著者
久保田 強 小森 和男 藤井 泰一 三浦 律彦
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.52-60, 1995-05-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
5

首都高速中央環状王子線の飛鳥山トンネル新設工事における街路交差点下のトンネル躯体工は, 仮設のパイプルーフ直下に近接施工するもので, 多数のH鋼等が障害となり頂版コンクリートの打設が困難な状況にあった。そこで, 頂版のコンクリートに高流動コンクリートを採用し, 締固めが不可能な状況の中でも完全な充てんが得られるように頂版の施工を行うこととした。本稿では, 工事の概要と高流動コンクリートの配合選定の手法, および打設時の品質管理結果について述べるものである。
著者
皆川浩 中村英佑 藤井隆史 綾野克紀
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次大会2019(札幌)
巻号頁・発行日
2019-06-11

新しい材料で実績が少ない場合,現状では浸せき試験や電気泳動試験により,塩害環境下における鋼材腐食の照査に用いる塩化物イオンの見掛けの拡散係数を求めることになる。しかし,これらの試験は実際の環境条件を直接的に考慮した試験方法ではないため,照査結果が過剰に安全側になる可能性がある。本稿では,大気中環境下での曝露試験と浸せき試験によって得られる塩化物イオンの見掛けの拡散係数を比較し,両者の差異の主要因がコンクリート中の含水率にあることを指摘するとともに,照査で用いる塩化物イオンに対する設計拡散係数を求めるために必要となる実環境条件を考慮するための係数を検討した。
著者
森永 繁
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.13-20, 1996-08-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

乾燥収縮ひび割れとマスコンクリートの水和熱に起因するひび割れを対象とし, 指針類に示されているひび割れ対策が, 必ずしも実際の現場における実用的対策にはなっておらず, 両者にかなりの矛盾点があることを示した。ひび割れが発生するか否かは, ひずみと伸び能力との大小関係, または応力と引張強度との大小関係に基づいて判定されているが, この際, 数々の条件が仮定される。これらの仮定条件の中でも, 特にコンクリートの変形, 応力, 強度を支配する物性値がまだ適切には把握されていないことが, 矛盾が生じる原因のひとつであることを指摘した。
著者
石川 浩 吉田 宏 岡崎 俊吾 富岡 寿男
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.26-32, 1980-06-15 (Released:2013-04-26)

香港地下鉄海底トンネルは, 香港島と九竜を結ぶ長さ1400mの沈埋トンネルで, 日本の建設会社による外国での最初の沈埋トンネル工事として施工された。本工事の特色は, (1) 14本のポストテンション式プレストレストコンクリート造沈埋凾 (幅13.1m, 高さ6.5m, 長さ100m, 排水量7800t) による, (2) 半径2800mの曲線眼鏡型トンネルで, (3) 両端の沈埋凾に換気塔ケーソンを水中水平接合していること, などである。
著者
岡田 凌太 坂本 光重 井保 武寿 中川 良隆
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.31-42, 1992-12-01 (Released:2013-04-26)

明石海峡大橋は中央支間長1990mの3径間2ヒンジ補剛トラス橋として建設される世界最大の吊橋である。約300mの主塔をささえる2基の主塔基礎 (2P, 3P) は設置ケーソン工法により施工され, ケーソン内には全体で約50万m3の水中コンクリート (水中不分離性コンクリート) が打設された。この水中不分離性コンクリートには, 打設面積が広く, かつ1回のコンクリート打設量が約1万m3に及ぶため, 厳しい品質規定が定められた。本稿は, 2P, 3Pで打設した水中不分離性コンクリートの施工概要について報告する。
著者
玉本 学也 西 恭彦 阿部 雅史 遠藤 文美男
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1055-1060, 2017 (Released:2018-12-01)
参考文献数
13

北陸新幹線,九頭竜川橋りょうは,一般県道福井森田丸岡線が並行して計画されていることから,下部工を道路と併用する7径間連続PC箱型桁の鉄道道路一体橋として計画されている。本稿では,設計結果,並びに施工計画等について報告する。設計では,鉄道と道路との近接状況,非出水期に限られる河川内工事の施工性,新幹線鉄道の走行性に配慮した構造計画を行い,一体となる下部工は,鉄道,道路双方の基準を用いて照査を行った。また,施工時には,PCグラウトの実物大試験を行い,有害となる残留空気が生じないことを照査している。
著者
山口 信 森島 慎太郎
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学論文集 (ISSN:13404733)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.105-116, 2023 (Released:2023-11-15)
参考文献数
18

本研究では,細径真直鋼繊維を適用したスラリー充填繊維コンクリート(SIFCON)版のスポール抑止性能の明確化と,それを用いた効率的な耐爆構造部材の開発を目的とした。本研究の前半では,爆薬量130~170gの条件下で,厚さ80mmのSIFCON版を対象とした接触爆発試験を行い,SIFCONを適用することにより普通コンクリートを用いた場合と比較してスポール限界となる換算コンクリート厚さを55%低減できることが示された。本研究の後半では,SIFCONとプレパックドコンクリート(PPC)より成る一体型耐爆構造版の耐爆性能について検討し,SIFCON自体のスポール抑止効果に期待するよりも,SIFCON層がPPC層で発生したスポール破壊片を捕縛する効果に期待する方が効率的な耐爆設計が可能になることを示した。
著者
阿部 智
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.31-39, 1996-04-01 (Released:2013-04-26)

ガラス棟は, 吹抜容積250000m3のガラスアトリウムで, その大屋根は, 2本の大柱のみで支えられる特殊な構造形態を成す。その構造体の層間変位を支配する大柱の剛性を高めるために, 80N/mm2の高流動・高強度コンクリートを柱に充てんしている。敷地周囲は全て鉄道構造体に囲まれ, 地下21mの地下工事は逆打工法で進められた。ただし, 連壁と地下躯体は防振対策上, 縁が切られており, それに対応した特殊な逆打躯体工事が要求された。また, 地下2階中央には, 2層吹抜空間があり, 長さ60mのPCブリッジが切ばりとして, 地下1階に渡されている。これはプレキャストブロックを現場で連結し, プレストレスにより一体化された地下の橋となっている。