著者
井上 貴央 田中 健一 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第43回ケモインフォマティクス討論会
巻号頁・発行日
pp.1A12, 2020 (Released:2020-11-29)
参考文献数
5

創薬や材料開発では, 所望の性質を持つ新規有機分子の効率的な探索手法が求められている. 定量的構造物性相関モデルとしてグラフニューラルネットワーク (GNN) と呼ばれる深層モデルを用いることで, 既存の特徴抽出手法を用いるよりも良い予測性能で, 候補構造のバーチャルスクリーニングができる. しかし, 先行研究では学習に多量の化学構造データを利用しており, 興味のある構造・物性データが多量に集まりにくい分子設計の現場では, 十分な予測性能が得られない可能性がある. 本研究では, Message Passing Neural Network (MPNN) と呼ばれるGNNモデルの中で特徴ベクトルに摂動を加えることでグラフデータの拡張を行うPerturbating MPNN (PMPNN) を設計した. QM9データセットでMPNNとの比較を行い, 提案手法の有効性を検証し, 予測に対する摂動の効果を考察した. また, データ拡張により約半数のデータセットでも元と同等の予測性能が得られ, 少量のグラフデータでもうまく特徴抽出できると示唆された.
著者
山田 一作 ソロビヨワ イェレナ 藤田 典昭 奥田 修二郎 川嵜 敏祐 成松 久 木下 聖子 松原 正陽 土屋 伸一郎 新町 大輔 藤田 晶大 青木 信幸 鹿内 俊秀 鈴木 芳典
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.O10, 2014

糖鎖研究において産出された糖鎖データには様々な表現方法が存在しており、このことは近年のウェブ技術を利用したライフサイエンスデータベース間の連携の妨げとなっていた。そこで我々は、糖鎖構造に対する新たな表記法としてWURCS(Web3 Unique Representation of Carbohydrate Structures)を開発した。WURCSは、曖昧さを含むあらゆる糖鎖構造を一意に表せる線形表記法であり、URIとして利用可能である。併せて、糖鎖データベースの構造データからWURCSに変換するソフトウェアを開発した。これにより共通の糖鎖構造を含む分子の横断検索が可能となる。また、WURCS普及促進のためのWURCSWorkingGroupを組織し、国際標準化に向けた活動を行っている。
著者
阿部 孝俊 中野 隆志 柿ヶ野 武明 山下 渉 福川 健一 岡崎 真喜 玉井 正司
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第33回情報化学討論会 徳島
巻号頁・発行日
pp.J05, 2010 (Released:2010-10-23)
参考文献数
3

ポリイミドの着色機構に関して、長距離補正時間依存密度汎関数法と分子動力学法を組み合わせて理論的に解析を行った。その結果、従来考えられていた分子内及び分子間の電荷移動型励起による可視光吸収に加えて、分子間相互作用による吸収スペクトルの長波長シフトが確認できた。この分子間相互作用は、全芳香族ポリイミドの可視光吸収に大きく影響し、また、脂環構造を有する半芳香族ポリイミドにおいても影響することが明らかになった。
著者
金 泰亨 金子 弘昌 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.2C1a, 2012

蒸留プロセスで重要な問題である共沸現象について設計段階から考慮する必要がある。分子間力による混合物の非理想性は共沸の主要な原因とされており、電荷情報から得られる分子間力に関する変数は共沸予測の重要な情報になると考えられる。今回は量子化学計算による分子の電荷情報を統計モデル構築の際の説明変数として用いることで共沸予測モデルの開発を行った。提案手法により未知の混合物の共沸を精度良く予測できると期待される。
著者
濱田 信次 森本 沙也香 関野 秀男
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第37回情報化学討論会 豊橋
巻号頁・発行日
pp.P13, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
7

近年、密度行列埋め込み理論とよばれる動的平均場理論のある種の簡易版が提唱されており、これを6角格子のHubbard Modelに適用してグラフェンの電子状態の理解を試みた。
著者
佐藤 彰准 宮尾 知幸 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第43回ケモインフォマティクス討論会
巻号頁・発行日
pp.1A04, 2020 (Released:2020-11-29)
参考文献数
7

定量的構造活性相関(QSAR)と定量的構造物性相関(QSPR)モデルは、化学構造から生物活性や分子物性を定量的に予測する。通常、分子構造のトポロジカル情報が利用されている(2次元分子表現、2D記述子)。しかし、分子は三次元空間に存在するため、構造情報が重要であると考えられる。多様な化合物に適用可能な3次元分子表現(3D記述子)として、被験分子と参照分子との類似性を示す方法が提案されている。本研究では、この3D記述子をQSAR/QSPRモデリング(回帰タスク)に導入した。さらに、3D記述子の2D記述子と比較し、訓練データの多様性の観点から、3D記述子のメリットを検討した。その結果、量子力学に基づく物性予測では、3D記述子の方が2D記述子よりも優れていることがわかった。また、特定の生物学的標的に対する低分子の活性を予測する課題では、訓練データやテストデータの多様性に関わらず、2種類の表現法による性能の差に一貫した傾向は見られなかった。
著者
中原 真希 向田 志保 岩壁 幸市
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第43回ケモインフォマティクス討論会
巻号頁・発行日
pp.1A05, 2020 (Released:2020-11-29)
参考文献数
9

