著者
近藤 健
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1348-1349, 2014-12-15

はじめに 半側空間無視を呈する対象者は,食事時に無視側の食器を見落とすことがある.対応として,無視側への注意を促す声かけ,注意を向ける対象を絞り,無視する範囲を減らすために一つの皿に食物をまとめること,食器の位置を変えること等が考えられる.しかし,これらの方法は,自発的な無視側の探索を促すには不十分と考える. 今回,食事自立,自発的な無視側の探索を目的に,市販のターンテーブルを応用し,回転盆を作製し自助具として使用した.また,症例を通して治療効果を考察した.
著者
山崎 正志
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1085-1092, 2019-12-25

はじめに 腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼ(ヘルニコア®)を用いた椎間板内注入療法(以下,コンドリアーゼ療法)が本邦で認可され,新しい椎間板内酵素注入療法として,その普及が期待されている.コンドリアーゼ療法を紹介する際に,しばしば話題に上るのが,1980年代に北米を中心として世界的に盛んに施行されていたキモパパイン椎間板内注入療法(以下,キモパパイン療法)である3).キモパパイン療法に対する評価のほとんどは,「アナフィラキシーショック,横断性脊髄炎や重度の腰痛などの重篤な副作用の発現により,施行されなくなった」という内容のものである.しかしながら,これらの評価は,適切な科学的解析のもとに下された結論といえるのであろうか? 筆者が渉猟し得た限りでは,キモパパイン療法を科学的に完全に否定している資料は見当たらない. キモパパイン療法が北米で全盛を迎えていた1980年代の初めに,これを本邦に導入することにひときわ情熱を傾けていたのが,当時千葉大学整形外科教授の井上駿一先生であった.井上先生の強力なリーダーシップのもと,千葉大学を中心にキモパパイン療法の基礎的臨床的研究が本邦においても盛んに行われた5,6,11,12).筆者も当時,大学院生として,その研究に加わっていた15〜17).1987年に井上駿一先生が研究半ばで急逝されたため,本邦におけるキモパパイン研究は,ややその勢いを失いかけた感はあった.しかしながら,その後も研究は継続され,Phase Ⅲ臨床試験までが行われた1).その結果は,十分に満足すべきものであり,重篤な合併症はなかったと記憶している.しかしながら,本邦でのキモパパイン療法の臨床使用が認可されることはなく,その後,コンドリアーゼ療法が登場するまでの約30年間は,キモパパイン療法が話題に上がることはほとんどなくなった. 今回,本邦におけるキモパパイン療法の基礎的臨床的研究を史的に考察した.確かに,キモパパイン療法そのものは歴史的な存在であろう.しかし,今後の発展が期待されるコンドリアーゼ療法の臨床的な効果を議論するうえで,キモパパイン療法との比較は,有益な情報をもたらすと考える.その意味で,本稿では,キモパパインとコンドリアーゼとの比較を加味して執筆を行った.
著者
吉永 清宏 杉本 篤言 江川 純 染矢 俊幸
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.756-762, 2020-07-20

はじめに 米国精神医学会(American Psychiatric Association:APA)は,2013年5月に精神疾患の診断分類体系であるDiagnostic and Statistical of Mental Disorders(DSM)の第5版1)(DSM-5)を発表した.前回の改訂版(DSM-Ⅳ,1994年)以来,19年ぶりの改定となり,数多くの改訂がみられた.ここでは自閉スペクトラム症の新設,双極性障害の独立や物質使用障害の再編等,従来の診断カテゴリーから大幅な変更が施された部分を中心に概説する.
著者
三浦 真弘 内野 哲哉 髙橋 明弘
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.694-703, 2015-08-25

