著者
角田 鉄人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.414-415, 2009-09-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
5

光延反応は,リン原子の持つ高い酸素親和性を巧みに利用し,活性水素を持つ広い意味での酸性化合物(HA)とアルコールとを脱水的に縮合させる反応である。利用できるHAとしてカルボン酸,フェノールなどの酸素求核剤,イミドを代表とする窒素求核剤,さらにはイオウ求核剤や炭素求核剤もあげられる。光延反応は,反応の一般性,信頼性,応用性の広さ故,今日の有機合成化学を支える重要な素反応となり,多くの有機化学者がその恩恵に浴している。
著者
室井 高城
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.68-73, 2009-02-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

私たちが化学の実験で最初に眼にするのは硫酸,硝酸,アンモニア水溶液などの無機薬品である。これらの強い酸,塩基の性質に驚いて化学への興味をかきたてられた者は多い。今でも学校の実験室でこれらの化学品を合成したことが色濃く思い出される。しかし,これらの無機薬品の工業的製法は実験室とは全く異なっている。筆者は在学中,硫酸やアンモニアを合成している無機化学工場で工場実習を行ったことがあるが規模の大きさに驚かされた。それから約40年が経ち,今では,原料事情や経済変動により当時の硫酸工場もアンモニア工場も操業を停止してしまい工場の跡形もない。この100年の間に硫酸,硝酸,アンモニア共に原料事情と需要動向は大きく変遷した。又,触媒技術の開発とプロセス技術進展により以前のプロセスとは違ったものとなってきた。これらの化学品の最新の製造プロセスについて知ることは化学に携っている者にとって興味深いものと思う。
著者
瀧本 真徳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.200-203, 2014-04-20 (Released:2017-06-16)
参考文献数
6

カルシウム(Ca)は典型金属の一種であり,地殻中に豊富に存在する。カルシウムは工業的には主として,建設・建築用資材として多用されているが,金属元素としての需要は同族の金属元素であるマグネシウムに比較すると少量に留まる。また,有機合成化学においても,マグネシウムがグリニャール試薬の原料として多用されるのに対し,カルシウムの利用は限られた範囲に留まっている。しかし,カルシウムカーバイドなど有機化学と歴史的に関係の深いカルシウム化合物が存在し,また近年,新たな用途も見いだされつつある。ここでは,カルシウムと有機化学の関係についていくつかの話題を紹介する。
著者
村上 雄一 服部 達彦 内田 〓
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.1945-1948, 1969-09-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8
被引用文献数
5

エチレンと酢酸から酢酸エチルを常圧気相流通法で直接合成する反応において数種の触媒を検討した。活性の順序は多孔性イオン交換樹脂(Amberlyst15)>ケイタングステン酸-シリカゲル>リン酸-ケイソウ土>ゲル型イオン交換樹脂(AmberliteIR-120)であった。ケイタングステン酸触媒は200℃ではかなりの活性をもつが,活性の経時低下が著しかった。200℃以上ではかえって酢酸エチル収率は低下し,代ってアセトンの生成が急激に増加した。多孔性イオン交換樹脂触媒ではほとんど副反応なしに,140℃,SV175hr-1,エチレン対酢酸モル比5以上でほぼ平衡収率(59%)で酢酸エチルを生成した。エチレン対酢酸モル比の影響が大で,この比が大きいほど酢酸エチル収率が大きく,酢酸の反応抑制作用が見られた。原料中の水の抑制作用はさらに強く,エステル収率を低下させた。140℃では10時間までこの触媒の劣化はほとんどないが,150℃ではかなりの劣化が観測された。通常のゲル型樹脂は活性を示さず,使用後は完全に崩壊していた。
著者
井本 立也 原納 淑郎 西 泰英 益田 悟
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.106-109,A7, 1964-02-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9
被引用文献数
2

酸化亜鉛を水素で還元する反応を,温度範囲665°~738℃,酸化亜鉛量40.0~70.0mg,初期水素量5~9cmHgで行ないつぎの結果を得た。酸化亜鉛量が水素量とくらべて少ない場合には,反応速度は酸化亜鉛の表面積に比例するが水素圧には依存しない。したがってこの反応は酸化亜鉛の分解過程が律速しており,その活性化エネルギーは17.0kcal/molであることを知った。これらの事実は酸化亜鉛量が水素量にくらべて多い場合について報告した既報の結果(酸化亜鉛の水素による還元反応の機構は,まず酸化亜鉛が酸素と亜鉛蒸気とに分解し,その酸素と水素とが反応して水蒸気となる)を支持する。
著者
片山 健二
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.318-319, 2019-07-20 (Released:2020-07-01)
参考文献数
2

サツマイモを直に焼きあげた「焼き芋」は,冬の定番スイーツとして人気がある。サツマイモには,加熱調理するとイモに含まれるデンプンが熱により糊化し,β-アミラーゼが糊化デンプンを糖化してマルトースを生成し,甘味が増すという性質がある。加熱調理により生じるマルトースと生イモに含まれるスクロース等の遊離糖の含量の総和,及びそれらの甘味度が,焼き芋の甘さを決める主な要因である。マルトースの生成量は加熱調理の方法,デンプンの糊化温度やβ-アミラーゼの活性の影響を受け,生イモのスクロース含量はイモを収穫した後の貯蔵期間・条件等の影響を受ける。
著者
深野 和裕
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.396-399, 2014-08-20 (Released:2017-06-16)