機械学習を活用した化合物構造の最適化では、高精度なモデルを構築・予測することに加えモデルから材料開発に適用できる新たな知見を得ることも重要である。これまでに、ディープラーニングを用いて化合物の予測根拠を可視化する手法が報告されているが、ディープラーニングでの解析が困難な少数データにも適用できる手法の開発も求められている。本発表では、記述子にフィンガープリントを用いた機械学習モデルから、各部分構造の寄与を部分構造の広がりを考慮した上で統合し、ターゲット分子上に可視化する手法を提案する。また、公開データに対して提案手法を適用し、既知の化学的知見と比較して妥当な予測根拠が得られたことを示す。さらに、提案手法を共重合体の最適化に用いた結果を報告する。
著者
藤田 眞作
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.1A3b, 2012

プリズマン誘導体のステレオイソグラムを検討する.プリズマン骨格を記述するRS-立体異性群を、点群D3hから出発して、大域的な対称性をあらわすように構成する.これに基づいて,各シクロブタン誘導体のステレオイソグラムを描く.RS-立体異性体群は,キラルな点群D3により,位数4の因子群として記述することができる.この因子群により,プリズマン誘導体を5つのタイプに分類して,立体化学的な特徴を論ずる.
著者
細矢 治夫
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第37回情報化学討論会 豊橋
巻号頁・発行日
pp.O06, 2014 (Released:2014-11-20)
参考文献数
7

現在世界的に流布している有機化学の成書や教科書の中で、不飽和共役炭化水素に関 する交差共役(cross conjugation)の概念の重要性について説いてあるものはほとんどない。演者は、グラフ理論的分子軌道法による解析を行った結果、この概念が有機電 子論の基礎的な裏付けに重要な役割を果たしていることを明らかにし、その適用限界の指摘も行うことができた。この理論は、芳香族性、反芳香族性の議論にまで展開することができる。なお、この議論はHMO法レベルのものであるが、より精度の高い理 論にも十分耐え得るものである
著者
田中 裕貴 加藤 博明
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第31回情報化学討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.P14, 2008 (Released:2008-11-06)
参考文献数
3

化学物質の種々の性質はその化学構造と密接に関連していることがよく知られている。本研究では、分子におけるヘテロ原子の局所的な空間配置に注目し、ヘテロ原子間の三次元距離情報をもとに生成した最小全域木(ヘテロツリー)を定義した。CSDから抽出した一群の化合物データに対してヘテロツリーの生成を行い、その出現頻度を求めるとともに、特徴的なヘテロツリーパターンと活性との相関についても調査を試みている。
著者
柴山 翔二郎 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.2A01, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
13

機能性ポリマーの新しい構造を実験で探索するのには限界がある。そこでケモインフォマティクスを利用して材料設計を行うが、新規材料の原料は市販されていないことが多く一般にデータが少ない。本研究ではポリマーを原料分子の記述子と組成比の線形和で表現し回帰モデルに線形モデルを選定することで、39サンプルのポリマーデータからモデル構築した。原料分子の記述子として文献値でなく分子構造に対して計算される分子記述子を使用することで、構造生成にも適用しうるモデルの構築を目指した。構築したモデルを利用して目的物性値に近づけるように原料組成比を最適化し、また、原料の構造生成を行った。フラグメント記述子で原料を表現したため、構造生成にあたりmol2vecを用いてフラグメント記述子の分散表現を活用した。原料組成比を最適化した結果を実際に合成したところデータになかった組み合わせにおいて目的物性値が最も目標値に近づいた。本発表では方法論に焦点を当てて紹介する。
著者
北村 由羽 寺戸 えみ 田中 大輔
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P25, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
3

金属-有機構造体 (MOFs) の合成においては, 反応条件のわずかな違いにより様々な 反応状態を経由するため, 結晶構造が異なる結晶生多形が多数生じる可能性がある. 特 に, ランタノイド金属 (Ln) を中心に持つ Ln–MOFs は複数の結晶多形が存在する. 合 成におけるパラメーターは無数に存在し, これらの要素は複合的に影響するため, その 影響の評価が困難であり, 結晶多形を選択的に合成するためには試行錯誤に基づく実 験が必要不可欠であった. 本研究では, 機械学習を活用し, Ln–MOFs 合成における支 配的因子を統計的に評価することを目指した. 実際に, 溶液の濃度, 反応温度や時間, 金属の種類など様々な条件を組合せソルボサーマル合成を行い, 実験データの収集を 行い, 実験結果に対して決定木学習を行った. その結果, 合成に影響を及ぼす支配的因 子はランタノイドの試薬会社であることが明らかとなり, 試薬中に含まれるわずかな 不純物の存在が結晶化に影響を及ぼすことが示唆された.