな疾患である12).広い年齢層にみられるが,平均年齢は50〜60代とする報告が多い3,6,8〜11). 日常診療において出会う機会は多くはないが,その診断,治療には難渋することがあり,重篤な後遺症を残す場合もあるため,その病態,診断,治療に関して述べる.
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
2004
著者
加藤 貴志 末綱 隆史 椎野 恵美 久保田 直文
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.100-105, 2015-02-15

Key Questions Q1:脳損傷者の運転技能予測に有効な検査は? Q2:検査による予後予測の課題は? Q3:今後の展望は? はじめに 2013年(平成25年)の道路交通法改正により,医師から運転中断を勧められた者がそのことを無申告で免許更新を行った場合の罰則が規定され,疾病を有する方の運転に関して医療機関の役割は重要になってきている.その一方で,医療機関にて危険運転を行うと予測される者をどのように評価するかは確立されておらず,各医療機関で統一した対応はなされていない.井野辺病院(以下,当院)が運転支援を開始した当初は,脳損傷者の運転技能予測を調査した国内研究は少なく,海外の研究を参考とせざるを得ない状況であった.しかし近年,国内でも脳損傷者の実車運転に関する報告が増加し,神経心理学的検査(以下,検査)の研究も増加している. 本稿では脳損傷者の運転技能予測に関する検査についての国内研究をまとめ,予測の課題と今後の展望を述べる.