著者
齋藤 俊和
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.158-161, 2021-04-20 (Released:2022-04-01)
参考文献数
9

界面活性剤が水の表面張力を変化させ,洗剤として機能するメカニズムについて述べる。次にセッケンや合成洗剤の原料物質と合成された界面活性剤の性質との関係について触れ,セッケンと合成洗剤の違いについて述べる。
著者
西出 宏之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.116-119, 2000-02-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4

空気から酸素分子を選択的に取り込み運搬するヘモグロビンは, 中心に鉄をもつ分子「ヘム」を含むタンパク質である。ヘモグロビン中のヘムの構造と, 酸素の結合平衡反応をもとに設計された全合成ヘムは, タンパク質なしでも酸素運搬できるので, 酸素運搬輸液(いわゆる人工血液)としての試験が進んでいる。全合成ヘムを組み込んだフィルムによる(酸素/窒素)分離など, ヘモグロビンを超える全合成ヘムの機能も紹介する。
著者
河野 俊哉
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.50-53, 2021-02-20 (Released:2022-02-01)
参考文献数
5

新型コロナウイルスが席巻する現在,北里柴三郎の営為は益々再評価される機運にある。また,北里と言えば第1回ノーベル賞候補,ペスト菌真贋論争,脚気論争,伝染病研究所移管騒動などエピソードに事欠かない人物でもあるが,それらを精査する時期にも来ている。そこで最新の科学史研究の成果を基に北里の上記エピソードの現在の状況を確認すると共に北里研究所・北里柴三郎記念室や東京大学医科学研究所・近代医科学記念館など白金周辺の探索の成果も併せて紹介したい。
著者
竹内 俊夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.31-35, 1991-02-20 (Released:2017-07-13)

宝石ブームだそうである。日本での宝石全体の販売金額は2兆6000億円, とある雑誌に書いてあった。そしていまに金余りの日本は, アメリカを抜いて世界の宝石大国になるのではともいわれている。そういわれてみると, ほとんどの女の人の指に指環が光っている。全財産ではないかと思われるほど, 左右の指に何個もはめている人もいる。しかし宝石の歴史や性質, その美しさの要因を知っている人は少ない。宝石を通して自然の鉱物の美しさを知って欲しいと思う。実験室でできるめのうの着色についてもふれておいた。
著者
深野 哲也
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.132-135, 2017-03-20 (Released:2017-09-01)
参考文献数
8

炎色反応は,『化学基礎』では「成分元素の検出」において,『化学』では「アルカリ金属」「2族元素」において必ず取り上げられる学習項目である。様々な色彩の炎が簡単に観察できるので,生徒実験や演示実験が多くの高校で行われてきた。ところが生徒実験としては,教科書から消えている場合もあり,実験方法の紹介も簡単に済ませている教科書が増えている。本稿では,多くの高校で実施されてきた実験方法を紹介するとともに,少し視点を変えた銅の炎色反応の紹介を行う。併せて,炎色反応の歴史的なトピックスや,よく炎色反応の応用例として紹介される花火に関する知見を記し,最後にその今日的な活用例に触れる。
著者
伊藤 美千穂
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.616-619, 2016-12-20 (Released:2017-06-01)
参考文献数
3

日本古来の奥ゆかしい伝統に,沈香*1などの香木を穏やかに暖めて立ち上がる芳香を“聞く”香道がある。また,西洋でアロマセラピーが提唱されるより以前に,北宋の詩人である黄庭堅により香の精神的・身体的効能を謳った漢詩「香十徳」*2が書かれており,日本でも広く知られていた経緯がある。しかし,現代の薬学分野では,主に再現性や定量性の問題からにおい自体やにおい成分の薬理効果などは研究対象になりにくいものとされ,これらについての研究は精力的には進められてこなかった。他方,においの効果に興味を持った著者らはマウスを使ったにおい成分の経鼻吸収モデルを構築し,香道で用いられる沈香の芳香成分に強い鎮静作用があることを明らかにした。さらに沈香等の薫香生薬類やハーブ類の精油等からのにおい成分の摂取がマウスの行動に与える効果を行動薬理的に解析することにより,これらのにおいの中の活性成分の詳細な検討や,薬としての応用の可能性について研究を行っている。
著者
米沢 剛至
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.336, 1995-05-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
4
被引用文献数
1
著者
古川 義純
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.238-241, 2012-06-20 (Released:2017-06-30)

