著者
上城 憲司 井上 忠俊 村田 伸 小浦 誠吾 納戸 美佐子 中村 貴志
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.376-381, 2018-04-15

Abstract:本研究では地域在住高齢者を対象に,認知課題ゲーム(以下,Pゲーム)の実施方法の違いと認知機能別の特徴について検討した.Pゲームは25マスの図案の上に数字をランダムに記し,1〜25の番号が書かれたペットボトルのキャップをできるだけ早く,対応する図案の番号の上に置いたり取り出したりするゲームである.Pゲームの実施方法の違いについて比較した結果,「取り出す」パターンは,「置く」パターンよりも遂行時間が有意に短かった.また,Trail Making Test(TMT),Pゲームを認知機能別に比較した結果,「置く」パターンはすべての群間に有意差が認められた.一方,「取り出す」パターンは,TMTが健常群と認知機能低下群,認知症疑い群,Pゲームが健常群と認知症疑い群との間に有意差が認められ,認知機能低下に伴い遂行時間が長くなる傾向が示された.本研究の結果から,Pゲームは心理的ストレスが低く,簡易に認知機能の程度を判定する評価ツールとして有用性が高いと推察する.
著者
大谷 愛 竹林 崇 友利 幸之介 道免 和久
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1141-1145, 2015-10-15

Abstract:今回われわれは,慢性期の脳卒中患者2名にCI療法を実施する際,日常生活における麻痺手の使用を促すためのディスカッション時に,従来法の言語のみによる対話に加え,麻痺手に対する訓練における意思決定補助ツールであるAid for Decision-making in Occupational Choice for Hand(ADOC-H)を開発し,用いた.結果,介入前後でFugl-Meyer AssessmentとMotor Activity Logの向上を認めた.加えて,ADOC-Hを用いた議論に関する感想として,2名からは「文字や言語だけよりもイメージが湧きやすい」等のポジティブな感想も聞かれた.しかし,上肢機能が比較的保たれ,介入前から生活で麻痺手を積極的に使用していた患者には,「すでに麻痺手で行っている」といった選択肢の少なさに対する問題提起も聞かれた.今後は,ADOC-Hが従来法に比べ有用であるかどうかを,対象者の選定とともに,調べていく必要があると思われた.
著者
富岡 詔子
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.23, no.9, pp.p664-672, 1989-09
被引用文献数
1
著者
清水 敬親
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.418-421, 2015-04-25

歴史的報告 1912年にフランスのMaurice KlippelとAndré FeilがL. Josephという46歳のtailorの貴重な剖検例を報告した1).彼は慢性的な腹痛と繰り返す胸水貯留を患っていた.彼の外見は特徴的で,“極端に短い首・毛髪線の低さ”が目立っていた.死亡前の臨床診断は,胸膜炎・肺うっ血(肺水腫)・腎炎であり,タンパク尿・頻脈を呈し,やがて死亡した.剖検では,心肥大,腎臓の変形とともに異常な形態の脊椎をもっていることが明らかとなった.頭蓋頸椎移行部は奇形を呈し,多少の頸椎屈曲・伸展はできたが,回旋は不能であった.脊柱はたった12個の脊椎骨で成り立っていた.KlippelとFeilはこれらの所見を「肋骨が頭蓋底から生えている先天性頸椎欠損」と解釈し,“cervical thorax”と呼んだ.胸椎後弯,胸腰椎側弯も観察されたという.要約すれば,頭蓋頸椎移行部を含む全脊椎に先天性と思われる癒合椎や脊柱変形がみられ,内臓奇形をも伴っていたきわめてまれな症例,ということである.
著者
朝比奈 正人
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.133-138, 2017-02-25

はじめに 胸髄には交感神経節前神経,仙髄には副交感神経節前神経(脊髄中枢)が存在し,これらの神経に連絡する経路は頸髄を下行するため,頸髄病変によりこれら下行路が障害されると自律神経障害を呈する.自律神経症候が最も注目される脊髄疾患は脊髄損傷であろう.脊髄損傷の急性期には,血圧低下(脊髄神経原性ショック),尿閉などの排尿障害,便秘・便失禁などの直腸障害,発汗減少などを呈する.また,慢性期にみられるautonomic dysreflexia(膀胱刺激や内臓刺激,体性刺激により高血圧,頭痛,発汗,徐脈などが誘発される発作性の異常)は,脊髄損傷患者のリハビリテーションや介護を行ううえで大きな問題となる.一方,頸椎症は日常臨床で遭遇することの多い疾患であり,脊髄神経根あるいは脊髄の障害により多彩な症候を呈する.頸椎症性脊髄症は自律神経脊髄下行路の障害により自律神経症候を呈するが,関心は低く,研究も少ないのが現状である.本稿では,臨床において脊椎症性脊髄症における自律神経症候に焦点をあて概説する.
著者
鈴木 秀和 遠藤 健司 松岡 佑嗣 西村 浩輔 関 健 堀江 真司 前川 麻人 小西 隆允 山本 謙吾
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.265-269, 2017-04-25