はじめに 脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)は,頭蓋-脊柱管内においてくも膜と軟膜の間すなわちくも膜下腔と,上衣層に囲まれた脳室および脊髄中心管を満たす無色透明な液体である.正常では脳脊髄液の細胞数は5個/mm3以下である.CSFの全量は成人で常時100〜150mlに保たれている.CSFの1日の産生量が400〜600ml(0.35ml/min)であることを考えると,1日に3〜4回生理的吸収路を介してCSFは入れ替わる計算になる39). CSFの存在意義については,古くから諸説が論じられている.その中で,脳脊髄は外面も内面(脳室)もCSFに完全に浸る状況から,生じた浮力により自重を効果的に減少させる役割(神経根・硬膜の緊張緩和)36),また頭蓋脊椎への機械的刺激に対するクッション材的役割が重要とされる.一方,最近ではCSFに含まれる物質の分子レベルの働きについても研究が進んでおり,CSFに流入した脳実質の細胞外液ならびに上衣細胞・脈絡上衣などに由来する種々のサイトカインや物質が,呼吸や動脈性拍動15),そして上衣細胞の繊毛運動などで生じるCSF流を利用して反発性軸索ガイダンス因子,増殖因子などの物質の運搬・交換そして拡散,さらには免疫反応防御システム,脈管新生など脳の栄養・代謝に深く関わることが明らかにされている21,22).すなわち,CSFはその組成を調節することで脳の健康維持にも欠かせない存在となっている17). 通常CSFは,産生,循環,吸収が相互に連関して機能することで一定量が保たれている.成人のCSF総量を約140mlとすると,その内訳は脳室に30ml,脳くも膜下腔に80ml,脊髄くも膜下腔に30mlと推測される35).ちなみに,中枢神経系(central nervous system:CNS)の間質液(interstitial fluid:ISF)は280ml存在する.したがって,CNSに関わる水の動態を考える場合,ISFについても詳細に検討する必要がある.特に,CNSは唯一リンパ系が存在しない組織であることから,ISFにおける水の収支バランスに密接に働く脳動脈周囲の血管周囲腔(perivascular space:PVS)を介する特別な排導機序は,リンパ系に相当するシステムを代償する.これは,脳白質血管周囲のアストログリア終足に高発現する膜輸送タンパク質水チャンネル(aquaporin channel:AQP)33)を基軸にした実質から可溶性タンパク質・代謝産物などを血管にスムーズに排除するシステムで,睡眠中に稼働するglymphatic system14)またはglymphatic clearance pathway16)と呼ばれる.同システムに関する基礎研究2,14,16)は,脳アミロイド血管症やアルツハイマー病などの発症機序との関連解明を受けて,臨床研究として現在大きな期待が寄せられている.なお,PVSは細動脈でVirchow-Robin腔と交通する. 一方,CSFの収支バランスを考える場合,従来からその吸収首座とされる脳硬膜くも膜顆粒の本態解明は緊喫の課題である44).また,CSFのリンパ系吸収路については,頭蓋底領域とは別に脊髄硬膜外レベルでの作動確認20,24)もCSF循環にとって検証すべき課題とされている.著者らは,CH40微粒子活性炭,indigocarmine,およびindocyanine green(ICG)を新しいCSFトレーサーとしてヒト組織を含む注入実験に用いることで,CSF経リンパ吸収路の構造的特徴とその吸収動態について検討をこれまで試みてきた24,28).特に,脊髄領域でのCSF吸収とリンパ管系との関係については,硬膜-神経根周囲の髄膜に局在する篩状斑を介する脈管外通液路(extravascular fluid pathway)19,29,30)ならびに硬膜外リンパ系(epidural lymphatic system:EDLS)4,25)との連関機能の重要性,さらに両者の組織学的特徴を明らかにしたことで,CSFがいかにして髄膜バリア(図1)を生理的逸脱して硬膜外リンパ管に吸収されるか,という長年の疑問に対して髄膜脈管外液路30)の存在証明で1つの答えを示した.他方,近年YamadaはCSF動態をMRIで画像化するTime-SLIP法を応用したCSF dynamics imaging45)を開発し,特に古典的なCSF循環概念,すなわちCSFが産生部位から吸収部分に向かって川のように流れる第3循環説が事実と異なることを実証した臨床的意義は大きい43,45). CNSの細胞外液や脳室系のCSFの生理的量的バランスを保つために必要なシステムのいずれかの構造・機能が破綻すると,CSFでは過剰な貯留状態を呈して水頭症,逆にそれが減少ないしは異常な漏出状態を呈すれば低髄圧症候群(脳脊髄液減少症)・脳脊髄液漏出症,一方ISFでは,血管周囲腔での通過障害として脳浮腫やアルツハイマー病,遺伝性脳小血管病(cerebral small vessel disease〔SVD〕)34)などの病態がそれぞれ引き起こされると考えられている14,16,42). 最近,これらの病態解明に取り組む関連学会においてCSF循環の再考が叫ばれる中,第14回日本正常圧水頭症学会(2013)の特別講演での佐藤修東海大学名誉教授の提言は注目された.佐藤は最新の研究成果7,32,33,43)に触れ,上矢状洞付近でのCSF吸収は定説とは異なり主経路でなく,むしろ頭蓋底部,鼻腔からのリンパ系吸収,また脊髄レベルからの吸収路のほうが重要であると結論づけ,大きな反響を呼んだ. 本稿では,正常状態でのCSF循環(産生,吸収)について最新の知見を踏まえて概説するが,特に脊髄膜に局在する前リンパ管通液路(prelymphatic channel:PLC)19,26,30)を介するCSF経リンパ吸収路について紹介する.また,自家所見から脳脊髄液減少症および特発性正常圧水頭症の発症機序についても最後に考察したい.
著者
上江洲 聖
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.422-423, 2021-05-15