国際宇宙ステーション「きぼう」において,氷点下に冷却した水中で氷結晶の成長実験を行った。結晶の成長に伴い発生する潜熱のため,結晶内部や周辺には温度の分布が生じる。水の密度は温度に依存して変わるため,地上の重力下ではこれに起因する対流が発生し,これを避けることはできない。これに対し,宇宙空間では,長時間にわたる極めて良質な無重力環境が実現されるため,対流が完全に抑制され,理想的な環境での結晶成長の観察が可能である。本実験では,宇宙で使う実験装置の開発を行い,宇宙での見事な氷結晶の成長の様子を世界に先駆けて観察し,映像に収めることに成功した。宇宙では,見事な対称性を持つ結晶パターンが観察され,氷結晶の形態不安定化のメカニズムの解明に大きく貢献した。
著者
加納 健司
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.138-141, 2020-03-20 (Released:2021-03-01)
参考文献数
3

高校の教科書には,IUPAC方式ではない物理化学的記述が非常に多い。本稿では,高校で学ぶ化学反応速度式や平衡の考え方の問題点に焦点をあて,物理化学的視点から解説する。この中で,平衡点ができる本質は混合のエントロピーに起因することを指摘するとともに,2成分平衡系での平衡点と標準反応ギブズエネルギーの間に見られるシグモイド特性が,反応系に依存せず一般的なものであることについて述べる。
著者
稲垣 怜史
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.64-67, 2018-02-20 (Released:2019-02-01)
参考文献数
7

石油資源に代わる化学品原料を得るための資源として天然ガス・石炭が注目されている。米国シェール革命による天然ガス化学の復興であり,中国の現代的石炭化学の台頭である。ここではシェール革命と現代的石炭化学に関わる学術研究の位置づけや先端技術について紹介する。
著者
佐藤 和則 井上 正之
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.356-359, 2018-07-20 (Released:2019-07-01)
参考文献数
5

加圧を伴わないサリチル酸の合成(コルベ法)の実験教材化を検討した。ナトリウムメトキシドを塩基としてセライト中でナトリウムフェノキシドを調製することで,中和における水の生成を回避しながら二酸化炭素との反応を円滑に進行させた。またセライト中でサリチル酸を遊離させて昇華することで,サリチル酸と残留フェノールとを分離した。得られたサリチル酸は,塩化鉄(Ⅲ)水溶液および炭酸水素ナトリウム水溶液との反応で検出した。
著者
永原 裕子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.212-215, 2020-05-20 (Released:2021-05-01)
参考文献数
7

宇宙の進化は多くの場合物理学で論じられるが,実は物質や化学が重要な役割を果たしている。元素は恒星で合成され,固体物質を作り,次世代の恒星の誕生にともない惑星を作ることになる。物質の種類やサイズが物理過程を支配し,物理過程が化学反応を引き起こす相互作用こそが宇宙の進化・惑星の多様性の本質である。
著者
杉谷 嘉則 山崎 裕一 長島 弘三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.1, pp.28-32, 1980-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1

