著者
小田 彰史
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.36-43, 2013 (Released:2013-10-02)
参考文献数
26

多数の共著者とともに論文を発表した数学者ポール・エルデシュにちなんで、エルデシュとの距離を測るエルデシュ数が考案された。エルデシュ数は論文著者を頂点、共著関係を辺として作成したグラフにおけるエルデシュまでの距離で定義される。この概念はあくまでも数学者コミュニティにおけるジョークとして提案されているが、数学からはかけ離れた分野の研究者も比較的小さいエルデシュ数を持つことがあり、学問の各分野が決して孤立したものではないことを示す格好の教材となっている。本研究では学問全体における情報化学の位置を初学者にわかりやすく示すため、日本の情報化学者のエルデシュ数について検討する。それに際して、エルデシュ数2を持つ細矢治夫を中心としたサブグラフを導入し、細矢からの距離細矢数を用いることでエルデシュ数を近似的に求められることを示した。さらに情報化学者以外のエルデシュ数についても論じ、エルデシュ数が研究者コミュニティのつながりが密であることを示すよい教材となることを確認した。
著者
仙石 康雄 松岡 誠 杉木 真一郎 田中 成典 栗田 典之 関野 秀男
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-8, 2004 (Released:2004-03-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

巨大分子の電子状態を計算する手法の1つとして、Fragment 分子軌道(FMO)法がある。FMO法は分子をフラグメントに分割して計算することにより、通常の分子軌道(MO)計算では計算不可能な巨大分子の電子状態を計算できる。FMO法の計算精度およびコストはフラグメントの分割方法に大きく依存する。我々は、密度汎関数法(DFT)に基づくFMO法を独自に開発し、これを用いてDNAの電子状態を塩基分割及び塩基対分割の二種類のフラグメント分割方法で計算した。これらの計算から得られた分子の全エネルギーとMO分布について通常のDFT法による結果と比較した結果、塩基ごとに分割したFMO計算は、塩基対ごとに分割したFMO計算と同程度の計算精度で、全エネルギーとMO特性を得ることができることが明らかになった。
著者
加藤 涼太 田中 健一 小寺 正明 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P12, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
7

化合物の物性を予測する手法の一種に、定量的構造物性相関(QSPR)がある。QSPRでは、物性既知の化合物を用いて化合物の構造と物性値の間の関係を統計的手法でモデル化する。QSPRの入力として化学構造から計算した記述子を用いる場合、多くの記述子の中から最適な組合せを見つけなければならず、その中に予測に必要な情報が十分に含まれているか分からないという問題もある。そこで、本研究では記述子を計算することなく原子の3次元座標値と原子番号および分子のグラフ構造を入力とし、Graph Convolutional Neural Network(GCNN)を用いた予測手法を開発した。記述子を用いる手法と比較した結果、予測タスクによって提案手法が勝る場合も劣る場合もあった。その原因としてモデルの表現力の不足が考えられるため、入力方法やモデル構成を改良することで性能が向上すると考えられる。
著者
萩原 正敏
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1S01, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
5

我々はスプライシングなどの遺伝子発現過程を、蛍光・発光プローブによって生体内で可視化する独自技術を開発し、創薬スクリーニングに用いることで、RNAスプライシングを操作できる合成化合物を開発してきた。その作用機序の検討やトランスクリプトーム解析などから、スプラシング操作薬の標的となり得る遺伝性疾患の条件が判明しつつある。遺伝病データベース等をもとに標的疾患をリストアップして、独自のスプライシングアッセイと、疾患iPS細胞および疾患モデルマウスによる薬効評価を行っている。このような新しい創薬手法を駆使して、従来は治療出来なかったライソゾーム病などの遺伝病や特殊な癌などに対する治療薬候補物質を見出している。また、脳梗塞や神経変性疾患などに対する再生医療も、小分子で実現できる可能性が見出されている。ケミカルバイオロジーに立脚した新しい創薬手法とその今後の可能性について議論する。
著者
小林 正人 岩佐 豪 高 敏 高木 牧人 前田 理 武次 徹也
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

