著者
中村 國衛 野元 けい子 大沢 俊彦 高橋 幸男 秋葉 光雄 柿本 紀博
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1994, no.3, pp.307-316, 1994-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
3
被引用文献数
2

有機ゲルマニウム化合物,とくにBis(2-carboxyethylgermanium)trioxide[(GeCH2CH2COOH)2O3,Ge-132],Bis(2-amino-2-carboxy-1-phenylethylgermanium)trioxide[GeCHPhCH(NH2)COOH2O3,Ge-373],Bis(2-amino-2-carboxyethylgermanium)trioxide[GeCH2CH(NH2)COOH]2O3,Ge385]の生理活性をinvitroモデル実験系および実験動物(糖尿病ラット)に投与して検討した.Ge-373は,DNAを断片化する作用を示した.この事実から,有機ゲルマニウム化合物が糖に対して特殊な作用を発揮するのではないかと考え,MaiUard反応(non-enzymaticamino-carbonylreaction)における効果の検討を行った.種々アミン酸とリボースを混合しAmadori転移およびAdvancedGlycationEndproducts(AGE)の生成を測定する実験系に,Ge-132またはGe-385を加え,AGE形成を蛍光分光光度計により測定した.有機ゲルマニウム化合物は,Amadori転移産物の形成は阻害しなかったが,AGEの形成を抑制した.とくにGe-385は,いったんできたAGEを可逆的に減少させる作用を発揮した.Streptozotocin(STZ)により誘発した糖尿病ラットにGe-132またはGe-385を100mg/kg/d経口投与し,糖尿病合併症に対する効果を観察した.Glycatedalbumin,fructosamineの低下,レンズ混濁の低下が観察された.糖と有機ゲルマニウム化合物,とくにGe-132との相互作用の様子をNuclearMagneticResonance(NMR)を用いて解析した.Ge-132は糖の1および2位のヒドロキシル基と反応し,糖一有機ゲルマニウム複合体を形成することが判明した.この反応がAmadori転移以降の反応を阻害し,AGEの可逆的可溶化を誘導する化学分子論的機序であろうと考えられる.
著者
吉田 尚幸
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.552-553, 2016-11-20 (Released:2017-05-01)
参考文献数
2
著者
植田 光洋
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.496-499, 2016-10-20 (Released:2017-04-03)
参考文献数
8

扱いづらい反応として悪名高かったラジカル反応は,多くの化学者による献身的な努力により,一般社会にとっても有用な有機化学反応へと変貌しつつある。本稿では,ラジカル反応の基本事項を解説するとともに,近年著しい発展を遂げている有機分子触媒によるラジカル反応に関して,特に炭素ラジカルの生成法及びその活用法に関して概説した。また,ラジカル反応の特性を活かした連続的ラジカル反応(多成分連結反応)についても合わせて紹介した。
著者
田口 勇
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.10-13, 1992-01-20 (Released:2017-07-13)

鉄, 銅などの金属は古くから人類の生活に密着し, 文明形成に大きな役割を果たしてきた。しかし, 土器などの歴史に比較して, 金属の歴史には謎の部分が多かった。これらの金属には錆びるという欠点があること, 金属資料の自然科学的解析は非破壊で実施しなければならないのに, 非破壊解析法は未発達であることなどがおもな原因であった。しかし, 最近, 自然科学的解析法が長足の進歩を遂げ, その適用により金属の歴史の謎がようやく解けはじめた。これまで明らかになった鉄と銅の歴史そのものと, 明らかにした解析法の概要を述べる。
著者
渡辺 正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.600-603, 1999-09-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3

アメンボが水面に遊び, 朝露が葉の上でころがり, きれいなガラス面に水滴がさっと広がる。水性インクではプラスチック表面に文字が書けず, 水面に置いたショウノウはあちこち動き回り, テフロンコートのフライパンはこげつかない…どれも表面張力の織りなす世界である。表面張力はどうやって生まれるのか, その大きさは何が決め, どんな要因で変わるのかを考えつつ, いっぷう変わった「表面ワールド」を鑑賞しよう。
著者
髙峯 和則
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, pp.460-461, 2016-09-20 (Released:2017-03-01)
参考文献数
5

本格焼酎の伝来は明らかにされていないが,その仕込み法は,鹿児島で独自に発達し個性豊かな味わいを持つ蒸留酒として全国各地で愛飲されている。しかし,全国に広まったのは1980年代以降であり,それまでは南九州の地酒として飲まれていたものである。ここでは,本格焼酎の歴史や製法,香りの由来や生成機構,機能性などについて紹介する。
著者
宮下 文秀
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.476-479, 2012-11-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6

物質の質量を正確に秤量することは,化学実験を行う上で基本的かつ重要な過程の一つであり,そのために,その操作や装置の原理を理解,把握することが求められる。その質量を正確に測定するには,天びんは欠かせない。天びんには,その原理からいくつかに分類することができる。ここでは,代表的な天びんとして機械式(釣り合い)天びん,バネ式はかり,直示化学天びん,そして電子天びんとしてロードセル式と電磁式を取り上げ,各々の原理とその特徴などについて説明する。
著者
吉岡 常雄 上野 民夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.488-491, 1985-12-20 (Released:2017-09-15)

近代化学工業はW.H.Perkinによるモープ紫(最初の合成染料)の発見に始まり(1856年), K.Graebeによるアリザリン(西洋茜(あかね)の色素)の合成(1867年), A.von BaeyerとHeumannによるインジゴの合成(1890年)によって, 最初は染料工業として確立された。けれども人類は, 太古から三千余種にも及ぶ草根木皮や動物色素を用いて布皮を染め, 装飾や服飾に用いてきた。昨今合成染料の普及はめざましいが, 今ここに天然染料について化学的に考察することは, 近代化学のルーツばかりか人類の遺産を知る上でも重要と考える。今回は数多い天然染料の中から, 帝王紫と呼ばれるロマンに富んだ古代の紫染めの世界に招待したい。
著者
溝口 勝大 田畑 明通 仲野 彰 土田 英俊 篠原 功
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1974, no.10, pp.1974-1980, 1974
被引用文献数
1

ピベラジニウムおよびp-キシレンev,evs-ジイル(P-キシリレン)基からなるカチオン(1~V)のZ7,8,8-テトラシアノキノジメタシ(CQ)塩を合成し,比抵抗pおよび電導の活性化エネルギーEを測定した。<BR>CQsimplesaltのpは,いずれも~107Ω,cmと大きいが,中性のCQ(CQe)を添加したcomplexsaltでは,1-CQ(3.2×10sΩ,cm)ll-CQ(1.1×10s)V-CQ(7.4×1O<sup>2-</sup>)1y-CQ(81)III-CQ(44)の順にpほいちPるしく減少する。simple,saltのN,N-ジメチルホルムアミ,ド(MF)やアセトニリルに対する溶解性は,complexsalt合成の必要条件であり,III-CQ駕1V-CQIII-CQ工-CQ≧V-CQの順となる。したがって,CQeの添加によるpの低下は,ビペラジニウム環とP-キシリレン基が組み合わさってはじめて発現し,p-キシリレン基によるイオン席間隔の保持と溶解性の増大はCQeとCQrの錯形成に,ピペラジゴゥム環はCQO,CQのカチォンへめ配列を規制して電導性に寄与する推定した。