サマルスキー石は希土類元素およびニオブ,タンタルを主成分とする酸化物鉱物の一種であるが,ほとんどすぺての試料は,その含有するウランなどの放射線のためにメタミクト化している。さらに,通常成分として上記以外にも多数の元素が含まれている。このような事情により,サマルスキー石は古くから知られている鉱物であるにもかかわらず,その組成,構造などに関して確定的な結論が得られていない。このサマルスキー石に関し,過去の文献データと結晶化学的考察により,組成としてはAB206型(A=Y,ランタノイド元素,U,Caなど,B=Nb,Ta,Fe+3,Tiなど)が妥当であること,また構造に関しては,他の鉱物(コルンブ石,鉄マンガン重石,ユークセン石,イクシオライト)との関連からα-PbO2型構造を基本にもち,かつ構造中でこれらの金属元素がAおよびBの位置を無秩序に占めているものと推定した。この考察に基づき,含まれる成分をY,Ca,U,Nb,Fe,Tiにかぎって焼結法により合成実験を行なった。その結果,天然のサマルスキー石を加熱(1000℃)したものと類似構造をもつ化合物が得られた。天然のサマルスキー石にはカルシウム成分のとくに多いCa-samarskiteが報告されているが,これに対応する合成物も得ることができた。
著者
野原 稔弘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.418-421, 2001-07-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2

今から二千年前, 漢方の原典の一つ「傷寒論」は, 邪の架空物体(抗原)を仮定し, 免疫系を予想し, それに対する薬物を考案していた。現代の医療では, 感染症の初期(太陽病)は, 抗生物質を主とする西洋薬物が第一次選択薬剤であるが, その後半期(少陽病期)の食欲不振, 倦怠感などの自覚症状改善薬としては, 「小柴胡湯」などの漢方方剤(主として柴胡剤)が有用であることなど, 漢方の考え方を説く。
著者
石井 裕子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.63-70, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
40
被引用文献数
4

シュウ酸カルシウムは水溶液中で一般には一,二,または三水和物の混合物沈殿として生成する。高温では一水祁物のみが生成するが,本研究によれば少量のクエン酸あるいはリンゴ酸ナトリウムの共存の下で二水和物のみが生成し,やや多量のクエン酸またはリンゴ酸ナトリウムの共存の下で三水和物のみが生成した。シュウ酸カルシウムー水和物の溶解度は6×10-5M程度で二水和物および三水和物が一水和物よりやや大きい。一水漁物の溶解度は100℃ではわずかに大きくなった。シュウ酸カルシウムの一,二および三水和物沈殿の形態はそれぞれ長い六角形板状,八面体および平行四辺形板状である。二および三水和物は不安定で水中で約10分煮沸すると一水和物に転移した。シュウ酸カルシウムー水胸物沈殿の結晶核は誘導時間の測定からCa3(C2O4)3n・H2Oと推定できた。シュウ酸カルシウムー水和物および二水和物は植物の葉または茎に見いだされたものと沈殿粒子との形態を比較し,またX線回折によって同定できた。植物中のシュウ酸カルシウム結晶は極めて安定で一水和物に変化するには1時間以上煮沸することが必要であった。
著者
島 正子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学教育 (ISSN:24326542)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.477-479, 1984-12-20 (Released:2017-09-15)
被引用文献数
1

宇宙に存在する元素の割合をみると水素が最も多く, 次はヘリウムで, これだけで全体の99.8%以上をしめる。その次に多い酸素は水素の0.07%, 地殻などを形成しているケイ素は約0.004%にしかすぎない。太陽系に限ってみると, このようにたくさんある水素やヘリウムの大部分は, 主として太陽と木星以遠の外惑星を形成していて, 地球型惑星や衛星からはほとんど失われてしまっている。どうしてこのように劃(かく)然とした違いが生じたのであろうか。また地球型惑星や球粒いん石, 月ではケイ素と酸素の原子比が1 : 3.4-3.8である。1 : 4に近いが4以上でもなくまた3以下でもないことに注目する必要がありそうである。これらの事実を, 化学者が原子, 分子の結びつきという立場から検討していくことが必要なのではないだろうか。宇宙はもはや, 天文学, 物理学, 地学の人たちだけのものではない。