- 著者
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本多 峰子
- 出版者
- 二松學舍大學
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2011
福音書のイエスはこの世になぜ悪があるのか、との問題についての神義論は論じていないが、終始悪の問題に実践的に取り組んでいた。彼は神が人々に救いを差出していることを示した。救いは罪、病、貧困等人生のあらゆる面に及ぶ。申命記的応報思想では、苦難は罪の罰と見られる傾向があったが、イエスによれば、神は苦しむ人をこそ憐れみ救う。イエスの思想は法的義を凌駕する神の義を信じる伝統にある。その義はアブラハムとその子孫に祝福を誓った神の信義である。イエスは、人も神の赦しと救いに応答して相互の赦しと助けにより神の救いの業に参与しこの地に神の国を成就するべく招く。イエスの示す神の義は思索ではなく能動的行為で証される。