金属ナノクラスター触媒の反応性は、構成元素だけでなく、サイズや環境、構造など様々なファクターに依存するため、触媒活性の決定的因子の解明は困難であった。本研究では、銅クラスター触媒によるNO解離反応を例に、反応経路自動探索法を用いた系統的量子化学計算とスパースモデリングの手法を併用した触媒活性因子の抽出を試みた。具体的には、LASSO推定、SCAD推定、MC+推定の3つの手法を使い、軌道エネルギーや局所的な指標などの説明変数を用いて、Cu13クラスター上でのNO解離の遷移状態エネルギーを回帰した。その結果、遷移状態のエネルギーはLUMOの軌道エネルギーと負の相関があること、SCAD推定やMC+推定ではLASSO推定よりもコンパクトで相関係数の高いモデルが得られることがわかった。
著者
小野 直亮 横山 直己 黄 銘 Md. Altuf-Ul Amin 中本 雅俊 太田 大策
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.110-116, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16

マイクロアレイや次世代シーケンサーを用いた網羅的発現変動解析において、多数の実験条件の組み合わせの中から有意に細胞の表現型に影響を与えているものを見つけ出す必要があり、そのためには分散分析(ANOVA)を始めとする多変量解析のための統計分析手法が必要となる。本研究ではRNA-seqを用いたユーグレナ(Euglena gracilis)の発現解析のデータをもとに、Bayes ANOVAを用いた発現変動解析により代謝経路のなかで有意に変動している遺伝子を抽出するアプローチを紹介する。培養条件の変化(好気環境から嫌気・微好気への変化)及び、増殖フェイズの変化(指数増殖期から定常期への変化)に応答して発現の変動した遺伝子を解析した。置換検定にもとづいてベイズ因子の分布を計算することにより、一般には検出の基準が不明瞭なベイズ因子によるモデル比較に対し、有意水準やFDRによる定量的な検出の基準を与えることを可能にしている。
著者
山之内 昭博 杉本 学
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第38回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.92-93, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
6

化合物に関する知識情報をWebページから取得して、我々が開発している電子状態データベースに登録することを目的として、Webページのクローリングとスクレイピングのためのソフトウエアを開発した。
著者
川添 康司 高橋 由雅
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第24回情報化学討論会
巻号頁・発行日
pp.J17, 2001 (Released:2001-10-24)
参考文献数
3

We have investigated the audification of molecular information. The musical note information consists of a tone, a velocity and a type of a musical note. The sequence of this musical note information forms a musical score. In the present work, we have developed a computer program for the audification of gene. The DNA nucleotide sequence of a gene was employed for the audification. The program assigns the musical note information to each nucleotide using the transformation algorithm and then outputs the MIDI sequence as the musical score for a MIDI device. Several transformation algorithms were investigated as follows: (1) the simple mapping method that assigns notes to the DNA bases. (2) The unique mapping method that assigns the note information with the base usage on the sequence. (3) The musical-theory-based mapping method that is based on the musical theory to get a better musical score. For the third method, mapping the chord to the codon to form the bass line was employed too. It was observed that it is possible to get some advanced transformation from the DNA sequence to the musical score using the information derived from the base array.
著者
宮尾 知幸 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第41回ケモインフォマティクス討論会 熊本
巻号頁・発行日
pp.1A06, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
7

三次元リガンド情報に基づきヴァーチャルスクリーニング(VS)を行う際、標的マクロ分子との結合状態におけるリガンド分子の立体配座が重要な役割を果たすと考えられる。また、類似性検索に基づくVSでは、活性化合物の類似構造のアンサンブルを検索クエリとして利用する手法が提案されている。本発表では、リガンドベースVSにおいて、活性化合物のコンフォメーションが重要なのか否かを判断するためのベンチマーク計算、並びに、三次元リガンド構造に基づくVSにおけるアンサンブル効果を検証した結果を報告する。コンフォメーションはそれほど重要ではなく、アンサンブル効果は三次元リガンド構造に基づくスクリーニングであっても有効であるとの結果となった。