はじめに 成人脊柱変形患者は社会の高齢化に伴い増加し,脊椎矢状面アライメントに関する知見の重要性は増している.加齢による姿勢変化は,胸椎が後弯化し頸椎前弯が増強する傾向にあり,頸椎症の発症に大きく関与することが知られているが1,2,13),骨盤を含めた全脊椎アライメントと頸椎アライメントに関する定量的解析は多くなされていない.頸椎形態は,直線状,S字状,すべりの存在など多様性があり,頸椎前弯の計測法にもさまざまなものがある6).C2-7角は,途中の形態が不明となり前弯の形成の程度が不明となるため,C2-7角で頸椎矢状面アライメントを述べることにも問題があるといわれてきた9).また,頸椎矢状面アライメントは年齢,性差や個体差があるため,正常の定義,病的アライメントの解釈を明確に決めることは難しい11).1968年,石原8)は頸椎弯曲指数(石原指数)を用いて頸椎アライメントの性差,年代による変化があることを述べた7,8)が,徐々に,全脊椎矢状面アライメントとの関連が明らかになり,頸椎アライメントの概念は変化しつつある.近年,日本人を対象にYukawaらは626人の性別,年代別に全脊椎矢状面アライメント計測と,1,200人の頸椎矢状面アライメントと頸椎可動域(range of motion:ROM)を示した11,12).頸椎前弯の消失や後弯発生は,C2-7sagittal vertical axis(SVA)やT1椎体の傾斜と大きな関連があり,頸椎症発生は隣接脊椎のアライメントに強く影響を受ける2,4).本稿では,日本人のデータより得られた健常人の頸椎矢状面アライメントと全脊椎矢状面アライメントとの関係について述べる.
著者
石原 茂和
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.802-805, 2019-07-20

超人スポーツとは何か OTの皆様は,すでに障害者スポーツに親しまれていると思われる.障害者スポーツの領域にはさまざまな競技があり,アクティビティも高く,またリハ,機能維持としての効果も高い.それに対して,「超人スポーツ」という新しい領域とその考え方はどういうものであるのか,そこから得られるアイデアは何かという観点から解説してみる. 超人スポーツは,特定のスポーツ競技を指すのではなく,今ある技術を活用して,スポーツがどのように拡張できるのか,いつでもどこでも誰でも楽しめる新しいスポーツを開拓しようという“考え方”である.
著者
白土 修 遠藤 達矢
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.28, no.11, pp.957-962, 2015-11-25

はじめに 首下がり症候群(dropped head syndrome:DHS)は,頸部伸筋群の筋力低下が主因である頸部の垂れ下がり症状(chin-on-chest deformity)が発生する後弯変形の特殊病態である1).症状としては,飲み込みの悪さからくる摂食困難や洗面の不自由があり,頸部痛を訴える場合も多い.前方注視困難により歩行に支障が生じるなど日常生活にさまざまな困難をきたし,QOLを大きく低下させる. DHSに関する報告は,1886年Gowersの重症筋無力症例が初めてである.原因疾患として,運動ニューロン疾患,多発性筋炎,筋ジストロフィー,多系統萎縮症,パーキンソン症候群,頸椎症,Machado-Joseph病,甲状腺機能低下症,進行性核上性麻痺,脳梗塞など多岐にわたる5,9,17,21).そのため,DHSを診察する場合,その鑑別を行うことが必要である.背景に治療可能な種々の疾患が存在することを考慮して専門医の判断を仰ぐことも必要である. 原因となる基礎疾患がある場合,その治療が必須である.特に神経内科的疾患の場合,内科的コントロールがとれていることが重要である.外科的介入も報告がみられているが,効果は報告によってさまざまであり,統一した結論に至っていない22).頸椎症によるDHSに対しては,手術療法が有効であったという報告も散見されるが,限界があるという意見も多い.しかし,手術による頸椎alignmentや頸部不安定性の改善は,患者の生活の質の向上に有益である場合もある4,16,18,24). 保存療法・観血的療法のいずれも,リハビリテーション(以下,リハと略す)がADLやQOL向上,姿勢改善に有効である場合がある.本稿では,DHSの報告例を再検討し,病態や姿勢の特徴を踏まえリハの可能性について述べる.
著者
京極 真 寺岡 睦 小林 隆司 河村 顕治
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.521-524, 2014-06-15

Abstract:本論では,作業療法教育における学部・大学院5年一貫教育プログラムの概要を紹介し,実践報告を通してその利点と課題を明らかにした.今回,わが国の作業療法業界で初めて学部・大学院5年一貫教育プログラムに選抜された学生に対し,大学院教育を行った.その結果,意義として,①作業療法学の発展に貢献し得る人材を早期に育成しやすい,②作業療法養成課程におけるキャリアプランを豊かにし,学生のモチベーションの向上に資する,の2点があると論じた.他方,課題として,①教育体制の充実と工夫が必要である,および②大学院教育期間の短縮により受ける制約の検証が必要である,の2点があると論じた.