著者
河端 康広
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.396-399, 2008-08-20 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4

化学反応を理解する上で,酸・塩基の概念は極めて重要である。ブレンステッドの定義によって,酸塩基反応をプロトンの授受として溶媒の役割と関連づけながら統一的に説明することができる。ここでは,ブレンステッドの定義に基づいて,酸・塩基の強さ,塩の加水分解,酸塩基指示薬や緩衝溶液について,高校化学で扱う内容を中心に解説する。また,拡張された酸塩基概念としてのルイスの定義にもふれる。
著者
柴田 茂雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.30-34, 1994-01-20 (Released:2017-07-11)

一見単純にみえる水の電気分解も電極反応は一筋縄では行かないほど複雑多岐である。電極には幾通りもの反応の道筋が用意されている。どの道筋を通るかは電極の種類や電気分解の条件によって決まる。それぞれの経路には特有の抵抗がありそのためにエネルギーの損失や中間物質の濃縮などが見られる。ここでは, 水の電気分解のときカソード反応(水素発生)を中心に水素イオン(H^+)がどのような経路を辿って水素(H_2)に変わるのか, その道筋でどのようなことが起きているかなどの問題を取り上げてみたい。
著者
巣山 和人
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.150-151, 2004-03-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7

エメラルドの結晶を,酸化リチウム-酸化モリブデン(VI)フラックスの蒸発法により合成した。従来知られている方法より,小さいスケールで,短時間で合成することができた。これは高校の化学クラブが日常の活動で行った成果であり,理科教育のさまざまな機会に役立つであろう。
著者
植田 和茂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.578-581, 2017-11-20 (Released:2018-05-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

炎色反応といえばいくつかの元素とその色の対応をすぐに思い出されるかもしれないが,天井の蛍光灯を見ても同じように元素とその発光色の対応をすぐに想像できないと思われる。蛍光灯ではいくつかの色を混ぜて白色にしているため,想像できないのも当然であるが,原子からの固有の発光を見ているという点では炎色反応の発色も蛍光灯も同じことである。放電ランプでは放電管中の気体の原子やイオンからの発光を利用し,蛍光灯やLED照明では蛍光体中に添加された微量の陽イオンからの発光を利用している。ここでは,照明として身近に使われる放電ランプ,蛍光灯,LED照明の仕組みと進歩について簡単に解説する。
著者
廣瀬 里佳
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.460-461, 2019-10-20 (Released:2020-10-01)
参考文献数
4

冬の季節に用いられるカイロは,鉄が酸化する時に放出される熱を利用するため,熱化学の分野で扱われる。今回このカイロを利用し,熱化学以外の実験をいくつか紹介したい。小学生から高校生までなるべく幅広い年齢層で実験できるものを選んだ。ぜひ実践して頂ければ幸いである。
著者
梶本 哲也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.11, pp.550-553, 2019-11-20 (Released:2020-11-01)
参考文献数
11

現在,抗生物質の普及によって人類は多くの感染症から身を守ることができている。病原性細菌を狙い撃ちにする「魔法の弾丸」が次々に開発され,私たちは,まさに「抗生物質の時代」に生きていると言える。抗生物質の代表格は,何と言っても20世紀中ごろから世紀を超えて今日まで広く使われているβ-ラクタム系抗生物質である。β-ラクタム系抗生物質はペニシリンの発見と製品化によって開拓された医薬品である。人類を細菌感染症の威嚇から解放したペニシリンの発見は,医薬品開発の中ではセレンディピティーとして取り扱われることが多いようである。しかし,ペニシリンが医薬品として開発される過程には,シードを発見した研究者の鋭い観察力と忍耐力ならびに医薬品開発に使命感をもった企業とその研究者たちの高い志が垣間見られる。今回は,ペニシリンの発見からノーベル賞受賞に至るまでの過程とその後の抗生物質開発に及ぼした影響について概説したい。
著者
若林 文高
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.112-115, 2017-03-20 (Released:2017-09-01)
参考文献数
15

最初の人工元素テクネチウムは,1937年にサイクロトロン中で作られた。これは43番元素で,小川正孝が1908年に新元素として発表しその後消えた「ニッポニウム」の原子番号とされた位置だった。93番以上の「超ウラン元素」は,1940年以降に人工的に作られて発見された。その発見史を4つの時代に区分して追ってみた。
著者
上平 恒
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.494-500, 1995-08-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6

水の中の水分子はお互いに水素結合で結ばれており, 1つの水分子の周りに4.4個の水分子が存在する。水はそのようにかさばった液体構造をもっているが, ミクロにみると水分子はきわめて激しい回転や並進運動を行なっている。例えば, 並進運動の時速は183kmである。このため水素結合で結ばれた水のクラスターの大きさや形は絶えず変化しており, クラスターの平均寿命は10^<-12>sのオーダである。水は約4℃で1g・cm^<-3>という最大密度をもつなど, 種々の特異な性質をもっているが, これは水の独特な液体構造によるものである。
著者
坪村 宏
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.722-725, 1998-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
3
被引用文献数
1