●選択肢が少なすぎるか,多すぎるかよりも,選択できないことが苦しい 居酒屋で酔って眺める議論のようだった. 前提に基づいて結論を主張する者,事実に基づいて推論する者,仮説の検証を試みる者.論点がズレていることもあった.多角的な視点を絡み合わせて解決の糸口がみえそうなこともあった.報道番組,報道番組のフリをしたワイドショー,新聞,ネットに拡散された情報をかき集めて議論する人たちの会話が嫌でも耳に入り込んできた.新型コロナウイルスが日本に広がって1年以上が経過した.
著者
山本 直毅 今村 明 中岡 和代
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1108-1115, 2020-09-15

はじめに 感覚刺激への過敏性や低感受性は,自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder:ASD)によくみられる特性である.ASDの感覚特性は,聴覚,触覚,味覚,嗅覚,視覚,前庭感覚,固有感覚のいずれにおいても生じ,臨床的には痛みの感覚や内臓感覚にも生じ得る.このような独特の特性ゆえに,「些細な話し声でも,神経に直接響くような強烈な刺激となる場合があり,パニックになってしまう」,「鳥肌が立つほど寒い真冬でも薄着でいて,風邪をひいてしまう」等,われわれとは別の感覚で世界を捉えていて,生活の困難さを抱えている場合がある.こういった感覚特性に対する理解を深めることは,それに対する支援を考えるうえで重要である. 本稿ではまず,ASDの感覚に対する反応とその中で用いられる用語について解説しつつ,それぞれの感覚領域における実際上の問題について述べる.次に,感覚特性において,多様な表現型が生じる仕組みを,生物・心理・社会モデル(Bio-Psycho-Social Model;以下,BPSモデル)として説明する.最後に,それぞれの感覚領域における支援について解説する.
著者
中村 春基
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.56-64, 2016-01-15

はじめに 人は一人では生きていけない.また,人は作業なしでは生きていけない.作業を行うことで,自分らしさを確認し,生きる糧を得,役割や価値,自己と他者等,社会人として,個人としての存在を自覚できる.その中でのOTの役割は,「作業」の保障に尽きる.「ひとは作業をすることで元気になれる」という作業療法の理念は普遍的であり,OTは,それを具現化できる人材であり続けなければならない. 50巻記念企画「この10年を振り返って」の趣旨は,この10年間を振り返り,今後,10年,20年先の作業療法の展望を述べることにある.なお,本欄はこの1月号から12月号までの連載であり,領域ごとにそれぞれ著名なOTからみたこの10年について,執筆いただくことになっている.したがってこの稿では,この10年間の作業療法(士)を取り巻く構造について総論的に述べる.
著者
金 彪
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.254-258, 2019-04-25