スズは,周期表の14族の炭素族に属し,単体は銀白色のやわらかい金属で展性や延性があり,人間生活に古くから関わっている。たとえば,包装材としてスズ箔,鉄板にスズを塗布したブリキ,食器などに用いられている。合金の青銅は,紀元前より武器や美術品などに用いられてきた。同じ合金のハンダは鉛とのいろいろな配分で作られてきた。しかし,最近では,環境への影響を考えて,鉛フリーのものが開発されている。様々なものに利用されてはいるが,一番利用されているのは,なんといってもブリキである。ここでは,高校の授業の中で紹介されていることと人間生活とスズの関わりを含めて紹介する。
著者
熊本 卓哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.266-269, 2012-06-20 (Released:2017-06-30)
被引用文献数
1

アジピン酸の工業的合成とその利用について述べる。アジピン酸は,シクロヘキサンの酸化より合成されるシクロヘキサノン-シクロヘキサノールの混合物(KA oil)を硝酸酸化して得るKA法が一般的であるが,副生する一酸化二窒素が環境に対して問題があるため,硝酸酸化を用いない方法や一酸化二窒素の再利用法の開発も進んでいる。本稿では,アジピン酸の製造について,KA oilを経由する方法のほか,シクロヘキセンを経由する製造法や,シクロヘキサンからの1段階合成法などについて概説し,その利用について簡単に述べる。
著者
高橋 辰男 小磯 武文 田中 信行
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1974, no.1, pp.65-70, 1974

水溶液中におけるヘキサアンミソクロム(III)イオンおよびトリス(エチレンジアミン)クロム(III)イオンとヨウ化物イオンおよび過塩素酸イオンとの間のイオン会合定数を電気伝導度法ならびに分光光度法で決定した。<BR>電気伝灘度法から得た25℃における熱力学的会合定数,Keen,Mx,および過塩素酸イオンを含まない溶液条件で分光光度法から得た会合定数,Ksp,Mx,はそれぞれ,K n,(NNi sr=19 ± 4,K,p (NH)d =22±7,K,(eR):= 26±6,およびK,po(en),1=21±4であった。さらに,過塩素酸イオンが共存する条件で分光光度法より間接的に得た錯イナソと過塩素酸イオンとの会合定数はそれぞれ,K,p,r(eP,Clo=16±4,K,p,(N,II3),clo,=10 ± 8であり,これらは亀気伝導度法で得たKe cr(en),clo,=11±4,K。c,(NI,13),CIOi=,15±3と実験誤差を考慮すればほぼ一致すると考えられることからも,電気伝導度法ならびに分光光度法から得た会合定数にはなんら本質的な違いは認められなかった。また,クロム(III)錯イオンはその対応するコバルト(III)錯イオンに比較して過塩素酸イオンおよびヨウ化物イオンについては会合能がやや低いものと考えられる
著者
浦 康一 橋場 功
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.253-260, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
22

選択性除草剤として,フェノキシプロピオン酸エステルあるいはピリジルオキシプロピオン酸エステルが知られている。著者らはフェノキシあるいはピリジルオキシに代わって縮合ヘテロ環を幅広く検討する中,キノキザリン類の中に細葉雑草の除草に卓効のある,有望な化合物群を見いだした。その中で,キザロホップェチル(コード No. NC-302 )は特に強い効力を持ち,茎葉処理型除草剤として企業化された。その工業化に際し,キノキザリン環部の合成は大きな課題の一つであったが,汎用な原料から合成できる簡単な方法を見いだした。また,キザロホヅプェチルは不斉炭素を持ち,光学異性体が存在するが,その有効成分は(R)-(+)体であり,ラセミ体にくらべて2倍の効果を持つ。(0)0(+)体の製造は,分割法ではなく,光学活性な原料を使いラセミ化させない方法で行っている。また,(R)-(+)体は,ラセミ体とは異なり結晶型が二つ存在する。この分測晶析法が発見され,(R)一(+)体の工業化が可能となった。本論文では,特に光学活性キザロホップエチルと,その重要な中間体である2-(4ヒドロキシフェノキシ)プロピオン酸エチルの製造法について,詳しく述べる。
著者
竹林 [トヨ]矩 末永 俊朗
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.116-119, 2007-03-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
2

医薬品の開発研究は創薬化学とプロセス化学に大別されるが,一般に,創薬化学に比べてプロセス化学はあまり馴染みがない。本稿では,両者を対比させながら,医薬品の探索研究から申請までの過程におけるプロセス化学について紹介する。
著者
冨田 友貴 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.132-135, 2016-03-20 (Released:2017-06-16)

現行の高等学校「化学」の教科書におけるキサントプロテイン反応に関する記述には,本反応が観察されるタンパク質やアミノ酸の構造,および実験条件の記述に相違がある。今回我々は,芳香族アミノ酸を基質として,濃硝酸および二分の一の濃度に希釈した硝酸水溶液によるキサントプロテイン反応を行い,ニトロ化の進行について調べた。また側鎖に酸性の官能基をもたないフェニルアラニンが,ニトロ化された後に塩基性水溶液中において色調の変化を示す理由を調査した。