高校教科書・化学IIの化学平衡の記述について意見を述べた。化学平衡状態にある物質の濃度や圧力の量的関係を与える化学平衡の法則は熱力学(化学ポテンシャル)から導かれるものであるが, これは高校の範囲を逸脱した難解なものであり, したがって実験的に見出された関係として教えることが適当と考える。この法則を反応速度式から導くことはわかりやすいものであるが, 事実に反するからすべきではない。以上の点について, 現行の教科書はおおむね妥当な記述をしている。ただ, この法則を質量作用の法則と呼ぶことは速やかに改めるべきであろう。
著者
冨田 功
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.318-321, 1994-05-20 (Released:2017-07-11)
被引用文献数
1

平成6年4月から使われる高校の化学教科書には, これまでと違って, 18族方式の長周期周期表が登場する。従来の周期表では, 世界的にAB亜族の命名法に二つあって, 混乱のもととなっていた。新方式は国際純正応用化学連合(IUPAC)の推奨にもとづくものだが, これが唯一絶対の周期表の決定版というわけではない。電子配置と物質の性質は切り離せない関連を持つが, どんな問題点があるだろうか。この機会に周期表の効用や限界をもう一度見直すことも意味のあることではなかろうか。
著者
田中 稔
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.404-405, 2017-08-20 (Released:2018-02-01)
参考文献数
4

肝臓は体内最大の臓器であり,代謝をはじめとした生命を維持するうえで必須の機能を数多く担っている。その中でも,三大栄養素と呼ばれる炭水化物,脂質,タンパク質のエネルギー代謝は我々が活動するためになくてはならない重要な機能である。一方,人体に有毒な物質を解毒する薬物代謝も,生命を守るためには必要な機能である。このような肝機能を十分に理解することは,健康の維持だけでなく,新薬の開発においても重要な意味を持っている。
著者
向山 光昭 岩澤 伸治
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.7, pp.1099-1107, 1987-07-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
38
被引用文献数
2

二価スズのトリフラートに塩基の存在下,種々のカルポニル化合物を作用させるとすみやかに対応する二価スズのエノラートが生成する。これにアルデヒドを作用させることにより収率よく,また,高立体選択的にsyn-形のアルドール付加体が得られる。この反応は種々のβ-ヒドロキシカルボン酸誘導体,α,β-エポキシカルボニル化合物,カルバペネム系β-ラクタムなどの立体選択的合成に適用できる。また,二価スズのエノラートに光学活性ジアミンを配位子として作用させるだけで,高能率的不斉アルドール反応が進行し,80%ee以上の高い不斉収率でアルドール体を得ることができる。また,触媒量の二緬スズ化合物を用いるアルドール反応もニ価スズと硫黄との親卸力を利用することにより実現できる。さらに二価スズのエノラートを用いるMichael付加反応,キノンとの付加一還元反応など,従来の金属エノラートでは困難とされていた種々の有用な合成反応を開発することができた。
著者
渡辺 正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.688-691, 2001-11-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
6
被引用文献数
1

12年前に生まれ, 数奇な運命をたどって短い生涯を閉じた(ように見える)「常温核融合」は, 20世紀最後(かつ最大?)の科学スキャンダルとも言われる。そのいきさつを, 個人的な体験を交えて振り返ってみたい。一見したところ清浄無垢な自然科学の世界も, お金と名誉を求め, メンツにこだわり, 権威に寄りかかり定説を鵜呑(うの)みにして思考を止め, 都合の悪いデータには目をつぶる……そういう生臭い人間の営みだという事実を, 常温核融合ドラマはよく教えてくれる。
著者
内藤 卓哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.574-577, 2017-11-20 (Released:2018-05-01)
参考文献数
2

白熱電球は100年近くの間照明の主流であり,私たちの生活に深く溶け込むとともに,生活を大きく変えたものであった。しかし,電球はエネルギー効率の低さから,蛍光灯,さらにはLEDへの転換が進んでいる。電球の生産は縮小しており,電球の役目はほぼ終了したといわれているが,その開発で築かれた材料技術や生産技術は他の光源の技術に引き継がれている。ここでは,電球の6大発明を中心として白熱電球の技術と開発の歴史を振り返る。
著者
大瀧 仁志
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.356-359, 2000-06-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
1
被引用文献数
2

化学反応の90%以上を占める溶液内反応の最も基本となる溶媒和イオン, 特に水和イオンの構造と溶液が呈する色について考察する。水和イオンのミクロ構造が明らかになったのはようやく1970年代の中頃である。現在では, ほぼすべての単原子イオンの水和構造が明らかにされている。この研究には, 溶液X線解析法(静的構造)とNMR法(動的構造)の寄与が大きい。一方, 電解質水溶液の色調を決める水和イオンの電子状態に関しては吸収スペクトルの測定によりすでに古くから多くの研究が行われており, 理論的にも配位子場理論等により解明されている。これらの現象についてもっとも基本的な見地からやさしく解説することを試みた。