はじめに 姿勢の制御,ならびに体幹四肢の骨格筋の運動を制御するのは,4つの要素である.すなわち,大脳皮質ならびに脳幹から下行する運動系経路,小脳,大脳基底核,ならびに脊髄の運動系(前角ニューロンと介在ニューロンからなる分節回路)である.このことはよく知られているところであろう.しかし,これらの構造の相互の連結については,脊髄の臨床に携わる外科医たちには意外に正しく認識されていないことがある.その結果として,機能・生理学やモニタリングの意義解釈に関するディスカッションが間違った方向に進んでいることもあるので,再整理しておくことに意義があると考える.
著者
齋藤 正洋
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.540-541, 2017-07-15

はじめに 「自立」の定義は,「他の助けや支配なしに自分一人の力だけで物事を行うこと.ひとりだち.独立」である. しかしながら,東京大学先端科学技術研究センター准教授の熊谷晋一郎氏は「自立とは依存先を増やすこと」と述べている.熊谷氏は車いすで移動をしている.東日本大震災時には職場のエレベーターが止まり,建物の外に出られなくなった経験をした.健常者はエレベーターが動かなくなっても,階段や避難梯子等,階下に降りる手段がいくつかあり選択できる.それは,頼れる手段や依存できるものが複数あるということとなる.「“自立”を支えているのは依存する物や人,場が沢山あること」というわけである.初めてこの言葉を聞いたときに目からうろこが落ちたとともに,自立を支援していく者として大きな間違いを犯していたのではないかと自身の作業療法人生を振り返ったことを覚えている. そもそも「自立」には,身体的・精神的・職業的・経済的等の自立があり,それと対比するように「依存的自立」という言葉がある.たとえば,他人の助けを借りて5分で衣服を着替えて外出する人と,自分だけでは着替えに2時間かかるため,外出できない人とを比較すると,前者のほうが自立度が高いという考えである. この「依存的自立」は,その人自身の能力や考え,自己決定を尊重した自立のかたちであり,その人らしさをつくり上げる土台,価値観になるものである.熊谷氏にはそういった土台が根づいているのであろう.

1 0 0 0 Lasègue徴候

著者
大石 実
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.304-305, 2015-04-25

原 著 Ernest-Charles Lasègue(1816-1883)はフランス人であり,フランス語ではラセーグではなくラゼーグと発音する.Lasègue徴候の原著は,自分が指導教授となった弟子Forstの博士論文である2,3,5).Lasègueは,坐骨神経痛では坐骨神経を圧迫すると坐骨神経に沿った痛みが起こり,膝関節を伸展したまま股関節を屈曲しても誘発できると記載している5).Lasègue徴候の方法は,2つの手技からなる3).患者を仰臥位にし,力を抜かせる.検者の手を患者の踵にあてて片脚を持ち上げ,膝関節は伸展したまま股関節を屈曲させる.患者は坐骨神経に沿った痛みを訴え,股関節を屈曲できなくなる(図1).次いで,膝関節を屈曲し,踵をおしりのほうにゆっくりずらして股関節を屈曲させると痛みがない(図2)場合に陽性とする.ForstではなくLasègueがこの徴候の発案者であり,この徴候は坐骨神経が引き伸ばされることによると弟子De Beurmannは記載した2).
著者
宮之原 綾子
出版者
三輪書店
雑誌
地域リハビリテーション (ISSN:18805523)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.414-415, 2018-06-15

会社の概要と事業の紹介 弊社は,昭和28(1953)年,鹿児島の天文館に酒屋(卸売)を開業したことに始まります。その後,食品会社,人材派遣会社,イベント企画・研修教育事業会社を運営してまいりました。人材派遣会社では,主にサービス業の人材派遣を,イベント企画・研修教育事業では,観光ガイド「薩摩こんしぇるじゅ」などの企画・運営や企業等の研修事業,飲食店の企画運営を行っています。2016年に就労継続支援A型事業所「就労支援事業所さくら」を開所。主に,グループの食品工場での製造業務,健康食品の企画,製造,通販事業を行っています。 「さくら」を運営する中で見つけた課題や,「さくら」ではできない就労支援を実現するために一般社団法人グッジョブかごしまを2017年10月に設立,就労継続支援A型,B型(多機能)事業所を立ち上げました。
著者
安井 敬三 長谷川 康博
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.606-611, 2015-07-25

はじめに 四肢にしびれ感を自覚する日本人は加齢とともに増加し,国民生活基礎調査では本邦の50歳代の約3.8〜4.6%10),救急外来受診患者では7.9%にみられる11).しびれ感のほかに麻痺があれば脳卒中を疑い,強い痛みがある場合は脊髄疾患を疑うことは比較的容易である.主訴がおよそしびれ感単独で外傷なく1カ月以内の発症である症例を抽出すると,そのうち短期間で症状が悪化し得る疾患と判明した症例は13.2%含まれ,内訳は脳血管障害80.7%,頸椎症と頸椎ヘルニア7.0%,その他の脊髄疾患5.3%であった11). 頸椎症と脳血管障害は中高年に発症するありふれた疾患で,しびれ感の鑑別として重要である.頸椎症は神経根症と脊髄症に分類され,前者は頸部痛を伴って障害高位に従った知覚障害と脱力がみられる.後者は上肢のしびれ感で始まり,長経路徴候として下肢に異常がみられる.一方,脳血管障害は片側上下肢に同時に広がるしびれ感や麻痺が突然起きるのが通常で,鑑別は容易であることが多い.しかし,脳血管障害には,頸部痛を伴って軽微な神経症状を呈する延髄梗塞や,しびれ感や脱力が限局した部位にのみ現れて頸椎症を思わせるcheiro-oral-pedal症候群,precentral knob梗塞があり,ときに鑑別が必要となる.脊椎画像で障害高位が存在しても,神経症状と障害髄節の神経徴候とが合致しない場合は,頭蓋内疾患を疑う必要がある. 本稿では,特に頸椎症と鑑別を要する感覚障害を呈した代表的頭蓋内疾患(脳血管障害)の3型を提示し,解説する.
著者
福武 敏夫
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.903-906, 2015-10-25

はじめに かゆみは「掻かずにはおられない行動を引き起こす不快な感覚」とされ,日常臨床においてしばしば訴えられる症状であり,通常,皮膚疾患や代謝性・内分泌性などの内科疾患が原因となる2,6)(表1).神経疾患ではあまり前景に立つ症状ではなく,原因として見逃されやすい.しかし,前回取り上げた帯状疱疹では痛みが注目されるが,持続性のかゆみが訴えられることがある7).さらに,多発性硬化症や視神経脊髄炎では一時的反復性のかゆみが訴えられることがしばしばあるし,その他の脊髄炎や脊髄腫瘍による症例報告も散見される8). 一方,これとは別に,かゆみが脊椎脊髄疾患を悪化させる可能性がある.KiraとOchi5)はアトピーが関連した平山病について報告しており,筆者らは平山病患者が高率にアトピー性素因(と高IgE血症)を伴うことを見出した4)が,さらに,若年者においてアトピー性皮膚炎と軽度の頸椎症性変化とが関連していることも明らかにした3).これらの病態的関連は未解明であるが,アトピーに関連する病理過程が硬膜や脊椎の物理的特性を変化させるのではないかと思われるほかに,かゆみに対し頻回に引っ掻く動作をする際の首の前屈動作が影響しているのではないかとの仮説も立てている1).平山病における臨床情報の積み重ねからは,患者がギター愛好家で首を繰り返し前屈しているとか,サッカーのヘディングを頻回に行ったとか,頸部動作が誘因の1つと考えられる症例にしばしば遭遇する1). 本稿では,かゆみに対する首の動作が頸椎症性脊髄症を悪化させたのではないかと強く疑われる症例(症例1)と,アテトーゼ型の脳性麻痺に伴う頸椎症性脊髄症により左体幹のかゆみが出現し,かゆみに対する首の動作により脊髄症が悪化したと思われる症例(症例2)を紹介する.
著者
粳間 剛 仙道 ますみ
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.360-365, 2020-11-15

私は訪問看護ナースのあいか! 今日は最近フルリモートになった*注1 集団リハを手伝っています(自宅で)
著者
近藤 健
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.496-497, 2016-05-15

はじめに 半側空間無視(以下,USN)の治療として視覚走査練習1)があるが,より効果的に治療を行うために,対象者が自発的に無視側を探索することが必要と思われる.今回,自発的な探索を促すために,手の形をモチーフにしたUSNに対する治療器具を作製したので報告する.